問題児? 失礼な、俺は常識人だ。   作:怜哉

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黒歴史爆発しすぎてて書いてて心がしんどい。
でも中二心が刺激されてちょっと楽しい。

そんな第2話。


逃げるは恥だが役に立つ

 

 

 

 

 

《フォレス・ガロ》とのギフトゲームが決まり、一通り黒ウサギのお叱りを受けたあと。

 

 ジンくんを先に《ノーネーム》の本拠地へ帰らせ、俺たちはギフトの鑑定をしてもらう為に《サウザンドアイズ》というコミュニティを目指していた。

《サウザンドアイズ》は、箱庭全域に精通する巨大商業コミュニティらしい。黒ウサギの話では、コミュニティのメンバーは何か特別な”瞳”を持っているとのこと。この近くにあるという支店にいる幹部にギフトの鑑定をしてもらえば、明日のゲームで自分の力を正しく引き出せる様になるようだ。

 

 まぁ、自分の力は自分がよく知ってるわけで。

 正直俺は...というか、俺たち四人は全員、ギフト鑑定とやらにあまり乗り気ではない。

 

「うちは時間外営業は行っておりません。おかえりください」

 

 青基準の生地で、女神っぽいものが向かい合って描かれている割烹着を着た女に、俺たちは門前払いをくらった。

 しかしまぁ、時間外営業は良くない。別に自分のギフトなんて分からなくてもいいし。

 そう思い、憤る黒ウサギを引っ張って《ノーネーム》の本拠とやらに向かおうとして──黒ウサギから一歩離れた。

 

「いやっふうううううつううつうううううううううう!!!! 久しぶりだな黒ウっサギぃいいいいい!!!!!」

「ぴぎゃあぁあああ!??!!?」

 

 店内から文字通り飛んできた何かに、黒ウサギが吹っ飛ばされる。

 面白いように転がっていった黒ウサギと飛んできた何かは、その勢いを殺すことなく近くを流れていた川に落ちた。

 

「...なぁ店員。この店ではああいうドッキリサービスをやってるのか? なら俺も別バージョンで頼む」

「ありません」

「なんなら有料でも可」

「やりません」

 

 逆廻はあれをやられたいのか。

 普通に背骨とか痛そうだけど。

 

 と、川の方から、黒ウサギの怒声と共に、例の飛んできた何かが飛んでくる。

 それは綺麗な放物線を描き、そして逆廻に足蹴にされた。

 

「ちょっ、正気かおんし?! 飛んできた美少女を足で受け止めるやつがあるか!!」

「それが俺だ」

 

 鳩尾へだいぶいいのをもらったにも関わらず、何か──和装の自称美少女は、まるでダメージを負ったように見えない。

 自称美少女は、一つ息をついてパンパンと服の汚れを払う。

 そういえば、黒ウサギと共に川へと落ちたはずの自称美少女は、全く濡れていない。彼女の特殊な能力なのだろうか。

 

「貴女は? この店の人?」

 

 一連のやり取りに呆れたようにため息を吐いて、眉間の押さえた久遠が自称美少女へと話しかけた。

 自称美少女は久遠を見るなり、そのちんまりとした胸を張る。

 

「ん? ああ、その通り。《サウザンドアイズ》の幹部様で白夜叉様だよ、ご令嬢。仕事の依頼なら、その発育の良い胸をワンタッチで引き受けてやるぞ?」

「引き受けません」

 

 馬鹿なことを言い出した自称美少女の超大手コミュニティ幹部様に、割烹着の店員が素早くつっこむ。

 

「まあ、立ち話もなんだ。上がるがいい、黒ウサギに童共。なに、店は閉めるが、私の部屋なら問題あるまい? のぅ?」

 

 そう言って笑う白夜叉と、それに従って白夜叉の部屋へ上がろうとする俺たちを、割烹着の店員が憮然な顔をして睨み付けていた。

 

 

 * * * * *

 

 

「さて。では改めて自己紹介をしようかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えておる《サウザンドアイズ》幹部、白夜叉だ」

 

 白夜叉の私室だという、店の奥に広がっていた武家屋敷の一室にて。

 手元で扇子を弄りながら、白夜叉は不遜に言い放つ。

 

 不遜とは、言い換えればデカい態度ということだ。

 ともすればジンくんより幼く見える幼女にそんな態度をとられれば、キレるか、もしくは和むかの二択だろう。

 しかしながら、目の前の幼女にはそんな感情は抱けない。

 

 彼女は、俺たちとは格が違う。

 

「はい。質問」

 

 そんな彼女に臆することなく、春日部が挙手する。

 

「よい。なんだ?」

「外門って何?」

 

 聞き慣れない単語への質問に、白夜叉ではなく黒ウサギがウサ耳をピンと立てて答える。

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです。因みに私達のコミュニティは一番外側の七桁の外門ですね」

 

 ああ、なるほど。

 木の年輪や玉ねぎみたいな感じか。

 

「バームクーヘンみたいな?」

「まぁ、ざっくり言ってしまえばそんな感じじゃの」

 

 なにその例え。オシャレじゃん...。

 

「して、ここは七桁外門。おんしが例えたバームクーヘンで言うところの、一番外側の皮に位置する外門だ」

 

 そう言って、白夜叉はどこからともなくバームクーヘンを召喚する。

 いや、本当に召喚した。もしくは錬成だ。何も無いところから突然バームクーヘンを錬成しやがった。等価交換って知ってっかお前。

 

「そして、私がいる四桁以上が上層と呼ばれる階層だ。その水樹を持っていた白蛇の神格も私が与えた恩恵なのだぞ?」

「へぇ?」

 

 白夜叉の言葉に、逆廻が好戦的な笑みを浮かべる。

 逆廻がぶん殴ったという白蛇がどの程度の強さなのかは知らないが、神格を与えた、ってのはどういう意味なのか。

 その言葉が本当であれば、目の前の少女は、ただの蛇を神にまで伸し上げることのできる存在というわけだ。

 

 なにそれ怖い。

 

「つーことはお前、あの蛇より強いのか?」

 

 普通に恐怖を覚えた俺と違い、逆廻は好奇心を抑えられない様子で前のめりに聞いた。

 

「もちろんだとも。私は東側の“階層支配者(フロアマスター)”だぞ? この東側では並ぶ者のいない、最強の主催者(ホスト)だ」

 

 それを聞いた逆廻、久遠、春日部の動きは早かった。

 息を揃えて一斉に立ち上がり、白夜叉へと一歩詰め寄る。

 

「最強? へぇ、そりゃあ景気がいい」

「つまり、ここで貴女を倒せば、最強の座は私たちのもの、ということよね?」

「.....現状からの一発逆転。これを逃す手はない」

「ちょ、御三人様?!」

 

 さらに白夜叉へとにじり寄る問題児三人組と、それを必死に止めようとする黒ウサギ。

 そんな彼ら彼女らの姿を、俺は何も言わずに見ていた。

 それを白夜叉に気付かれ、声をかけられる。

 

「ふむ。血気盛んなこやつらとは違い、おんしは落ち着いておるの。私が怖いか?」

「ん? ああ、怖いよ。すごく怖い。絶対に争いたくない」

 

 気負うことなく、俺は本音をぶちまける。

 少女に怯えているというのは実にみっともない話だと思うが、しかしそれが現実だ。今戦ったところで、確実に負ける。つーか死ぬ。絶対に(・ ・ ・)。今は戦っちゃダメだ。

 

「なんだよ佐久本。お前、つまらねぇ奴だな」

「アホか。つまるつまらないの次元じゃない。お前だって分かんだろ。白夜叉は強い。文字通り桁が違う」

「その程度で引くってのがつまらねぇって言ってんだよ」

「負けるのが分かってて勝負挑んで死ぬ方が、俺にとってはつまらねぇよ」

 

 トゲトゲしい言葉の横行に黒ウサギがヒヤヒヤしていると、白夜叉の口からクツクツと笑い声が漏れた。

 

「よかろう。では小僧ら、そして少女たちにも。私から選択肢を与えてやる」

「選択肢?」

 

 苛立たしげに眉根をひくつかせる逆廻を扇子で制し、白夜叉はスっと細めた瞳で俺たちを射抜いた。

 

「今一度名乗り直そう。私は”白き夜の魔王”──太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か? それとも、対等な”決闘”か?」

 

 そう言うが早いか。

 世界は一瞬の間に流転した。

 

「なっ───」

 

 不遜な態度を崩さなかった逆廻の口から、驚愕に染まった声が、留めきれずに溢れ出る。

 そんな逆廻に負けず劣らず、久遠も、春日部も、そして俺も。脳がイカれたと錯覚するくらい、人生最大級の驚愕に見舞われた。

 

 桁が違う? 何を寝ぼけたことを言っていたんだ俺は。

 目の前の少女は、俺の...俺たちの定規で測っていい存在じゃない。

 

 正真正銘、最恐の化け物だ。

 

 

「.....参った」

 

 重々しい沈黙が場を支配する中、逆廻が両手を上げる。

 

「降参だ、白夜叉。これだけのものを見せてくれたんだ。今回は大人しく試されてやるよ」

 

 試されてやる。

 なんて傲慢で、どこまでプライドの高い奴なんだろう。

 しかしそれは魔王を満足させるには十分な言葉らしく、白夜叉は笑いを堪えている。

 

「く、くくっ.....よかろう。して? ほかの童達も同様か?」

「.....ええ。私も試されてあげる」

「右に同じ」

「...まぁ、“挑戦”ってことなら」

 

 悔しそうにする久遠や春日部と、しぶしぶ白夜叉の“挑戦”を受ける俺。

 一連の流れを心臓が飛び出る思いで見守っていた黒ウサギが、ホッと胸を撫で下ろす。と同時、烈火の如く怒った。

 

「も、もう! お互いにもう少し相手を選んでください!! 階層支配者に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う階層支配者なんて、冗談にしても寒すぎます!! それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」

「何? じゃあ元魔王ってことか?」

「はてさて、どうだったかな?」

 

 はぐらかすように笑う白夜叉の声をかき消すように、遠くの山脈の方から、甲高い獣の鳴き声が響いてきた。

 その声にいち早く反応したのが春日部だ。

 

「今の声...初めて聞いた」

「ふむ、あやつか。ちょうど良い。今回おんしらに課す“試練”、あやつに任せようかの」

 

 そう言って、山脈に向かってチョイチョイと手招きする白夜叉を、逆廻が睨む。

 

「オイ。お前が俺たちを試すんじゃねぇのかよ」

「言っただろう? 今のおんしらにはあやつがちょうど良い」

 

 白き夜の魔王(自分)が相手をするには、お前たちは実力不足だ。

 そう言われたような気がして...というか事実そういう意味合いで言ったのだろう白夜叉に、逆廻は一つ舌打ちをする。

 しかし、そんな逆廻の気持ちを払拭するかのように、春日部が歓喜の声を上げた。

 

「あれ...もしかして、グリフォン!?」

 

 山脈の方から飛来している、まだ米粒ほどの大きさに見える何か。

 常人離れした視力を持っているのか、春日部にはアレがなんなのか、その目にしっかりと写っているらしい。

 グリフォン。鷲の上半身と獅子の下半身を持つ、伝説上の生物。

 珍獣ハンターを自称している俺だが、さすがにグリフォンは専門外すぎる。珍獣ってより幻獣だしな。

 

「ほう? おんしには見えるか。如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。"力""知恵""勇気"、全てを備えたギフトゲームを代表する獣だ」

 

 そう言っている間にも、グリフォンはとてつもない速度でこちらへと向かってくる。

 風を纏い、五メートルはあろうかという巨躯を誇る、空と陸の王。

 そんなグリフォンが、俺たちの前へと降り立った。

 

 目を輝かせる春日部へと自慢げに鼻を鳴らした白夜叉は、ぱんぱんと二度柏手を打った。

 すると、一枚の羊皮紙が突如として現れる。

 

 

『ギフトゲーム名"鷲獅子の手綱"

 

 プレイヤー一覧:逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀、佐久本燈也

 

 ・クリア条件 グリフォンの背に乗り、湖畔を舞う。

 ・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”いずれかでグリフォンに認められる。 

 ・敗北条件 降参、またはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合

 

 宣誓。上記を尊重し、誇りと御旗と主催者ホストの名の下、ギフトゲームを開催します。

 “サウザンドアイズ”印』

 

 

 逆廻の手に渡った羊皮紙には、そう書かれていた。

 これが噂に聞くギフトゲーム、その契約書的なものなのだろう。

 

 ...あれ? ガルドにゲームを取り付けた時点ではこんなの出てこなかったけど、その辺大丈夫なん?

 

 俺が疑問を抱いていると、春日部が勢いよく手を挙げた。

 

「はい、私がやる」

 

 その声は俺たちに有無を言わせず、春日部はずんずんとグリフォンへ近付いていく。

 その目はまるで、欲しいものを見つけた子供のようにキラキラと輝いていた。

 

「大丈夫か? 生半可な相手には見えないけど」

「大丈夫、問題ない。すぅ.....。はじめまして。春日部耀です」

 

 グリフォンの体が僅かに跳ねる。

 幻獣である自分と言葉を交わすギフトは確かに存在するようだが、その数が多いわけではない。

 夢のあるギフトだと思うが、『動物と言葉を交わす』だけなわけがないよな、きっと。

 逆廻の異常な身体能力、久遠の支配の力。これらに比肩するギフトが、まさか動物と話せるだけだなんて、とてもじゃないが思えない。

 さっきガルドを押さえつけた膂力。身のこなしも、格闘技をやっているような動きではなく、どちらかと言えば野生のそれだった。

 

 そんな俺の考察をよそに、春日部は慎重にグリフォンへと語りかける。

 

「私を、あなたの背中に乗せてほしい。私と、誇りをかけた勝負をしませんか? 私が負けたら...あなたの晩ご飯になってもいい」

「ちょ、春日部さん!?」

「正気でございますか!?」

「黙れ。おんしらは下がっておれ、手出しは無用だ」

 

 白夜叉の是非を言わせぬ冷たい声に、久遠と黒ウサギは押し黙る。

 そんな二人を見届けた白夜叉がおもむろに手を一振りすると、湖畔に鳥居の様な門が現れた。

 

「そこからグリフォンの背に乗り、山脈を一周する。最後まで振り落とされなければ、おんしの勝ちとしようかの」

「分かった」

 

 短く頷き、春日部はグリフォンの背に乗った。

 春日部とグリフォンが何度か言葉を交わしたあと、なんの合図もなく、突然に“挑戦”が始まった。

 

「...へぇ。グリフォンって空を駆けるんだな」

 

 もう米粒ほどの大きさに見えてしまうほど遠くへ行ってしまったグリフォンを見て、俺はなんとなしに呟いた。

 あれだけの図体を持っていながらどうやって飛ぶのかと思っていたが、なるほど。大気を足場にして、まるで地上を駆けるかのように飛ぶのか。

 

「春日部さん、大丈夫かしら...」

 

 久遠の心配そうな声を聞きつつ、俺は春日部の勝ちを確信する(・ ・ ・ ・)

 俺は山脈の向こう側へと隠れてしまったグリフォンと春日部の姿を追いかけた。

 実際に見えているわけではないが、それでもだいたいの場所は分かる。もうすぐ山脈から姿を現す頃だろう。

 

「あ、見えましたよ!」

 

 黒ウサギが声を張る。

 その言葉通り、山脈の陰からグリフォンと春日部と思わしき米粒みたいな影が見えた。

 グリフォンはこれが最後の試練と言わんばかりに急降下や急上昇、更には錐もみ回転をしながら飛行している。

 

 右往左往、縦横無尽。ジェットコースターなんて目じゃないくらいの動きをするグリフォンだが、ゴールである鳥居との距離は着々と縮み、そしてとうとう鳥居を抜ける。

 

「やった!」

 

 久遠の歓喜の声が響く。

 黒ウサギも春日部の無事を喜び、そして胸を撫で下ろした。

 そんな安心も束の間。ゴールして気が抜けたのか、春日部がグリフォンの背から落ちる。

 

「っ!」

「待てお嬢様。まだ終わってない」

 

 落下する春日部を受け止めようとした久遠を、逆廻が止める。

 春日部の体が地面に激突する──その前に、春日部は大気を蹴って宙を歩いた。

 

「なっ.....」

 

 驚嘆の声をあげたのは黒ウサギだった。

 それもそのはず。ついさっきまで、春日部は空を飛べるそぶりなんて見せていなかったのだ。

 それが今はどうだ。まるでグリフォンのように、空気を蹴るように宙に浮いている。

 落下するはずだった体はゆっくりと、階段を降りるかのように地面へと着地した。

 

「やっぱりな。お前のギフトは『他の生物の能力を手に入れる』能力なのか」

「違う。これは友達になった証」

 

 珍しく、春日部は間髪入れずに逆廻の言葉を否定する。

 あまり違いは無いように思うが、春日部にとっては重要な部分なんだろう。

 それはそうと、だ。

 

「白夜叉。これは俺たちの勝ち、ってことでいいのか? それとも、春日部以外も今のやつをやんなきゃいけないのか?」

「いんや。春日部耀のクリアはおんしらチームがクリアしたと同義。つまり...此度のギフトゲーム、勝者は《ノーネーム》である」

 

 ピクリ、と俺の眉が上がる。

 が、そんなことは誰も気にしない。春日部の勝利を喜び、祝福している。

 

「そうです! 勝利の報酬に、白夜叉様に皆様のギフト鑑定をして頂きたいのですが.....」

「げっ...よりによって鑑定か...。専門外も良いところなのだが.....ふむ。《ノーネーム》の門出となる日だしの。ちと贅沢だが、これを与えよう」

 

 パンパンと白夜叉が柏手を打つと、俺たち四人の前に一人一枚、四角形のカードが現れた。

 さっきから白夜叉さん柏手でいろいろやりすぎ。柏手万能説出てきたなこれ。

 

「それは...ギフトカード!!」

「お中元?」

「お歳暮?」

「お年玉?」

「お年賀?」

「ち・が・い・ま・す!! というかなんで皆さんそんなに息がピッタリなんですか!? それは顕現してるギフトを収納できる上に、各々のギフトネームが分かるといった超効果な恩恵です!!」

 

 興奮気味に騒ぐ黒ウサギを他所に、俺たちは各々自分のギフトカードとやらを確認する。

 

 

 コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)

 

 ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

 パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の目録(ゲノム・ツリー)” “ノーフォーマー”

 

 

 チラッと覗き見た感じ、それぞれのギフトはそんな感じだった。

 久遠と春日部は分かる。名前そのまんまの能力だったし。

 逆廻のは分からん。名前から推測すらできない。チート野郎め。

 白夜叉や黒ウサギも、逆廻のギフトカードを見て驚いている様子だ。

 

「それで? 佐久本のギフトはどんなんなんだよ」

 

 自分のギフト名に満足気だった逆廻が、俺へと標的を変える。

 正直あまり他人に見せびらかすものではないと思うが、今回ギフトカードを手に入れられたのはゲームをクリアした春日部のおかげだ。

 なら、その春日部が属する《ノーネーム》には俺のギフトを見る権利がある。

 

「ほれ」

 

 みんなに見えるようにカードを前へ向ける。

 俺の手元へ降りてきたダークパープルのカードには親切にも、見やすい白色の文字でこう書かれていた。

 

 

 

 佐久本燈也・ギフトネーム“星の王権”

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

「いやはや。面白い童共がきたものだのぅ」

 

 自室に用意された熱いお茶を啜りながら、白夜叉は先程の出来事を思い出す。

 

 黒ウサギが異世界から呼んだ四人の高ランクギフト保持者。

 少女二人は、非常に強力なギフトの保持者だ。磨けば光る原石。七桁外門ではほぼ敵無しと言えるだろう。

 

 そして、少年二人は──異質だ。

 

「“正体不明”...全知であるラプラスの紙片をもってして知り得ないギフト、か」

 

 黒ウサギによれば、水神を拳一撃で沈めたという。ギフトを無効化するギフト、では黒ウサギに匹敵する身体能力が説明できない。

 

 もう一人は───

 

「何用だ」

 

 思考を打ち切り、姿勢は変えずに声だけを張る。

 誰もいないはずだった。が、白夜叉の声に応じる形で、一つの人影が、白夜叉の前に現れる。

 

「悪いな。店前の店員は面倒そうだったから黙って入ってきた」

「フン。乙女の部屋に無断で立ち入るとはけしからん。用件を言え」

 

 口調とは裏腹に、白夜叉に怒りはない。

 むしろ、白夜叉の心中に渦巻くのは喜びの感情だった。

 

 かつてこの箱庭を縦横無尽に暴れ回った“白き夜の魔王”相手に、部屋に入られるまで気取らせない気配遮断能力。

 それだけで、暇を持て余していた自分を楽しませるには十分だ。

 

「じゃあ、担当直入に言う。白夜叉、コミュニティの作り方を教えてくれ」

「.....なに?」

 

 耳を疑う。

 彼には《ノーネーム》というコミュニティがあるはずだ。まさか、その《ノーネーム》をもう抜けるというのか。

 

「黒ウサギから聞いた。逆廻たちを喚ぶ為のギフト、お前が用意したんだってな? なら分かるだろ。俺は《ノーネーム》に喚ばれた人間じゃない」

「ほう?」

 

 確かに。

 自分が黒ウサギへと与えたギフトで召喚できるのは三人。一人多いわけだが...余分の一人は、目の前の少年だったわけだ。

 

「しかし、おんしは《ノーネーム》に」

「入った覚えはない」

 

 少年はきっぱりと言い放つ。

 

「ガルドにも言ったけど、俺は、俺より弱いやつの下につくつもりはない。いや、違うかな。そもそも、誰かの下につくつもりなんて毛頭ないんだ」

 

 だから自分のコミュニティが必要だ、と。

 少年はそう言い放った。

 

「明日のゲームには出る。全力で勝利に貢献する」

 

 少年が全力を出せば、今頃鬼化しているであろうガルドが相手でも、問題なく勝つことができる。

 

「.....。あい分かった。おんしは巻き込まれただけだしの。明日のゲーム、勝つことができたなら、おんしのコミュニティを立ち上げてもよいぞ」

「白夜叉が作ってくれるのか?」

「階層支配者の権限だ。おんしのコミュニティ設立を、箱庭の中枢へと記録する。コミュニティの名と旗を考えておけ」

「ありがとう。恩に着る」

 

 一礼し、少年は部屋を去る。

 

「《ノーネーム》の連中には、おんしが意図的に誤解させたままであろう。説明は自分でしろよ」

「...分かってる」

 

 その言葉を最後に、白夜叉は少年の居場所を掴めなくなった。

 ここへ来た時同様、気配を絶ったのだろう。

 ここ《サウザンドアイズ》支店は、白夜叉にとって全ての事柄が有利に進むように創られている。にも関わらず、まだ敷地内にいるはずの少年の気配を、白夜叉は追うことができない。

 

 全く、並の相手であれば暗殺し放題ではないか。

 そう内心で思い、お茶を一口啜った白夜叉は静かに空を見上げる。

 紫色に染まった空では、十六夜の月が怪しげに輝いていた。

 

 

 

 




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感想とかクレメンス。
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