サブタイに意味はありません。
海が荒れる。
観測史上類を見ない大津波がイラクのとある港町を襲い、自然界では有り得ないような突風が絶え間なく駆け巡った。
空が狂う。
つい数時間前までは穏やかだった青空は今や雷の跋扈する黒雲に覆い尽くされ、雨のように落雷が降り注いでいる。
まるで世界の終わりのような光景に、もはや人間の立ち入る隙はない。
神に祈り、嵐が過ぎ去る待つか、死を受け入れるしかないだろう。
そんな阿鼻叫喚の爆心地にて、彼は雄叫びを上げていた。
「オラァぁァアアァぁあああ゙あ゙ア゙ア゙!!!!!」
拳を振るう。
その拳は山河を砕き、星を揺るがす一撃だ。
そんなものをモロに喰らえば、例え相手が神であろうともタダではすまない。
『GA.....!!!』
短い苦悶の息。
三十メートルもの巨体が後ろに反れ、海へと倒れる。
「はっ、はっ、はっ.....」
彼──燈也は、海に浮かぶ元・豪華客船だった木片を足場にして海上に立った。
そんな燈也の息は切れている。
燈也にとって、『息が切れる』というのは初めての経験だった。
元の世界に於いては唯一最強の生命体として君臨し、敗北も恐れも知らない存在だった。
最強無敵だった自分が苦戦する相手、まつろわぬ神。
最初は『自分より強い』ということに腹を立てた燈也だったが、今では不思議と高揚感のようなものを感じている。
「...そこの貴方」
もはや海水なのか汗なのかも分からない髪に染み込んだ水分を払っている燈也に、女性の声がかかる。
燈也をして『冷たい金髪』と評された、エリカ・ブランデッリである。
「あん? んだよ、今忙しい」
「協力しなさい。あの神を打倒するわ」
エリカの声は震えていた。
無理もない。相手は、決して『ただの人間』と扱ってはいけない存在なのだ。
カンピオーネではないにしろ、それに比肩する実力者。
絶対に有り得ないことではあるが、事実目の前にいるのは『魔王』と評するべき存在である。
「協力ぅ? 結構だ、俺一人で殺る」
「それは不可能よ。ええ、絶対に」
「.......」
断言するエリカを、燈也は不審がる。
幸い、神はまだ立ち上がって襲いかかる気配はない。
耳を傾ける時間はあるし価値もある、と燈也は判断した。
「理由は」
「...あの神の名は《ティアマト》。ナンム、タラッテーとも呼称される、アッカド神話に登場する原初の海の神よ」
曰く。
顕現しているまつろわぬ神は、アッカド神話...つまりメソポタミア神話に登場する女神である。
混沌の象徴であり、万物の母であり、始まりと終わりの女。
燈也を飲み込んだ怪物は、ティアマトにより生み出された十一の怪物が一、バビロンの竜として名高い聖獣《蠍尾竜》らしい。
「彼女は神々の指導者であるマルドゥクによって討伐されるけれど、それは完全なる『死』ではなかった。彼女はその身を世界の基とし、万物の母として存在し続けたのよ」
「つまり何が言いたい?」
「ティアマトは『不死』の属性を持っている、ということ。殺しても死なないわ」
不死。
ふむ、と燈也は考え込む。
「それは、あいつを細切りにして食っちまっても蘇るってことか」
「.....正気?」
「わりと」
俺を食ったのは別の化物だけどな、と付け加える。
それを生み出したあのティアマトって神を食って今回は怒りを収める、と燈也は決めているのだ。
「...そう、狂人にも程があるわね。でも、あの巨体を全て食べてしまうより、ティアマトが復活する方が早いと思う」
「...なるほどな」
エリカの言い分に、燈也はとりあえず納得を示した。
それを受け、エリカは軽く安堵の息をはく。
「で? お前は不死を殺す方法を知ってんのか」
「え、ええ。護堂の──我が王の力があれば」
「.....王?」
ピクリと反応を示した燈也に、エリカは少しだけ得意げになる。
この世界で神に対抗する力を持つ王と言えば、神殺しの魔王のことを指す。常識だ。
その魔王に仕えている身となれば、それなりの誇りを持つは必至。
それ以前に、自らの主を誇りたいというちょっとした子供心が働いたのかもしれない。
その「王」という単語が、燈也にどう捉えられるのかも知らずに。
しかし、今は状況が状況だ。
まぁ今はいいか、と燈也は頭を振る。
「護堂の力でティアマトの不死性を封印するわ。でも、それをするのに少し準備の時間が必要なの。だから貴方に頼むわ。ティアマトの注意を引き付けておいてちょうだい」
「.....俺に囮になれっつってんのか」
「悪く言えばそうね」
存外話の通じる相手で、エリカには余裕というものが生まれていた。
恐れを忘れ、まるで対等であるかのように...いやむしろ、魔王の仲間である自分の方が上であるかのような態度を取ってしまった。
言葉からだけでは測れないソレを、燈也は感じ取る。
が、ここでキレるほど燈也も子供ではない。
平時であれば、無視するなり威圧するなりはしただろう。
しかし、今はそんな場合ではない。
見れば、倒れていたティアマトが身体を起こし始めている。
そんな事をしている場合ではないことくらい、燈也にも分かっていた。
「.....分かった。とっとと準備とやらを終わらせて、その封印とやらをやってくれ」
返事を聞く前に、燈也は宙を駆けた。
準備がどれくらい掛かるのかは知らないが、エリカの口振りからはそこまで長時間を要する感じはしなかった。
長くて十数分といったところか。
『GRAAAAaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
その巨体が動くだけで津波が生まれる。
その津波を避けることは、空を駆ける燈也にとっては容易だ。
しかし、エリカ達への被害を考えると無視もできない。
「ふんっっっっっ!!!」
燈也の右ストレートと津波が衝突する。
力比べは燈也の勝ち。津波は爆散し、海水の雨が降り注ぐ。
「おら、こっちだデカブツ!!」
手頃な木片を拾い、ティアマトの顔面へと投擲する。
今ティアマトの瞳に写っているのは燈也だけだ。
なら、その燈也がエリカ達と反対方向へと向かえば、自然とエリカ達から注意は逸れる。
『GrAaaaAAaaaaaa!!!!!!!!!!』
咆哮が凶器となって燈也を襲う。
ティアマトの従える竜巻の一柱が呼応するようにうねり、そして貌を成した。
「チッ」
竜巻が変貌したのは、巨大な蛇。
いや、蛇というにはあまりに似つかわしくない立派な角が頭部に一対聳えている。
その蛇は、燈也へ吐息を吐いた。
無色透明な空気ではない。紫に染まっている、毒々しいものだ。
「毒、だよな。やっぱ。溶解性か」
その息に触れた木片が、まるで熱せられた飴細工のように溶けていく様を見て、燈也は再度舌を打つ。
毒に負けるとは思わないが、かと言ってくらえばどんな支障をきたすは分からない。
己の力を過信すれば痛い目を見る、と燈也の勘が告げていた。
「なら」
触れずに本体をぶっ潰す。
そう思い至るは必然で、至ったからには即行動が燈也の信条。
毒は海中には届いていない。
それを見た燈也は、海へと飛び込んだ。
が、そう上手くことが進まないのが世の常だ。
毒の下を抜けるかどうかというところ。角のある蛇にあと少しで拳が届くかというところで、燈也は蛇より巨大な尾に薙ぎ払われた。
「ガボッ...?!」
水中で不意打ちに近い打撃を受け、燈也の口から空気がもれた。
いくら規格外な存在といえど、燈也のベースは人間だ。
水中で酸素を完全に失ってしまえば、その生命は掻き消える。
そうなる前にどうにか海面に出ようと、燈也は水中に足場を作って上へ跳ぶ。
若干毒を吸い込んでしまう位置に飛び出たが、溺死するよりは希望があると躊躇はしなかった。
「がァッ...!! はっ、はっ...はっ...!!」
海面に顔を出し、空気を吸い込む。
毒も微力に吸い込んでしまうが、背に腹はかえられない。
「(さっきのは...ティアマトの尻尾か。クソ、完全に油断した)」
頭を振り、次に打つべき手を模索する。
「(毒はまだ大丈夫だ、手先がちょっと痺れるくらい。つっても、溶解性だけじゃなくて麻痺性もあんのは予想外だ。大量に吸い込むのは危険。だったら...)」
と、燈也はもう一度水中へと潜り込んだ。
次はしっかりと周りを見回し、攻撃がないことを確認する。
拳を握り、海面を見据える。
そして、一度目を閉じ意識を集中させ...拳を振るった。
山河を砕く一撃は、その拳圧でさえ海を割る。
底から押し上げられた海水は、爆発したかのように天へと昇る。
その際生まれた暴風により、毒の吐息は四方へと霧散した。
「っしゃオラァ!!!!!」
作戦が成功したことによる歓喜、そして攻撃に転じるための気合。
両方を兼ね備えた雄叫びは、すぐに勝利の咆哮へと進化する。
「はっ、はっ、はっ、はっ...!」
角のある蛇をその拳で撃ち抜き、燈也は亡骸の上に立つ。
息を切らせる燈也は、しかし闘志を絶やさない。
射抜くようにティアマトを睨み、そして跳躍する。
燈也の居なくなったあとの亡骸は、暫くすると元の竜巻へと姿を戻し、そして緩やかに四散した。
それを尻目に確認した燈也は、ティアマトへと迫るために宙を蹴る。
時折襲い来る竜巻や水柱を薙ぎ、避け、打ち砕き、燈也はティアマトとの距離を詰めていく。
十分にティアマトへと近付いた燈也は、海面を殴って水の壁を作り出した。相手から自分の姿を
「死なねぇっつっても痛みは感じるんだろ!? なぁ、原初の女神サマ!!」
死角に回り、海を割る一撃でティアマトの巨体を殴り飛ばす。
再び海に伏したティアマトを空から見下ろしつつ、燈也は内心で感心していた。
ティアマトの頑丈さや屈強さにではない。己の力についてである。
「(
グッ、パッと手を握って開き、力の加減を再確認する。
以前、それも数時間前までとは比較にもならない力がそこには宿っていた。
劇的という言葉すら霞むほどの強化だが、その力を振るうのに違和感は感じられない。元から備わっていたものかのように、自然と燈也に馴染んでいる。
「(《星の王権》、か。正体は分かってっけど、効果はまだまだ未知数ってとこだな。極めりゃ、白夜叉やあのクソじじいにも勝てるか?)」
目の前の女神とは違い、どう足掻いても勝てないと燈也が判断した二人。
恩恵を使いこなすことで、天上の存在にも手が届くかもしれない。そんな思いを抱き、燈也の闘争心がふつふつと煮え滾る。
と、そこで変化が訪れた。
「──我は言霊の業を以て、世に義を顕す。これらの呪言は、強力にして雄弁なり!」
まるで室内にでもいるかのように、どこからともなく護堂の声が木霊する。
と同時、一振の黄金の剣がティアマトへと突き刺さった。
「準備とやらは終わったのか。案外早かったな」
言いつつ、燈也は護堂の力とやらの考察を始める。
「黄金の剣...どっから出てきたかは知らんけど、あれが不死性を封印するための道具なんだろうなぁ。ってーと? もう不死性ってのは封印されてんのか」
そんな間にも、無数の剣がティアマトを襲う。
ティアマトは苦しむ素振りを見せるが、直接的なダメージはあまり大きくはない。
護堂の扱う黄金の剣は、ウルスラグナ第十の化身、戦士の力。
対する神の知識を明らかにすることで得られるその力は、神を切り裂く言霊の剣だ。
その剣は、神の力を斬る剣。権能を一時的に弱体、もしくは封じることが可能になる。
「ボケッと見てるだけじゃないんだよ、なッ!!」
あの剣では倒しきれない。
原理は分からないが、燈也はそういう未来を視た。ならばあとは行動あるのみだ。
上空から一気に攻め下り、ティアマトの額に拳をめり込ませる。
『GR、AaAAaaaaaAAAAa!!!!!!!!!!!!』
それは咆哮なのか、それとも悲鳴か。
どちらにしろ、燈也は今までにない確かな手応えを感じ取った。
「ナハっ、覚悟はいいか、デカブツ!!!!」
好機とみた燈也は、ここぞとばかりに全力の拳打を打ち込む。
死の概念があるのであれば、頭を潰せばいいだろう。
そう思ったのか、額の一点集中で連打、連打、連打。
一発一発が岩をも砕く拳撃を、百、二百...そして千と打ち込んでいく。
もはや頭の原型など留まってはいない。
獣のような呻きもなく、今まであった海のうねりも収まった。
力を失った神は、しかし倒れることはなく。
海面に立ちながらにして、その息を引き取った。
ティアマトの死を感覚で感じ取った燈也は、最後に一つ、拳を振るう。
その拳は神の肉へめり込んで、その肉を抉り取った。
「お返しだ、原初の海」
そう言い、ピンク色の肉を口に放り込む。
やられたらやり返す、喰われたら喰い返す。
懲罰の執行を成した燈也は、その勝利にいたく満足し──そして、死んだ。
* * * * *
俺──佐久本燈也が目を覚ますと、そこは白だった。
場所の説明として「白」だけでは不十分なのかもしれないが、それ以外には何も無い。どこまでも続く白は、その無限とは裏腹に安らぎにも似た何かを感じさせてくれる。
「...って、どこだよここは」
安らぎなんて感じてる場合じゃない。
また知らないどこかへ放り投げられたのか、と辟易しながら、俺は周囲の確認のために立ち上がろうとする。
神ティアマトとの戦闘で負った傷を庇おうとして...そしてやめた。
「...? 傷が...」
治ってる。もう綺麗さっぱり治ってる。
服装だけはチラホラと裂けてたり血で汚れたりはしていたが、見た限りでは外傷一つない。
疲労感も感じられず、控えめに言っても絶好調というに相応しいコンディションだった。
「あら、お目覚め?」
ふと、そんな声が聞こえる。
幼い女の声だ。特徴的なくせに、掴みどころのない、不思議な高音。
首だけ回して声の方を向いてみると、そこには声に似つかわしい少女がいた。
白に包まれた世界で、これまた白い衣装を身に纏うその少女の容姿は、可憐と言って不足ない。淡い紫の髪は二つに結ばれているが、その毛先は腰をも越える。下ろしたら地面に着いてしまうんじゃなかろうか。
後ろで手を組む少女は、まるで愉快なイタズラが成功したかのように、その口角を緩ませる。
「誰だこの美少女は〜、って思ってるわね?」
自分で美少女とか言うやつ信用できない。
「そうねぇ...私のことは“ママ”って呼んでもいいのよ?」
自分をママって自称する幼女とか信用できない。
「ここは生と不死の境界。あるいは、アストラル界、妖精境、幽冥界、イデアの世界。まぁ呼び方はいろいろあるけど、死の直前の世界、って捉え方で大丈夫だよ。極東風に言うと...三途の川の岸辺? みたいな」
「ろくでもねぇ場所ってのは分かった」
「あっ、やっと喋った!」
組んでいた手を解き、嬉しそうに両手を前で合わせる、自称美少女ママ。
美少女ママってなに。犯罪臭とかのレベルじゃないんだけど。
「それにしても無茶するよね〜。まさか神さまを食べちゃうなんて。ママびっくり」
くるりくるりと回りながら、少女は優雅に旋回する。
その様は氷上を舞うように鮮やかで、それでいて快活だ。
「神は天上の存在。強い弱いの話じゃなくて、
人差し指を立てて言う少女の姿は、なんともあざとい。
分かっててやってるんだろうか。分かっててやってるんだろうなぁ。美少女自称してるくらいだし。
「というかそもそも、生のお肉を食べちゃダメよ。ちゃんと火を通さなきゃ。それでお腹壊しちゃっても知らないからね?」
そういう問題じゃなくね、って俺が言ったらダメなんだろうなぁ。
「まぁ、それはともかくっ。んんっ──おめでとうございます、佐久本燈也。あなたは見事、神殺しの偉業を成し遂げました」
言って、少女は大手を振るう。
それに合わせたかのように、背中が少し温かくなった気がした。
何かが入ってきている...そんな不思議な感覚だ。嫌悪感はない。
「私はパンドラ。あらゆる災厄と一縷の希望をもたらす《全てを与える女》」
ゆっくりと言葉を紡ぐ少女──パンドラ。
そこには少女の明朗はなく、真なる神と言える気品があった。
「あなたは権利を得た」
「...権利?」
「ええ。神を殺め、神の宿敵となる権利を得たのです。始めましょう。愚者と魔女の落とし子を生む暗黒の生誕祭、神を贄として初めて成功する簒奪の秘儀を────なーんて、硬っ苦しい言い回しはここまでっ!」
パンっ、と手を叩いたパンドラは、神々しさとも言える雰囲気を霧散させる。
「いいこと? 燈也。あなたは特別な存在よ。まぁ神殺しなんてやらかしちゃう子はみーんなヤンチャで選ばれた子ばっかりなんだけど...あなたはその中でもとびっきり。一つの星で、唯一の救いであり、代行者。下手したら神さまなんかよりずっとずぅっとすごいモノ」
だからね? とパンドラは続ける。
「あなたの戦いは、本来ならこの秘儀を発動できるものじゃなかったの。護堂の手助けもあったからね。それでもあなたが権能を簒奪できるのは、星の思し召し。まぁ私が見てて満足する戦いだったからいっかなーって思ったのも事実だけどっ」
どこまでも明るくニパッと笑うパンドラに、俺は理解しきれないなりの頷きを返す。
暗黒の生誕祭、簒奪の秘儀。ここ最近、分からない単語が連発することが増えてきた。
だがまぁ、さっき感じた温もりがそうなのだろう。権能の簒奪とか言ったか。勝者としての戦利品を得た、と思えばいいのか。
相手の能力を奪う。箱庭風に言うと、
選ばれた特別な存在云々の話は...まぁそれなりに理解できる。俺の話だしな。
「さて、楽しい時間が過ぎるのは早いもの。もうお別れよ」
くるりくるりと回転し、元のように後ろで手を組んだパンドラは、こちらを上目遣いだ見つめてくる。あざとい、さすが美少女を自称する神、あざとい。
「最後に一つだけアドバイス。仲間を作るといいわ。そうね...護堂なんかいいんじゃない? 護堂はとってもいい子よ、頼っても大丈夫。というか頼りなさい? いくら燈也が特別でも、この先何が起こるかは分からない。未来はとても不条理で、ひどく儚いものよ」
何なんだお前は、という前に。
俺の意識はだんだんと白濁していく。
「安心して。あなたは祝福されている。まぁそれと同じくらい憎悪もされるでしょうけど...そこはファイトっ!」
グッ! と両手の拳を握って若干前傾姿勢になるパンドラ、あざとい。さすが神あざとい。
ふざける余裕もなくなってきた。
意識が朦朧とする。視界が白に染まっていく。まるで三日徹夜した日に朝日を浴びたようだ。
「まぁここでの記憶って生き返ったら全部忘れちゃってるんだけどね〜。にゃははっ。頑張ってね、愛しい息子。その身に祝福があらんことを。寂しくなったらまたおいで。ママはいつでもあなたを見守ってるわ♡」
神ってやつはどいつもこいつも...!
煽る気はないのだろうが、結果として俺の怒りを買う言動を辞めないパンドラ。
そんな彼女に一言文句を言ってやろうとするも...その前に俺の意識は深く沈む。
「さぁ、この分岐が辿り着くのは果たしてどちらでしょう。救済か、それとも壊滅か。どちらにせよ、あなたの幸福を願っているわ。ねぇ? 究極が一。あなたはもう、私の愛しい息子なのだから」
そして願わくば、かの王に勝利せんことを。
少女は笑う、愛し子の生誕に。
魔女は哂う、輝かしき可能性に。
かくして、新たなる王は君臨する。
星の祝福と、魔女の期待を背負いながら。
その身に宿す輝きは、誰よりも煌めき、そして泡沫だった。
オリ主くんの恩恵ってなんなんでしょうね?
感想や評価たくさんくれると嬉しいなって。嬉しくなって投稿速度が上がるかもしれないです。何卒よろしくお願いいたします。
《生命なる混沌の海》
メソポタミア神話における原初の海の女神ティアマトより簒奪した権能。詳細不明。