問題児? 失礼な、俺は常識人だ。   作:怜哉

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それとも敗北の苦渋か。


味わうのは勝利の美酒か

 

 

 

 

 

 “フォレス・ガロ”とのギフトゲーム当日。

 街中で色んな人達に声援を受けて、俺たちはガルドの指定したゲーム場へと辿り着いていた。

 

 街中の住人から「ガルドを倒してくれ」と言われるくらいには、ガルドは無能な地域支配者だったらしい。まぁ人質で脅してできた組織なんてそんなもんか、と思いつつ、俺は柔軟体操を始める。

 

「あの.....佐久本さん...」

「ん?」

 

 屈伸をしていると、隣から黒ウサギに声をかけられた。

 その声はどこか震えているように思えるが...まぁ勘違いとかじゃないだろう。

 

「昨日のお話なのですが.....」

「本気だよ。覆すつもりはない」

 

 シュン、とウサ耳をへならせる黒ウサギ。

 昨日の話、ってのは俺が“ノーネーム”に入らないという話。そして、新たに俺と“ノーネーム”の間で執り行われるギフトゲームについてだ。

 

 “ノーネーム”に入らない。

 これはずっと決めていたことだ。自分のコミュニティを設立して、俺を箱庭に送った(と思われる)じじいをぶん殴る。

 

 俺と“ノーネーム”の間で執り行われるギフトゲーム。

 これは、今回のガルドとのゲームを絡ませたゲームだ。

 ゲームの内容は『どちらが先にガルドとのゲームをクリアするか』。つまりはゲームクリアのタイムアタック勝負で、その勝利報酬は『“フォレス・ガロ”の所有する土地』。

 コミュニティを設立したとして、そのコミュニティを構える場所がないのでは格好がつかない。なら“フォレス・ガロ”をぶっ潰して、その土地をそっくりそのまま貰っちまおうって魂胆だ。

 土地の所有権云々とかその辺は、今朝方に白夜叉から許可を得ている。

 

「フン。“ノーネーム”に入んねぇって聞いた時は、魔王にビビって逃げんのかと思ったぜ」

「ぬかせ」

 

 挑発的な逆廻の言葉を流し、俺は準備運動を終えた。

 

「そろそろ久遠と春日部が出て三十分か。黒ウサギ」

「...YES。あと十三秒でございます」

 

 そう。今ここに久遠と春日部、ついでにジンくんの姿はない。

 今回の“フォレス・ガロ”とのゲーム、俺は久遠たちより三十分遅れでスタートすることにしていた。いわゆるハンデというやつだ。

 

「余裕だな。お嬢様達が三十分以内にクリアするとは思ってなかったのか?」

「それはない」

 

 断言する。

 そう言い切るだけの根拠が俺にはある。

 

 ...残り五秒。

 

「へぇ...? 理由は?」

「簡単だ」

 

 ...二秒。

 

「俺には少し先の未来が視える。それだけさ」

 

 スタート。

 

 俺は地面を蹴り、跳ぶようにしてガルドのいる場所へと向かった。

 

 

 

 

『ギフトゲーム名“ハンティング”

 

 ・プレイヤー一覧 久遠飛鳥

 春日部耀

 ジン=ラッセル

 佐久本燈也

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法 ホスト側は指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約《ギアス》”によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 ・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

 

 “フォレス・ガロ”印』

 

 

 * * * * *

 

 

 地面を粉砕する脚力で跳んだ燈也が見えなくなったころ。

 十六夜は思考に耽っていた。

 

「未来視の話が真実だとして、加えてあの身体能力。...“星の王権”、か...。黒ウサギ、アイツの恩恵に心当たりはないか? 前に似たような恩恵を見たことがある、とか」

 

 それを聞いた黒ウサギは一瞬脳内の記憶をさらい、そして否定する。

 

「...いいえ。星の所有権を意味する恩恵であれば存在しますが...強い弱い関わらず、神や幻想種との混血でもないただの人間が持てるものではありません。それに、“王権”では“所有権”とは少し意味合いが違ってくるかと」

 

 まぁ“正体不明”なんてものよりよっぽど分かりやすいのですが、とは心中で留めておく黒ウサギ。

 

「“星の王権”。言葉の通りに捉えるなら、ヤツの正体は“惑星を丸々一つ治める王”ってことになる。かの始皇帝を始め、歴史上のどんな人物も、どんな国家も、世界を治めるなんてことはできていない」

 

 世界、要するに地球を統一したというのなら、それは正真正銘空前絶後の大偉業だが...そんなことが本当に可能だろうか?

 ...いや、今重要なのはそこではない。

 

「...面白ぇ。もっと俺を楽しませろ!」

 

 ああ、全く。この世界は本当に俺を退屈させない。

 

 十六夜は獰猛に笑う。

 元いた世界では久しく味わえていなかった感情。

 未知と対面する高揚感を、十六夜は確かに感じていた。

 

 

 * * * * *

 

 

「GEEEEEEYAAAAAAAaaaaa!!!」

 

 “フォレス・ガロ”の居住区本拠である屋敷から、凄まじい咆哮が響く。

 

 この居住区は、本来であればレンガ造りの洋風な街並みだったのだろう。しかし今は《鬼化》だかなんだかをしてしまった植物に覆われ、森と言っても過言じゃないような風景になっていた。

 

「ちっ。遅かったか...?」

 

 さっき一瞬だけ視えた“未来”。

 そこには、どデカい虎の前で大量の血を流している春日部の姿があった。

 

 “ノーネーム”に入らないとは言っても、春日部たちが嫌いなわけじゃない。むしろ好きの部類に入るだろう。

 そんなやつらを見殺しにはしたくない。

 

 屋敷に辿り着く。

 気配を消し、空いている窓から屋敷内へ侵入した。

 

 春日部と、ガルドっぽい気配は三つ隣の部屋から感じる。

 だが、久遠とジンくんの気配は感じられない。死んでしまったか、そうでなければ屋敷の近くにはいないのか。

 どちらにせよ、早く春日部を助けなければ。

 

「どーせ指定武器ってのも春日部とかが持ってんだ、ろ!!」

 

 セリフを言い切る前に、俺は春日部とガルドのいる部屋の扉を蹴破る。

 木屑となった扉の陰から、春日部と、そして白い虎の姿が見えた。

 そして...床一面に広がる、赤い血の海。

 

「GEEEEEEYAAAAAAAaaaaa!!!」

 

 爪先を赤く染めた虎は、俺を視認して再度吼える。

 空気が震えるのを肌で感じ取りながら、俺は一歩踏み出した。

 

「GEEEEEY──」

「うるせぇ」

 

 それは、ただの言葉だ。

 久遠のように強制力を持っているわけでも、言葉が物理的な殺傷力を持つようになる能力を使ったわけでも、特に殺気や威圧を込めたわけでもない。

 

 ただ当たり前のこととして、虎はその場で制止する。

 

「...とー、や...?」

「ああ。悪いな、間に合わなかった。大丈夫そうか?」

 

 傷付いた春日部のそばで膝を付き、容態を診る。

 出血量が問題だ。普通の人間ならとっくに死んでる量だろ、これ。すげぇ生命力だな。これも春日部の恩恵の力か。

 

「大丈夫...じゃ、ないかも。凄く、痛い。泣きそうかも」

「分かった。とりあえず寝とけ。あとは俺がなんとかする」

 

 そう言うと、春日部は力なく瞳を閉じる。

 死んだわけではない。ただの気絶だろう。

 春日部の傷を癒しつつ、近くに転がっていた銀製の剣を拾う。

 

「──さて、虎」

 

 春日部はもう助かった(・ ・ ・ ・)

 次にやることは明白だ。

 

「お前の命、ここで差し出せ」

 

 

 

 

 

 

 

 ギフトゲーム名 “ハンティング”

 

 ・勝者  久遠飛鳥

 春日部耀

 ジン=ラッセル

 佐久本燈也

 

 

 

 * * * * *

 

 

 ガルドとのゲームが終わってから五日が経った。

 

「ふぅ。まぁこんなもんだろ」

 

 額にかいた汗を、首にかけているタオルで拭う。

 

 俺は今、元《フォレス・ガロ》の本拠だった屋敷を改修していた。

 とりあえず屋敷を包んでいた樹の根を除去し、気に入らない内装を変え、所々にこびり付いていた汚れを落として、必要な家具をそこらの樹を材料に自作する。

 

「鬼化だかなんだか知らねぇけど、無駄に多いし硬ぇんだよな、あの根っこ」

 

 一応人が住めるまでには整理した屋敷の二階のテラスから、眼下に広がる居住区を見下ろす。

 丸五日かけて屋敷は綺麗にしたが、居住区はまだまだ手付かずだ。家具を作る材料を得るために一部伐採したが、そんなものは全体の一割にも満たない。

 もういっそ、全部更地にしてしまおうかとも思ってしまう。

 一から造った方が楽そうなんだよなぁ。牧〇物語とかどうぶつ〇森みたいで楽しそうでもあるし。

 

「ワシならあの辺に牛小屋建てるな」

「おっ、気が合うなー。あっちは果樹園がいいな」

「同意」

 

 いいね、夢が広がる。

 高校生活に未練はあるが、自由気侭な自給自足の生活も.......おい待てバカ。

 

「ワシ、レタスとか育てたい」

 

 何故にレタス。美味しいけど。

 ...いや、そうじゃなくて。

 

「おい、じじい」

「どうしてお前がここに居る? ふっふっふ、気になるか少年。気になるに決まってんだろクソじじい! ふはははは、それはな少年、神のみぞ知る、だ。ふざけろぶん殴るぞテメェ!!」

「一人で何やってんのお前」

「シュミレーション。小僧との会話の」

 

 .....やっべぇ。腹立つわー、このじじい。

 

「この際、なんでお前がここにいるのかはどうでもいい。お前が俺を箱庭(ここ)に飛ばした。そうだな?」

「逆にワシ以外だったらなんだ、って話だけどな」

 

 どこから取り出したのか、クソじじいは真っ白な椅子に腰掛け、湯気の立つ紅茶を啜る。

 

「神、ってやつでいいのか。お前の存在は」

「そうなるなぁ」

「なんで俺を箱庭(ここ)に飛ばした」

「ただの暇つぶし。人間で遊ぶのは神の特権だぞ? 覚えとけ、人間」

 

 ...あ?

 

「テメェ何様だ。()が高ぇ」

「神様だ」

 

 (ガルド)に言い放った時とは違い、ありったけの殺意を込めた俺の言葉。それに対し、じじいの言葉には威圧が乗る。

 言葉と言葉のぶつかり合い。俺たちを中心にして大気が震え、屋敷が軋む。

 

 たっぷり十秒ほど睨み合い、そして同時に弛緩した。

 

「...ふん。せっかく直した屋敷が壊れちゃ堪らねぇ。テメェを殴って従属させんのはまた今度だ」

「ふはは。面白いことを言う。いいぞ、やってみろ。神は常に退屈だ」

 

 そう言って、自称神の老人は再び紅茶を飲み始める。

 

 ...正直なところ、今ここでやり合いたくなかった。

 屋敷が壊れる、ってのも嘘じゃない。が、それ以上に...

 

「ちっ。箱庭ってのにはどんだけ化け物が蔓延ってんだよ」

 

 風で掻き消えるような小さい声で、俺はボソリとこぼす。

 

 強過ぎる。

 白夜叉と同じだ。今の俺とは格が違う。どう足掻いても勝てやしない。

 

 こんなことは初めてだ。

 前の世界で「勝てない」と思ったことは一度もない。...まぁ、「逆らえない」って思った相手なら二人いるけど。

 それはともかくとして、この世界に来てから早くも「勝てない」相手が二人もできた。.....いや、二人とも人間じゃないから“何人”って数え方が正しいのかは知んないけどさ。

 

 

 けど、このじじいはいつか絶対ぶん殴る。

 そう固く誓い、俺は晩飯の買い出しへと向かうことにした。

 

 

 帰って来てから俺を襲う不条理な不可思議など、今の俺は知る由もない。

 

 

 * * * * *

 

 

 元“フォレス・ガロ”本拠、つまり現俺のコミュニティ本拠から最寄りの商店街。

 ここでは元の世界同様、金銭での売買も行われている。が、ここはギフトゲームという第二の法が敷かれている世界、箱庭。当然、食材をかけたギフトゲームも存在する。

 

「今日のゲームの景品はコレ! 産地直送、レタスだよー!」

 

 八百屋の店主が声を張っているのが見える。

 ふむ...今日はレタスチャーハンにすっか。米は昨日三キロ勝ち取ったし。

 

 そう思い、八百屋へと足を向ける。

 日々趣向を変える商店街の各ゲームだが、そのほとんどは運に頼ったものが多い。ちなみに、米を勝ち取った時のゲームはじゃんけん三本勝負だった。

 運に頼るゲームなら俺に負けはない。多分。

 じゃんけんなんて今まで負けたことねーし。おみくじも大吉以外引いたことねーし。宝くじを買えば一等当たるし。まぁ宝くじは五回連続で当てた辺りから購入禁止にされたけどな。

 

 今日の八百屋のゲームは丁半(ちょうはん)博打だった。

 特に気負うことなくゲームに参加し、問題なく新鮮なレタスを勝ち取る。

 

 あとは卵とウインナーが欲しいな。

 そう思い、近くでそれらが売っている場所を探すために辺りを見回す。

 すると、食材ではなく見知った人間を一人見つけた。

 相手もこちらに気付いたらしく、歩く方向を俺の方へと変えた。

 

「よぉ。五日ぶりじゃねぇか、佐久本。元気にやってるか?」

「まぁそれなりだな。お前らの方はどうよ、逆廻」

 

 互いに声が届く範囲まで近付き、挨拶する。

 スイカほどの大きさのものを包んだ風呂敷を二つ持っているところを見るに、逆廻も買い出しの途中だろうか。

 

「...なんだ佐久本、レタスなんか持って。お前、料理とかすんの?」

「少しはな。俺のお母さん、あんま料理得意じゃなかったから。そういうお前は? それスイカか?」

「ん? まぁ料理も出来るが、こいつは食材じゃない。金髪ロリ美少女を手に入れるための鍵だ」

「おっ、事案の香り」

「ヤハハハ!」

 

 笑ってないで否定してくれませんかね...。本当に事案なのかしら。

 

「詳しい説明は省くが、ちと五桁のコミュニティとゲームをする必要が出てきてな。そのための挑戦権がこいつだ」

「へー」

「そんでその勝利報酬が金髪ロリ美少女」

「なるほど」

 

 分からん。

 が、まぁ事案ってわけじゃなさそうだ。

 

「てか五桁のコミュニティて。いいなー、俺も遊びたい。ちなみになんてコミュニティ?」

「“ペルセウス”」

「.....それはまた」

 

 ペルセウス。

 確か、メデューサ退治の半神英雄、だったか。

 神話に特別詳しいわけじゃないから知らないことの方が多いが、メデューサ退治の話くらいなら知っている。

 そんな偉業を成したペルセウスの名を冠するコミュニティならば、相当に強大なコミュニティなのだろう。

 

「手を貸してやろうか?」

「それには及ばねぇよ。俺たちだけで十分だ」

「ちぇ、つまんねぇの」

「まー、“ペルセウス”って言ってもリーダーはペルセウス本人じゃない。その子孫で、しかも完全に名前負けしてる雑魚だ」

「えー...んー、じゃあいいや」

「ヤハハ、だろ?」

 

 それに、と逆廻は言葉を続ける。

 

「今回のは俺たち“ノーネーム”の問題だ。お前に首突っ込まれるといろいろ面倒だし、何よりうぜぇ。引っ込んでろ」

「それは正直すぎるだろ」

「だが事実だ」

 

 言葉の端々に角はあるが、逆廻の言い分は正しい。

 他コミュニティの問題に勝手に首を突っ込むのは、迷惑甚だしいだろう。あっちから救援要請でもきてたら別だけどな。

 

「春日部はもう動けるのか?」

「ああ。傷は綺麗に塞がってたし、肉食ってたら復活したよ」

 

 逆廻の視線が鋭くなる。

 大方、春日部の傷を癒した俺の恩恵についてとかなんだろうが...今逆廻に付き合ってやる意味はない。

 軽く視線を流し、ヒラヒラと手を振る。

 

「なら良かったよ。んじゃ、俺は夕飯の準備があるからこの辺で。みんなによろしく伝えといてくれ」

「ああ。またな」

 

 またな、と言いつつも俺を見つめる逆廻。

 背を向けて歩き出しても、まだ視線を感じる。

 

 まさかあの野郎、そっちの趣味ってことはないよな...。

 

 些か不安を抱きつつ、俺は卵とウインナーを求めてその場を去った。

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 卵とウインナー、ついでに調味料をいくつか買った俺は、自分の本拠へと戻ってきていた。

 

 元々は何十人という料理人たちがいたであろう広い厨房で、買ってきた食材を並べる。

 

「さて。まずはとりあえず米を───」

 

 ドゴォォォオン!!!

 

「──炊く前に掃除からかな、今日も」

 

 突如響いた爆発音を聞き、ため息を漏らす。

 ここ三日、毎日のようにこの爆発音は鳴り響いている。

 理由は単純。ここが襲撃されているのだ。

 

「オラァ!! 出てこいや小僧ォ!!!」

 

 ガラの悪い声が聞こえる。

 今日は...エントランスの方か。今朝綺麗にしたばっかりなんだけどな。

 再度ため息をつき、しぶしぶ声のした方へ向かう。

 三十秒ほど歩き、俺がエントランスに辿り着くと、本拠の玄関の木造扉が木っ端微塵に吹き飛ばされていた。

 未だ破壊の埃が舞うエントランスの中央では、複数の武装した獣人たちがこちらを睨み付けている。

 

「よぉ、ガキィ...。今日こそお前に引導を渡してやる」

 

 リーダーでもある狼男が、俺へ殺意と共に言葉を投げてきた。

 それを体験するのも、これで六度目だ。

 

「あのさぁ。おっさんたち、そろそろ飽きたりしないワケ? もう六回目だろ、このやり取り」

「うるせぇ!! さっさと俺らとゲームしやがれ!!!」

 

 三度目のため息をはく。

 

 始まりは三日前。

 本拠の改修をしている時に、このおっさんたちが俺のコミュニティを攻めてきた。

 憶測だが、彼らは“フォレス・ガロ”の後釜を狙っていたのだろう。

 ガルド・ガスパーが率いた“フォレス・ガロ”は、ここら一帯で幅を利かせていたコミュニティだ。そのコミュニティが無くなったため、陰でコソコソやっていた奴らが表に出てきたのだろう。

 そこで“フォレス・ガロ”の領土を全部ぶん取った俺は邪魔だと判断し、消してやろうと思ったんだろうが...それを俺が返り討ちにした。

 

「分かった。分かったから。んで、今回のゲームは?」

 

 一度の敗北では飽きたらなかったのか、その日のうちに再戦を申し込んできた彼ら。即返り討ち。

 翌日も懲りずに攻めてきた彼ら。また返り討ち。

 ならば夜襲はどうだと俺が寝静まったことを確認して乗り込んできた彼ら。それも返り討ち。

 

 そんな感じで、彼らは一日に二回はうちに挑んでくるようになった。今朝もきたんだよ、こいつら。

 毎度屋敷を破壊するのはやめてほしいが、毎回修繕費+ゲームの勝利報酬を頂戴してるからまだ許している。

 

「ふん、そう余裕ぶってられるのも今のうちさ...今回は完全に運頼りの対等戦、じゃんけんで勝負だァ!!!」

「さーいしょーはグー」

「あ、え、ちょっ...まっ?!」

「じゃーんけーん」

 

「「ポン(ッ!!)」」

 

 俺がグー。

 相手がチョキ。

 

「はい俺の勝ち。んじゃあエントランスと扉の修繕費、それから銀貨五枚置いてってね」

「ちくしょぉおおおぉぉおおぉお!!!!!」

 

 うるせぇな。

 

「くぅっ...!! 覚えてろよ、“ヨグソ・トース”!!!!」

 

 金の入った皮袋を投げ捨てつつ、獣人のおっさん達は逃げ帰っていった。

 皮袋を拾い、中身の金額を確認する。

 ...うん。まぁこんなもんだろ。

 きちんと金額を確認した後、俺はギフトカードから箒を取り出す。

 散らばった木片を掃いて集め、こちらもギフトカードから取り出したチリトリに、そのゴミを入れる。

 

「玄関は明日直すか...。つーかあれだな、そろそろあのおっさんたちのコミュニティ潰すか」

 

 すぐに収まるだろうと思っていたが、三日も続くとさすがにウザイ。

 今までは屋敷の改築を優先してきたが、その改築も終わった。いやまぁ、たった今玄関壊されたんだけどさ。

 とにかく、優先事項が終わったんだから、後回しにしていた事にも手を出すべきだ。

 

 

 

 

 

 

 そういうわけで、その後すぐに相手の獣人コミュニティをフルボッコにした。

 

 

 

 

 

 

 総資産を全て奪い取り、事実上コミュニティを壊滅させたあと。

 さぁ夕飯の支度の再開だと意気込んで本拠へ帰ってきた俺を待っていたのは───既視感アリアリの神の気まぐれだった。

 

「箱庭世界以外の世界も見てみたくなぁい?」

「みたくなぁい」

「見たくなぁい?」

「いやみたくなぁい」

「見ろ」

 

 妙な光が俺を包む。

 これはあれか。俺が箱庭にくる直前に包まれた光と同じやつか。そうなのか。

 

「バカヤロウ離せクソじじい!! ぐっ...?! 相変わらずなんつー馬鹿力...!! た、助けてお母さァん!!!!!」

「良いではないか〜、良いでないか〜」

 

 俺は無力だ。

 

 

 




苦渋でした、残念でした。
パッパと次行くよ、次。


あ、それとオリ主くんのコミュニティ名は“ヨグソ・トース”になりました。
特に深い意味はありません。ありません。ありませんったら。

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