リィンカーネーションに花束を   作:ピーシャラ

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敵意と恨みを


第二束。オトギリソウの花束を

 

 病院をたらい回しにされたあの日から数ヶ月…。如何やら俺はストレスによる記憶喪失という診断結果になった。俺の身近にいた人間の話によると、前までの黒籍項羽(くろぜきこうう)は大人しく気弱な性格だったらしい。

 もし仮にその人格の中に俺が入り込んでしまったのならだいぶ俺はまずいことをした。どうにも出来んけど。

 

 あの後、俺を病院に連れっていった先生に色々と質問をしたら頭から湯気を出しながらも色々と答えてくれた。

 まず、俺が今居る此処は『孤児院ハナゾノ』。

 身寄りのない、何か問題を抱えた子供が多く預けられる場所だ。俺の場合は朝刊を取りに行こうとした職員が玄関先で毛布に包まれた状態の俺と一緒に入っていた名前を発見し、そのまま保護したらしい。

 この施設は孤児院にしてはかなり敷地が広く計百人ちょいは軽く暮らせるぐらい大きな建物で、加えて職員数も多く、聞いたときは金は何処から湧いてくるんだ、と思ったらどうやら寄付らしい。

 

「おい。項羽、サッカーやろうブ」

 

「………おう。今行く」

 

 ボールを持って声をかけてきたのは猪八戒(いのはっかい)

 俺をぶん殴った奴だ。あの日を境に何故か異常に避けられていたが、話しかけていくうちに徐々に落ち着きを取り戻していき今は普通に遊ぶような仲に落ち着いた。

 怯えていた理由を聞いてみると、どうにもあの時の俺がとてつもなく恐ろしく見えたらしい。何故。

 

 それと、今の俺は小学生だ。既に学校には顔を出しておりクラスメイトらしき奴らにポツポツと心配された。とんでもなく少なかったけれど。八戒とも歳は同変わらず、クラスは違うが今は仲良くやってる。

 

 他の奴らも呼んで棟に囲まれたように出来た広場に出てボールを蹴り始める。

 

「そこだぁ!」

 

「させるかー!」

 

「おまえ!"個性"使うのはズリーだろ!!」

 

「うるせぇ!勝てばいいんだよ!!」

 

 ゴール前、蹴られたボールをキーパーの奴が()()()()()()止めると全員がキーパーに文句を言い始めるがそれを暴論で言い返したキーパーの奴に更にヘイトが溜まっていく。

 喧嘩になり始めると八戒が仲裁に入りにいった。殴って止めるんだけどな。

 

 先生が頭から湯気出して頑張って答えてくれたものの一つ、"個性"は百年以上も前に発現し、今日に至るまでに世界で広がった、"才能"に似た別の能力だ。

 

 今じゃ、世界総人口の約八割がこの個性を持って生まれる個性飽和社会らしい。…それで欲を持った連中が強大な力を手に入れれば、総じてロクなことに使わない人間が増えていった。

 

 そいつらが(ヴィラン)と呼称され始めた頃には、世の中は混乱を極めたらしい。人間が人知を超えた力を手に入れたら、やりたい放題だろうな。殺し、窃盗、放火、暴行、etc…。考えつくだけでも山ほどあるのだからキリがない。

 まだ廻り者の方がタチがいいかもしれん。アイツらは良くも悪くも自分の衝動に赴くままに犯罪を犯す奴もいるからな…あれ、廻り者のほうがタチ悪いかもしれん。

 

 まぁ、そんな混乱渦巻く世界の中で力を正義のために振りかざしてきた者がヒーロー(正義の味方)と呼ばれた。

 今は『平和の象徴』とまで謳われているオールマイトと言われるヒーローが敵に対して抑止力となっている。近年ではなんとヒーローが公務員と化し、子供のなりたい職業ランキング1位になっている始末で、暴れん坊の八戒でさえ「オデはヒーローになるんだブ!」とニュースでヒーローの活躍する姿を見ては目を輝せながら息巻いている。

 

 ……この"個性"は多分、"才能"とは別種の存在なんだろう…。"才能"は自らの首を切ることで"才能"を手に入れる後天的なものだが"個性"は先天的な…誰しもが生まれつきな物で持っている力だ。"才能"と違う点があるとすれば"衝動"があるか、ないか。

 

 不特定の多くの廻り者には狂気的衝動が付き纏うような不運な奴もいる。デルサボには絞殺衝動があったが、それは何か硬いものを握らせておけば良かった。"個性"にも"衝動"と似たような現象が起きるなら調べる必要がある。

 八戒にでも聞いてみるか。例えば、泥ん中に思いっきり浸かりたい時ないか?とか。

 

 ジャングルジムの上で頬杖しボーっとそんなことを考えていると。ほんとんど皆、事態を休息させることを諦め。半ギレ、ヤケクソ状態で個性使いながらルールなんてものは地獄に置いてきた!と言わんばかりの最早サッカーとは言えない激しい泥試合を繰り広げていた。

 

 元々、あいつら血の気が何かと多いし、喧嘩っ早いからな。激しさがそこらにいるガキの比じゃねーんだよ。まぁ、だからこそここに(孤児院)は恥じないんだと思うんだけどな。まだ西耶の弟の方が大人しかった。

 

 懐かしむように西耶の弟の小生意気さを思い出して今の光景と比較すればあの小生意気さなんて可愛いもんだ。

 後ろから騒ぎを嗅ぎつけた先生らがあいつらの元に走り去って行き騒ぎを沈静化しようと頑張っているところを頬杖かきながら静観した後。

 情報を集めるために図書室に向った。

 向かう途中、本を抱えた奴から意味の分からないことを言われて適当に返したら泣いて逃げていったけど何だったんだ。

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

「……おい。ここか?」

 

「あぁ。ここが依頼されたガキがいる孤児院だ」

 

「大丈夫かな…子供を誘拐するなんて……ちょっと気が引けるな……」

 

「何、今更怖気ついてんだ。なぁに大丈夫だ。ガキ一人、散歩に連れて行くだけだぜ」

 

「しかも大人三人でな。これ以上、安心なことは無いだろ。ニハハハッ」

 

 

 

====================

 

 短く感じられる休日も直ぐに終わりを迎え、今は二人部屋の二段ベットの上で大の字になって寝っ転がってる。同室の奴はとうに夢の中に迷い込んでおりムニャムニャと聞き取れない寝言を言っている。

 俺もこの時間帯はもう寝ているのだが……ちょっと用事を思い出したから用を足しに行くとしよう。

 

 部屋を出て、雲でチラチラと見え隠れする月明かりが指す薄暗い廊下を歩き、トイレの前を通り過ぎて、真夜中の冷たい風を浴びながら昼にあいつらがサッカーもどきをしていた広場の中央に俺のことを見ている連中に分かりやすいように出る。

 

「それで。何の用だ?」

 

 後ろを振り返り、そう言えば扉の方から三人の人影が俺を囲み込むように飛び出してきた。丁度よく雲に隠れていた月明かりが戻り、俺を睨みつけている三人の姿がよく見えた。

 

 一人は筋肉の盛り上がったゴツく八戒よりも大きな体躯をした男。二人目は鋭く目の釣り上り好戦的な笑みを浮かべて金属バットを握りしめている金髪の男。最後の一人は他二人に比べては華奢な体をしており少々、自信なさげで申し訳なさそうな顔つきをしている奴。……三人か。

 

 話しかけようと声を出そうとした瞬間、俺が口を開くよりも早く好戦的な笑みを浮かべていた男がバットを振りかざしていた。

 

「ッオラ!」

 

「誰か呼ばせる前に仕留めようってか。ガキ相手に大人げねーな」

 

 流石に小学生の体で勢いよく振りかざされるバットとを受け止めるのは無理がある。しかし、雑に振りかかってくるバットは簡単に見切れた。避けていると後ろから大柄の男がすごい速さで眼前に迫って腕を振りかぶっていた。

 

 急いで万象儀で防ごうと展開するが、どうにも間に合いそうにない。腕に纏わせガードするがもろに力の影響を受け、俺の軽い体は派手にぶっ飛ばされる。そして飛ばされた先には華奢な男が待っていたかのように此方に手を翳しながら申し訳なさそうな顔をしながら待ち構えていた。

 

 確実になにか仕掛けてくるんだろうがその前にくるりと体を翻し体勢を立て直すと何かを堪えるように目を瞑っている華奢な男の目の前に背中を見せるように止まるとそのまま万象儀で強化した裏拳を振り向きざま喰らわせるた。男からゴキャという生々しい音がした。

 目ぇ瞑んなよ…歯か、鼻逝ったか?どっかから過剰防衛というワードが頭を過ぎたが先に仕掛けてきたのはコイツらだ。俺は悪くないはずだ!たぶん!!

 

 白目を剥き、血を流しながら膝から崩れ落ちて行く仲間を見て驚き呆然とした顔をしている二人に笑いながら話しかける。

 

「いきなり襲いかかって来んなよ。お前らは話の出来ない猿か?」

 

「!っるせぇッ!!」

 

 怒りに滲んだ叫び声をあげながら迫ってくる金髪。

 殴られ少し痛む腕を無視し足に万象儀を纏い力を込めて全身のバネを使えば、大柄な男に距離を詰めることができた。咄嗟に反応した金髪は予想以上の速さで迫ってくる俺に冷や汗を流し焦った表情を浮かべ大柄の男を庇うように飛び出した。逆に大柄な男は足をバッタのような脚に変形させ逃げるように上空に高く跳んだ。

 

 なる程、さっきのスピードはそれが理由か。なんとなくバットを持った金髪に触るのは危ないと直感が叫ぶと、金髪を無視し。俺自身の体を分解し霧状にして避けると、上空に跳び下の様子を伺っているバッタ男の頭上に体を再構成する。

 

 頭上にいる俺の気配を察知した男はすぐさま頭を此方に向き驚いた顔をして掴み落とそうとする。その前に、万象儀を纏ったかかと落としでハエ落とし的な要領で叩き落としてやった。

 

 大きな体をした男が落下する速度以上の速さで落ちれば芝と砂利でできた地面はデカい音を立て地面に沈み地面に亀裂が入る。

 ……なんだか危ない体勢で落とした気がするが死んではないだろ。

 

 俺が突然消えたことと、もう一人の頼りにしていたのだろう仲間があっさりとやられ、涙目になりながらも恐怖を払うように両手でバットを力強く握り直し叫びながらバットを振りかぶってくる。万象儀を纏い今度は試しに殴り返すように振りかぶられるバットと拳を合わせる。すると強い衝撃が俺の腕は弾き飛ばして、お互いに距離が出来る。

 

 しかし、それは向こうも同じなようで弾き飛んだバットを手放した男は衝撃にこまねくように手を振り。此方を見る目は一矢報いてやったと言わんばかりに笑っていた。

 確信したが、今のがコイツの"個性"なんだろう。衝撃を反転させる"個性"さっきまでの隙が多いバットの振りもカウンターをわざとやらせ、自分を殴らせ反転させることが目的なんだ。

 しかし、流石にこの体だと骨にヒビが入り右手の爪が剥がれ鮮血が流れる。やったな〜…右手が使えなくなってしまった。向こうは辛そうに顔を顰めているが両手は健在のようで自分達をこんな目に合わせた俺を今度は力で嬲り殺してやると言わんばかりの殺気の篭った血走った眼光で俺を射抜き距離を詰めていた。

 

 でも知ってるか?左手があるって。まぁ、使わんけど。

 

 体から滲み出る万象儀を右手の掌に集中させ、掌の上に球体のように集めサッカーボールぐらいの大きさまで集め圧縮する。圧縮して、圧縮して、圧縮して、さらに圧縮して、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮。

 

 金髪が目の前に迫っている頃には掌に集めた万象儀は最終的にビー玉ぐらいの大きさまで小さくなった。これ以上やってもいいがこれ以上の大きさにしたら多分、男死ぬ。いやこのサイズでもこの距離なら最悪、死ぬな、やべ。

 

「ウ、ウワータスケテー!」

 

 距離を開けてこれを撃つ為には、わざっとぽく逃げ惑うただの子供の演技しながら距離を開ける必要がある。明らかに罠なのに頭が弱いのか、逃げる俺を見てまんまと勘違いした男はいい気分そうに下品に笑うと俺をゆっくり追いかけてくる。お前、本当に馬鹿だろ。

 

 十分に距離が離れたところで子供っぽく最後の抵抗みたいに圧縮した()()を投げつける。俺と男の中間距離の男よりぐらいのところを見計らい、万象儀を解除すると圧縮され、ギチギチに固められた空気は爆発的に解放され周囲に暴風を撒き散らす。

 

 油断し、爆風に煽られた男は簡単に吹き飛び広場の端っこに設置してあるブランコの鉄柱部分に頭を強くぶつけ白目を巻いて倒れた。当然、軽い俺の体は男よりも簡単に吹き飛ばされ、なんとかして何かに捕まろうとしたが生憎、この庭の芝は短く掴まろうにも掴めなかった。地上か数メートル飛ばされたところで運良くジャングルジムに掴めたので難を逃れたが。

 

 その頃には夜回りをしていた職員が騒ぎに気付いており院全体に警報が鳴り響いていた。直に警察もくるだろう。あ、まて救急車も呼ぼう。やっといてなんだが多分、コイツら死ぬ。

 

 万象儀で怪我をした箇所の細胞を結合し、頬に傷をつけたあと、万象儀を解除すれば綺麗に光る半月の下に消えゆく万象儀の淀みが幻想的に映った。

 その光景とまじまじと黒い波が消えるまで見ると荒れに荒れた広場を眺めると、死ぬ時よりも弱いが、強い倦怠感を覚え思わず尻餅をついてしまう。

 別に荒れた広場を直すのをめんどくさがった訳ではない。

 

 ……やっぱりそうだ。前々から疑問に思っていた事が今の戦いで確信に変わった。()()が落ちてる。それも格段に、100だったものが一気に5近くまで下がったような感覚だ。さっき空気を圧縮させたがイメージしていた威力よりも全然弱かった。それに、ほんの少しだけ行使しただけでもこの疲れ。

 

 はぁ……記憶無くす前の俺、少しぐらい鍛えておけよ…動き辛いたらありゃしねぇ。

 自分で自分に愚痴を零しながら、怠い体に鞭を打ち。転がっている男どもを取り敢えず、集めようと動き始めた。

 

 

 




☆ざっくり人物紹介

・黒籍項羽
 喧嘩でぽっくり逝った我が廻り者の王。目を覚ました次の瞬間…体が縮んでいた!?(黒ずくめの陰謀を感じますネェ…)

・猪八戒
 二足歩行が可能でなおかつ頭の良いハイスペックな豚さん。上記、王のライバル予定。

・やられた三人
 とある人物に雇われたゴロツキさん達。
 これからの出番は既にない。
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