前回の投稿から随分と間が空いてしまい、申し訳ありません。
更新をお待ちくださっていた皆様、本当にありがとうございます!
さて、今回はいよいよ赤龍帝と白龍皇、二天龍の激突です!
これまで修行を重ねてきたイッセーが、強敵ヴァーリを相手にどこまで戦えるのか。
そして、この戦いが彼に何をもたらすのか……。
それでは、Life.43『二天龍です!激突です!覚醒です!』をお楽しみください!
side in イッセー
……いや、待て待て待て!
カテレアが倒されて、ようやく一段落ついたと思ったら、今度はヴァーリが俺と話したいだと!?
しかも、同じ二天龍の宿主としてって……
なんだよ、もう! こっちはギャスパーを助けたばかりだし、オシュトルのとんでもない戦いまで見せられたんだぞ!?
少しぐらい休ませてくれよ!
「……ヴァーリ、お前なぁ」
アザゼルのおっさんが呆れたように口を開いた。
「今度は何をするつもりだ?」
「言っただろう? 少し話をするだけさ」
「お前の場合、その『少し』が信用ならねぇんだよ」
……同感です、おっさん!
そのとき、オシュトルが部長とギャスパーの傍へ歩み寄った。
「……リアス殿、ギャスパー殿。お二人はこちらへ」
「オシュトル?」
「ヴァーリのことです。話だけで終わるとは限りませぬ。念のため、距離を取っておいたほうがよろしいかと」
……おいおい!
ハクまでそう思ってるのかよ!?
「でも、イッセーが……」
部長が俺のほうを見る。
「ご安心を。某も傍で見ております。何かあれば、すぐに動きましょう」
「……分かったわ」
「ぼ、僕も行ったほうがいいですよね……?」
「うむ。ギャスパー殿もこちらへ」
ギャスパーが部長の後ろへ回り、オシュトルは二人を伴って俺たちから距離を取った。
部長は何度かこちらを振り返っていたけど、オシュトルが傍にいてくれるなら心配はいらねぇだろう。
……いや、部長! そんな不安そうな顔をされたら、こっちまで緊張してくるんですけど!?
「そんなに警戒するなよ。俺は前から赤龍帝に興味があったんだ」
ヴァーリが俺へ視線を向ける。
「特に、お前がどこまで強くなるのかについてはな」
「……だったら、前に話しただろ? 俺はもっと強くなるって」
「ああ、覚えている。だからこそ、少し気になったことがあるんだ」
……気になったこと?
「俺とお前は、同じ二天龍の宿主だ。だが、生まれも育ちも随分違う」
ヴァーリは自身の胸元に手を当てた。
「俺には先代ルシファーの血が流れている。そして、白龍皇アルビオンの力を宿している」
……そうだよなぁ。
さっき本人から聞かされたばかりだけど、改めて考えても、とんでもない組み合わせだぜ。
「一方、お前は違う」
「……俺?」
「ああ。お前のことは少し調べた」
……調べた!?
おいおい、いつの間に!?
「父親は普通のサラリーマン。母親は専業主婦で、時折パートにも出ている。両親の血筋についても調べたが、特別な魔術師や悪魔の系譜は確認されていない」
「……まあ、そうだけどさ」
父さんは毎日仕事を頑張ってるし、母さんだっていつも俺たちのために色々してくれている。
俺にとっては最高の両親だ。
……けど、そんなところまで調べられてるのかよ!?
「血筋だけを見れば、ごく普通の人間だな」
「普通で悪かったな!」
「悪いとは言っていない。調べた事実を述べているだけだ」
……むむっ……
なんか調子が狂うな。
さっきまで散々『残念な宿主』だなんて言ってたくせに、今は本当に調査結果を読み上げているみたいだ。
「もっとも、お前自身の経歴は少々変わっているが」
「……へ?」
「幼い頃から大神家と交流があり、その道場で武術を学んでいる。悪魔に転生する以前から、普通の高校生とは異なる鍛錬を積んできたようだな」
……おおっ!?
ハクの家のことまで知ってるのか!?
「友人関係も興味深い。普通の高校生なら関わることのない人物たちが、お前の周囲にはいる」
「……まあ、そうだな」
ハクにクオン、
……いや、こうして考えると、俺の周りって確かに普通じゃない奴が多いな!?
「つまり、お前の血筋は平凡でも、育った環境は決して平凡ではない。そして、そのお前に赤龍帝ドライグが宿った」
『……ふむ。間違ってはいないな、相棒』
左腕の籠手からドライグの声が響く。
……お前まで納得するなよ!
「それで、そんなことを調べて何が言いたいんだ?」
「そうだな。お前が何を求めて強くなろうとしているのか、それを知りたかったんだ」
「……何を求めて?」
「ああ。そういえば、お前はさっきの会談で三つの夢を語っていたな」
「……ああ、言ったけど?」
……そういや、みんなの前で言っちまったんだよなぁ。
あのときは真剣だったけど、改めて思い返すとちょっと恥ずかしいぜ。
「友達や仲間、それから好きな人と、できるだけ長く一緒にいたい」
ヴァーリが指を一本立てる。
「いつか、本気を出したハクに勝ちたい」
二本目の指が立った。
「そして、女の子にモテたい」
「最後のまで言うんじゃねぇよ!?」
いや! 確かに言ったけどさ!
改めて人の口から聞かされると恥ずかしいんだよ!
「別に隠すことでもないだろう? お前が自分で語った夢だ」
「そりゃそうだけどよ!」
「ふむ。なかなか興味深い夢だな」
「……そうか?」
「ああ。特に二つ目は理解できる。強い相手に勝ちたいという願いは、俺にもよく分かるからな」
ヴァーリの口元に僅かな笑みが浮かぶ。
「お前は幼い頃からハクの強さを知っている。それでも、いつか勝ちたいと思っているんだろう?」
「……ああ」
俺は頷いた。
「今の俺じゃ、まだまだ勝てねぇと思うけどさ。それでも、いつかあいつに本気を出させて、そのうえで勝ってやりたいんだ」
「なるほど。そこは俺と似ているな」
「……そうか?」
「ああ。強い相手がいるからこそ、自分もさらに強くなりたいと思う。違うか?」
「……まあな」
そこは否定できない。
ハクがいなかったら、俺だってここまで修行を続けてこなかったかもしれないしな。
「だが、俺が一番気になったのは、一つ目の夢なんだ」
「……一つ目?」
「ああ。友人や仲間、好きな人たちと、できるだけ長く一緒にいたいという夢だ」
ヴァーリは静かに続ける。
「お前にとっては、強くなることそのものより、皆と過ごす日々のほうが大切なのか?」
「……そうだな」
俺は少し考えてから頷いた。
「強くはなりたいぜ? ハクにも勝ちたいし、もっと色んなことができるようになりたい。でも、それだけじゃねぇんだ」
父さんや母さんと飯を食ったり、ハクやクオンとくだらない話をしたり、部長やアーシア、みんなと一緒に過ごしたり。
そんな当たり前の日々が、これからも続いてほしい。
「俺はさ、みんなと一緒に笑ってられる時間が好きなんだよ」
「……そうか」
「だから、もっと強くなりたいんだ。みんなとこれからも一緒にいられるようにな」
ヴァーリは静かに頷いた。
「なら、一つ事実を伝えよう」
「……事実?」
「ああ。三勢力は和平の方針で合意した。これによって、今後は表立った三勢力間の争いがなくなるかもしれない」
……まあ、そうだよな。
それが今回の会談の目的だったんだから。
「けれど、それが君の仲間や友人、大切な人を護ってくれるとは限らない」
「…………」
「現に、和平の話がまとまった直後に、この襲撃が起きた」
……っ!
確かにそうだ。
ギャスパーは攫われたし、学校だって襲われた。
俺と部長がギャスパーを助けに行って、オシュトルがカテレアを倒したから、今こうしていられる。
和平の話がまとまったからって、襲ってくる奴らまでいなくなるわけじゃないんだ。
「なら、誰が護る?」
ヴァーリが真っ直ぐに俺を見据える。
「……君だ」
その声は、驚くほど静かだった。
「君だけなんだよ、兵藤一誠」
「……俺、だけ?」
「ああ。お前が大切に思う者を、自分自身の手で護りたいと願うのならな」
…………
「例えば、リアス・グレモリーの
「……朱乃の?」
何でここで朱乃の名前が出てくるんだ?
「彼女がまだ幼かった頃、姫島家の本家から命を狙われたことがある。母親の朱璃も同様にだ」
……あの事件か。
「当時、父親のバラキエルは外出していた。彼は堕天使の幹部であり、強大な力を持っている。だが、その場にいなければ、いくら強くても家族を護ることはできない」
「…………」
「幸い、朱璃はその場に居合わせた女性に護られ、朱乃もまた、一人の少年によって救われた」
……そうだ。
あの日、俺はハクの家で修行してたんだよな。
それから家まで送ってもらって、俺が帰ったあとに、あんなことが起きたんだ。
朱璃さんを護ったのはハクの母さんで、朱乃を助けたのはハクだった。
「もし、あの場に二人がいなかったら?」
「……っ!」
「朱乃と朱璃が無事だった保証はない。そうだろう?」
……それは……
答えられなかった。
「だが、実際には二人がいた。だから朱乃も朱璃も助かった。今も家族と共に暮らしていられる」
ヴァーリはそこで一度言葉を切った。
「護る力を持つ者が、その場にいたかどうか。それだけで結果は大きく変わるんだ」
「…………」
……分かる。
分かるぜ、その話は。
俺だって、今回ギャスパーのところへ行かなかったらと思うと、ぞっとする。
もちろん部長も一緒だったし、みんなが力を貸してくれた。
それでも、あの場で俺たちが何もしなかったら、ギャスパーを助けられたかどうか……
「もっとも、俺の家の場合は少し事情が違うがな」
「……お前の家?」
「ああ。アザゼルの家だ」
ヴァーリはアザゼルのおっさんへ視線を向けた。
「幸い、あの家にはアザゼルがいる。あいつ自身が強大な力を持っているうえ、グリゴリによる保護もある」
……まあ、そりゃそうだよな。
何しろ堕天使の総督だ。
あのおっさん自身も強いし、グリゴリには他にも強い奴らがいるはずだ。
「だから、俺がグリゴリを抜けたとしても、家族の安全については安心していられる」
「……おい、ヴァーリ」
アザゼルのおっさんが僅かに眉を寄せた。
「お前なぁ……」
「俺一人がいなくなったからといって、あの家を護る力が失われるわけじゃない。そうだろう、アザゼル?」
「……それとこれとは別の話だろうが」
おっさんが苦々しい顔をする。
「お前がいなくなっても、家を護る力は残る。そりゃあそうだ。だがな……」
「分かっている。
ヴァーリの口調は、相変わらず落ち着いていた。
「戦うなら、ちゃんと帰る。それは守るつもりだ」
「…………」
アザゼルのおっさんは何も言わなかった。
……けど、その表情は険しいままだ。
そりゃ、そうだよな。
あのおっさんにとって、ヴァーリだって家族なんだ。
家を護れるからって、こいつがいなくなって平気なわけじゃないんだろう。
「だが、兵藤一誠。お前の場合はどうだ?」
「……俺?」
「ああ。お前には頼れる仲間がいる。強い友人もいる。けれど、そいつらがいつでもお前の大切な人たちのそばにいるとは限らない」
「…………」
「お前の周囲には強い者が多い。それは俺も知っている。だが、誰もが常にお前と共にいられるわけではないだろう?」
……ああ。
それは、そうだ。
ハクにだって、ハク自身の生活がある。
クオンだって、朱乃だって、みんな同じだ。
「大切な者が危険に晒されたとき、他の誰かが必ず助けに来てくれるとは限らない」
ヴァーリは俺の左腕へ視線を向けた。
「だからこそ、お前自身が強くなる必要があるんだ」
……力……
俺は思わず、左腕の籠手へ目を落とした。
そこには赤龍帝ドライグの力が宿っている。
けど、こいつを持っているだけじゃ駄目なんだ。
……そういえば、ハクも昔、同じようなことを言ってたよな。
俺が初めて道場で修行したときだ。
あいつは、何かあったときに自分で身を守れるようになってほしいって言ってくれた。
……ああ、そうか。
あのときは自分の身を守ることだったけど、今は俺にも護りたい人たちがいる。
そして、そのために強くなりたいって、俺はもう決めている。
「……言われなくても分かってるよ」
俺は左の拳を握りしめた。
「俺だって、まだまだ強くならなきゃいけねぇってことぐらいはな」
「……そうか」
ヴァーリが小さく笑った。
「なら、話は早い」
「……ん?」
「俺はお前が、どこまで強くなれるのか興味がある」
白龍皇の視線が真っ直ぐに俺へ向けられた。
「そして、お前がその夢を叶えるために、どれほどの力を引き出せるのかもな」
……こいつ……
さっきまで俺のことを残念な宿主だなんて言ってたくせに。
けど、今のこいつはからかってるわけじゃなさそうだ。
両親のことだって、悪く言われたわけじゃない。
ただ、調べたことと、自分が考えていることを淡々と話しているだけなんだ。
……それにしても……
和平の方針で合意したからって、みんなが絶対に安全になるわけじゃない。
そんなの、言われなくたって分かってるつもりだった。
今回だって、一人じゃギャスパーを助けられなかった。部長がいて、みんなが力を貸してくれたから助けられたんだ。
でも、それと同時に――
俺自身がもっと強ければ、護れるものだって増えるはずだ。
そうだ。
そんなこと、ずっと前からハクに教わってたじゃねぇか。
俺は改めて、ヴァーリを見据えた。
「……言いたいことは分かったぜ、ヴァーリ」
「そうか。だが、兵藤一誠。もう一つ考えてみろ」
「……何だよ、まだあるのか?」
「ああ。お前は大切な者たちと、できるだけ長く一緒にいたいと言ったな」
「……それがどうした?」
「ならば忘れるな。今回のように、己の計画を成功させるためなら倫理も容赦も捨てる連中が、この世界には存在するということを」
……っ!
確かに、ギャスパーを攫い、その神器を利用して会談を潰そうとした奴らは、そういう連中だった。
けど……!
「……お前だって、あいつらに情報を流してたんじゃねぇのかよ」
「ああ」
ヴァーリはあっさり頷いた。
「だからこそ、奴らがどういう連中か分かる。目的のためなら他人の犠牲も厭わない連中だ」
「……だったら、何で協力なんかしたんだよ」
「俺が求めているものと、奴らが求めているものは違う。だが、利害が一致する部分はあった。それだけさ」
「……それだけって、お前なぁ!」
こいつ、本当に何を考えてるんだよ!?
ギャスパーは実際に攫われたんだぞ!?
なのに、ヴァーリは俺の怒りを気にする様子もなく、静かに続けた。
「例えば、そうした連中がお前の両親を殺し、グレモリー眷属を滅ぼそうとしたらどうする?」
「…………は?」
……今、何て言った?
「お前の父親も母親も、ただ巻き込まれただけで命を奪われる。リアス・グレモリーも、その眷属も、敵の目的を果たすためだけに殺されるかもしれない」
「……おい、ヴァーリ」
気づけば、俺の声は低くなっていた。
「それ以上、俺の家族や仲間をそんなふうに言うんじゃねぇ」
だが、ヴァーリは表情を変えなかった。
「想像したか、兵藤一誠?」
「……っ!」
「お前が護りたいと願う日常を、理不尽な力で奪われる瞬間を」
父さんと母さんが殺される?
部長やアーシア、朱乃、祐斗たちまで……?
そんなの、想像したくもねぇ!
なのに、考えれば考えるほど、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。
「……ヴァーリ、てめえ」
アザゼルのおっさんが険しい顔で口を開いた。
「そこまでにしとけ」
しかし、ヴァーリは止まらない。
「怒っているな」
「……当たり前だろうが!」
「なら、その怒りを力に変えろ」
「……あ?」
ヴァーリが俺を真っ直ぐに見据える。
「お前には赤龍帝の力がある。幼い頃から積み重ねてきた鍛錬もある。護りたいものがあるのなら、その全てを使ってみせろ」
「…………」
「そして――」
その口元に、笑みが浮かんだ。
「それをした相手を、俺だと思え」
――ドクンッ!!
心臓が大きく脈打った。
「……てめえ」
「お前の大切なものを奪った敵が、目の前にいると思え。そして、そいつを倒さなければ護れないのだとしたら?」
……っ!!
こいつが本当にそんなことをしたわけじゃねぇ。それぐらい分かってる。
けど、父さんや母さん、みんなが殺されるところを想像させられて、平気でいられるわけがねぇだろうが!
「――ふざけんなッ!!」
俺は左腕の籠手を構えた!
『相棒!』
ドライグの声が響く。
『その怒りに呑まれるな! 相手はアルビオンの宿主だぞ!』
「……分かってる!」
俺はヴァーリを睨みつけた。
「……お前、最初からこれが狙いだったのかよ!」
「さあ、どうだろうな」
ヴァーリは楽しそうに笑った。
「だが、いい目になったじゃないか」
その瞬間、白龍皇の身体から凄まじい魔力が膨れ上がった!
――ゾクッ!
全身に悪寒が走る。
……くそっ!
こいつは今も、白龍皇の鎧を纏っている。顔を覆うマスクだけを兜に収納して素顔を見せているが、あの白銀の装甲から伝わってくる力は半端じゃねぇ!
だったら、俺も――!
「――
『
――カッ!!
左腕の籠手から真紅の光が迸る!
展開された装甲が腕から肩、胸、そして全身へと組み上がり、瞬く間に俺の身体を覆っていく!
赤龍帝の全身鎧!
……よしっ!
全身を巡るドラゴンの力は、いつもどおりだ。ハクとの修行で散々扱ってきた力なんだからな!
ヴァーリの笑みが深まった。
「ハハハッ! そうだ、それでいい!」
「……いいぜ、ヴァーリ!」
俺は左の拳を握りしめた。
「俺が今まで、どれだけ修行してきたと思ってやがる! 大切な奴らを護りたいって気持ちが、口先だけじゃねぇってことを――」
両脚に力を込める。
「――見せてやるよッ!!」
――ドンッ!!
俺は地面を蹴った!
真紅の鎧を纏った身体が、白銀の龍皇へ向かって一気に加速する!
「ハハハッ! 来い、兵藤一誠!」
ヴァーリが心底楽しそうに笑った。
「――うおおおおおおおッ!!」
全力で踏み込んだ俺の左拳が、ヴァーリへ向かって一直線に繰り出された!
――ガァァンッ!!
「なっ!?」
俺の左拳が、ヴァーリの右腕に受け止められた。
……おいおい!
今の、かなり力を込めたんだぞ!?
それを右腕一本で防ぐのかよ!
「ふむ……」
ヴァーリが自分の右腕へ視線を落とす。
「なるほど。確かに、ただの赤龍帝ではないようだな」
「……そりゃどうも!」
俺はすかさず右脚を振り上げた。
だが、ヴァーリは軽く身を引いただけで、その蹴りを躱してしまう。
「くそっ!」
「いい動きだ。だが、まだ甘い」
蹴りを躱したヴァーリが、一気に間合いを詰めてきた。
「っ!?」
避けるより早く、奴の左の掌が俺の胸元に触れた。
『
「うおっ!?」
突然、身体の中から力が抜けていくような感覚に襲われた。
……何だ!?
何が起きた!?
『相棒! 距離を取れ!』
「ドライグ!?」
『奴の半減だ! 触れた相手の力を半分にし、奪った分を自分のものにする!』
「はぁっ!?」
……ちょっと待て!
こっちは力を倍加できるってのに、向こうは半分にして奪えるのかよ!?
何だよ、その反則みたいな能力!
「理解したようだな」
ヴァーリが小さく笑った。
「倍加と半減。俺たち二天龍の力は、正反対の性質を持っている」
「……っ!」
「さて、お前はどうする?」
こいつ……!
余裕ぶっこきやがって!
だが、何も考えずに殴りかかっても、また力を奪われるだけだ。
それなら……!
「だったら、触らせなきゃいいんだろうが!」
俺は後方へ跳び、奴との距離を取った。
左腕の籠手へ意識を集中させる。
『
宝玉が輝き、全身に力が巡る。
俺はその力を制御しながら、右手を前へ突き出した。
「こいつならどうだ!」
ヴァーリが翼を広げ、上空へ飛び上がった。
俺はその姿を追い、右手を空へ向ける。
手の先に氣を練り上げる。
身体の中で巡らせた力を、ひとつに纏めて――
「――ドラゴンショットッ!!」
真紅の氣弾が、ヴァーリへ向かって一直線に放たれた!
「ほう!」
俺も翼を広げ、地面を蹴って飛び上がる。
「逃がすかよ!」
ヴァーリが飛来する氣弾を避けようと、身体を捻った。
だが、完全には躱しきれず、氣弾が白銀の肩装甲を掠めた。
その瞬間――
――ドガァァンッ!!
氣弾が炸裂し、空中で大爆発が起こった。
白い煙が一気に広がり、ヴァーリの姿が見えなくなる。
「……どうだ!?」
手応えは……分かんねぇ!
けど、あの爆発を間近で浴びて、無傷ってことはないだろ!
『相棒、油断するな!』
「っ!」
煙の向こうにあったヴァーリの氣配が、不意に動いた。
……速い!?
慌てて周囲を見回す。
前か?
右か!?
違う!
『後ろだ!』
「なっ!?」
「――そこだ」
背後から声が響いた。
振り返ろうとした、その瞬間――
――ドゴォンッ!!
「があああっ!?」
凄まじい蹴りが、俺の脇腹へ突き刺さった!
……いっ!?
痛ってぇぇぇ!!
鎧の上からだぞ!?
何だよ、この威力!!
俺の身体が勢いよく吹き飛ばされる。
「ぐっ……うおおおっ!!」
翼を広げ、何とか空中で体勢を立て直そうとした。
だが、勢いを殺しきれない!
――ズガァァンッ!!
俺は地面へ叩きつけられ、そのまま土煙を巻き上げながら転がった。
「ぐっ……!」
くそっ……!
めちゃくちゃ痛ぇ……!
何とか地面に手を突き、身体を起こす。
……あれ?
顔を上げた先に、部長たちの姿があった。
「イッセー!」
部長の声だ。
すぐそばにはギャスパーがいて、その二人の前にオシュトルが立っている。
……おいおい!
俺、あいつらのいる方へ吹き飛ばされたのか!?
オシュトルがこちらを見ている。
動こうと思えば、いつでも動けるんだろう。
……ったく……
ハクの奴、あの格好になると本当に頼もしいな。
けど……
もし、ここにオシュトルがいなかったら?
もし、俺がもっと勢いよく吹き飛ばされていたら?
……っ!
嫌な想像が頭を過ぎった。
部長もギャスパーも、俺たちの戦いに巻き込まれるかもしれなかった。
もちろん、ヴァーリが二人を狙ったわけじゃない。
そんなことは分かってる。
だけど、戦いってのはそういうものなんだ。
俺がどれだけ気をつけていても、力が足りなければ守れないことがある。
「……くそっ」
俺は立ち上がった。
脇腹がズキズキ痛みやがる。
それでも、まだ戦える。
「……ヴァーリ!」
顔を上げる。
爆煙が晴れた空には、白銀の鎧を纏ったヴァーリがいた。
奴はゆっくりと翼を動かしながら、こちらを見下ろしている。
「気に食わないか?」
「……ああ?」
「守りたい者がいるというのに、自分の力が足りず、その者たちを危険に晒してしまう。そんな未来が」
「……てめぇ、何が言いてぇんだよ」
「先ほど、お前は俺に言っただろう。大切な者たちを護るために、もっと強くなりたいと」
……ああ。
言ったよ。
けど、今の俺は、こいつの蹴り一発でここまで吹き飛ばされた。
もしオシュトルがいなかったら、部長たちを危険に巻き込んでいたかもしれねぇ。
……こんなの、気に食わねぇに決まってるだろ!
「なら、否定してみせろ。そんな理屈も、そんな未来も」
「……っ!」
白龍皇の声が、空から降ってくる。
……ああ。
そうだよな。
俺だって、それぐらいは分かってる。
今までずっと、ハクに教わってきたんだからな。
強くなるために、毎日修行してきた。
痛い目に遭ったことなんて、一度や二度じゃない。
それでも続けてきたのは、何でだ?
……決まってる。
部長とアーシアの笑顔が浮かんだ。
朱乃、祐斗、ゼノヴィア、ギャスパー。
父さんと母さんも。
そして、ずっと一緒に修行してきたハクも。
みんなと、これからも笑っていたいからだ。
当たり前の毎日を、当たり前のまま続けたいからだ。
……だったら!
「ならば、その未来を守るために……その拳で貫いてみせろ、兵藤一誠」
ヴァーリが上空で構えを取った。
まるで、俺がどう答えるのかを待っているみたいだった。
……こいつ……
どこまで戦うことしか考えてねぇんだよ。
けど、今はそれでいい。
こいつに勝てるかどうかなんて、まだ分かんねぇ。
それでも、ここで立ち止まるわけにはいかない。
強い奴が現れたら?
理不尽な力で、俺の大切な人たちが脅かされたら?
そんなもの――
俺が止めてやる!
どんなに相手が強くたって、何度でも立ち上がってやる!
俺はヴァーリを真っ直ぐに見上げ、両拳を握り締めた。
「俺が守るって決めたんだ!」
身体の奥から、熱いものが込み上げてくる。
「絶対に守り抜いてやる!!」
その瞬間だった。
――カチンッ
「……ん?」
胸の奥で、何かが噛み合ったような感覚がした。
いや、胸じゃない。もっと深い場所だ。
俺自身の内側にある、何かが。
――カチンッ
もう一度、音が響く。
次々と何かが繋がっていくような、不思議な感覚だった。
そして――
――ドクンッ!!
「っ!?」
心臓が大きく脈打った。
全身を熱いものが駆け巡る。
……何だ?
何が起きたんだ?
痛みはない。それどころか、さっきまで重かった身体が妙に軽い。
今まで噛み合っていなかった歯車が、全部ぴったり嵌まったような……
『…………』
「ドライグ?」
返事がない。
「おい、ドライグ?」
『…………そういうことか』
「は?」
『……ようやく理解したぞ、相棒』
ドライグの声が、いつもより低く響いた。
「何をだよ?」
『俺と、お前に起きたことだ』
「……俺と、お前?」
『ああ。お前の魂が、これまでとは全く異なる領域へ到達した。そして、神器で繋がっている俺自身も、その変化を受けている』
「……魂?」
『そうだ。俺たちは、もはや以前と同じ存在ではない』
……おいおい!
何だよ、その大げさな言い方!
「ちょ、ちょっと待て! 俺たちって、お前もなのか!?」
『ああ。俺自身に何が起きたのかは理解している。だが、どうしてこんな変化が起きたのか、その原因までは分からん』
「……マジかよ」
『マジだ』
……ドライグが分からねぇって、何が起きてんだよ!?
「なあ、ちゃんと説明してくれよ!」
『詳しい話は、この戦いが終わってからだ。ただし、相棒。一つだけ覚えておけ』
「……何だ?」
『お前の内側には、今までとは比較にならん力がある。だが、身体まで同じように変わったわけではない』
「……つまり?」
『その全てを無理に解放すれば、今のお前の肉体では耐えられんということだ』
「うげっ!?」
……何だよ、それ!?
強くなったのか、危なくなったのか、どっちなんだよ!
『両方だな』
「心を読むんじゃねぇ!」
思わず突っ込んじまった。
けど、今はそれどころじゃない。
俺は自分の拳を握ってみる。
……ん?
何だろうな、この感覚。
力を込めようとしているわけじゃないのに、身体の隅々まで自然に力が巡っている。
さっきまで感じていた重さも、ほとんどない。
……いや、考えても分かんねぇ!
だったら、実際に動いてみるしかないだろ!
「……ん?」
上空から声がした。
見上げると、ヴァーリが僅かに首を傾げていた。
「どうした?」
「いや……」
白龍皇が俺を見つめる。
ほんの一瞬だけ、その表情に疑問が浮かんだ。
「……何でもない」
そう言って、再び構えを取る。
「続けようか、赤龍帝」
「おう!」
俺は翼を広げ、地面を蹴った!
「行くぜぇぇぇ!!」
真紅の鎧が空へ舞い上がる。
ヴァーリもこちらへ向かって加速してきた。
「ハハハッ! いいぞ、兵藤一誠!」
「余裕ぶっこいてんじゃねぇ!」
俺は右拳を振り抜く。
ヴァーリが左腕で受け止めた。
すぐさま左拳を繰り出すが、奴は身体を捻って躱す。
……くそっ!
相変わらず速ぇ!
ヴァーリが反撃に転じた。
白銀の拳が、俺の顔面へ迫る。
避ける!
……いや、待て!
俺は咄嗟に左腕を上げ、その拳を受け止めた。
――ガァンッ!!
「……あれ?」
思わず声が漏れた。
……おかしい……
さっきまでの俺なら、こいつの攻撃を正面から受け止めるだけで精一杯だったはずだ。
なのに……
今は?
「……ほう?」
ヴァーリが僅かに目を見開いた。
俺は左腕に力を込める。
――グッ!!
押し返せる。
さっきは耐えるのがやっとだった拳を、今は押し返せるんだ!
「……お、おいおい!」
思わず笑みが浮かんだ。
何だ、これ!
ヴァーリの拳が軽くなったわけじゃない。
こいつが手加減してるとも思えねぇ。
だったら……!
「――今度はこっちの番だぁぁ!!」
俺は左腕を押し上げ、ヴァーリの拳を弾いた。
空いた右拳を、そのまま奴の胸元へ叩き込む!
――ドガァンッ!!
「っ!?」
ヴァーリの身体が後方へ弾かれた。
……えっ?
……今の、俺がやったのか!?
「ハハハハッ!!」
だが、ヴァーリは空中で体勢を立て直すと、楽しそうに笑い始めた。
「いいぞ! 急に動きが変わったな!」
「俺が一番驚いてるよ!」
「ならば、どこまでやれるか試してみよう!」
……こいつ、本当に戦うことしか考えてねぇのか?
けど、いくら楽しそうに笑ってたって、襲撃した連中に情報を流したことまで忘れたわけじゃねぇ。
そこは、まだ納得してねぇからな!
ヴァーリが再び突っ込んでくる。
速い!
けど……見える!
俺は奴の拳を躱し、右脚を振り上げた。
――ガァンッ!!
蹴りが白銀の装甲に炸裂する。
「っ!」
ヴァーリの身体が僅かに傾いた。
今だ!
俺は右脚を引き戻し、追撃に移ろうとした。
だが、その瞬間――
ヴァーリの手が伸び、引き戻しかけた俺の右足首を掴んだ!
『
「うおっ!?」
掴まれた途端、またしても全身から力が抜けていく。
そうだった!
こいつには半減があるんだった!
しかも、奪った分はヴァーリ自身の力になる。
「隙ありだ!」
ヴァーリが足首を放し、そのまま拳を繰り出してきた。
「くっ!」
俺は両腕を交差させて、その拳を受け止めた。
――ガァンッ!!
重い!
やっぱり、こいつの攻撃は半端じゃねぇ!
衝撃で僅かに後方へ押されたが、俺は空中で体勢を保ち、両腕で奴の拳を押し留めた。
「……ん?」
……まただ。
力を奪われたはずなのに、さっきみたいに大きく崩れない。
それどころか、拳を押し返せるだけの力が残っている。
……何でだ?
『相棒! 戦いに集中しろ!』
「お、おう!」
『
籠手の宝玉が輝いた。
俺は倍加した力を両腕へ乗せ、押し込んでくるヴァーリの拳を弾き返す!
「うおおおおっ!!」
「ハハハッ!」
奴もまた、楽しそうに拳を振るってきた。
――ガァンッ!!
――ドガァンッ!!
空中で、赤と白の拳が何度も激突する。
ヴァーリが魔力弾を放てば、俺は躱して距離を詰める。俺が拳を振るえば、奴は鎧で受け止めて反撃してくる。
けど、さっきまでとは違う。
防御するだけで精一杯だった攻撃を、今は押し返せる。
見失いそうになっていた動きにも、ちゃんと反応できる。
……俺、強くなってる!
それも、ほんの少しなんかじゃねぇ!
「どうした、赤龍帝! もっと見せてみろ!」
「言われなくてもぉぉ!!」
俺たちは何度もぶつかり合った。
やがて、互いに距離を取る。
俺は地面へ向かって降下し、着地と同時に振り返って構えた。
少し遅れて、ヴァーリも離れた場所へ降り立つ。
顔を覆っていなかった装甲が閉じ、白銀の兜がその表情を隠した。
「……まだやる気か?」
「当たり前だろ!」
……ったく……
何度殴っても倒れねぇ。
しかも、こいつには相手の力を奪う《Divide》まである。
ただ力任せに殴っても、こいつの鎧は簡単には壊せない。
だったら、ちゃんと考えて攻撃しねぇとな。
俺は足の裏で地面を捉え、腰を落として構えた。
ヴァーリが踏み込んでくる。
速い!
だが、今なら分かる。
奴が拳を繰り出した、その僅かな瞬間――
俺はその拳を受け止めず、横へ身体を滑らせた。
そして、ヴァーリの胸元へ掌を当てる。
「――そこだ!」
ハクから教わった武術の技――《鎧貫》!
鎧の表面をただ叩くんじゃない。
踏み込み、腰の捻り、肩から腕へと繋がる身体の動き――
その全てを合わせ、掌からの衝撃を鎧の奥へ通す!
「ぐっ!?」
ヴァーリの身体が僅かに揺らぎ、体勢が崩れた。
……効いた!
今だ!
俺はすぐに掌を離し、左拳を引いた。
『
地面を踏み締める。
脚から腰へ、腰から肩へと力を伝え、全身の動きを拳へ繋げる。
「うおおおおおっ!!」
ヴァーリが咄嗟に両腕を交差させた。
俺の左拳が、その防御へ叩き込まれる。
――バキィィンッ!!
「なっ!?」
交差した両腕の籠手に亀裂が走った。
それだけじゃない。
凄まじい衝撃を受け、胸部の装甲にまで亀裂が広がっていく。
「ぶっ飛べぇぇぇ!!」
――ドガァァァンッ!!
ヴァーリの身体が後方へ吹き飛んだ。
勢いよく地面へ激突し、そのまま土煙を巻き上げながら転がっていく。
地面に叩きつけられた衝撃で、亀裂の走った装甲がさらに砕け散った。
――パキンッ!!
そのとき、砕けた鎧から何かが俺の方へ弾き飛ばされた。
青く輝く小さな宝玉だ。
そいつは地面に落ちると、何度か跳ねながら俺の足元へ転がってきた。
「はぁ……はぁ……!」
……やったか!?
いや、まだだ。
煙の向こうから、白銀の鎧が見えた。
「……ははっ」
ヴァーリが立ち上がる。
両腕と胸部の装甲は砕け、至るところに亀裂が走っている。
それでも、奴は笑っていた。
「見事だ、兵藤一誠」
「……まだ立てんのかよ」
「当然だ」
砕けた装甲の周囲に魔力が集まり、少しずつ形を取り戻し始めた。
「ようやく、面白くなってきたところだからな」
「……ったく。どんだけ戦うのが好きなんだよ」
俺はふと、足元へ目を落とした。
さっき転がってきた宝玉が、まだそこに残っていた。
「……ん?」
青く輝くそれは、ヴァーリの鎧から外れたものらしい。
俺は右手で拾い上げた。
「何だ、これ?」
『相棒、それは……』
「ん?」
ドライグが言いかけたところで、ヴァーリが口を開いた。
「俺の鎧から外れた宝玉か」
「お前の?」
「ああ。白龍皇の力が宿ったものだ」
「……白龍皇の力?」
俺は右手の宝玉を見つめた。
ヴァーリは鎧の修復を続けながら、兜を俺の手元へ向けた。
だが、取り返そうとはせず、何かを待つようにこちらの様子を窺っている。
……こいつ、自分の宝玉が俺の手にあるっていうのに、取り返そうともしねぇのか?
いや、今のこいつなら、俺が何かしようとしたら面白がりそうだけどさ。
……そういや、祐斗だって、聖と魔っていう正反対の力を、一つにしてたよな。
だったら、倍加と半減だって……!
「なあ、ドライグ」
『……何だ、相棒』
「この宝玉、俺の籠手に取り込めねぇかな?」
『…………』
「ほら、俺の籠手には倍加の力があるだろ? だったら、そこに半減の力も入れられたら……」
『……相棒』
ドライグの声が、僅かに変わった。
『お前は、それが何を意味するのか分かっているのか?』
「いや、正直よく分かんねぇ!」
『……だろうな』
「けどさ」
俺は左腕の籠手を見た。
「今までだって、できねぇと思ってたことを何度もやってきただろ?」
『…………』
「だったら、今回も同じだ!」
俺は右手の宝玉を握り締めた。
「できるかどうか分からねぇなら、試してみようぜ!」
俺は右手に握った青い宝玉を見つめた。
白龍皇の力が宿った宝玉。
こいつを、俺の神器に取り込む。
……問題は、どうやって取り込むかだよな。
俺は左腕の籠手へ視線を落とし、それから胸元へ目を向けた。
そこには、緑色に輝く宝玉がある。
……よし!
「ドライグ! 行くぞ!」
『……待て、相棒。まさかお前――』
「その、まさかだ!」
俺は青い宝玉を左手に持ち替え、右拳を握り締めた。
「まずは、こいつを!」
――ガキィンッ!!
右拳を自分の胸元へ叩き込む!
――ピシッ!
緑の宝玉に亀裂が走った。
「……おい、兵藤一誠!?」
ヴァーリの驚いた声が聞こえる。
だが、今は構ってられねぇ!
「うおおおおっ!!」
――パキィィンッ!!
胸元の宝玉が砕け散った!
俺はすかさず、砕けた宝玉のあった場所へ、左手の青い宝玉を押し込んだ。
「これで……どうだ!!」
――ドクンッ!!
「っ!?」
胸の奥で、何かが大きく脈打った。
次の瞬間、青い宝玉から眩い光が溢れ出す!
「うおっ!?」
光は胸部から全身へと広がり、真紅の装甲を包み込んでいった。
……な、何だ!?
成功したのか!?
それとも……!
『……愚かな真似をしたものだな、赤龍帝の宿主よ』
突然、白龍皇の鎧から声が響いた。
「……アルビオン!?」
『ドライグ。お前も分かっているはずだ。我らの力は相反するもの。増大と半減、その二つを同じ神器に宿そうなど、無謀にも程がある』
『……ああ。普通ならば、決して成功せんだろうな』
「お、おい、ドライグ!?」
待て待て待て!
普通なら成功しないって、どういうことだよ!?
『分かっているなら、なぜ止めなかった?』
『止めたところで、こいつが諦めると思うか?』
『……何?』
『俺の宿主は、昔からこういう奴だ。無理だと言われれば挑戦し、できないと言われればできるまで修行する。何度痛い目を見ても、簡単には諦めん』
……ドライグ?
『かつての俺なら、こんな無茶を認めることなどなかっただろうな。だが、こいつと長いこと一緒にいたせいで、少しばかり考えが変わった』
『……ほう?』
『人間というのは、面白いものだ。俺たち龍から見れば取るに足らん存在のはずが、時には想像もできんことを成し遂げる』
ドライグの声が、不思議と穏やかだった。
『俺はそれを、この相棒から何度も教えられてきた』
『だからといって、相反する我らの力が共存できる道理にはなるまい』
『ああ。理屈だけで考えれば、お前の言う通りだ』
『ならば――』
『だがな、アルビオン』
ドライグが、その言葉を遮った。
『俺たちが知っていることだけが、この世の全てとは限らんだろう?』
『…………』
『何が起きるかなど、俺にも分からん。だが、こいつが自分の意思で挑むと決めたのなら、俺は最後まで付き合うつもりだ』
「……へへっ」
……ったく……
そんなふうに言われたら、ますます失敗できねぇじゃねぇか!
『……まったく、随分と宿主に入れ込んだものだな、ドライグ』
『お前もヴァーリに振り回されているだろうが』
『フン。あれとこれとは話が違う』
『ハッハッハ! そうかもしれんな!』
……こいつら……
こんな状況で、よく笑ってられるな!?
だが、そのときだった。
――キィィィィンッ!!
「っ!?」
胸元から放たれていた光が、さらに強くなった!
緑と青。
二つの光が混ざり合い、全身を覆っていく。
『……何だと?』
アルビオンの声が変わった。
『馬鹿な……。まだ神器が崩壊していないだと?』
『…………』
『ドライグ! これは一体……!』
『……さてな』
ドライグも、どこか驚いているようだった。
『だが、どうやら俺たちの知らん何かが起きているらしい』
……おいおい!
お前らにも分かんねぇのかよ!?
胸の奥で、もう一度大きな脈動が響いた。
――ドクンッ!!
「っ!?」
身体の奥深くで、何かが繋がったような感覚がした。
けど、不思議と痛みはない。
それどころか、青い光が全身へ染み渡るような、妙な感覚だった。
……何だ、これ?
そう思った、その瞬間――
――シュウウウウッ……
「……ん?」
突然、全身を包んでいた光が弱まり始めた。
……あれ?
光が……
消えていく?
やがて、翡翠色に輝いていた光は完全に収まり、辺りに静寂が戻った。
「……終わった、のか?」
俺は自分の胸元へ視線を落とした。
だが、次の瞬間――
――シュウウウウッ……
「……へ?」
胸元の装甲が、光の粒子となって消え始めた。
肩、腕、腰、脚。
全身を覆っていた真紅の鎧が、次々と消失していく。
「ちょっ!? おい、待て!?」
俺、解除なんかしてねぇぞ!?
だが、そんな俺の意思とは関係なく、鎧は消えていった。
そして、最後には左腕の籠手だけが残された。
「…………」
……え?
……これって、もしかして……
『……やはりな』
アルビオンが、低く呟いた。
『相反する二つの力を無理に融合させようとした結果、禁手の維持に失敗したか』
「……うっ」
『言ったはずだ、ドライグ。二天龍の力を一つにするなど、不可能だとな』
『…………』
ドライグは答えない。
ヴァーリも、俺の鎧が消えたのを見て、僅かに構えを緩めていた。
「……なるほど。そういうことか」
ヴァーリが、俺の左腕へ視線を落とす。
「確かに面白い発想だったが、流石に無理があったようだな」
……くそっ!
やっぱり駄目だったのか?
俺は左腕に残された籠手を見下ろした。
……ん?
待てよ!
何だ、この感覚?
胸の奥で、さっき感じた脈動がまだ続いている。
それに、力が抜けたわけじゃない。
むしろ……
『……なるほどな』
ドライグが、小さく呟いた。
「……ドライグ?」
『相棒』
「な、何だよ?」
『もう一度だ』
「……は?」
『もう一度、禁手化してみろ』
……もう一度?
俺は左腕の籠手を見た。
ちゃんと残っている。
それどころか、さっきまでよりもずっと強い力が、内側から湧き上がってくるような感覚があった。
……そうか。
だったら!
「……へへっ!」
思わず笑みが浮かんだ。
「何だ、そういうことかよ!」
「……ん?」
ヴァーリが首を傾げた。
「どうした、兵藤一誠?」
「いや、何でもねぇ!」
俺は左腕を構えた。
『……何をするつもりだ?』
アルビオンの声が響く。
「決まってんだろ!」
ヴァーリの構えは、さっきよりも僅かに緩んでいた。
アルビオンも、俺の融合が失敗したと思っているらしい。
……へへっ!
だったら、とくと見やがれ!
「――
『
――カッ!!
左腕の籠手から、真紅の光が爆発的に迸った!
「なっ!?」
ヴァーリが驚きの声を上げる。
光は一瞬で俺の全身を包み込んだ。
腕から肩へ。
胸から腰へ。
そして脚の先まで、次々と装甲が形成されていく!
……けど!
何かが違う!
形作られていく鎧は、今までよりもずっと鋭く、流れるような形をしていた。
真紅の装甲には、白い光のラインが走っていく。
――キィィィンッ!!
全身の宝玉が、一斉に輝いた。
……緑じゃない!
青でもない!
二つの色が混ざり合った、鮮やかな翡翠色だ!
「……お、おいおい!」
俺は思わず、自分の両腕を見下ろした。
今までの鎧とは、何かが違う。
……いや、何かどころじゃねぇ!
装甲の形も、輝きも、まるで別物だ!
そして――
――バサァッ!!
背中から、赤い龍翼が大きく広がった。
その骨格は、今までと同じ。
けど、翼膜が……!
――フワァァッ!!
「うおっ!?」
翼膜が光の粒子へと変わり、そこへ新たな光が満ちていく。
青と緑が混ざり合った、翡翠色の光。
透き通るように輝く翼膜が、赤い龍翼の骨格いっぱいに広がった!
……す、凄ぇ!
俺は、もう一度自分の姿を見下ろした。
真紅の鎧。
白く輝く光のライン。
翡翠色の宝玉。
そして背中には、翡翠色に輝く光の翼。
全体の形まで、以前より鋭く、流れるような姿になっている。
……何だよ、これ!?
「めちゃくちゃ格好いいじゃねぇか!!」
『……フッ。どうやら成功したようだな、相棒』
「おう! 俺もびっくりだぜ!」
左腕の宝玉が、翡翠色に輝く。
俺が纏っているのは、もはや以前の《赤龍帝の鎧》とは違う。
赤龍帝と白龍皇。
相反する二つの力を一つに宿した、新たなる鎧。
『……相棒。その鎧は、以前のものとは違う』
「……え?」
『今のお前と、俺たちの力に相応しい、新たな姿だ』
ドライグの声が、力強く響いた。
『その名は――』
《|赤龍皇帝の鎧《ディバイン・ブーステッド・ギア・イメラウドゥル・スケイルメイル》・|二天龍共鳴形態《ウェルシュ・アンド・バニシング・ドラゴンズ・コンソナンティア》》!!
「……赤龍皇帝の鎧……!」
俺は、思わずその名前を口にした。
『あり得ん! こんなことはあり得ない!』
「うおっ!?」
突然響いたアルビオンの叫びに、思わず肩を跳ねさせた。
……な、何だよ!?
そんなに驚くことなのか!?
『ドライグ! 説明しろ! 何故、貴様の神器に我が力が宿っている!?』
『ハッハッハ! 見ての通りだ、アルビオン!』
『笑い事ではない! 我らの力は相反するものだぞ! それが何故、互いを打ち消すこともなく、一つの鎧として成立している!?』
『……さてな。正直に言えば、俺にも詳しい仕組みは分からん』
『何だと!?』
『だが、目の前にある結果まで否定するわけにはいくまい?』
『…………!』
アルビオンが言葉を詰まらせた。
……へへっ!
さっきまで失敗だって言い切ってたもんな!
そりゃ驚くよな!
『アルビオンよ。俺は、この宿主と長く過ごして一つ学んだことがある』
『……何だ?』
『俺たち龍が不可能と決めつけていたことでも、こいつは簡単には諦めん。何度失敗しようが、何度倒れようが、また立ち上がって挑み続ける』
……ドライグ……
『こいつと出会うまでは、俺も力の大きさばかりを考えていた。強大な力を持つ者こそが勝者であり、弱い者にできることなど知れているとな』
『……それがどうした?』
『だが、こいつは違った。弱いからこそ鍛え、足りないからこそ工夫する。誰かを守るためなら、自分より強い相手にも平気で立ち向かう』
『…………』
『長いこと、俺たちは力を競い合ってきた。だが、力というものは、それを持つ者の考え方一つで随分と変わるらしい』
『……フン。随分と人間に感化されたものだな、ドライグ』
『ハッハッハ! そうかもしれんな!』
ドライグが、愉快そうに笑った。
『だが、悪い気分ではないぞ。何しろ、退屈する暇がないからな!』
「……へへっ!」
……ったく……
そんなふうに褒められたら、照れるじゃねぇか!
『それに、お前もヴァーリと共にいるのだろう? 宿主に驚かされるという点では、似たようなものではないか?』
『……あれとこれとは別だ』
『そうか?』
『そうだ!』
『ハッハッハ!』
……こいつら、本当に仲が悪いんだか、いいんだか!
そのとき、ヴァーリが口を開いた。
「……まさか、ここまでやるとはな」
俺は顔を上げた。
白銀の鎧を纏ったヴァーリが、じっとこちらを見つめている。
「兵藤一誠。お前、その力を手に入れるために、何を犠牲にした?」
「……へ?」
「赤龍帝と白龍皇の力を同時に宿すなど、常識では考えられない。何の代償もなしに成立するとは思えないんだがな」
……代償?
俺は思わず、自分の身体へ意識を向けた。
……ん?
別に痛くねぇぞ?
さっきの融合だって、胸の奥が妙な感じになっただけだし。
むしろ、さっきまでより身体が軽いぐらいだ。
「……いや? 特に何ともねぇけど?」
「……何?」
「だから、別に痛くもねぇし、力が抜けてる感じもしねぇって!」
「…………」
ヴァーリが黙り込んだ。
……あれ?
何か変なこと言ったか、俺?
『……ふむ』
ドライグが低く唸った。
『相棒。確かに今のお前なら、この力を受け入れることができたのだろう』
「……おう?」
『だが、勘違いするなよ。力を受け入れられることと、その全てを使いこなせることは別だ』
「……あ」
『先ほども言っただろう? お前の魂に何が起きようと、肉体まで同じように変わったわけではない』
……そ、そうだった!
俺、さっきも注意されたばかりじゃねぇか!
「……ってことは、調子に乗って全力を出したら?」
『今の肉体では耐えられんだろうな』
「うげっ!?」
……何だよ、それ!
せっかく格好いい鎧になったってのに!
『ハッハッハ! まあ、安心しろ。今すぐ全ての力を使う必要などない』
「……そうなのか?」
『ああ。必要な力を、必要な時に使えばいい。それは今までお前が修行してきたことだろう?』
……ああ。
そうだよな。
ハクにも、ドライグにも、何度も教わってきたことだ。
ただ力任せに戦えばいいってもんじゃねぇ。
どれだけ強くなったって、そこは変わらないんだ。
「……へへっ。分かってるよ!」
俺は両拳を握り締めた。
翡翠色の宝玉が、俺の動きに合わせて輝く。
白い発光ラインが、真紅の鎧を走っている。
背中では翡翠色の翼膜が、静かに揺れていた。
……凄ぇ……
本当に、こんなことができるなんてな。
「……ハハハッ!」
ヴァーリが、ゆっくりと笑い始めた。
「面白い! 本当に面白いぞ、兵藤一誠!」
その声には、先ほどまでの余裕とは違う響きがあった。
「まさか、こんな形で二天龍の力が並び立つことになるとはな!」
「……へへっ!」
俺はヴァーリを真っ直ぐ見据えた。
「まだまだこれからだぜ、ヴァーリ!」
翡翠色の光翼が、大きく広がる。
俺は右拳を構え、ニヤリと笑った。
「さあ、続きといこうぜ!!」
side out イッセー
─────────────────────────
side in ハク
…………
………………
……いや、待て!
ちょっと待て!
俺は目の前に立つイッセーを、思わず二度見していた。
赤龍帝と白龍皇。
本来ならば、互いに相容れないはずの二つの力。
それを一つの神器に取り込むという発想自体は、原作にもあった。
だからこそ、イッセーが白龍皇の宝玉を取り込もうとした時も、無茶をするなとは思ったが、まだ理解できた。
……できたんだが……
何だよ、その鎧!?
おかしい!
いや、待て待て待て!
原作じゃ、こんな姿になってなかっただろ!?
真紅の装甲は、以前よりも鋭く、流線形になっている。その各所には白く輝くラインが走り、胸元を始めとした宝玉は、緑でも青でもない鮮やかな翡翠色に変化していた。
……おいおいおい!
まんまユニコーンじゃねえか!?
いや、正確には違うぞ?
あっちは白い装甲だし、こっちは赤いままだ。装甲が展開しているわけでもない。
ないんだが!
この全身に走る発光ライン!
どうしたってサイコフレームを連想するだろ、こんなの!!
……いや、それよりもだ。
何でこんな変化が起きてるんだ?
俺の知る原作では、白龍皇の力を取り込んだからといって、鎧そのものがここまで別物に進化したわけじゃなかったはずだ。
なのに、目の前のイッセーはどうだ?
見た目だけじゃない。鎧から感じられる力まで、先ほどとはまるで違っている。
……おいおい!
これ、明らかに原作から外れてないか!?
――バサァッ!!
その時、イッセーの背中で赤い龍翼が大きく広がった。
……ん?
翼の骨格は以前と同じだな。そこは変わらないのか。
……なんて思っていたら――
――フワァァッ!!
骨格の間に翡翠色の光が満ちていく。
まるで光そのものを編み上げたような翼膜が、赤い龍翼いっぱいに広がった。
…………
………………
今度はランスロットかよ!?
いやいやいや!
ちょっと待て!!
確かに原作でも、クリムゾン・クイーンになった時には光の翼を展開していた。
だが、あれはもっと先の話だろ!?
今はまだ、ヴァーリとの最初の本格的な戦いだぞ!?
しかも、あいつが纏っているのは《真紅の赤龍帝の鎧》じゃない。赤龍帝と白龍皇の力が共鳴して生まれた、まったく別の形態だ。
それなのに、この翼膜!
どう見てもエナジーウイングじゃねえか!!
……いや、格好いいけどさ!
凄く格好いいけど!!
何だ、この男の浪漫を全部詰め込んだような鎧は!?
……くそっ!
ちょっと羨ましいぞ、イッセー!!
「……オシュトル?」
「……む?」
隣から声を掛けられ、俺は我に返った。
見れば、リアス先輩がこちらを見上げている。
「どうかしたの? さっきから随分と静かだけれど……」
「……いえ。少々、驚いておりましたゆえ」
「……そう」
リアス先輩はもう一度イッセーへ目を向けた。
「……あの鎧、本当に大丈夫なの?」
「少なくとも、今すぐ崩壊するような兆候は見受けられませぬ」
「でも、さっきは自分の胸の宝玉を……」
「ご心配はもっともかと。某も、あのような方法を取るとは思いませなんだ」
……本当に!
自分の胸の宝玉を砕いて、別の宝玉を押し込むって!
普通、そんなこと思いつくか!?
しかも、それで成功しちまうんだからなぁ……
……ったく!
誰に似たんだ、あの無茶苦茶な発想は。
…………
……いや、この話はやめておこう。
「……おい、オシュトル」
今度はアザゼルが声を掛けてきた。
「あの鎧、どう思う?」
「……どう、とは?」
「見りゃ分かるだろ? 普通の禁手の進化じゃねぇよ、ありゃ」
アザゼルは興味深そうにイッセーの姿を眺めている。
「赤龍帝の力に白龍皇の力が加わっただけじゃねぇ。神器そのものが、別の段階に進んだみてぇだ」
「……某にも、そのように見受けられまする」
……うん、そこは同感だ。
だが、気になるのはそれだけじゃない。
俺は改めて、イッセーの氣を探った。
……妙だな。
あれだけの力を宿した直後だというのに、随分と安定している。力が暴走するような気配もない。
むしろ、膨大な力の流れを、何かが調整しているような……
……何だ、この感覚?
原作との違い。鎧の変化。そして、この異様な安定性。
考える材料は山ほどあるが、今ここで答えが出るとは思えない。
とりあえず、戦闘が終わったら詳しく調べてみるか。
「――行くぞ、兵藤一誠!」
ヴァーリの声が響いた。
俺は思考を切り替え、二人へ視線を戻した。
「おう! 来い、ヴァーリ!」
白銀の翼が、大きく広がる。
『
――グニャッ!
周囲の景色が不自然に歪んだ。
目の前にあった木々が、まるで模型にでも変わったかのように小さくなっていく。折れた枝も、転がっていた岩も、次々とその大きさを失っていった。
……《Half Dimension》か。
原作どおり、広範囲へ半減の力を作用させてきたな。
しかし、こうして実際に目の前で見ると、改めて厄介な能力だ。
半減できるのは物体の大きさだけではない。重力にまで干渉できるとなれば、まともに巻き込まれるのは御免だぞ。
「な、何なの、あれ!?」
「周囲のものが、小さくなっています……!」
リアス先輩とギャスパーが驚いた声を上げる。
「リアス殿、ギャスパー殿。今しばらく、こちらへ」
俺は二人をさらに後方へ促した。
「オシュトル、イッセーは!?」
「ご安心を。某が見ておりますゆえ、危険と判断すれば直ちに介入いたしまする」
……さて。
ヴァーリは原作どおりの能力を使ってきた。
問題は、原作から大きく外れたイッセーの方だ。
あの新しい鎧で、一体どんな戦い方を見せてくれるのやら。
……まあ、少なくとも、原作みたいに胸の大きさを気にして大暴走、なんてことにはならないだろうけどな。
「……へへっ!」
その時、イッセーが笑った。
「すっげぇな、ヴァーリ! そんなことまでできんのかよ!」
「ハハハッ! 驚いたか!」
「そりゃ驚くって! けどな!」
翡翠色の翼膜が、大きく広がった。
「こっちだって、まだ試してねぇ力があるんだよ!!」
――ドンッ!!
イッセーの身体が一気に加速した。
……速い!
今までよりも、明らかに翼の反応が良くなっている。
いや、それだけじゃない。加速している最中でも、身体の軸がほとんどぶれていないのだ。
……ほう、随分と扱いやすい鎧になったみたいだな。
「来い!」
ヴァーリが右腕を構え、魔力を集中させる。
次の瞬間、巨大な魔力弾がイッセーへ放たれた。
――ゴォォォッ!!
「おっと!」
イッセーは身体を傾け、魔力弾の進路から外れる。
だが、ヴァーリはそれを読んでいたらしい。回避先へ一気に踏み込み、拳を繰り出した。
――ガキィィンッ!!
「ぐっ!?」
「ハハハッ! どうした! その新しい鎧は、見た目が変わっただけか!」
「んなわけねぇだろ!!」
イッセーが反撃する。
だが、ヴァーリも容易には拳を通さない。互いの拳と蹴りが、凄まじい速度で交錯していた。
……なるほどな。
新しい鎧になって身体能力は上がったが、戦闘技術そのものが急に向上したわけではない。
むしろ、急激に変化した性能へ、イッセーが少しずつ身体を合わせているように見える。
とはいえ、その適応の速さは大したものだ。
……あいつ、本当に強くなったな。
「ドライグ! 行くぜ!」
『
――キィィンッ!!
イッセーの鎧が輝いた。
翡翠色の宝玉から緑寄りの光が溢れ、白いラインへと流れ込む。その光が全身を駆け巡り、装甲の各所から無数の粒子が舞い上がった。
……おお!
なるほど、白いラインはただの飾りじゃないのか。
力を全身へ巡らせるための通り道になっているらしい。
イッセーが拳を振り抜いた。
――ガァァンッ!!
「ぐっ!?」
ヴァーリの身体が僅かに後方へ押し出される。
だが、すぐに体勢を立て直すと、反対の腕でイッセーの拳を受け止めた。
「その程度か!」
「まだまだぁ!!」
イッセーが左拳を突き出した。
その拳を迎え撃つように、ヴァーリが魔力の障壁を展開する。
……む。
あのままでは、拳が届かない。
そう思った瞬間だった。
『
――スッ!
「……何っ!?」
イッセーの拳が、魔力障壁に遮られることなく前へ進んだ。
障壁が壊れたわけではない。
拳に込められた力が、その防御を透過している。
――ガァンッ!!
「ぐっ!?」
ヴァーリの胸元へ拳が叩き込まれた。
…………
……おい!
ちょっと待て!
第三能力まで解放されてるじゃねえか!?
しかも、この段階で!?
いやいやいや!
鎧の形が変わっただけでも十分おかしいのに、何で《Penetrate》まで使えるようになってるんだよ!!
……何なんだ、今回の進化は!?
「……赤龍帝の第三能力か!」
アザゼルが声を上げた。
「ドライグがかつて持っていた力だ。まさか、今の進化で使えるようになったってのかよ……!」
……ええ、俺も同じことを考えておりますとも。
しかも、まだ終わりじゃないらしい。
「まだまだぁ!!」
『
――キィィンッ!!
今度は青寄りの光が、宝玉から白いラインへと流れ込んだ。
先ほどの緑とは違う。青い光が全身を巡り、粒子が舞い散っている。
「なっ!?」
ヴァーリの動きが僅かに鈍った。
……ほう!
やはり《Divide》も使えるのか!
相手の力を半減し、奪った力を自分のものにする、白龍皇アルビオンの能力。
宝玉を取り込んだ以上、使えるようになっていても不思議ではない。
だが、問題はそこじゃない!
イッセーの奴、防御を透過して拳を当て、その接触を利用して《Divide》を発動させやがった!
「そんでもってぇ!!」
『
――キィィンッ!!
今度は緑寄りの光が白いラインを走った。
イッセーが腰を落とし、右拳を引き絞る。
……あっ!
あの構えは……!
「うおおおおっ!!」
――ドガァァァンッ!!
「ぐあっ!?」
倍加した力を乗せた拳がヴァーリへ直撃し、その身体を吹き飛ばした!
――ズザザザッ!!
地面を抉りながら、白銀の鎧が後方へ滑っていく。
「……ははっ!」
思わず笑いが漏れた。
……やりやがった!
防御を透過して拳を当て、そこで相手の力を半減。そして、自分の力を倍加させて追撃。
しかも、最後の一撃は、道場で何度も教えた踏み込みそのものだ。
……ったく!
とんでもない組み合わせを考えつきやがって!
「……オシュトル?」
リアス先輩が、不思議そうにこちらを見る。
「何だか、嬉しそうね?」
「……はて。左様に見えますかな?」
「ええ。少しだけ」
……いかんいかん。
仮面をしているのに、分かるものなのか?
「……某が教えた動きを、見事に使っておりましたゆえ」
「……ふふっ。そういうこと」
リアス先輩が、ようやく微笑んだ。
……まあ、嬉しいものは仕方ない。
教えたことを、ちゃんと実戦で使ってくれているんだからな。
――ドンッ!!
その時、地面から白銀の影が飛び出してきた。
「ハハハハッ! 素晴らしいぞ、兵藤一誠!!」
ヴァーリだ。
さっきの一撃を受けたというのに、まだ楽しそうに笑っている。
……こっちもこっちで、とんでもないな。
「だが、俺も負けるつもりはない!」
『
ヴァーリが一気に間合いを詰め、左の掌を伸ばした。
……っ!
まずい!
あのまま触れられたら――
「おっと!」
イッセーが身体を捻り、紙一重で掌を躱した。
続けて、ヴァーリの懐へ踏み込もうとする。
だが、ヴァーリはそれを許さなかった。
――ガキィンッ!!
「ぐっ!?」
鋭い蹴りがイッセーの腕を捉え、その身体を後方へ弾き飛ばす。
……ふむ、やはり簡単にはいかないか。
新たな力を得たとはいえ、相手は白龍皇だ。
純粋な戦闘経験も、技術も、まだヴァーリの方が上だろう。
……だが……
「へへっ! やるな、ヴァーリ!」
「お前こそ、面白いことをするじゃないか!」
二人とも、実に楽しそうだった。
……いや、だからって周囲の被害を無視するなよ!?
さっきから地面が滅茶苦茶なんだが!?
再び二人が激突した。
――ガキィィンッ!!
イッセーの右拳をヴァーリが受け止め、反対の拳が真紅の腹部へ叩き込まれる。
「ぐっ……!」
だが、イッセーは退かない。
腰を捻って衝撃を逃がすと、そのままヴァーリの左腕を掴んだ。
「こいつも食らえ!」
『
――キィィンッ!!
青い光が白いラインを走る。
「……っ!」
ヴァーリの動きが一瞬鈍り、イッセーがその隙に膝を跳ね上げた。
――ガァンッ!!
「ぐっ!?」
……二度目。
今のも、確かに半減が通ったな。
しかし、ヴァーリはすぐに腕を振り払い、イッセーとの距離を取った。
「……なるほど。接触した瞬間に半減を仕掛けてくるわけか」
「へへっ! 便利だろ、これ!」
「ああ。実に面白い!」
……いや、イッセー!
あまり調子に乗るなよ!?
相手は白龍皇アルビオンだ。
自分自身の能力を使われているんだから、いつまでも無策でいるとは思えない。
案の定、次の攻防ではヴァーリが不用意に拳を受け止めなくなった。
白銀の翼を使って素早く間合いを切り替え、イッセーの手が届く寸前で身体を逸らしている。
……流石だな。
もう戦い方を変えてきたか。
だが、それで簡単に止まるイッセーでもない。
「そらぁ!!」
――ドンッ!!
翡翠色の翼が羽ばたき、イッセーが横方向へ急加速した。
ヴァーリの視線がその動きを追う。
その瞬間、イッセーは翼を傾け、逆方向へ切り返した。
「……何っ!?」
……おお!
あれは道場でも練習した、相手の視線を誘導してから逆を突く動きだ。
飛行中にも使いやがったか!
――ガキィンッ!!
イッセーの左拳がヴァーリの腕へ当たる。
そのまま腕を滑らせ、装甲へ掌を押し当てた。
『
――キィィンッ!!
「……っ!」
三度目の半減が作用し、ヴァーリの身体が僅かに揺らぐ。
イッセーが間髪入れずに右拳を突き出した。
――ドガァンッ!!
だが、ヴァーリは身体を捻って直撃を避け、翼を羽ばたかせて後退する。
「ハハッ! やるな!」
「お前もな!」
……ふむ。
三度目も通った。
だが……
俺は、白銀の鎧へ目を向けた。
……そろそろか?
ヴァーリが何かを確かめるように、左手を開閉する。
その仕草を見て、俺は僅かに目を細めた。
……やっぱりな。
白龍皇が、自分の能力を使われている状況を放置するわけがない。
「もう一回だ!!」
イッセーがヴァーリへ飛び込んだ。
だが、今度はヴァーリが自ら左腕を差し出した。
……む?
受けるつもりか?
「そらぁ!!」
――ガキィンッ!!
イッセーの拳が、白銀の腕へ叩き込まれる。
『
――キィィンッ!!
青い光が白いラインを駆け巡った。
だが――
「……あれ?」
イッセーが首を傾げた。
ヴァーリの動きに、変化がない。
「……おい、ドライグ。今の、効いてなくねぇか?」
『……そのようだな』
そして――
『解析は完了した』
白龍皇アルビオンの声が響いた。
「……え?」
『同じ力を何度も受ければ、その性質を把握することは難しくない。以後、我が力による半減は通用せん』
「……マジかよ!?」
「ハハハッ! 残念だったな、兵藤一誠!」
ヴァーリが楽しそうに笑った。
「せっかく手に入れた力だが、俺に使い続けるのは難しいようだぞ!」
……やっぱりか。
原作でも、白龍皇の力を取り込んだイッセーに対して、アルビオンは解析によって対処していた。
今回は三度通用したものの、四度目で完全に止められたわけだ。
……しかし、こいつら、戦いながら能力を解析して対処するって、普通に考えてとんでもないことをしてるよな。
「……へへっ!」
イッセーが笑った。
「そっか。もう《Divide》は通じねぇのか」
「そういうことだ」
「だったら、仕方ねぇな!」
……ん?
イッセーが両拳を握り締めた。
「通じねぇなら、別の手を使えばいいだけだろ!!」
――キィィンッ!!
翡翠色の宝玉が強く輝いた。
『
「…………は?」
…………
……ちょっと待て!
何だ、今の音声!?
翡翠色の宝玉から緑寄りの光が爆発的に溢れ、白いラインを凄まじい速度で駆け巡っていく。
光の粒子が全身から噴き上がり、イッセーの纏う力が一気に膨れ上がった。
……おいおいおい!!
倍加を一息で連発しやがった!?
今までは一回ずつ重ねていたはずだろ!?
何でそんな勢いで倍加できるようになってんだよ!!
「……おいおい」
アザゼルまで、呆れたような声を漏らした。
「あの短時間で、どんだけ倍加しやがった……?」
「……某にも、正確なところは分かりませぬ」
……いや、本当に!
何なんだよ、あの鎧!?
さっきから、俺の知ってる常識を次々とぶっ壊してくれるんだが!?
「ハハハハッ! いいぞ、兵藤一誠!!」
ヴァーリが声を上げた。
「それだけの力を、一瞬で引き出せるようになったのか!」
「へへっ! 俺もびっくりだぜ!」
……本人まで驚いてるのかよ!?
……いや、まあ、あいつならそうだろうな。
イッセーは一度拳を握り直すと、その場から一気に踏み込んだ。
――ドォォォンッ!!
「……っ!」
ヴァーリが両腕を交差させる。
――ガァァァンッ!!
「ぐっ!?」
凄まじい衝撃に、白銀の身体が大きく後退した。
……おお!
半減が通用しなくなっても、倍加した力で押し込めるのか!
だが、ヴァーリもただ押されるだけではない。
翼を広げて後退の勢いを殺すと、右脚を振り上げた。
――ガキィィンッ!!
「ぐっ!?」
今度はイッセーが吹き飛ばされる。
……うん、やっぱり一筋縄ではいかないな。
それに、いくら出力が上がっていても、力任せの攻撃だけではヴァーリには通用しない。
そう思っていたら、イッセーが空中で体勢を立て直した。
「なら、こいつはどうだ!」
背中の赤い龍翼が、大きく広がる。
……ん?
何をするつもりだ?
見れば、翡翠色の光翼膜へ氣が集まっていく。
……おい!
まさか……
「行っけぇぇぇ!!」
――ドドドドドッ!!
「なっ!?」
翡翠色の翼膜から、無数の氣弾が放たれた!
…………
……おい!
そこからビームまで撃てるのかよ!?
いや、氣弾だから厳密にはビームじゃないけど!!
光の翼を広げて一斉射撃って!
もう完全にロボットアニメの主人公じゃねえか!!
――ドガガガガッ!!
ヴァーリが身を翻し、氣弾の雨を回避する。
地面に着弾した氣弾が、次々と爆発を起こした。
「まだまだぁ!!」
イッセーが翼へ流す力を切り替えた。
今度は氣ではない。
魔力だ。
――ドドドドドッ!!
無数の魔力弾が、翡翠色の光翼膜から撃ち出された。
…………
……ああ、もう!
何なんだよ、その鎧!!
ユニコーンっぽい装甲に、ランスロットっぽい光の翼!
おまけに翼から一斉射撃までできるって!!
男の浪漫を詰め込みすぎだろ!!
「……凄いわね、イッセー」
リアス先輩が呆然と呟く。
「……左様。某も少々驚いておりまする」
……少々どころじゃないけどな!!
「……おいおい、何でもありかよ」
アザゼルが呆れた声を漏らした。
「俺もさすがに、あの翼の使い方は予想してなかったぜ」
「……某も同感にございまする」
……本当に!
翼を攻撃に使う発想は分かる。
だが、まさか翼膜そのものから氣や魔力を撃ち出すとはな!
しかも、撃ちながら飛行できるのだから、相手にしてみれば随分と厄介だろう。
……ふむ
今度の修行では、翼を使った戦い方も教える必要がありそうだ。
もっとも、教える前に本人が色々と開発しそうだが。
「ハハハッ! 面白い!」
ヴァーリが魔力弾を躱しながら、空中へ飛び上がった。
「だが、それだけでは俺には届かんぞ!」
「分かってるって!!」
イッセーが翡翠色の翼を傾け、急激に方向を変えた。
――ドンッ!!
ヴァーリが迎撃の魔力弾を放つ。
だが、イッセーはその軌道を読み切ったように身を捻り、距離を詰めていく。
――ガキィンッ!!
互いの拳が激突した。
「ぐっ……!」
「ハハハハッ!!」
白銀の翼が翻り、真紅の鎧がそれを追う。
――ガンッ!!
――ドガァンッ!!
蹴りが交差し、拳がぶつかり合う。
……うん、実にいい勝負だ。
イッセーは新しく得た力を試しながらも、基本の体術を忘れていない。
一方のヴァーリは、それを見極めるように攻撃を捌き、隙を見つけては反撃している。
……あれ?
そういえば、イッセーがさっきから左腕の宝玉へ何度も意識を向けている。
……何をするつもりだ?
「もう一回、試してみるか!」
『
――キィィィンッ!!
「……は!?」
今度は青寄りの光が、白いラインを凄まじい速度で駆け巡った!
……おいおいおい!!
半減まで高速連続発動できるのかよ!?
倍加だけじゃないのか!?
何なんだ、その鎧!!
しかし――
「ハハハッ! 無駄だ!」
ヴァーリが笑った。
イッセーの半減は、やはり作用していない。
「やっぱ駄目か!」
イッセーが苦笑する。
……なるほど。
発動することはできる。
だが、アルビオンによる解析が終わった以上、ヴァーリには通じないわけだ。
……いや!
それにしたって、あの高速連続発動はおかしいだろ!?
原作で、こんなことができたか!?
……ったく!
もう何が起きても驚かないぞ、俺は!
……いや、嘘だ。
絶対また驚くだろうな。
「だったら、こっちだ!!」
イッセーが左腕を引き、右拳を前へ突き出した。
『
ヴァーリが展開した魔力障壁を、その拳が透過する。
――ガァンッ!!
「ぐっ!?」
だが、ヴァーリも即座に反撃し、イッセーの肩へ蹴りを叩き込んだ。
――ドガァンッ!!
「ぐあっ!?」
二人の身体が、それぞれ逆方向へ弾き飛ばされる。
……ははっ!
どっちも、簡単には倒れないな。
イッセーは新しい力を得た。
だが、ヴァーリはその力へ対応し始めている。
この戦い、まだまだ続きそうだ。
……と、その時だった。
「――ヴァーリ! 迎えに来たぜぃ!」
「……む?」
突然、聞き慣れない声が響いた。
俺は声のした方へ視線を向ける。
そこには、いつの間にか一人の男が立っていた。
金色の髪。
そして、その手には一本の棒。
……あっ!
あいつは……!
「おいおい、相変わらず派手にやってんなぁ!」
男は二天龍の戦いを眺めながら、呆れたように肩を竦めた。
「迎えに来てやったってのに、まだ戦ってんのかよぅ?」
「……美猴か」
ヴァーリが、男を見て笑った。
「見ての通りだ。今、最高に面白いところなんだよ」
「ったく、おまえは本当に戦いが好きだなぁ!」
……やっぱりか。
美猴。
初代孫悟空の子孫にあたる妖怪。
原作では、ヴァーリと行動を共にしていた奴だ。
……ということは、あいつが来たってことは、そろそろヴァーリを連れ帰るつもりなのか?
俺は二人の様子を窺った。
美猴はイッセーへ視線を向けると、興味深そうに口元を歪めた。
「へぇ……そっちが赤龍帝かい?」
「……ああ、そうだぜ。お前は誰だよ?」
「俺っちか?」
男はニヤリと笑った
「俺っちは美猴。よろしくな、赤龍帝!」
……さて
ここからどうなるかな。
俺は仮面の下で目を細め、再び二天龍へ視線を戻した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回はついに、赤龍帝と白龍皇の本格的な激突となりました!
これまでハクのもとで修行を重ねてきたイッセーですが、今回の戦いで大きな成長を遂げました。
そして、まさかの白龍皇の宝玉を取り込むという暴挙。
……いや、イッセー君?
自分の胸の宝玉を砕いて入れ替えるって、もう少し他に方法はなかったんですかね?(笑)
そんな無茶の末に誕生した《赤龍皇帝の鎧・二天龍共鳴形態》。
倍加と半減、相反する二つの力が一つになり、さらには赤龍帝の第三能力まで解放されるという、とんでもない進化を遂げました。
そして、ハクの内心はというと……。
ユニコーンにランスロットと、もう色々と大変なことになっています(笑)。
果たして、新たな力を手にしたイッセーとヴァーリの戦いはどうなるのか。
そして、最後に現れた美猴の目的は……?
次回もお楽しみに!
改めまして、更新が空いてしまったにもかかわらず、読みに来てくださった皆様、本当にありがとうございます。
皆様からいただく感想やお気に入り登録が、執筆の大きな励みになっています!
これからも自分のペースで物語を紡いでいきますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです。
それでは、また次回お会いしましょう!