海賊らしからぬ海賊   作:やがみ0821

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ルナシアの動きと大海賊時代の幕開け

 ロジャーの船から降りて2年間、みっちりと能力に重点を置いて鍛えたルナシアは将来の幹部候補を育てる為、孤児を集め始めると同時に傘下の海賊達の中から見どころがある者を幹部候補とした。

 なお、傘下の海賊達は以前よりも大きく増加していた。

 ここ数年で開拓をしている為、行き来する船が多いという情報が広まったのか、海賊達がちょっかいを掛けてくるようになり、彼らを叩きのめして忠誠を誓わせた為だ。

 

 傘下から引き抜くのはともかくとして、孤児は自分だけで集めるのは効率が悪いので、同時並行で各地における孤児院の創設に動く。

 孤児院で教育を施して優秀な者を引き抜くという寸法だ。

 

 彼女は偉大なる航路だけでなく、東西南北の4つの海にある島々まで遥々赴き、途中で見かけた海賊は勿論のこと現地にマフィアなどの無法者が蔓延っていれば力づくで彼らをぶちのめし、自分に忠誠を誓わせ傘下としていた。

 その上で現地住民達と協議し、同意を得た後に孤児院を創設し、孤児を集めつつ彼らを教育・世話をする人員も住民の中から希望者を雇用する。

 

 勿論、この時には交易や安全保障の提案、移民募集をすることも行い、また現地にヒューマンショップがあれば奴隷を根こそぎ買い取って解放し、希望者がいれば開拓民として自分の島へ送る。

 ルナシアの動きに世界政府と海軍はロジャーや金獅子、白ひげといった連中が暴れまわっていることもあって今は見逃すという判断を下してしまう。

 

 これを僥倖としてルナシアはウォーターセブンにいる船大工トムに会いに行く。

 彼女はロジャーの無茶苦茶振りを土産話として交流を深める中で、トムから海列車という構想を聞かされる。

 その構想に彼女は思いっきり食いつき、全てを聞き終えるや否や全額出資したい旨を申し出た。

 トムは仰天したが、断る理由もなく有り難くその申し出を受ける。

 ルナシアはバッキンと電伝虫でやり取りをしながら、数日間掛けて契約書を作成し、トムに契約内容を隅から隅まで説明した上で契約を結んだ。

 

 海列車の開発設計・製造は困難であるが、ルナシアは時間とカネ、人手、資源を掛ければ不可能なことはあんまりないと信じているタイプだ。

 また彼女は海列車に関する契約を結んだ後、自らの海賊船の設計・建造に関する契約もトムと結んだ。

 どんな海賊船にしたいか、ルナシアはトムに力説し、彼もまた彼女の説明を受けて色々と提案する。

 

 詳細な部分まで詰めることができた為、ルナシアは大満足でウォーターセブンを後にした。

 そして、彼女は西の海にあるオハラでも学者達への支援契約を締結する。

 基本的に研究者や技術者とは仲良くしておいた方がいいというのが彼女のスタンスだ。

 

 

 孤児院創設・各島との友好的な通商関係構築・研究者や技術者達への支援などなど――

 

 一連の活動をルナシアは長期に渡って精力的に行い、その勢力圏は急速に拡大していき――世界政府も海軍も簡単に手出しはできなくなってしまう。

 事態を重く受け止めた世界政府により懸賞金額が驚くほどに跳ね上がったが、彼らができたのはそれだけであった。

 

 そして、ルナシアは最後の仕上げに取り掛かる。

 その計画は世界政府に対する明確な宣戦布告であったが、その反面民衆から絶大な支持を得られるものであった。

 しかし、その矢先にロジャーが世界政府に自首し、ローグタウンで近日中に公開処刑されるという情報が飛び込んできた。

 更には計画に必要なシキがマリンフォードに単身乗り込んで海軍に捕まり、インペルダウンに収監されてしまう。

 とりあえず彼女はローグタウンへ向かいつつ、万が一を考えてローグタウンへ自身が育てた幹部達のうち、動ける面子を電伝虫を使って召集した。

 

 

 

 

 

 

 

 海軍の警備なんぞルナシアには意味がない。

 建物全部を海楼石で作らない限り、能力を使ってどこにでもこっそり侵入できる為だ。

 だが、念の為に牢獄周辺の警備の海兵達を気絶させた。

 

 そして牢獄に囚われているロジャーにルナシアは声を掛ける。

 

「久しぶりね、ロジャー」

「おお、ルナシアか……久しぶりだなぁ」

 

 どうやって来た、などとロジャーは聞かない。

 色んな島に現れる、神出鬼没のルナシアという新聞記事を自首する前に読んでいた為だ。

 

「偉大なる航路を制覇して海賊王になった時、お祝いの品でも贈れば良かったかしら?」

「じゃあ酒はあるか? 祝いの品ということでくれ」

「そうくると思って持ってきたわ」

 

 ルナシアは自らの体を霧化して、鉄格子の間をすり抜けて牢獄の中に入る。

 彼女は懐から小さな酒瓶を2つ取り出し、その蓋を開けて彼の手に持たせた。

 彼の両手は手錠で繋がれているが、飲むことはできる。

 

 ロジャーはそれを一気に半分程飲んだ。

 

「美味い酒だ」

「お気に入りだもの」

 

 そう言ってルナシアもまた酒瓶に口をつけて少しだけ飲む。

 

「で、どうして自首を?」

「まあ、もう言ってもいいか……不治の病というやつでな。長くねぇんだ」

「それ、シキが知ったら仰天するわよ。彼、あなたを自分で処刑するって1人でマリンフォードに乗り込んで捕まったみたいだし」

「あいつらしいな」

 

 ゲラゲラ笑うロジャーにルナシアは呆れながらも問いかける。

 

「そういや白ひげとも自首する前に酒を呑んだ。あいつめ、お前が最近やっていることについて、悪知恵の回るクソガキだとか言っていたぞ」

「あいつのヒゲを引っこ抜いとくわ」

「そいつが見れねぇのが最大の未練かもしれねぇ……」

 

 ロジャーは豪快に笑うが、途中で咳き込み吐血する。

 

「相当重症みたいね」

「ああ、どっちにしろ明日には終わりだ……冥土の土産にラフテルへの行き方でも教えようか?」

 

 そう問いかけるロジャーにルナシアは肩を竦めてみせる。

 

「ラフテル……笑い話って島に名付けるくらいなんだから、笑うしかないようなものがあったんでしょう?」

「ま、そこは実際に行った時のお楽しみだ。お前は情報を集めているか?」

歴史の本文(ポーネグリフ)が怪しいと思っている。単なる歴史的な遺物ってわけじゃないでしょう、アレ」

「勘がいいな。それを辿っていけばいい。ただ進むだけじゃダメだ」

 

 なるほどね、とルナシアは頷いて問いかける。

 

「で、ラフテルとかいう遠い島のことよりも、手近なところにお宝は隠していないの?」

「ねぇな! 何にもねぇ! 解散する時に全部使っちまった!」

 

 言い切るロジャーにルナシアはジト目で彼を見ながら問いかける。

 

「何か言い残したりするの? 明日の処刑のときに」

「ラフテルへの行き方を俺なりに言ってやろうかと思っているが、良い言葉が思い浮かばねぇ。何かないか?」

 

 問われてルナシアはにんまりと笑う。

 

「あなたの財宝があるとでも言っておけばいいんじゃないの? そうすりゃ血眼になって探すわ」

「そりゃいいな。そうするか」

 

 そう答えてロジャーはひとしきり笑ったところで告げる。

 

「会いに来てくれて嬉しかったぞ、ルナシア」

 

 そう言って残っていた酒を彼は飲み干した。

 

「ええ、あなたには一時期世話になったからね。またいずれ、どこかで会いましょう」

 

 ルナシアの言葉にロジャーは不敵な笑みを浮かべてみせる。

 

「ああ、またどこかでな」

「その頃には私も笑い話の意味を知っていると思うから」

「そいつは楽しみだ」

 

 ロジャーの言葉を聞きながらルナシアは立ち上がって、微笑みながら告げる。

 

「もしもロックスに会ったら、よろしく言っといて頂戴」

「そうか、アイツと出会う可能性もあるのか……まあ、仲良くやるさ。お前も元気に暮らせよ」

「ええ、じゃあまたね」

「ああ、またな」

 

 そしてルナシアは牢獄から霧化して出ていった。

 彼女を見送ったロジャーは昔を思い出し、小さく笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、処刑を間近に控えたロジャーを見守る群衆の中に、かつての船員達だけでなくルナシアがいるのに彼は気がついた。

 そして、その傍には彼女の仲間と思われる連中もいる。

 

 どいつもこいつも実力者であることが一目見ただけで分かったが、その中で彼が驚いたのは黒刀・夜を背中に背負っている青年がいたことだ。

 鷹の目のような男で、底知れぬ強さを感じる。

 

 

 誰かとつるむような性格では無さそうだが、どうやってルナシアは引き込んだのだろうか――?

 というか、ルナシアが夜を誰かに渡すことが信じられねぇ――!

 

 

 そんなことを思っているといつの間にやら処刑の時間となった。

 首が落とされる間際に彼は叫ぶ。

 

「俺の財宝か? 欲しけりゃくれてやる! 探せ! この世の全てをそこに置いてきた!」

 

 

 

  

 

 

 ロジャーの放った言葉。

 すぐに彼の首は落とされたが、その言葉は群衆の誰もが聞いた。

 海賊王と呼ばれた男の財宝。

 それがあることに誰もが興奮し、歓声を上げた。

 

 その中でたった1人、ルナシアは笑っていた。

 大きな悪戯が成功した子供のように。

 

「……何を笑っている?」

「ええ、ミホーク。一人の偉大な男が最後の最後でとびっきりの悪戯を成功させたのよ。面白いじゃない」

 

 意味が分からんとばかりに肩を竦め、彼は踵を返す。

 

「あら、もう行っちゃうの? せっかく集まったのに……」

「孤児だった俺を拾い、育ててくれたことは感謝する……良い刀を授けてもらったことも」

 

 だが、と彼は続ける。

 

「まだこれを充分に使いこなせているとは言い難い。俺は修行に行く」

「……育て方を間違えたわ」

「案ずるな。今回のようにお前の呼びかけには応じる。俺なりのやり方で恩も返す。ではな」

 

 そう告げて、ミホークはその場を後にした。

 彼に続いてその場を離れる者がいた。

 

「クロコダイル……あなたも?」

「俺は俺のやり方でお前に貢献する……お前は俺と仲間達を直属の部下としてくれたからな。お前の方針に反することはしないから、安心しろ」

「はいはい、でもニューゲートとかにちょっかいを掛けたりはしないでね。面倒くさいから」

 

 その言葉を背中で聞きながら、彼もまた去っていった。

 もはや予想がついている為、ルナシアは特に驚くこともなく残る2人へ視線を向けた。

 

「で、やっぱりあなた達ももう行くわけね。ドフィ、テゾーロ……」

「ああ、俺なりのやり方で恩返しさせてもらうさ。あんたの方針に沿ってな」

「同じくだ。大きな恩がある……裏切ったりはしねぇ。勢力拡大に貢献する」

 

 ルナシアは肩を竦めてみせる。

 

「とりあえず、テゾーロはステラと末永く幸せに爆発しろ」

「それは祝っているのか? それとも呪っているのか?」

「私なりの祝福よ」

 

 ルナシアとテゾーロのやり取りを聞いて、ドフラミンゴは笑いながら去っていった。

 彼の後ろ姿を見送り、ルナシアはテゾーロに問いかける。

 

「テゾーロ、あなたはどうするか教えてくれても……?」

「まだ具体的な計画はないが、能力を活かしてカジノでも開こうかと思っている……しかし、どうして俺にゴルゴルの実をくれたんだ?」

「あなたは貧しさを知っているからね。あとステラを幸せにしてやりなさい」

 

 優しく微笑みながら告げるルナシアにテゾーロは何だか恥ずかしくなって、顔をそらしながら、走り去った。

 

「……というか、どいつもこいつもボスを置き去りにしていくって酷くない?」

 

 ルナシアは頬を膨らませつつ、何気なく見聞色で周囲を探ってみると――中々良いヤツを見つけた。

 彼女から程近いところにいる為、早速そちらへ向かう。

 

 そこにいたのは悪魔っぽい見た目をした青年であった。

 ルナシアは声を掛ける。

 

「ねぇ、あなた。強そうね。ちょっと私と戦ってみない?」

「キシシシ、俺とやり合おうってのか? このモリア様と!」

「ええ。私に負けたら全てを差し出してくれるかしら?」

「おもしれぇ! やってやろうじゃねぇか!」

 

 ルナシアはニコニコ笑いながら、懸賞金の額を聞いてみた。

 

「懸賞金はいくら?」

「俺は2億ベリーだ! だが、すぐに3億になる筈だ……!」

 

 意外と大物だったとルナシアは感心してしまう。

 するとモリアが問いかけてくる。

 

 

「お前も海賊なのか? 手配書で見たことあるような……」

「私の首を持ってけば億万長者になれるわよ。私も億超えでね」

「キシシ! じゃあそうするぜ!」

「場所を変えましょうか」

 

 ルナシアの提案にモリアは承諾し、彼に良い場所があると言われてルナシアはついていった。

 そして、彼女が案内されたのはモリア率いるゲッコー海賊団の船であった。

 

 モリアを筆頭にルナシアを取り囲む数多の手下達。

 しかし、彼らを前にして彼女は微笑みながら告げる。

 

「せめて1分は頑張ってほしいわ」

 

 それを挑発と受け取ったゲッコー海賊団はモリアを先頭にルナシアへ殺到し――すぐに彼らは全員が甲板に倒れ伏した。

 ルナシアが放った覇王色の覇気に耐えられなかった為だ。

 薄れゆく意識の中、モリアは聞いた。

 

「そういえば私の懸賞金の額、確か35億ベリーくらいだったわ。言い忘れていて、ごめんなさい」

 

 彼はその額を聞き、思い出した。

 最後の力を振り絞って、彼は顔を上げ――告げる。

 

「てめぇは……不死身のルナシア……! 何で、こんなところに……」

 

 そう言って彼は気を失った。

 

「ロジャーを見送りに来たのよ……聞こえてないか」

 

 殺したわけではない為、ルナシアはモリアの横に腰掛けて、彼らが起きるのを待つことにしたのだった。

 

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