私は、まどかのいない世界で精一杯生きていた。
そう、まどかに導かれるその日まで。
希望に向かい、走っていたはずだった。
暁美さんは、どこか遠くを見ているみたい。
この世界じゃない、どこか。
それは、やっぱり円環の理なの…?
私は、なにもできない。
魔法少女を救うために概念になったのに。
たった一人の魔法少女さえ、救えない。
永遠の物語と叛逆の物語を繫ぐ、オリジナルストーリー。
これは、私の絶望の記録。
三人の魔法少女によって描かれる、短編ストーリー。
メインの更新を止めてまで書くものではないのですが…。
と、言っても私が思いついた勢いでばーっ、って書いたんで、かなり短いですケド。
まぁ、とにかく…。
今回のお話は、円環になったまどかを欲しがるほむらちゃんのお話です。
愛よ、とか言っちゃう人がまどかがいなくなって耐えられるわけないじゃないですか。
一人だけ記憶持たされて、おかしくならないわけないじゃないですか。
というわけで…今回はそういうお話です。
では、どうぞ!
私は、まどかを手に入れた。
私だけの世界に閉じこもることで、手に入れた。
これでもう、あんな思いはしなくて済む。
あんな、苦痛の日々を…!
-ほむらside-
まどかが概念となり、一年が経過した。
私が身に着けているまどかのリボンも、ずいぶんと汚れてしまった。
まだ、マミも杏子も導かれることなく、元気に魔法少女をしている。
私も…この世界で精一杯生きる、そう決めていたはず。
なのに。
私は、ここ最近、夜になると泣いてしまう。
ふと、思い出してしまう。
今は、神となってしまった、私の最愛の友人。
「まどか…!まどかぁ…!」
私は泣く。
彼女の名前を呼び、唯一残された、リボンを抱きしめ。
情けなく、泣く。
「お願い、返事をしてっ…!」
私は、怖くなっていた。
私の持っている、まどかの記憶は偽物なのかもしれない。
まどかとは、私が私であるために作り出した、偶像なのではないか、と。
このリボンは、まどかのものではないのではないか。
私の苦痛の日々には、意味などなかったのではないか。
私の生きる意味、そんなものは存在しなかったのではないか。
全て、偽物の記憶だったのではないか。
「ずっと、一緒なんでしょ…!?なのに、なのに…!」
「どうして返事をしてくれないの…。私、まどかの声が聞きたい…まどかに触れたいよ…。」
「私の記憶は間違ってないって、教えてよぉ…!」
「まどかっ…!」
いくら私が泣き叫んだとしても、返事はない。
やはり、夢物語だったのか。
まどかは、存在しなかったのか。
そもそも、私の苦痛の記憶すら、偽物だったのか。
なにもかも、嘘だったのか。
「…きっと、そうだ。私、ずっとずっとありもしないものに縋って生きてきたんだ…。」
「笑っちゃうな…あは、あはは…。」
「うぅぅぅ…!」
でも。
「やっぱり、そんなわけないよ…!まどかは、確かにいたんだ…!私に、笑いかけてくれた、まどかは確かに…!」
「まどか…。寂しいよ…会いたいよ…!」
「たとえ、まどかが私のことを大嫌いでもいいから…会いたいよ…一度きりでもいいから…!」
私の哀しみは、いつまでも消えることはない。
この穴は、一生をかけたとしても、埋まることはない。
その時がくるとしたら、私が死ぬときだ。
いつか、会えるその日まで。
私は戦い続ける。
その先に、絶望に染まりきった未来が待っていたとしても。
だって、それしか道はないから。
-マミside-
最近、私と暁美さんはよく一緒に寝ている。
その発端は、ある日のことだった。
「暁美さん、どうしたの?目の下に隈ができてるわよ?」
「あ、えっと…。なんでも、ないから。」
「でも…目、腫れてるわよ?」
「それも、なんでもないから…。」
「…お願い、暁美さん。私が役に立つことなんて滅多にないかもしれないけど…たまには、相談してほしいの。いつも助けられてばっかりだから、たまには私を頼ってほしいわ。」
「…ありがとう。でも、やっぱり…。」
「…そう、わかったわ。じゃあ、なにがあったかは聞かないから…。私と、お泊り会しない?」
「お泊り、会?」
「ええ。隈ができているってことは、よく眠れていないってことでしょう?だったら、私が一緒に、って考えたの。」
私がそう言うと、暁美さんは、はぁー、と息を吐いてこめかみに指を押し付けた。
「…ええ。お泊り会、しましょうか。」
「ふふ、決まり、ね。」
このときの私が暁美さんに抱いていたイメージは、優しい、かっこいい、クール、といったイメージだった。
しかし、この日を境にこのイメージは一変することになる。
それは、夜のことだった。
私は暁美さんより一足早く、まどろんでいたのだが、暁美さんの泣き声で目が冴えてしまった。
「…ぐすっ…うぅぅ…。」
暁美さんは、普段身に着けているリボンを大事そうに抱き、声を押し殺して泣いていた。
その姿は、とても切なさを感じさせた。
「暁美、さん…?」
「ま、マミっ…?」
私が声を掛けると、暁美さんはびっくりしたように、目を見開く。
「あ、あの…なんでも、ないから…!」
暁美さんはそう言うと、私に背を向けてしまった。
私は、なにもできないのか。
目の前で泣いている暁美さんがいるのに、慰めること一つもできないのか。
そう思うと、私はすぐに行動に移していた。
「ま、マミ…!?なに、してるのっ…?」
そう、抱きしめたのだ。暁美さんを。
暁美さんの身体は細く、すべすべしていた。
「…泣いて、いたから。きっと、悲しいんじゃないかなって。そう、思ったから。」
「…酷いよ…。私、この気持ちは誰にも話さないで、抱え込むつもりだったのに…。」
「話してほしい…私ならなにか、できるかもしれない。」
「うん…。」
このときからだろうか、暁美さんのイメージが変わっていったのは。
「私が前に話した、まどかのことは覚えてる?」
「ええ。確か、魔法少女を救うために円環の理になった、そのリボンの持ち主よね。」
「そうよ。…最近ね、本当にまどかがいたのかって、不安になるの…。」
「まどかなんて本当はいなくて、私が勝手に作り出した欲望だとか、理想の塊なんじゃないかって…。」
「でも、そんなことないと思うわ。私は、まどかさんは本当に…」
「だって…だって…!まどかのことを覚えているのは、私だけなのよ!?」
「もう、誰も覚えてない…家族でさえ、覚えてない…。」
「まどかがいたっていう証拠は、リボンだけ…。」
「でも、このリボンもまどかのじゃないとしたら?」
「…私は、孤独なのよ…たった一人、この世界の真相を教えられて、神の正体を知って…。」
「誰にも共感されない記憶をもって、苦しまなきゃいけないの…。」
「…暁美さん…。」
「もう、嫌なのよ…。こんな気持ちになるのは…。」
「全部全部、忘れてしまいたい…!まどかのことも、私の、苦痛の記憶も…!」
「もう、なにも失いたくない…まどかも、さやかも、あなた達も…!」
「大丈夫よ、暁美さん…。私はここにいる、あなたの味方よ…。」
「まどか…まどかぁ…!」
私は、まどかという人物が羨ましかった。
暁美さんに、あそこまで慕われ、憧れられ、愛され…。
その感情をまどかという人に向けていることが、妬ましい。
そして、同時に憎くもあった。
暁美さんを、苦しめ、縛り付け、哀しませる、全ての元凶。
とにかく、憎かった。殺してしまいたいくらいに。
そして、私は嫌だった。そんな我が儘な邪神に導かれるのが。
ならば、私は生きてみせる。暁美さんと、佐倉さんと。
円環の理なぞに、負けてたまるものか。
そう、誓ったのだ。
-まどかside-
最近、私はよく、ほむらちゃんを見ています。
過去、未来、全てを見通すことができるようになった今、見通すことができないものが一つだけあります。
それが、ほむらちゃん。
なぜか、見ることができないのです。
だから、どんなことをするのか、なにをしたいのか、全てがわかりません。
だから、なのでしょうか。
とても気になるのです。ほむらちゃんが。
私は、ほむらちゃんの笑った顔が見たかったのです。
ただ、ほむらちゃんに楽しんでほしかったのです。
それだけで、よかったのに。
毎晩、ほむらちゃんは泣いていました。
私の名前を、リボンを…。
その時、私はわかったのです。
自分が、ほむらちゃんにどれだけの試練を与えたのかを。
世界で、私のことを覚えているのはほむらちゃんただ一人。
私の我が儘で、渡したあのリボン。
この二つが、大きな重しとなっていることに、今まで気がつかなったのです。
ほむらちゃんは、手を伸ばして、私の名前を呼びます。
そして、返事をして、と弱々しく叫ぶのです。
私は、ほむらちゃん、ここにいるよ、と言うのですが、届くことはありません。
私も手を伸ばし、ほむらちゃんの手を握ろうとしましたが、握ることはできません。
ほむらちゃんはこう言うのです。
私の記憶が正しいって証明してよ、と。
私は何度も何度も、間違ってなんてないよ、私の為に頑張ってきたあの記憶は、本物だよ、と言うのです。
しかし。
届くことはありません。
すぐ、目と鼻の先にほむらちゃんはいるのに、その間には、銀河一つ分の距離があったのです。
そして、こう言うのです。
寂しい、会いたい、と。
でも、私にはなにもできません。
全ての魔法少女を救うために、概念になったというのに、目の前の魔法少女一人も救えないなんて。
私は、一体何をしているんだろう。
大切な人一人も救えないなら、概念になんてなるんじゃなかった。
そんなふうに思ってしまうときがあるのです。
もちろん、今更放り出すわけにはいかないのですが…。
私は…。
最近は、マミさんが羨ましいのです。
なぜなら、一緒に寝て、ほむらちゃんを慰めているからです。
できることなら、私が代わりたい。
いや、本来なら私がそこにいなければならないのです。
でも、今私は概念なのです。
覚悟したはずなのに。
もう、誰も私に干渉できないことを知っていたのに。
これほどまでに、人間に戻りたいと思うなんて。
…そもそも、心に甘えがあったのです。
せめて、大好きなほむらちゃんには、忘れてほしくない。
私のことを大好きでいてほしい。
忘れないでほしい。
そんな甘えが、今、こうしてほむらちゃんを苦しめているのです。
なんてことをしてしまったのか。
ほむらちゃんを救いたい、でも…。
私には、なにもできない。
無力。
私は、無力。
たった一人、救えない神なんて、神じゃない。
ただの、出来損ないだ。
私は、なんのために魔法少女になったの?
ほむらちゃんを悲しませてまで、私はなにがしたかったの?
魔法少女を救う、その大義は何処にいったの?
全ての魔法少女を救うんじゃ、なかったの?
じゃあ、ここにいるほむらちゃんはいつまで苦しまなきゃいけないの?
私は、いつほむらちゃんを救えるの?
その答えがわかる日は、私にはこない。
だって、ほむらちゃんを救うときは、ほむらちゃんを殺すのと同じことだから。
私は、なにもできない。
-ほむらside-
あれから、半年が経っていた。
私は、ソウルジェムが穢れていくのをひしひしと感じていた。
もう、限界が近いこと、そうわかっていた。
苦しい、それと同時に嬉しくもあった。
まどかに会える。
そう、会えるのだ。
私が、今か今かと待ち望んだ、その時が近いのだ。
私にはもう、なにも残っていない。
そう、なにもかも。
全てを、喪った。
残るものは、絶望だけ。
「…誰か…助けて…。」
苦しい。
「誰かっ…!」
哀しい。
「助けてよ…!」
絶望。全てが。
「もう、私から奪わないでっ…!」
喪失。
「まどか…さやか…マミ…杏子…!」
「助けて…!」
そして、ソウルジェムが濁り切る、その時だった。
『この時を待っていたよ、暁美ほむら。』
不意に、インキュベーターの声。
『やっと濁り切ってくれたね。』
「なにをするつもりっ…!?」
『簡単さ、ソウルジェムを円環の理から干渉できないようにし、魔女を生み出す。それが目的だよ。』
魔女を、生み出す…?
『君の話してくれたことは、実に興味深かった。もし、その話が本当ならば、エネルギー効率が跳ね上がるだろうからね。』
『君のおかげだよ。ありがとう。』
『そして、君には実験体一号になってもらうよ。』
私はまた、まどかに会うことはできなかった。
私が救われることなど、ありえなかったのだ。
物語は叛逆へ…。
はい、いかがでしたか?
こんなふうに叛逆に繋がってくと思うんですよね…。
え、さやかと杏子?
円環されちゃったから、ね?
…杏子は出しにくいだけです。
はい、ここまでにして…。
ほむらって、とことん可哀想ですよね。
製作者から嫌われてんじゃないかって思うくらいに、不幸な目にあわされてますよね…。
いつになったら救われるんでしょうか。
神浜のほむらちゃんだけですよ、救われたの。
あとのほむらちゃん、皆叛逆しちゃいますよ?
裂いちゃいますよ?いいんですか?
いい加減にルミナスさせてあげてください。
では。
…頑張って、更新します。はい。