代理人の異常な愛情、または如何にして私は心配するのを止め戦闘を愛するようになったのか。   作:イエローケーキ兵器設計局

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プルトニウム博士、息子の基地に電撃訪問!


凍りつく記憶-5

『ところでプルトニウム博士。一つ質問が。』

「うん?何かな?」

『あの251の部隊長とやらは何者ですか?』

「あいつか?」

『ええ。』

「あいつは……」

 プルトニウム博士が珍しく周囲を気にする。そんなに聞かれたくないことなのか?

「あいつはな……私の息子だよ。」

『はい?』

 DOLLSが……息子?血縁関係が?

『血縁関係が?』

「うーむ……なんと言うべきかな……DOLLSは何からできていると思う?」

『合金と……アレですか?』

「そう……合金とアレだ。」

『それとあなたの息子に関係が?』

「最初期のDOLLSは何からできていたと思う?」

 その目は笑っていない。歴戦兵の目をしていた。

「最初期のDOLLSは人間ベースだった。今となっては合金製に取って代えられたがね。」

 

 

 私の時代はまだ人間が戦場に立つことも多かった。人間同士反目し合ったものだ。

橋頭堡を確保するぞ!エイブル隊!撃ちまくれ!

死にたくなければ頭を下げろ!

パーシングだ!パーシングが来たぞ!戦車兵!機関銃を黙らせてくれ!

(105mm砲の砲声)

 砲声と共に緑色の砲弾が敵のトーチカに飛び込む。

 煙幕をまた炊いて、対戦車砲を構えようとする陣地を機関銃で黙らせて、私達は橋頭堡をなんとか確保した。

 

上陸に気がついてやってきたティーゲルもヤーボが鉄とケイ素化合物の塊に変えてしまい、制空権こそはと頭を抑えにやってきた戦闘機は流星となって落ちていった。

 

 とはいえこちら側も損害は出る。運良く死者は出なかったけれど負傷して落伍した兵士は多い。砂浜が血で染まる。パーシングから捨てられた薬莢が転がる。ヤーボが地面に刺さり、ロケットが浜を抉る。

 

 全てが美しかった。そう…全てが。

 

『エイブル隊が突入します!』

「了解、イージー隊!行くぞ!」

『「うぉぉぉぉ!」』

 

 人間らしからぬ雄叫びを上げて銃弾が飛び交う中間地点を隊長が走り抜ける。分隊全員がエイブルを援護して、ベーカーを送り、ベーカーがエイブルを援護、チャーリーも手を貸し…私達第225特殊混成大隊はトリプト海岸を制圧した。

 

「"第225特殊混成大隊は戦車、砲兵、歩兵、戦闘機、攻撃機、爆撃機を混合した部隊であり大隊と言うには大き過ぎる規模の秘匿部隊である。"」

「"隊長は橋の守護神と呼ばれているらしい。""隊長に近づく物好きは居ない。""隊長は厳しいけれど優しい面もある"……色々好き放題に言われてるな…」

 

『そういうもんですよ。』

 隊長が言った。この隊長はこの部隊に来る前からずっと一緒でかなり長い間共に戦っている。私は敬意を込めて"橋頭堡の守り神"と呼んでいた。

 

 もともと私は航空畑出身で軽戦闘機を操縦していた。さらに遡るとこの戦争が始まってしばらく…私の故郷に被害が及ぶようになった頃、郵便配達中に襲撃されて、命からがら辿り着いた先が航空隊の基地。私は腕が素人にしては立つからと徴募されていった。

 

 プレイ環礁まで海軍と一緒に飛んだかと思えば"燃える海"へ飛んでいったり、としていたらいつの間にか隊長と一緒にされていた。

 

 私の空軍出に対し隊長は海軍出である。海軍に居たが途中から海兵隊に送られ気がつけば私と一緒に三軍統一の軍に編入されていたらしい。

 

 その後かなり長期間一緒に戦って、戦争の終わりを迎えて、私は隊長と一緒になった。そのときに産まれたのが…

「251の部隊長…」

『の原型だね。元は人間だよ?私もだけどね。』

 左腕の偽装を解きながら続ける。分かってもらうには見てもらったほうが早い。

 改造した跡が腕に今も残っている。注射器の刺し跡。縫合跡。擦傷の跡。

「研究機関にも元人間のDOLLSが…」

『あまり多くは居ないけどね。大部分は完全に死んだか入れ替わったかだから。』

「入れ替わる?」

『第1世代の改良型、第1.5世代…それが私や251の奴なんだけど…何かと不便でな。ただまあ意識を入れ替える…という荒手には出たくないんだよね。』

 

「お話し中すいません!プルトニウム博士!緊急連絡です!」

『む?』

「蟻型巨大生物と巨大二足歩行兵器が極東に出没したそうです!」

『……251部隊のマウスを呼び出してくれ……いや、私が向かおう。ここを少しの間開けさせてもらう。留守番は頼んだぞ。』

「わかりました!行ってらっしゃいませ!」

 

「「……確か重爆撃機型だったよな……プルトニウム博士って……本当の所属は何処なんだ?」」

 

 

 ところ変わってここは赤色十月同盟領内の251部隊の基地付近。上空数m。上空ではないか。

『ちょっとごめんよー!』

 姿勢を変えれば脚が地面に付きそうな飛行をずーっと続けている。白衣姿で飛び出たものの周囲も白いからかなり目立たない。

 

『はぁ……ついた……』

「……どちら様?」

『……その服装は……Me410 ホルニッセ君かな?違ったらごめんよ?』

「そうですけど……」

『息子が世話になってるよ。おっと、申し遅れてすまない。私はプルトニウム博士だ。こんななりだが星屑連邦のヴォート学院で研究員をしている。』

「ど、どうも……息子とおっしゃいましたが…」

『251部隊の隊長をしているニューマコーニオシスは私の息子でね。』

「ネズミ代理……おっと……すいません。」

『ネズミ代理人……か。構わないよ。本人がそう呼ばせているのなら。さて本題に入ろう。ニューマコーニオシスとマウスは居るかな?』

「あ、はい、居ますが……」

『済まないけど寒いんでな……入れてくれないかな?』

「……え?あ、あぁ…すいません。どうぞ……」

『どうも。ありがとう。』

 正門を通り施設に入っていく。無線室は……ここか。

 ドアを3回ノックする。親しき仲にも礼儀あり。

「どうぞ。」

『失礼するよ。』

「……プルトニウム博士!?」

『済まないね。いきなり連絡も入れずに。そうだインベーダー君とマウス君は元気にしているかな?』

「ええ……はい。」

『……マウス君を早急に呼び出してくれないかな?少し3人で話がしたい。』

「わかりました。」

「施設内にいる者に通告。至急、マウス型DOLLS(マーサ)を無線室に連れてくるように。」

『済まないね。息子よ。』

「……息子?私が?あなたの?」

 

 

 

新しく着任してほしい架空DOLLS募集

  • オイ車(極東重鋼)
  • T-95GMC(星屑連邦)
  • T-35(赤色10月同盟)
  • それ以外で…

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