聖剣聖剣って聖槍の方が強いから!!(迫真   作:枝豆%

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ジュウイチ

「ずっと思っていたんだ……僕が……僕だけが生きていていいのかって。僕よりも生きたかった子が居た、僕よりも夢を持った子が居た──僕だけが平和な暮らしをしていいのかって」

 

 懺悔のように嘆く言葉を死者の思念に語り継ぐ。

 聖剣を恨み、赦せずにいた理由。

 そしてこれこそが最近の暴走の理由。生き残ってしまった故の責任感が木場にはあった。

 

 

 ──聖歌が聞こえる。

 どこからともなく現れた死者の思念。ソレが歌を唄う。

 それは、どこにでも有り触れたものなのかもしれない。でも木場にとっては、かけがえのないもの幼少期に何度も聞いたことのある今は無い懐かしさを思いださせる

 

 

 

 

 ────大丈夫

 ──── 皆集まれば……

 ──── 受け入れて

 ──── 僕達を

 ──── 怖くない、たとえ神がいなくても

 ──── 神様が見てなくても

 ──── 僕達の心は何時だって

 

 

『一つだ』

 

 ──── あの子だってまだ生きてる

 ──── 僕達の弟を

 ──── 任せたよ

 

「──ッ!!!」

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 神の不在。

 その言葉は予想を遥か上回る形でリアス眷属にダメージを与えた。

 

 回復役のアーシアは気絶し、信徒のゼノヴィアもやっとも思いで立つことが出来ている状況。生命線とも呼べるアーシアの離脱が痛すぎる。

 

 信徒のゼノヴィアも木場と並ぶ前衛である以上、それが消えるのは痛手と言える。

 

 その窮地を救ったのは赤龍帝だった。

 理由は残念としか言いようがないが、それでも劇的な変化を齎したのは兵藤一誠の心の力だった。

 

 イッセーは神器を昇華させ、一時的とはいえ莫大な力の増幅を成功させコカビエルを殴り飛ばした。

 

「面白い! 面白すぎるぞ赤龍帝!! 主の乳を吸うというだけでオレの顔に触れるだと!!」

 

 コカビエルは興奮する。

 戦争の前座としかみていなかったが、この赤龍帝は不純ではあるが龍の力を引き出すのが上手い。

 それこそ戦争の途中で割り込んできたあの天龍を……。

 戦争の続きを始められる。

 

「うるせぇ! ぶっ飛ばしてや──」

 

 悪魔になってまだ二ヶ月。

 堕天使のいざこざから始まり、無茶をして不死鳥を倒すという奇跡を起こしてきた赤龍帝。今も堕天使の幹部を殴り飛ばすという、本来ではありえないことをやってのけた。

 

 だが……。

 

「……クソッ、体が動かねぇ」

 

 過度な強化に体がついていけていない。

 赤龍帝の倍化は神をも屠れる力であり、その力は絶大だ。

 

 だが、その強化は体が耐えきれるという前提に存在するものであって、無闇矢鱈に強化すれば体がついていけず持ち堪えることが出来ないことは明白。

 

「……つまらん、やっと面白くなってきたところでこれか……これだから転生悪魔は。お前も落ちたな赤い龍!」

 

 途端に気分を落とすコカビエル。

 一気に上がった高揚を打ち消すには十分過ぎた。

 

「せめてもの褒美だ、一瞬でいかせてやる」

 

 手を上にかざし光の力で槍を作る。

 その大きさはさっきまで使っていたものの比ではなく、今までが遊びだったことがよく分かる。

 

「死ね、赤龍帝!」

 

 振り下ろす。

 赤龍帝に向かって光の槍が──

 

 

「──ブハッ!」

 

 上から途端に襲撃を受けたコカビエル。

 

 その光景に驚愕する面々。

 

 

 

 

 天から光が降ってきた。

 一線は邪悪な根源を突き刺し、致命傷を負わせる。

 

 その異様な光景は空から降りて来た。

 元凶と思われる少年、その身の丈の小さい子供は馬に跨り天から降りてくる。

 

 

「─あれは!?」

 

 なんなんだ。そう言葉は続かなかった。

 あまりの光景に誰も話しかけたがらない。それは自分たちが悪魔だから、堕天使と同じく根源は悪でありそれ故に滅ぼされる。そう思ったからだ

 

 だから、初めに声をかけたのは信徒であるゼノヴィアだった。

 

「お、お前は誰だ!?」

 

 コカビエルに致命傷を負わせ、何もなかったかのような顔をする少年に声をかける。

 

Should I say how? (なんて言えばいいだろ)

 

「お前が何者かなどどうでもいい! オレの前に強者が来た! となればすることは一つだけだろ!!」

 

 致命傷を負ったはずのコカビエルが立ち上がり、傷口を手で塞ぐ。

 指の隙間や覆うことの出来ない場所から血が吹き出るが、そんなことを気にする必要は無い。

 なぜならコカビエルの元に強者が現れた、それだけでコカビエルは心躍る。

 

Shut up(うるさい)

 

 シルフィの風を使って、上から暴風を起こす。

 ヴァーリに当てていた拘束の威力ではなく、人を殺せる威力の風だ。

 力強く、それでいて逃げられない。さらに地面にのめり込む程の威力。

 

Who are you? (あなたは一体何者)

 

 ゼノヴィアは少なからず恐怖を覚えていた。

 絶望の根源だったコカビエルをまるで遊ぶかのように手玉に取り、使い捨てる。異常だ、そしてなにより何故かは分からないが、あの少年からデュランダルやエクスカリバーに似た波動を感じる。

 

Uh…… It is the feeling like the hunted man(えーと、お尋ね者みたいな感じかな)

 

Is it not an enemy? (敵ではないんだな)

Of course I am a hero(勿論、僕は正義の味方だよ)

 

 二人の会話を普通の高校生なら聞き取ることは出来ないだろう。

 だが、この場にいる全ての年代の子供は悪魔か転生悪魔。転生悪魔がもつ自動翻訳機能が火を吹き聞き取ることができ話すことも出来る。

 

「あなたは何をしにここに来たの?」

 

 リアスがロンに向かって質問を問いかける。

 

「ちょっと知人からの依頼でね……コカビエルってコレであってるよね?」

 

 地に倒れ伏している堕ちた烏に指を指す。

 拘束を抜けることは未だにできず、回復や防御に回すのがやっとの状態。この見下された状況にすら声をあげようとしない。

 それ程までにコカビエルは追い詰められている。本来なら弱者の考えるような卑劣な手しか思い浮かばないのだから……。

 

「知人? あなたはどの勢力に属して──」

「うっそ……イザイヤ?」

 

 リアスの言葉を遮り、ロンは木場へと声をかける。

 気の緩い……そう思われるかもしれないが、木場の人生観から察するにこの再会はそれ程緩くはなく泣いて喜ぶ程のものだったと言えるだろう。

 だが、ロンはそうしなかった……。

 

「ま、まさかアル───」

「っとストップ! ()は……僕は今ロンって名乗ってるんだ。イザイヤも死んだんだろ?」

 

「……ああ、僕は木場裕斗で通ってるよ」

 

「そっか……裕斗か……。うん! 分かった裕斗ね」

 

「待ってくれ、君は一体どうして生きて──今何をしているんだ!!」

 

 堪えきれなくなった。

 力と意志と願いを施され、弟を任された。ロンを任された木場にとって……今この場での再会は偶然ではない。

 まだ、残っているものがある。

 それより何で今まで……。

 

 考えが纏まらないだろう。

 葛藤もある、不安も、再会できた喜びも、感動も。

 でも、一番大きいのは焦りだ。

 

 このままではどこかへ行ってしまう。

 

「あ〜、ごめん! ちょっと急ぎで頼まれてるんだよコレ」

 

 コレっといい指を指したのはコカビエルがさっきまでいた場所。

 

 

「油断したな! 人間風情がオレを抑えてい──」

 

 確かに感傷に浸っておりロンは油断していたが、もう一方はそんな油断などする訳がなく……。

 ドゥンはコカビエルを前足で踏んずける。

 

 肉が砕ける嫌な音がした。

 頭が潰れる果実のような音がした。

 

 コカビエルの体が地面に挟まれて潰れ、血が霧のように舞う。

 

「あ、ドゥンやり過ぎだよ……これ流石に死んだよな…………なんかむっちゃキレてんじゃん」

 

 嫌な匂いが辺りを充満した。

 ロンも溜息を吐きながら、頭をかく。

 

 最悪殺してもいいと言われたが、そこまでする程の相手では無かった。実際そこまで追い詰められた状況でも無かった。

 ただドゥンの機嫌がすこぶる悪い。

 

 ただそれだけの理由でコカビエルは死んだ。

 

『無視か? スタリオン』

『…………』

 

 どこか馴染みのあるような声がロンに届く。

 振り返れば見たことも無い青年、そしてら隣には懐かしの顔がもう一人いた。

 

「あ、アルジェントさんもいるんだ。なんか縁があるな〜……ロセもいたりして」

 

 北欧で一度顔を合わせたことのあるアーシアをみつけるが、どうやら気を失っているみたいだ。起こすのも悪いし、挨拶はまた今度でいいだろう。大丈夫だ、だって彼女は既に人間を辞めているのだから……。

 

「待ってくれロン! 僕は君に──」

「あー……うん! また来るからその時にね」

 

「違う! 僕は今君に話があるんだ!!」

「いや、ホント急ぎなんだよ。また──」

 

 

「──おい! 誰だか知らねぇけど!! ちょっとくらい木場の話を聞いてやってもいいだろ!! この───」

 

 木場とロンの間に入ってきたのは、立っているのもやっとなコカビエルを殴り飛ばしたヴァーリの白龍皇と対をなす存在、赤龍帝だった。

 そしてために溜めて放った言葉は、ロンの琴線に触れるあの一言。

 

 もしアーシアが起きていたなら止めれただろうが、気絶していてはどうすることもできない。

 敵に回してはいけない奴を一言で敵に回す一言。

 

 一誠は言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──チビ!」




ロン・ドゥン「久しぶりにキレちまったよ、屋上行こうぜ」

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