リィンカーネーションに花束を   作:ピーシャラ

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……やっと…!やっと書けた!!
難産すぎた…。

最近になってやっとTwitter始めました。見るだけですけどね。
速攻で小西さんと堀越さんフォローしました。
リィンカネを切実にアニメ化してほしいです。

それじゃどうぞ。


第十七束。マネッチアの花束を

「「「「「ごちそうさまでした!!」」」」」

 

 轟を交えた晩餐は特にこれといった事件もなく、つづかなく終わりを迎えた。

 子供達は自分が使用した食器を重ねて自分たちで返却口まで運んでいってる。こう言った所でも『自分で使ったものは自分で片付けること』というハナゾノ院長の言葉は徹底されている。

 

 片付けを終えた子供達は自由時間を与えられる。

 大体は自分の部屋に戻るか、大広間に行ってテレビを見るかの二択であるが大半の子供はテレビのある大広間に向かい、さんざん騒いだあと自室に戻り眠りについている。

 八戒と倖季…他の余裕のある年長者達は皿洗いの手伝いなど、率先的に職員らの手助けに向かって行った。

 

 ついでに言っておけば項羽は夕飯を抜いて絶賛、壁の修理中である。勿論、"個性"なしで。

 

 そんな中、客人である轟は一人でどうしたものかと頭を悩ませていた。

 ハナゾノの院長に親御さんが心配してるだろうから早く帰りなさいと言われた。だが、項羽に具体的な用を聞いてなかったことを思い出し、彼は項羽を待つことに決めた。

 しかし、当事者である項羽は絶賛壁の修復作業中であり、今は何処からか持ってきた木材を壁に打ち付けている。

 こんなことなら今日は帰って、話は明日にでも聞こうかと轟は考えた。だが、肝心の帰り道を轟は知らなかった。最寄りの駅でも教えてもらおうと考えたが何故かそんな気分にはならない。

 散々、悩んだ結果。轟は項羽を待つことにした。

 

 項羽を待つ間、大広間にいって子供達と話をしてみるのもいいかもしれないと一瞬、轟は思った。だが、余所者の自分が行っても子供達を困らせるだけだと思い断念した。

 それに、子供達は中々に警戒心が強いのだと薄々、感じ取っていた。

 食事中には院長の部屋に行く途中で出会った子供達には話しかけられたが、その他の一部の子供達には遠巻きに観察するような視線を向けていた。

 

(……あの歳ぐらいの子供ならもっと好奇心旺盛で活発だと思っていたが…あの目からは、興味とかじゃなくて…恐怖に似たなにかだったな…)

 

 轟はチラリと項羽の方を見る。

 あと、何枚か木材を打ち付ければ一応の修理は終わるといった具合の様子だった。

 あと、もう少し時間を潰せればいいと思い。八戒らと同じように自分も何か手伝おうと通常の何倍もありそうな木目の入った大きな長机を拭いている八戒に近寄った。

 

「なぁ、何か手伝うことはあるか?」

 

「…いやいや、客人にそんな手伝いはさせられないブよ。気持ちだけ受け取っておくブ。項羽を待つなら大広間にでも行って時間を潰してきてくれ」

 

「いや、余所者の俺が行っても困るだけだろ…。それに、なんだか警戒されてる気がしてな」

 

「……まぁそれはしょうがないブね」

 

「…やっぱりここの子供達はその…やっぱり、()()()()()()されて来た子供が多いのか?」

 

 しどろもどろに含んだ言い方をする轟に八戒は机を拭いていた手を止めて、轟に向き直った。向き直った八戒は癖からか無骨な手で使い古されてくたびれた台拭きを綺麗に畳み机に置くと、少し声を低くして答えた。

 

「……君の言う、()()()()()()がオデの思っている事と同じなら…まぁその通りだブ。ここにいる殆どが、過去に辛い経験をしてきた孤児(みなしご)だブ」

 

「…やっぱりそうなんだな…」

 

「……それで?そんな当然のことを聞いて君はどうするんだブ。馬鹿にでもするのかブ?」

 

 

 嫌悪を滲ませながら自分を睨む八戒はさっきよりも大きく、圧迫感を感じるようなほのかな怒気を漏らす。あまりの圧迫感に轟は少したじろぐも自分の本心を八戒に伝えた。

 

 

「んな訳ねぇよ。ただ…気になるんだ」

 

「何をだブ?」

 

「…俺の中じゃ孤児院っていう場所は、もっと酷くて暗いもんだと思っていた。…ましてや親と離れ離れで過ごしてきた子供達がギスギスした環境で暮らしているって勝手な思い込みすらあったのに、みんな楽しそうで笑顔でいる。…それに何より、ちょっと顔を曇らせただけの俺に顔色を伺うような心配じゃなくて純粋に心配してきてくれたんだ。きっと自分も辛い思いをしたはずなのに…なんであんなに他人に優しく出来るのかと不思議に思ったんだ」

 

 自身よりも、二回り以上も大きな八戒を見上げ、左右で色の違う瞳で、八戒の赤みがかった黒い瞳を真っ直ぐ見つめる轟。

 そんな轟に八戒は、なんだか不思議な気分に襲われて、自然と口走っていた。

 

「それは……。項羽のおかげだブ」

 

「黒籍が…?」

 

「さっきも話をしたブよな?アイツは俺たちのためにいろんなことをしてくれたんだブ。……実を言えば、轟くんの言う通り、ハナゾノは元はこんな賑やかじゃなかったんだ。みんな、どこか暗かった。部屋から一歩も出てこないような奴らだって沢山いたブ」

 

 

 何かを決心した八戒はチラリと項羽の方を確認した。

 丁度、最後の一枚を打ち終えようとしていたところで、別の直した部分を、一人の子供にブチ破られて項羽が絶叫を上げていたところだった。

 

 そんな姿に八戒は一つ目元を覆って、ため息を吐く。

 何も言わずに、ちょちょいと轟を手招いて食堂から出て行った。その意味を理解した轟は急いで八戒に追いつくと、彼は独り言のように明かりの少ない廊下で話を続けた。

 

「さっきも言った通り、オデたちは孤児。大半が捨て子だったり、親に捨てられたり、親が殺されたり、逆に親に殺されかけたりした奴もいるけど…他にも色々、理由がある奴もいるブ。…まぁ、全員、行き場を無くしてここまで流れ着いたっていうのは同じブね」

 

「…随分と平気そうに言うんだな。お前も同じだろうに」

 

「憐れみなら、必要ないブよ。見ての通り、殆どの子供らはもう過去を乗り越えているブ。…でも、まぁ当時は院長先生にも手が余るような荒れ具合だったから、轟くんの言う通りギスギスじゃ済まされないような場所だったことは確かだったブ」

 

「……それを黒籍が変えた?」

 

「そうだブな…。一番の例が倖季だブ。…倖季は親から虐待を受けて、奴隷のような生活を強いられていたんだブ」

 

「っ……そうか」

 

「挙げ句の果てに、小学校低学年くらいの頃に親に売られて、売人から命からがら逃げているところを項羽が拾ってきたんだブ」

 

 轟は言葉が出なかった。

 あんなにも楽しそうに笑顔を振りまいていた彼女に、酷いだけでは言い表せないような過去があったことに、声が出なかった。

 目の前にいる八戒にもそんな過去があるのかも知れない。

 そんなことを思うと、聞くことすら、言葉を声に出すことすら憚れるようなダメな行いかと思い込み、轟はそれから何も喋らなかった。

 

 天井に頭をぶつけないように若干、前屈みになって歩く八戒について行き、廊下を歩き、時たま階段を登っていけば、屋上に出ていた。

 轟は足元を見ると暗い話を聞いたせいか曇っていた気持ちが少し和らいだ。

 

 綺麗な満月に近い形をした月明かりがそれを照らしていた。

 少しざらついたコンクリートには左拳を突き上げたオールマイトを始め、何やら口から火炎を吐き出している恐竜や、キラキラと光り輝くような星の形をした煙を捲きながら走る機関車。可愛らしい色で描かれた様々な花がどれもかしこも歪んだ線で描かれていた。

 

 どれも子供が描いたのだろうか、汚くとも大胆に描かれた落書き達を、轟は微笑みながらその一つ一つを眺めるように見て行くと、どこか見覚えのある一つの落書きに目を留めた。

 八戒もそれに気づいたようで轟と同じように顔を近づかせるとあぁ、と言ったふうに微笑んだ。

 

 

 その落書きには、胸あたりに彼のシンボルとも言える重瞳が描かれていた。首から血のような赤色の花びらの舞わしている背の高い灰色と水色の混ざったような髪の色をした背の高い男と、この絵を描いた主なのだろう黒髪の男の子が手を繋いで笑っている落書きだった。

 

 その周りにも八戒や倖季、院長と思わしき人物達に加え、きっとこの孤児院の中にいるであろう人物達も笑顔で手を繋いでいた。

 八戒はその落書きの側に腰を落ち着かせるとゴツゴツと角ばった無骨な指でなぞり話を続けた。

 

 

「斯く言う項羽も捨て子だブ。先生の話じゃ、冬空の下で名前と一緒に毛布に包まれていたらしいブ…」

 

「そうなのか…」

 

「正直、オデも荒れてたなー。…みんなに暴力振るって、自分の存在を認めて欲しくて、みんなに酷いことをしてしまったブ…」

 

「項羽のことも虐めてしまっていたブな。あの頃のオデは、自分の王国を作って満足していたクソガキでしかなかったブ」

 

「でも、項羽に個性が発現したころぐらいにアイツに殴られて目が覚めたんだブ」

 

 

 

『いつまで引きこもってんだ!さっさと出てこい!!』

 

『お前の母親はもういない、だったら!他に愛してくれる奴を探せ!少なくとも、ここにいる俺たちはお前を愛してやる!!』

 

 

 

「…ブフフ。今んなって思い出すとくっさい台詞だなブ」

 

 その時のことを思い出した八戒の笑みは、初対面の時に感じた凶悪な人相は消え失せ、慈しみを持った優しい笑みだったと轟は後に語っていた。

 

「それから、アイツは人が変わったように振る舞い始めてな。誰の部屋かもわからないところに突撃して外に引っ張り出すような無茶苦茶なことを続けていくうちに」

 

「今のハナゾノになったてことか…」

 

 八戒が言うことを轟は分かっていたのか、二人とも顔を見合わせていると八戒がいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。

 

「オデなんかよりも、すごく考えているんだブ、アイツ。昔、アイツに聞いたことがあるんだブ。どうして俺たちにそんなに構うのかって…」

 

「…そしたら『俺たちは()()なんだ、何処か心に傷を負った欠陥品どもだ!…だから、己の存在を失わないために肩を寄せ合って、自分の足で立てるまで傷の舐め合いでもなんでもしなくちゃならねぇんだ。そんな奴らが最後に流れ着いた場所で余計に自分が傷ついて居場所を失っていくなんて俺は嫌だね』って…そう笑っていたんだブ」

 

「……………………」

 

 自分のことじゃない。

 でも、どこか誇らしげにそう語る八戒。

 轟は自分の中にある黒籍項羽と言うイメージが塗り替えられたような、そんな気がした。

 

「轟くん。たぶんこの先、項羽に振り回されることがいっぱいあると思うから、その時は遠慮なくオデや倖季を頼ってくれブ。バカの歯止め役ぐらいには役に立つと思うから。それに、アイツ基本バカだけど、そんなに自己中じゃないし悪い奴じゃないから嫌いにならないでくれブ」

 

「…自己中じゃなかったら、俺は突然連れてこられてねぇよ」

 

「ブハっ!確かに!」

 

 立ち上がった八戒は項羽のヘイトが結構高かったことを八戒は呆れながらも、改めて認識した。

 轟に真顔で正論返されたのがツボに入ったのか吹き出して、大声で笑っていると近所迷惑になると気づいたのか笑いを堪えている八戒。

 そんなに笑うことか?と真顔で見上げる轟に再び笑いそうになっていた。が、なんとか堪え言葉を続けた。

 

「さっきから言おうと思ってたけど…それって多分、仲間認定されたってことだから気を付けたほうがいいブね!アイツ身内と判断した奴には面倒臭いぐらいに絡んでくるからなブ!」

 

「それは…ちょっと嫌だな」

 

「それなブ!うるさいよ〜調子がいい日には犬ぐらいの勢いで構ってくるから」

 

「…犬………あんなデカいのが飛びついてくると思うと嫌だな…」

 

「ブッーー!確かにっ!」

 

 ぶひゃひゃひゃと、とうとう笑いを堪えきれなくなった八戒。

 少々、気持ち悪い笑い声を上げながら涙を浮かべその様子に轟は真顔で首を傾げた。

 

「いやー!轟くん結構、面白いんブな!」

 

「…いや、そんなことないと思うぞ」

 

「ふっー…はぁ、笑った笑った。あぁ、そうだ言い忘れてたブ」

 

「なんだ?」 

 

「…アイツになら話してもいいと思うブよ」

 

「………」

 

 …今の轟には、それを明確に答えることは出来なかった。

 

 

 

 

 

===============

 

 

 

 …ふと、空を見上げる。

 夕方の横あたりに光る橙色はすっかり鳴りを潜めて、真っ白な街灯の光がうすい闇を照らしていた。

 

「すまん、待たせた」

 

「…おせぇよ」

 

 施設の入り口から、周りからバカと呼ばれてるやつが俺を見つけると手を上げながら駆け寄ってくる。

 

「寒いんなら中で待ってればよかったのに、なんで外で待ってんだよ」

 

「いつまでも部外者が居るわけにもいかないだろ」

 

「……ま、一日で懐くはずもないか」

 

 少しの間無言でお互いの顔を見合ってた俺たちは、誰が言った訳でもなく、なんとなく薄暗い夜道を歩き始めた。

 

「八戒と話をしていたらしいな。何を話していたんだ?」

 

「…そのことで聞きたいことがある。駅まで歩くぞ」

 

「…へぇ」

 

「なんだよ…文句あんのか?」

 

「…いいや、行こう」

 

 そう言ってわざわざ距離のある駅まで歩く。…自分で話があるって言ったのに何を話せばいいか分からなくなった。

 

『アイツには話してもいいと思うブよ』

 

 不意に、八戒が言った言葉が頭の中で反芻される。思いついた言葉は、何故か口から溢れて止まらなかった。

 

「俺の親父はエンデヴァーだ」

 

「…そうか」

 

 黒籍は何も言わずに静かに頷く。俺の口は一度、開いてしまったら止まろうとしなかった。

 

「上昇志向の高い男でな、自分じゃオールマイトを越えられないと早々に悟ると次の策に出た。個性婚、知ってるよな?」

 

「…個性目当てで配偶者に結婚を強要し、自身の個性をより強化して子に継がせようとする倫理観の欠けた行為…………そうか」

 

「お前の思ってる通りだよ。母さんの個性を手に入れた親父は自分の欲求を満たしたいが為に俺を生み、鍛え上げた。…そしてあの日、精神を病んでしまった母さんはお前の左側が醜いと、俺に煮湯を浴びせた」

 

「母さんが病院に入れられた日から俺は右側の…母さんだけの力で一番になってやることで、あの屑を完全否定すると誓った。俺はあんな屑の道具にだけはなりたくねぇ」

 

「そうか…そういうことだったのか……なるほどなぁ」

 

 隣を見てみると目を細めた黒籍が納得するように頷く。

 

「だからお前はあの時、あんなにひでぇ顔してたのか。あと、今もやばいぞ。笑え笑え」

 

 黒籍は俺の前に立つと、眉間の寄った俺の眉間を指でほぐしたり、指で口の両端を押さえて口角を上げるようにしてきた。

 

「うわぁ…表情筋固まってらぁ。笑っとけ轟。笑っとるやつが一番、強いんだぜ!オールマイトがいい例だ」

 

 しまいには、俺の顔を両手で挟んでぐりぐりと擦ってきたきた。いい加減に鬱陶しくて、無理矢理、手を払い除けた。

 コイツは残念そうに手を下ろした。

 

「話の筋は分かったが、どうして俺にそれを言った?」

 

 黒籍の言葉に俺ははっとする。別にコイツにこんな話をする義理はない。何故だかわからない。でも…たぶん、八戒の言葉を信じてみたいと思ってしまったんだろうな。

 

「………わかんねぇ。でも、お前が…あそこにいる連中を救ったと聞いたせいかもしんねぇ」

 

「八戒か…あの野郎、大袈裟に話しやがって」

 

「…それでも、八戒達は救われたと感じている。お前のことも少なからず聞いた」

 

「だから、教えてくれ。どうしてお前は、俺たちに手を差し伸べるんだ?」

 

 俺の問いに、黒籍は考えるような顔をすると前に向き直った。俺よりも一回りも大きいはずのその背中は、何故だか少し小さく見えた。

 

「…なに、ただの自己満足だよ。弱い立場の人間が、さらに追い詰められた先でも、居場所がないことが居た堪れなくなっただけだ」

 

 そんなに俺は、出来たやつじゃない。

 最後の言葉は、聞こえないように小声で言ったのだろうけど、しっかりと聞こえた。

 学校やハナゾノじゃあおちゃらけて、戦闘訓練の時には自分の力を信じて疑わないような発言をしていたくせに…もしかしたらコイツは、自分のことがそんなに好きじゃないのかもしれない。ふと、そんなことを思ってしまう。

 

「そんなことより、お前のことだ…。轟、単刀直入に言おう」

 

 黒籍は再び俺に向き直り、真剣な顔つきのはずなのに、俺をどこか蔑むような眼差しを向けながら声をかけてくる。

 

「俺は今の話を聞いて『くだらねぇ』と思った」

 

「…何?」

 

「だってそうだろ、お前の人生なのに「取り消せよ……!!」

 

「何がくだらねぇだ…!!よく知りもしねぇ癖にっ!!!」

 

 右側から出た氷結が本日、何度目かという黒籍の体を取り込んだ。今までとは違って本気でやって、怒りを向けている。なのにコイツは俺を馬鹿にするような顔をやめずに口を開く。それが更に俺を苛立たせた。

 

「あぁ、その目。お前の嫌いな奴そっくりだなぁ轟。…よし、ならこうしよう……」

 

 独り言のように呟いたかと思えば、今までと同じように黒籍の体から万象儀が溢れ、瞬く間に俺を含むあたり一面を覆う。黒い粒子のようなものが波のようにぶつかり、体にまとわりついてくる。

 その勢いに思わず目を閉じる。次に目を開けた瞬間には、夜の色に包まれた暗い住宅街は消え失せ、晴々とした気持ちがいいぐらいの青空に目が眩む。

 慣れた視界で見渡せば、低い緑の茂った、広い山岳のような場所に出ていた。

 

「なっ!?」

 

 俺は海外に旅行したことはない。

 だけど、遠くに広がる、息を呑むような雄大すぎる自然の景色を見て、ここが日本じゃないことを理解させられた。

 

 此処はどこだ?太陽の位置を見る限りアジア周辺じゃない。もっと遠くだ……。空間転移…こんな遠くまで移動できるとはな。

 

「どうだ、綺麗だろ」

 

 俺の背後には、いつの間にか氷結の拘束を解いて平然とした態度でそんなことをのたまう黒籍が立っていた。

 

「人里離れたユーラシアのどっかだ。此処ならどれだけ暴れても問題ない」

 

「っ!」

 

 そんな言葉を聞いた束の間、黒い重瞳に覆われた人間大の岩石のような黒い物体が数個、意思を持ったかのように飛んでくる。氷結を使って防いだが、残りの追撃に耐えられなかったのか一面に氷の粒を舞わせ、砕け散る。

 なんとか飛び退き、追撃を躱すことに成功した。

 しかし、どうやら次は難しいと悟ってしまう。

 

 口元に弧を描いていた黒籍の周辺には先程と同じように黒い物体が数えきれないほど浮遊しており、背後には戦闘訓練時よりも大きな、巨人と言える人型の何かが佇んでいた。

 

「闘おう轟。お前に必要なもの、足りないものを教えてやる」

 

 

 




つ、次…次で終わらせますんで……こんなに長くて申し訳ない。許してクレメンス
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