聖剣聖剣って聖槍の方が強いから!!(迫真   作:枝豆%

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あ、持ち堪えた!(フラグ


ジュウ

 ヴァーリに治療を施し一段落着いたところでアザゼルはロンに声をかける。

 

「お前さん、そんなに強くなってどうするんだ?」

 

 アザゼルは率直な質問を書いする。

 何せあのヴァーリを赤子の手をひねるように倒してみせたのだ、確かに強くなれる要素はある。だが、これ以上強くなる必要があるのか。

 そしてあるなら、それはどんなものの為なのか……。

 

 それがアザゼルは気になる。

 

「いや、別に何も無いよ?」

「は?」

 

「いや、だからそんな崇高な理由はないよ。敵討ち! とか復讐! とか世界平和! とか……僕が言うのはアレだけど。正直言って興味無い!」

 

 勇者がそれを言うか? 

 アザゼルはそう突っ込まずにはいられなかった。

 

「たまに思うんだよね。明確な目的とそれを達成する覚悟が無ければ強くなれない! みたいな事を言ってる人いるじゃん。でもそれ聞くたんびに思うんだよ「んなわけねぇだろ!」って」

 

「気持ち一つで強く慣れるなら世の中凄いことになってる。それは主人公から見える綺麗事だよ」

 

「主人公は何故か知らないけど、自分の努力を美化したがるんだよね。俺は才能だけでは無い! 血が滲むような努力をしてここまできたのだ!! みたいな」

 

 よく英雄譚やおとぎ話。所謂創作物ではよくある話だ。

 

 

「でもそれって主人公視点だからそうなっている訳であって、周りから見ればなんてことの無い。英雄譚が綺麗であるのは勝った方の視点でしか見てないからだよ。弱かった人が仲間と共に成長して悪を討つ。それはとても夢が溢れてて、魅力的で、感動的で……でも周りは違う。元々圧倒的な才能を持った化け物達が、愛やら恋やらを語っている間に理不尽な力に目覚めて選ばれなかった強者を倒す」

 

 ロンは語る。

 これはロン独自の考えであり、ツッコミどころはあるのかもしれない。

 でもアザゼルは聞くのを辞めなかった。

 

「ただの茶番だよ。付き合わされる側からしたらたまったもんじゃない」

 

 少し笑いながらそう語る。

 

「だから明確な目的を設定しなくても強い人は勝手に強くなる。世界はそういう風にできてるからね」

 

「龍が強者を寄せ付けるように──」

 

 アザゼルはヴァーリのことを脳裏に浮かべた。

 

 

「必ず選ばれた(・・・・)者には超えられる壁が用意される」

 

 確かに今回の事でヴァーリは一段と成長するだろう。

 自分を圧倒する相手との出会いによって。

 

「それは結果論だ、ヴァーリだって死ぬ可能性はある」

選ばれた(・・・・)って言ったろ? 別に強いものや才能溢れる者の事じゃない。……それにアザゼル、結果でものを語っては駄目なのかい?」

 

 アザゼルの顔が曇る。

 その言い方だと、選ばれたと思っていた者も死んでしまえばそうではなかった。それは究極の結果主義となる。

 

「確かにアザゼルみたいな研究者からしてみれば過程は大事なのかもしれないけど……僕達みたいな何かを背負わされた人は結果しか見て貰えない。違う?」

「だが──」

 

「あ、いや別に責めてるわけじゃないんだよ……っとだいぶ話が逸れたな……えっと……つまり! 目的とかないけど勇者だから力蓄えとこ……ってことで!」

 

 ロンは笑ってそう返す。

 今の会話に嘘偽りはない、本気でそう思っているし実際そうだとも言える。だが、それをアザゼルが肯定してしまえば……。

 

 ロンという人間は確実に壊れてしまう。

 そんな危うさが彼にはある。

 

 うちを覗こうとした時、出てきたのは煌びやかな勇者などではなく。

 堕天使の翼よりも深い黒いナニカだった。

 

「そうだな……まぁあってはねぇけど間違ってもねぇな。お前の中で新しい選択肢(答え)が見つかるまで、おまえは強くなればいい。強くなる目的を見つけるために強くなる……オーディンが言うように一風変わった勇者だよお前は」

 

 その特異性に畏怖と敬意を抱いて、アザゼルはロンが禁手に至るまで改めて面倒をみると覚悟を決めた。

 それと同時にコノ存在をヴァーリに近づけさせ過ぎない(・・・・)ようにすることも。

 強さに焦がれた少年が、この闇に侵食されないように。

 

 

 

 

 

「ロン、再戦をしたい体は戻った」

 

 ……アザゼル、決意折れる。

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ロン、一つ提案だ俺と組まないか?」

 

 ヴァーリは再戦で埋まるはずのない実力差に喜びながらも打ち震え、ロンにある提案をした。

 

「組む? なんの話?」

「──世界を敵に回さないか?」

 

 ヴァーリのどこか陳腐なセリフに笑おうとしたが、それは辞めた。

 どうやら冗談ではなく、その目には強い意志があったからだ。

 

「世界を……ね」

「ああ! 俺は最強を倒したい! 強い相手と戦いたい! ……だが、ここではそれはできない」

 

 

「そこでお前に出会った、俺より強い存在がいる! だが本気で相手はしてくれない。全てを出してくれない。決心がついた、やはり俺は敵に回ると。だがお前もそうなんじゃないか? 勇者という地位に縛られ自由がなくなるんじゃないか?」

 

「……まぁそういうことになるだろうな」

 

「俺とお前は似ている。どれだけ力を手に入れても満足のできない獣だ」

 

「…………いや、いいよ。確かに僕は恩義とかそういうので勇者やってるけど、別に嫌って訳じゃないし。悪も正義も僕にとっては大差ないけど……正義の味方の方が──幾分か素敵だろ?」

 

 ロンはヴァーリの勧誘を蹴る。

 その全貌までは知らないが、ヴァーリが何かやらかすんだろうな……程度にしか考えていない。

 ただ、家族に手を出した瞬間。

 

 ロンはヴァーリを殺す。

 予感や憶測ではない。

 

「ならここでの戦いはこれっきりだな」

「ん、了解」

 

 次は本当の殺し合いを。

 そして、もう二度と訪れない友としての道を。

 

 数少ない友達になれるのではないか、二人はどこかでそう思っていた筈だ。

 この二人が……もし、もしもの仮定の話だ。

 友となり、邪悪を打ち払う為に手を組んでいたなら……。

 

 

 それだけで、どれだけの命が救われただろう。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

「ヴァーリ、ちょっと頼まれてくれないか?」

 

 再戦で傷だらけになったヴァーリ。

 一応応急処置はしたが、もう一度グリゴリの方で治療をしてもらわないと動くことすらままならない。

 

「済まないアザゼル、こんな状態だ……」

 

「マジかよ……」

 

 自ら向かうという選択肢もある。

 だが、その場合はこの後に行われるであろう3大勢力の会議の場で話が拗れてしまう。

 堕天使の幹部であるコカビエルの暴走。

 

 それを止められるのは同じく幹部以上の堕天使か白龍皇程の神器の使い手。

 

 

「僕が頼まれようか? ヴァーリをこんなにしたの僕だし」

「……オーディンに貸しが……いや、これでチャラみたいなもんか……? 分かった! ロン頼まれてくれ」

「いいよ」

 

 まどろっこしい考えを今は捨てて、緊急事態の現状を何とかするために北欧の手札を使うことに決めたアザゼル。

 オーディンから何を言われるか分からないが、こうせざるを得ない状況を作ったのもまた事実。

 

「この町で俺と同じ堕天使の翼をした奴を回収してきてくれ。最悪殺しても構わん。名前は【コカビエル】」

「黒い羽根、堕天使、コカビエル……ん、覚えた」

 

 単語しか覚えていないことに少しばかり不安を感じるが、そうも言ってられない。町が滅びれば和平に向けての会議すら白紙に戻る可能性がでる。

 そして和平を結び協力しなければ、あの組織に対応出来なくなる。

 世界を敵に回しても気にしないような最強が頭にいる、禍々しい組織を。

 

「じゃあ最近消化気味だったからドゥンで移動しようかな……アザゼルに止められたから散歩がね〜」

「……はぁ、止めやしねぇよ。なるべく上空にいけよ」

「わかったてるって〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに神器に跨り空を散歩する。

 北欧の山とは違って、町には明かりが無数にあり幾分先も見通せる。

 

 月明かりではない夜の明かり。

 ここまで増えると圧巻の一言に尽きる。

 

 そして光の柱を確認した。

 

 場所は恐らく学校。

 結界が張られており、そこだけ不自然と呼べる。

 

 何より光の柱に引き寄せられる。

 あの光が何故か、聖槍の光と似ていたから……。

 

 黄金の羅針盤が示してくれたのかは不明だ。

 それでも、他人事ではない。

 

 その認識が心にできて、何故か取り返さねば(・・・・・・)という想いにかられた。

 

 

 槍を風で隠し、真下へと構える。

 

我が身に宿れ(テンペスト)

 

 身体能力を上げて、更に槍にも風を纏わせる。

 

 下を見据え、一番力の強く黒い羽根をした堕天使に狙いを定めた。

 

 懺悔など聞く気もない。

 殺す可能性もあるし、アザゼルから殺してもいいと言われている。

 

 そして何故かドゥンの機嫌が頗る悪い。

 

 槍に力を込め、神速の一撃を放つ。

 

騎駆剱霊穿(ストライク・スタリオン)

 

 手の平代の大きさの刺突が、結界を紙でも破くかのように突き抜けて堕天使の胸部を貫通した。

 

 神速の一撃。

 その一撃に遅れて気付くように結界は崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 堕天使、悪魔、ドラゴン。

 常世の宴に勇者が入り込んだ。






ドゥンくん、激おこプンプン丸。
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