問題児? 失礼な、俺は常識人だ。   作:怜哉

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例えば、ベルトコンベアのような人生

 

 

 

 

 

 

 ジャガーマン、ケツァルコアトル、イシュタル、キングゥ。

 バビロニアを震え上がらせている根源のうち、約半数の災厄と対峙、討伐した日の翌日。

 ウルクにある燈也の居城、兼カルデア大使館にて。

 

「いつからここはカルデアと併用になったんだ」

 

 燈也は不満げにそう言った。

 

 以前、というか昨日まで、この建物は燈也たちに宛てがわれたものだった。にも関わらず、気が付けば「カルデア大使館」などと名付けられ、彼の居城は事実上瓦解したのである。

 

 機嫌を損ねた魔王を、カルデアのマスター、藤丸立香が宥めに入る。

 

「まぁまぁ。燈也もカルデアの仲間なんだし、ここは仲良く...ね?」

 

 あの英雄王やファラオとでさえ友好関係を結ぶ人類最強クラスのコミュ力オバケは、魔王が相手であっても物怖じしない。

 チッ、と舌打ちし、まぁいいかと燈也も不満を表情から消す。

 

「まぁいい。それで? お前らどこ行くんだよ」

 

 何やら荷物を背負っている立香に聞いた。

 

「ちょっと不倫調査にね」

「平和か?」

「そんなことありません! 浮気は重罪、断固断絶すべき悪です!!」

 

 やけにやる気と殺意を持ったマシュが、ふんすと意気込む。

 何をそんなにやる気になっているのか分からないが、まぁ頑張れと適当にカルデア組を見送り、燈也も居城、もといカルデア大使館を出る。

 

 リリアナたちはいない。

 彼女らは、すでに北壁の戦線へと出向いている。

 燈也は早速冥界へ──といきたかったが、そうも言っていられない事情があった。

 そう、冥界への行き方が分からないのである。

 一応、神代は冥界と現世が繋がっているというので、ウルク近郊の地面を片っ端から抉っていったのだが、冥界への道は開けなかった。

 

「(ま、分かんねぇなら無理して行くこともあるまいて)」

 

 冥界に興味はあるが、何が何でも行きたいかと聞かれればそうではない。

 機会があれば行ってやるか。そう思い、とりあえず暇潰しに市場でも冷かそうと街に繰り出したわけである。

 

 

 いくら燈也が人の上に君臨する王とはいえ、ある程度のルールは守る。

 意味もなく他人の物を壊したり、気晴らしに通行人を恐怖に貶めたり。そういうことはやらないのが燈也だ。

 この辺の倫理観は彼の母の教育の賜物と言えるだろう。もし彼の親がロクデナシであったり、彼が一人で生きてきていたのなら、今頃燈也のいた世界は滅びていたかもしれない。世紀末的な意味で。

 

「おっちゃん、パン二つ」

「あいよ! それじゃあ巫女の銀二枚だ!」

「ふざけろじじい。ぼったくりもいいとこだ」

「なんだい、じゃあ巫女の銀一枚でいいよ!」

「店ごと潰すぞくそじじい。その十分の一で寄越せ」

 

 この時代の金銭価値はよく分かっていない燈也だが、勘でぼったくられていることは分かるらしい。

 世界が滅びようって時に商魂逞しいものだと感心しつつ、軽く怒気をぶつけて安くパンを入手した。曰く、相場の五分の一程度にまで値下げされたらしい。パン屋の店主は震えていた。

 

 ジャムやマーガリンなどというものが存在しないこの時代。パンをただ齧るだけでは味気ないので、別の店で加熱調理された肉を買い、パンに挟む。

 やっぱ魚より肉だわと自分の好みを再確認していると、ふと、薄暗い路地裏に目がいった。

 

 特段、目立ったもののない路地裏だ。

 整理されてはいるものの、綺麗でも汚くもない、普通の路地裏。

 その中に、ホームレスのような姿をした、小汚いローブを纏った老人が一人。これもまた、魔獣による侵攻の影響もあり、この街では珍しくない。

 だが、何かが燈也の気を引き付ける。

 

 じっと路地裏を見つめ、次第に老人へと視線が向かう。

 不躾ではあるが、自身の行為は全て正義であると考える燈也に、相手に失礼だという認識は一つもない。

 

「──何用か」

 

 燈也の視線に耐えかねたか、老人が口を開いた。

 老人とは思えぬ、力と意志の篭った声。その声を聞き──彼の内なる力を感じ、燈也は自分の引っかかっていた原因を突き止めた。

 

「.....なんだ。久しぶりじゃねぇか、髑髏野郎...!」

 

 獰猛に口端を釣り上げ、一気に魔力を解放する。

 それだけで、周囲の建造物は吹き飛ばされ、地面には亀裂が走った。

 周りにいた人間もタダでは済まない。皆一様に飛ばされ、恐怖の滲む目を燈也へと向ける。

 

「控えよ、代行者。汝はまだ、己が使命を理解しておらぬか」

「してるさ。俺の使命は、テメェみてぇな強者を叩き潰すことだよ!」

 

 言うが早いか、燈也は老人──山の翁、ハサン・サッバーハへと間を詰める。

 腹部に拳を叩きつけ、ハサンを後方へと殴り飛ばした。

 否、ハサンは自ら後ろへ飛び、拳の威力を殺したにすぎない。

 

「──愚かなり。汝が蛮行、貴様を選んだ星も嘆いているだろう」

「星だなんだは関係ねぇ。俺の行動は、俺の意思で実行される」

 

 型を構え、まっすぐにハサンを睨む燈也。

 

 燈也は、勝者(カンピオーネ)である。

 彼は、自分の敗北を許さない。相手が誰であれ、勝つことを本能で追い求める。

 一度負けているハサンへの再戦は、燈也が心から望む願いだ。

 故に、相手が今戦うべき存在でなくとも、目の前に現れたのならば見逃しはしない。

 

「我に汝と争う意思はない。以前にも話した通り、それは汝の成すべき偉業にあらず」

「分からねぇ野郎だな。俺が戦いたいと思った。ならそれは、俺の成すべきことだ。俺の願いの下の行動は、ほかの何者にも左右させない」

 

 燈也が踏み込む。

 ただ突っ込んだわけではない。気配を薄め、ずらし、かつフェイントも無数に取り入れた。

 武芸に秀でたスカサハにも通用した攻撃だが、ハサンはそれにすら反応する。

 どこからか現れた大剣の腹で燈也の拳を防ぎ、そのまま横に一閃し、燈也を下げさせる。

 

「やる気になったか」

「...やはり愚か。貴様は、まだ罪を犯し続けるか」

 

 ローブを脱ぎ去ったハサンは、その髑髏と、漆黒の鎧を太陽の下に晒す。

 瞳の奥に青白い炎が灯る。ハサンも、敵を斬ることを覚悟した。

 

「罪だ? ほざけよ。(勝者)こそが正義だ」

「傲慢である。思い上がるな」

 

 またも燈也から仕掛け、数撃の衝突が起きた。

 拳と剣が交差するたびに衝撃が生まれ、空気の刃となって周囲を破壊する。

 ここまでは以前と同じ。燈也の攻撃が、ハサンに届かず、通じず、拮抗する。

 

 ──はずだった。

 

「むぅ...!?」

 

 ハサンの声に苦痛の色が見えた。

 燈也の拳が、ハサンに届いている。確かなダメージを、幽谷の暗殺者に与えている。

 

「──鳳雛登門、鳳眼穿廉」

 

 燈也が呟く。

 秀麗さすら感じさせる滑らかな動きは止まらない。

 

「鳳爪掏心、飛鳳墜落、丹鳳朝陽、金鳳亮翅、郡鳳連環、雄鳳千斤」

 

 水の流れのように放たれた掌打であごを打ち抜き、両手の掌で胴を穿つ。肩を手刀で抉り、腹を切り裂いた。

 

「鳳翼天象、鳳龍陰陽、鳳凰双飛、大鳳無天」

 

 掌打、掌打、掌打、掌打。

 風のように気ままに揺れ、岩のように重く響く。

 その様は正に武芸。芸術と呼べる美しさを兼ね備えた一連の動きが、死神の命を刈り取らんと咲き乱れる。

 

 飛鳳十二神掌。

 羅濠が最も得意とする武芸であり、武林の至宝とも言うべき秘芸。

 神々すら食い破るこの絶技を、燈也は完璧に繰り出した。

 

 全ての型を出し終えたところで、ハサンの体が浮く。

 その隙を逃すわけもなく、地面を抉るほどの踏み込みと共に、両手の掌を打ち込んでハサンの巨体を突き飛ばした。

 

「あの頃の、お前に敗けた時と同じだと思ったか」

 

 家屋に突っ込み、瓦礫の下敷きになったハサンを見下ろし、燈也は言う。

 

 

 再三になるが、燈也という王は己の敗北を許さない。

 あらゆる才能に恵まれた燈也は、大抵のことはできるため、普段は努力というものを全くと言って良いほどしない。自分の好きなように振る舞い、快楽を求めて生きている。

 そんな彼でも、努力というものを知らないわけではなかった。

 とは言っても、知ったのはごく最近のことではあるのだが。

 

 

 最初は、羅濠教主に敗けた時。

 正確には二度目の戦いで引き分けた後からではあるが、彼女の元に弟子入りという形で潜り込み、ひたすらに試合をする(殺し合う)ことで、戦闘の中で彼女の武芸を習得した。

 

 次は、初代山の翁に敗けた時。

 カルデアという戦士の宝庫に流れ着いたが幸いと、あらゆる英霊たちと武を競い、その戦闘の中で己の武芸に磨きをかけた。

 

「立てよ、暗殺者。この程度でへたばるタマじゃねぇだろ」

 

 修行などではなく、戦闘の中で成長する理外の獣。

 カンピオーネらしいといえばらしい、燈也なりの努力で、彼は確かな成長を見せていた。

 

「ォォ.....」

 

 それは苦痛による小さな悲鳴か、はたまた見下されたことへの怒りの吐息か。ハサンの喉から、僅かな声が漏れ出た。

 それに伴い、彼の昏い瞳の奥に蒼き炎が燃え盛る。

 

「いいぜ、それでこそだ」

 

 ハサンが立ち上がったことに満足し、同時に一足でハサンの懐まで潜り込む。

 漆黒の甲冑に掌を当て、内部に響くよう打ち抜いた。

 

「ォ...ォォオ!!!」

 

 常人であれば内臓をぐちゃぐちゃにされ、最低でも吐血の一つはしてしまう一撃。

 それを受けて、ハサンは怯むこともなく、大剣を一閃する。

 

 追撃を試みていた燈也だが、その一閃を避けるためにあえなく後退。

 完璧に避けたと思い、再度攻め込もうとしたところで、体の数箇所に僅かな痛みがあることに気が付いた。

 脇腹、腕、そして首筋。その他にも数箇所、浅い切り傷が刻まれている。

 

「チッ。相変わらず見えねぇな。たった一振で数撃の斬撃...なんだ? どこぞの農民か?」

 

 多次元からの攻撃か。それとも真空波の要領か。

 まぁ普通に考えたら後者だろうなと考え、そこで思考を一度切り替える。

 切り傷程度であればものの数秒で完治するが、油断すれば五体満足ではいられない。攻撃方法がどうあれ、アレは自分の命を狩り取れるものだ。そう敵の実力を再確認し、さらに気を引き締める。

 

「シャァッ!!」

 

 ハサンがもう一度大剣を振るう。

 随分離れているというのに、それでも不可視の斬撃が燈也を襲った。

 

「クソが、しゃらくせェ!!」

 

 見えない以上、不可能ではないだろうが、避けることは困難。

 それならばいっそのこと喰らってしまえと、燈也は全身の筋肉を強ばらせる。

 魔力も通し、鉄より硬くなった体で、燈也は踏み込んだ。

 掌を握り拳に変え、荒ぶる稲妻をその拳に宿し、中段から突き上げる。

 

 対するハサンも、それを迎え撃たんと大剣を上段に構えた。

 青黒い炎を纏った一振が、生を両断するために振り下ろされる。

 

 

 二つのエネルギーが衝突する、その寸前。

 

 

「───そこまでだ」

 

 

 一つの声が、割って入った。

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 勝てる。

 俺──佐久本燈也は、そう確信した。

 

 確かに目の前の髑髏野郎は強い。

 だが、俺はそれを越えた。

 

 俺が放とうとしているこの中段突きでは決着はつかないだろう。

 それでも、その後であれば。

 相手は大振りの一撃。放った後は必ず隙ができる。そこをつく。

 密かに聖句を唱え始める。知覚できない速度で、その生まれた隙をつき滅多打ち。さらに切り札たる聖槍もある。

 

 勝ちへの道筋が見え、そこから油断が生まれないように気を締めた。

 隙が生まれるかどうかは、この一撃を超えた先にある。油断して斬られては元も子もない。

 魔力を拳に集中させる。聖句を唱え始めたせいか、魔力の一部が雷に変質したが問題はない。

 

 絶対に勝つ。

 強い意志と共に繰り出した稲妻の鉄拳は、髑髏野郎にも、そいつが持つ大剣にも、届くことはなかった。

 

「───そこまでだ」

 

 声が聞こえる。

 それと同時に、俺の目の前には無数の、視界を覆い尽くすほどの花々が咲き乱れた。

 大剣と衝突するはずだった拳も空を切る。

 視界が埋められ、行き場を失った自分の拳すらも目視できなくなった。

 

「ッ、!?」

 

 突然現れた花を拳に纏った雷で払おうとするも、雷が出ない。

 いや...出てはいる。けど、出た瞬間から霧散し、それが花に変わっていっている。

 髑髏野郎の姿も見えなくなった。気配も、この花から溢れる魔力が邪魔をして上手く探れない。

 内心で舌打ちし、俺は一旦気配を消した。それでも「生の気配がした」とかなんとか言って髑髏野郎に位置を特定される恐れもあるため、常に移動し続けて奇襲を避ける。

 そして、こんなことをしでかした奴の名を叫んだ。

 

「どォいうつもりだ、マーリン!」

 

 髑髏野郎の攻撃を警戒し、そして相手を探しながら、この元凶だと考えられる夢魔も探す。

 勝負の邪魔は許さない。それが例え味方側の英霊であっても変わらない。

 

『キミたちの目的は、“希望”同士で潰し合うことではないはずだ』

 

 四方からマーリンの声が響く。

 声の出処が分からない。そこからマーリンの居場所を特定することは不可能だと諦めた。

 

『グランドアサシン。キミは藤丸くんのためにこの時代へ来た。ならば、断罪の為の剣はまだ抜く時ではない』

 

 これは幻覚なのか。

 そう考えたが、否定する。いくらマーリンといえど、たかが魔術でしかない幻術が俺をこう長く捉えられるはずもないからだ。

 

『そして佐久本燈也。キミは快楽主義の人でなしだ。強き者との戦いに目が眩んだんだろうけど...抑止力の意志とは別に顕現した今の彼は、冠位として万全とは言い難い。それを討ったとして何になる?』

 

 ...は?

 

 思考が一瞬だけ止まった。

 万全じゃない? 本気じゃないってことか?

 全力を出せない相手に勝って嬉しいのかと、そう問われた気がした。というかそういう意味だろう。

 その質問に答えるなら、答えはノーだ。いくら勝てばよかろうとは言えど、相手が本気でないなら意味は無い。全力の相手を踏み潰してこそ、勝利の甘美はあるのだから。

 

『分かったら、今は剣を収めなさい。戦う相手は別にいる』

 

 その声を最後に、色鮮やかな花々が霧散した。

 視界が戻り、そこにはボロボロになった市場の跡地がある。

 そしてその中に、白い魔術師の姿もあった。

 

「気は鎮まったかい? 燈也くん」

 

 張り付けたような笑顔で、マーリンが問うてくる。

 そんなマーリンを無視し、俺は軽く辺りの気配を探った。髑髏野郎の姿が見えないので、どこかに潜んでいるのではと勘繰ったからだ。

 

「ああ、彼ならばもういないよ。元々、彼にキミと戦う意思はなかった。多少頭に血が上っていたようだけれど、大人しく引いてくれた」

 

 テクテクと、マーリンは軽い足取りで近付いてくる。

 確かに気配はないが、相手は神出鬼没の暗殺者。俺が把握できていないだけで、まだいるかもしれないと思い、警戒だけは解かない。

 そうしながらも、俺はようやくマーリンへと目を向けた。

 

「...おい。さっきの話」

「万全とは言い難い、という部分かな?」

 

 近くまで来たマーリンが足を止め、俺の問いに答える。

 

「まあ、冠位の性質と言うべきか。グランドの資格を持つサーヴァントは、人類の滅びなどを救うために存在するモノなんだ。それは即ち、人類の危機にのみ力を振るうことが許された存在。でも今回、彼は個人の意思でこの時代に干渉してきた。そうするには、冠位としての資格を捨てなくてはならないんだ」

 

 冠位サーヴァント...カルデアの資料室でチラッと見たことはある。

 通常のサーヴァントよりも一つ上の器を持って顕現する、その時代最高峰の英雄たち。

 その資格を捨ててこの時代に来たというのなら、髑髏野郎の霊基は弱体化していた、ということになるのだろうか。

 

 ...クソが。

 前回苦戦した相手を追い詰めて、そのことに気分良くなっていた自分が馬鹿みたいだ。

 それどころか、弱体化した相手に手傷まで負わされた。これでは本調子のあいつと戦ったところで、前回と似たような結果になるだけだろう。

 実戦を重ねて強くなった気でいたが、そうではないのだと冷水をぶっかけられた。

 

「クソッタレ」

 

 吐き捨て、この場を去るために歩き出す。

 まだ足りない。もっと、もっと戦わなくては。

 戦線に出てもいいが、魔獣如きでは経験値として物足りない。やはり、冥界へ行く必要がある。

 

 神との戦闘を経て、強くなってやる。

 そう誓いのようなものを立て、俺はウルクの街を出ることにした。

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

「.....ふぅ」

 

 燈也が市場を去った後、マーリンはため息を漏らした。

 呆れではない。心労からくるため息だ。

 

「(いやぁ、危なかった)」

 

 立香たちが不倫事件を追っていると聞き慌てて逃げた先で、マーリンは先の戦場を目にした。

 ハサンと燈也。カルデアが勝利するために欠けてはならないピースが殺しあっていたのだ。焦らないはずがない。

 

 そしてもう一つ、マーリンが疲れた原因がある。

 

「バレなくて良かった、本当に」

 

 燈也についた一つの嘘だ。

 いや、嘘ではない。嘘ではないのだが、それでも燈也を騙したことに違いはない。

 

「(冠位の資格を捨てたところで、霊基は冠位のものとそう大差はない。つまり、山の翁は弱体化なんてしていない)」

 

 冠位の資格を捨てたことで、グランドアサシンとして万全でないと言えなくもない。今のハサンはただのアサシンクラスのサーヴァントなのだから。

 しかしそれでも、ハサンの強さは損ねられてなどいない。

 

 ではなぜ、マーリンは燈也を騙すような真似をしたのか。

 そんなもの、戦闘を辞めさせるために決まっている。

 

 燈也はマーリンの指摘通り、快楽主義者のきらいがある。

 そんな燈也が快楽を覚える瞬間は、強者との戦闘──ではない。

 その先にある、強者から勝利をもぎ取った瞬間だ。

 ならば、相手に勝利しても嬉しくない、という状況を作ることが燈也に戦闘を辞めさせる条件。

 

「(バレたら不死身の私も殺しそうだからなぁ、あの王様。あ〜、くわばらくわばら)」

 

 マーリンが予見する、この時代最大にして最後の敵。

 それを打倒するためには、カルデアだけでは全く足りない。

 少なくともハサンか燈也、そのどちらかは絶対に必要だとマーリンは考えていた。

 

 要するに、互いが互いの保険なのだ。

 もし片方が敵に通用しなくても、その場合はもう片方がどうにかする。

 最悪の展開としてどちらの攻撃も通じないことも考えられるが、そうなっても自分の本体と本気になった“英雄王”ギルガメッシュ、そしてハサンと燈也がいればどうにかなると思っている。

 

 冠位級が二基と、最強クラスのサーヴァント、そして神殺しの王。

 そこにカルデアも合わさってくる。

 これだけ揃ってどうにもならないなら、もう潔く諦めた方がいい。

 

「さて。それじゃあ私も──」

 

「いました! 先輩、容疑者マーリンさんがいました!」

「げ、何この惨状...」

「どうせマーリンが悪いです。マーリン、死すべし」

「フォウフォウ!!」

 

「──逃げるとしようか」

 

 その後、とっ捕まったマーリンはマシュに本気で怒られ、さらに市場崩壊の容疑者としてギルガメッシュの前に引きずり出された。

 消滅の危機にあって本気で焦ったと、余計なこと(人妻関連)はこの顕界中はもうしないと誓った。三日後には破られる誓いだった。

 

 

 

 

 




解釈合ってるか不安だな冠位。

どうでもいいですけど、久しぶりにFGO開いたらよく分かんないスキル追加されてたし、レベル上限上がってたしで混乱しちゃいました。とりあえず水着なぎこさん欲しいな。
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