リィンカーネーションに花束を   作:ピーシャラ

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裏切りとエゴイズムと目覚めを


第三束。ハナズオウの花束を

 

 野郎三人衆を警察に引き渡し、俺は日を跨いで警察の方に事情報告に行き、外見が子供だったこともあったのかそこそこ緩い尋問もどきを受けてついさっき孤児院の方に帰ってこれた。

 警報が鳴り、職員の大人達と寝ていたのにも関わらず騒音で叩き起こされた奴らで騒然とする中、駆けつけてきた先生達は、血を流し白目を剥いて倒れている成人男性三人とそれをズルズルと引きずって運んでいる小学生の俺を目撃して、意味が分からないと混乱し、狼狽していたが直ぐに駆けつけた警察が来てくれたお陰で迅速にことが進んだ。

 

 そして、部屋でくつろげると思いベットの上に体を放り投げた途端にまた、呼び出された。今度は白黒のパトカーではなく全身の黒塗りの高級車に乗せられて何も聞かされずどこかに向かわされている。

 

「…なんでだ!?」

 

「大きな声出さないで項羽くん…びっくりするじゃない」

 

 俺の声に反応したのは隣に座っているハナゾノの婆さん院長だ。名前は聞いたことないが、初老の少しシワの多い優しそうな婆さんでいつも、ニコニコして怒ったところを誰も見たことがないと噂される俗にいう仏のような人間だ。

 先日、警報が鳴り皆がパニックになる中この人だけはいつも通りように微笑みながら他の職員に指示を出していたのを見ると長年の経験が滲み出ていた。

 

 ついでに運転しているのは髪の毛がボサボサで目下に深い隈を付けているせいか目付きが悪く見える男が、バックミラー越しにどこに行くか説明をしてくれたが聞いてもよく分からんかったが取り敢えずどっかの役人と話をするらしい。

 話によるとその役人は婆さんと旧知の顔馴染みらしく、会えることが嬉しいのか婆さんの顔はいつもより顔が綻んでるように見えた。

 

 世間話や最近の近況などの他愛のない話をしながら車窓から見える視界に入りきらない程の馬鹿でかいビル群を眺め夕日が沈む頃合いにやっと目的地に着いたのか、車が駐車場に入った。

 

「どうぞこちらです……」

 

 車から降り、気怠げそうな運転手に促され付いていくと周りのビルより一回り大きなビルに案内された。受付を済ませエレベーターに乗り役人さんの居る部屋へと向かう。

 結構な距離を上がった気がする。何階だこれ?200……やめておこ。

 

 廊下の途中、途中で絵画が掛けられてあったがピカソや他の奴らの絵を散々見てきた所為か、単にこの絵が下手な所為なのか分からんが上手いのかが全然分からん。どうでもいいな。

 

「……会長。目良です」

 

「入りなさい」

 

 目的の部屋に着いたらしい。運転手が扉を叩き、会長と言うと中から返事が返され扉が開けられる。中には全面ガラス張りの窓の前に設置され、こげ茶デスクに腰掛けていた……凛とした顔立ちか印象的で背筋も綺麗に伸びている為か若く見えるが、婆さんと同じ歳ぐらいの初老の女性が此方に顔を向けた。すると懐かしむような柔らかな笑みを浮かべると婆さんが少しだけ前に出た。

 

「久しぶりね。みわちゃん!」

 

「久しぶりね、つぼみ。何年ぶりかしら?…でもその呼び方は今やめて頂戴…ちょっと老けたかしら?」

 

「あら!あんたも、おんなじ事言えないわよ。若作りしちゃってね〜」

 

「なに言ってんの!女はいつだって若く見られたいものよ」

 

 ふふふ…と近所で他愛のない世間話でもするように喋る二人は俺と目良を差し置いて昔話に花が咲いたのか楽しそう話始める。なる程、婆さんの名前はつぼみと言うのか覚えておこう。

 その後、昔話に花を咲かした二人に目に見えて不機嫌そうな顔をし始めた目良を何となく慰め、接待用のソファに座って待っていれば話が終わったのか少し恥ずかしそうにした二人が帰ってきた。

 

「ごめんなさいね。おばさん同士が長話しちゃって」

 

「はい。大丈夫ですから、会長はやくあの件を……」

 

「そうね…始めましょうか」

 

 目良の横に座った会長がさっきから持ち歩いていた封筒から何やら資料を取り出し始め、俺と婆さんに配りながら話し始めた。

 

「先日、黒籍くんが敵三名を単独で撃退、捕縛したことから我々、ヒーロー公安委員は黒籍くんにはヒーローとしての素質があると判断しました。今回お越しいただいたのは、黒籍くんを公安で預かり、ヒーローとして育成するのかを検討させていただきたいのです」

 

 …………ヒーローか。

 俺は少し唸る。元々、廻り者の纏め役のようなものを担っていた訳だが現時点で俺以外の廻り者を見たことがない。ハッキリ言って成るつもりもない。しかし、居るかも分からんアイツらのことを探すには情報が足らんし、今の体じゃ不便が過ぎる。

 

「どうでしょうか……」

 

「…………目良、会長。一つ、聞きたい事がある」

 

 なら、コイツらに聞いてみよう。

 

「何かしら、黒籍くん?」

 

「『廻り者』この呼称に何か心当たりはあるか?」

 

「『廻り者』?……………何故、貴方がその呼称を知っているの!!?」

 

 リアクションの大きい会長の叫びを聞いて心の中で笑ってしまった。良いリアクションだ、嫌いじゃないぜ。

 しかし、そうか。今の反応を見るに居るには居るらしいが少し引っかかることがあるな。

 

 何のことか理解が出来ていない二人とは違い、項羽の言った単語の意味を理解している会長は先ほどまでの凛々しく落ち着いた表情を止めていた。驚愕し、嫌な疑問を浮かべるように冷や汗を流し始めるとある物を目に入れてしまった。

 

 

 それは『項羽』自身はは意識してやっていることではなかった。

 項羽の目の中で、さも愉快そうに蠢き歓喜している重瞳共は会長の心の底…髄から、感じたことの無い、恐怖が脳を這い回る悍しい気配を感じ取っていた。

 

 

====================

 

 

「答えなさい……!何故貴方がそのことを知っているの!?」

 

 絶叫を抑えるかのように答えを急かす会長。質問が単刀直入すぎたか?

 

「それはまだ秘密だ。次会った時に話す…。それより喜べ、あんたらの提案、俺は乗ってやるぜ」

 

「ふざけないで!子供とは言え、貴方ような素性の分からない人間を引き取る気はないわ!!」

 

「ちょちょっ!落ち着いてください!!」

 

 冷や汗を流し半狂乱のような状態で俺を責め立てる会長を初めて見たのか驚いたように目良は急いで俺と会長の間に入る。ただならぬ旧友の心情を察知した婆さんも俺を止めに動いていた。

 

「落ち着いてください会長!どうしたって言うんですか!?」

 

「止めないで!彼には聞かなければいけない事があるの!!」

 

「……みわちゃん。落ち着いて、この子に聞きたいことがあるならそのままじゃダメよ。それじゃ子供の時の頃とあまり変わらないじゃない」

 

 目良の静止を押し切ってまで、俺に一種の固定観念を持ちながら詰め寄ってくる会長に今度は婆さんがいつもの落ち着いた声色で声を掛けると、会長も理解したのか落ち着きを取り戻し始めてくれたのか再び話し合いが始まる。

 

「…ごめんなさい。少し取り乱してしまったわ」

 

「いえ、それより…黒籍くん。さっきの言葉はどう言う意味だい?」

 

 目良の反応と顔には出ていないが目だけは観察するように光ってる婆さんを見るからに廻り者はたぶん他の人間は知らないのか、二人とも廻り者について気になっている様子だった。

 

「……会長。話していいのか?あんただけが知っているあたり、この情報は(おおやけ)にはなっていないんだろう?」

 

「………貴方が何者か分かりませんが、大丈夫。……この二人なら話しても問題はないと思ってるわ」

 

「そうか…」

 

 落ち着きを取り戻し先ほどと同じように冷静な顔つきに戻るが何か少しだけ不服そうな雰囲気になった会長に思いついた懸念を問うと話しても問題ないとのこと。と言うか、今の言葉、解釈の仕様によっては脅しじゃねーの。

 

「さて…いきなりだが、俺はこの世界の人間じゃない」

 

「項羽ちゃん。そんなことはいいのよ」

 

「…なんだよ婆さん。盛り上げだろ?」

 

「…….早くしてください」

 

 なんだよ目良まで、そんな事言うなよ。西耶ならワクワクしながら唾飲み込んで聞き入るところだ。大人はドライだな。

 おい、そんな目で見んな。

 

「はぁ…詳しいことは省いて話す。さっきも言った通り、俺はこの世界の人間じゃない。訳わからんと思うが俺の居た世界には"個性"は存在せず、代わりに"才能"と言う"個性"に似た特別な力が世に出回っていた。この力は人間が"輪廻の枝"と呼ばれる特別な枝で自分の首を掻き切ることで手に入る代物だ。自らの首を切った時、切った人間にはとある現象が起こる。"輪廻返り"と呼ばれたその現象は前世の"才能"を呼び覚まし、そして、"輪廻返り"を果たした人間に呼称が付いた。それが、さっき会長に聞いた"廻り者"と呼ばれる存在で俺はその"輪廻返り"を果たした"廻り者"の一人だって訳だ」

 

「「「…………………」」」

 

「俺には昔、志を共にした仲間がいたがある時、喧嘩んなってな、殺し合いをしたよ。ただの憶測だが、多分俺たちは誰かにはめられたんだろうな。結局、訳もわからぬまま死んじまった。そんで次に目が覚めたらこんな体なってたって訳だ…。これが俺の全て」

 

 一気に話し終わると三人ともポカーンと呆けたツラをしていた。まぁ、訳分からんだろうな。この世界最強でさえも最初、訳分からんだから仕方ない。

 

 それからは話が早かった。情報を整理しきれないとパニック状態の二人のために、然るべき人たちと話し合いがしたいとと言う話になり、いったん日を区切ることになり再び話し合いになることになった。俺は監視のために公安委員会お抱えの宿泊施設に泊まることになった。

 

 そして夜、何もない部屋ん中でダラダラとニュースを見ていたら俺が捕まえた野郎三人衆が護送中、何者かに襲われ、逃げられたというニュースが耳の入った。

 

 

 

 

====================

 

 

「まったく…君たちの個性がどれほど使えるのかと思って彼の元に送り出したのに……簡単にやられたら何も分からないじゃないか」

 

 ビル群の密集地に囲まれた、夜特有の街の雑踏も、月明かりも差さないボロボロの廃墟、所々大きな穴が開き夜風が通り抜ける寂れた暗い部屋の中に誰も近寄らない、誰も居ないはずの部屋に複数の人影が月明かりに映っていた。

 

 しかし、数人いる人間は二つの種類があった。片や、綿の飛び出たオンボロの椅子の上でも優雅に座りこなし、退屈で仕方ないと言わんばかりの顔をし、片や地面に膝と手をつき無様に頭を擦り付け、その顔は恐怖と絶望で歪んでいた。

 

「すすす、すいませんッ!あのガキなかなか強くて負けてしまいましたッ!!つ、次こそは貴方様の役にーー」

 

「あぁ、大丈夫だよ。僕が欲しかったのは君たちの"個性"だからね。君たちに期待しているわけじゃないんだ。僕が見たかったのは君たちの"個性"がどれほどの物か見たかっただけさ。……でも見る前に君たちは負けてしまった…」

 

「ーーっ!?そんなッ!!」

 

「だから君たちはもう要らないんだ。ご苦労様、少しは楽しませてもらったよ。…マキアお願いね」

 

「……はい。主の意思の下に…」

 

 主と呼ばれた男が一つ言葉を口にしただけで室内に絶叫と断末魔が響き渡る。血で染められ始めた部屋を眺め、男は椅子から立ち上がり笑みを浮かべていた。

 

「そういえば…弔とあの子を二人きりにさせてしまった……」

 

 少し不安そうに額を軽く掻いた男は、まぁ大丈夫だ…と小さく呟くと掃除を終えた忠実な僕に指示を受け渡すと何処からか忽然と消えてしまった。

 

 何も知らない街の雑踏は更に強まり、暗い闇は深くなるばかりだった。

 

 

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