リィンカーネーションに花束を   作:ピーシャラ

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自惚れを


第十一束。スイセンの花束を

 たとえ、天下の学舎。雄英も言っても所詮、学舎は学舎…日常的に特別なことが連続して起こる筈もなく、普通に授業はあるもんで…。

 

「ヘーイッ!そこの居眠りボッーイ!!この公式の間違いはどれ!?」

 

「…あ?…………4番」

 

「…正解だ、チクショー!!」

 

 後ろ姿でも分かるクラスの奴らの金髪インコの授業総評は普通らしい。居眠りしていて当てられたが、こんなもん公安で教育を受けた俺に掛かればぬるいもんよ。公安で初めて授業受けた時は頭が爆散するかと思ったけど。

 

 そんな思い出に浸りながらも授業は進み、ついでに飯も済ませると、いよいよ俺含め、クラスの連中も浮き足出すような時間が大きな足音を立てながらやって来た。

 

「わーたーしーがー!!普通にドアから来たッ!!!」

 

 勢いよく入ってきたのはオールマイトだ。やっぱあの人がこん中に混じると画風の違いを見せつけられるな。影が濃ゆい。

 

「早速だけど今日はこれ!戦闘訓練!!……それに伴ってこちら!入学前に君らからの要望にそって誂えられたコスチューム!!」

 

「「「おおっ!!」」」

 

 そう言って続けたオールマイトがリモコンを押すと番号が記されたカバンのような物が壁から現れた。これには俺も含めてクラスも驚いていた。ハイテクだ。

 それにコスチュームか…ちゃんと要望通りになってんのかな。ただの服だけだが構造の説明が中々難しかったからな…。

 

「みんな!着替えたら順次グラウンドβに集合だ!!」

 

 

===============

 

 

「黒籍お前、カッケェな!!」

 

「当たり前だ、世界最強だからな!」

 

 切島が叫ぶのも無理はない。なんせ俺が廻り者の時に着ていた服だからな。

 俺が注文したのは重瞳の柄が入った黒のインナーに上着。腰から布を踝の近くまで垂らしたようなどっかの民族衣装のようなズボンだ。あとは頼んではいないが、ささやかな贈り物と言わんばかりの小物を入れるためのポーチが付けられている。服に関しては特に何も特別な性能は要求してないが、強いて言うなら衝撃に強いぐらいのものは付けてくれたらしい。俺の場合、万象儀纏ったら万事解決するから余計な性能はあんまりいらねーだよな。

 

「いいや、切島。よく見ろ、コイツが更に黒っぽいの着たらより悪役感が増してるだろ?」

 

「おおっ!確かに!」

 

「…なに納得してんだ切島!そこは否定しろ!」

 

「何してんだよ、お前ら。瀬呂さん先行ってるよー」

 

「ケッ!」

 

 約一名舌打ちしながら出て行ったが、そこはもういいだろう。…おいお前ら何故肩に手を置いてそんな憐れなものを見る目でこっち見てんだよ。なに、俺は違うぜって面してる。お前らに言っとくが爆豪はお前らにも呆れてると思うぞ。

 

 

 切島と上鳴に真実を伝えるとショックだったのかトボトボと歩く二人を引っ張りながらグラウンドに向かう羽目になった。なんで自分は違うと確信してんだよ。

 グラウンドに着くと既に過半数がそれぞれのコスチュームを身に纏い待っていた。女子のコスチューム姿に興奮し始める上鳴とただ純粋に訓練に挑もうと気合を入れている切島を見て、同じヒーロー科なのにこうも差があるか…と、少し悲しさを感じたが言わないでおく。

 二人から離れあたりを見物している内に最後の緑谷らしき人間が来ると授業が始まる。

 

「みんな集まったようだね!早速だが今日は、屋内での2対2で対人戦闘訓練だ!…敵退治は主に外で多く見られることがあることは知ってるね。しかし、実は統計的に言えば、敵発生率は屋内での方が多いんだ」

 

 確かにそうだな。俺も偶にそう言った連中を潰していたのはだいだい、古びたアパートとか、廃墟のビルの人通りが少ない寂れたところだったな。…その都度、後処理は毎度、毎度ホークスに任せっきりだったな。

 

「真に賢しい敵は闇に潜むもの……という訳で君らにはこれから『ヒーローチーム』と『敵チーム』に2つに分かれて貰い、屋内戦をしてもらう!!」

 

「…基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知るための実践さ!!」

 

「勝敗はどうなるのですか?」

「ぶっ殺してもいいんスか…?」

「また除籍とか……」

「どうやって分かれたらいいでしょうか!?」

「このマントヤバくない?」

「どうヤバいんだよ」

 

「んん〜〜聖徳太子……!!いいかい!まず、設定としては敵はアジト内に核を隠し持っている。敵は時間制限まで核を守り切る。もしくはヒーローチームを全員捕獲する。ヒーローチームは敵の捕縛、もしくは核の奪取、これはタッチ出来ればOKだ!なお、コンビと役職はくじで決めるぞ!」

 

「しかし、先生!このクラスは21人いますがどうすればいいでしょうか?」

 

「いい質問だ飯田少年!余った一人は既に終わっている生徒の中でコンビと相手コンビを指名して戦ってもらうぞ!」

 

 くじか…。運ゲーはあんまり得意じゃない。昔にあった院内でのビンゴ大会で俺だけ残して全員が上がったこともあるし、初詣で行った時のおみくじも毎年大凶だからな。運悪すぎるあまりにお祓い行かされたこともあったがそれでも変わらなかったからな……。

 

「次、黒籍少年だぞ」

 

「おう……………」

 

 嫌な事を思い出し、気の進まないままくじを引く。手に握った番号を恐る恐る覗いてみれば何故か切島らも覗いてくる。

 

「なんだった?」

 

「☆ってなんだ?まさかと思うが……」

 

「…おめでとう黒籍少年!君は21分の1のあたりを引き当てたぞ!!」

 

「よかったな。あたりだってよ!」

 

「…変わるか?」

 

「遠慮すんなって!お前は幸運の持ち主だぞ!!」

 

 コイツら(切島と上鳴)わざと言ってんだよな?なんだ?地中海に沈めて欲しいのか??

 

「怖いこと言うなって、世界最強!」

 

 …上鳴、お前あとで校舎裏来い。なに、怒っている訳じゃない。ただ白熊とアザラシが住んでいる涼しい所に連れて行きたいだけなんだよ。北極って言う所なんだけどな………。

 

「助けてオールマイトッ!!俺、殺される!!!」

 

「…結構ガチなヘルプだね……。ええい、黒籍少年やめなさい!戦闘訓練、始めるから離してあげなさい、よ!!」

 

 上鳴に詰めよっていたらオールマイトに引っ剥がされてしまった。

 命拾いしたな、上鳴。それに俺は別に一人でも良いんだよ…!気楽だからな……!!

 

「俺、その言葉聞くの二回目なんですけど!!」

 

「はいはい。喧嘩はその辺にしといて…最初の対戦はAチーム対Bチーム!!緑谷少年、麗日少女がヒーロー役!飯田少年、爆豪少年が敵役だ!他のみんなはモニタールームで観戦するぞ!…黒籍少年、上鳴少年にアイアンクローするのをやめるんだ!彼の意識はもうないぞ!!」

 

 

 

===============

 

 上鳴の蘇生後。一回戦目の緑谷達の戦闘は熾烈なものだった。緑谷と爆豪の起こした爆破と衝撃でビルが半壊するまでの戦闘を繰り広げ結果的には片腕含め、全身ボロボロになった緑谷チームが勝利を収めていた。

 それほどの激しいセッション以降。皆、力が入ったように訓練に挑み、誰も大きな怪我をすることなく滞りなく授業は進むとやっと俺の番が回ってきた。

 

「さぁ、最後の試合だぞ黒籍少年!いったい誰とチームを組むんだい?」

 

「……コンビは組まない。俺一人でやる、敵はクラス全員」

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 全員がなにを言ってるんだコイツ…と言いたげな目線を向ける。爆豪に至っては一回戦以降から死んだような顔していた癖に殺気が漏れ出していた。

 

「…ほう、それはどうして?」

 

「いやいや、純粋な興味だよ…今の俺がコイツらとどのくらいの差があるのか…コイツらが俺、相手に何処まで戦えるのか……」

 

 クラス全員に激震と苛立ちが募り始め、俺を見る目が一気に鋭くなる。俺が言ったのはコイツらからすれば自分たちは格下だから余裕で勝てるって言ってようなもんだからな。初めの一言だけでよかったんだがやる気を出してもらう為にあえて挑発させて貰った。

 

「聞き捨てなりませんわね…。貴方一人だけでクラス全員…この数に勝てると思いですの?」

 

 痴女と言いたくなるようなコスチュームの奴の言葉に皆、拳を握りながら強く頷く。切島も少し憂るいげな目を隠せないでいたがそれでも少し苛立ってようだ。

 コイツらが苛つくのも仕方がない。どうしてかと問われれば俺は、ヒーロー科最高峰の地位を誇る雄英高校に合格したコイツらの、人間としての自尊心を突っついている訳だからな。これで腹が立たない人間なんてそうはいないだろ。

 

「だいたいそんな提案がオールマイト先生に通るわけ…「いいよ!」……はい?」

 

 またもやクラスに衝撃が走る。こんな馬鹿が考えたような提案が通る筈ないと考えていたのにも関わらず、その提案が通ってしまったからである。

 

「いいのか?自分で言うがだいぶ馬鹿らしいぜ?」

 

「いいんだよ。相澤先生も言っていただろ?雄英は自由な校風が売り文句。それは先生も、生徒も然りだ」

 

「ですが、先生!こんな「それに彼は強いよ」!?」

 

「このクラスの中で一番強い。何故かって?君たちは今まで彼に勝る何かを証明できる物を持っているかい?」

 

 …オールマイトの問いかけに全員口を閉じ、さっきまで俺に向けていた敵意を思わず下げてしまう。図星だからだ。俺は入試でも、個性把握テストでも、ずっと一位を取り続けていたからだ。そのことに気づいたコイツらはなにも言い返せないでいる。

 

「…まぁしかし、ここまで言った黒籍少年には少し頑張って貰おうか。…そうだね。君はこのルールで勝てなかったら今回の授業の単位は大幅減点だ。いいね?」

 

「勿論だ。それじゃ、十分後に全員ヒーロー側として来てくれ、先に行ってる」

 

「…おい!待てよ黒籍ッ!!」

 

 静寂が蔓延る空気の中、悔しさを堪えながら叫んだのは切島だった。出ようとした開いた扉の前で振り返ると案の定。怒気と悔しさを孕んだ表情を浮かべる切島がコッチを睨んでいた。

 

「…俺たちだってな…(たま)張ってヒーローなる為にココにいんだよ!…舐めてんじゃねぇーぞ!!俺だってな、お前とおんなじヒーローの卵だ!ぜってぇ勝ってやっからな!!!」

 

 最後の言葉に俯いていた奴の顔が俺を倒さんとやる気に満ち溢れる。俺は何も返さず背を向けてひらひらと手だけ振り、モニタールームを後にすると…上がりそうになる口角を抑えながら演習場に向かった。

 後ろからはアイツらの俺に対する団結の怒号が響き渡っていた。

 

 

 

 

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