聖剣聖剣って聖槍の方が強いから!!(迫真   作:枝豆%

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「ハティ、スコル。お座り」

 

 あの爺さんに拾われてからそろそろ半年近くなる。

 最近では爺さんの周りの神達からも白い目で見られなくなった。でも、やっぱりそれは全員じゃない。例えばこの2匹の飼い主からは「下等な人間」と会話の語尾では必ず付いてくる。

 正直毎回言っててめんどくさくないか? と思うが威厳のようなものがあるのだと僕は気にしないことにした。

 

「よしよし、お前たちはいい子だな」

 

 僕のお昼ご飯を二匹に少し分けてやる。

 豚の丸焼きだが、狼にはこのくらいペロリと食べてしまうだろう。

 

 代わりに僕は以前街に出た時に買っておいたリンゴを食べる。

 

 この世界で僕は肉や魚より、果物やお菓子の方が好きだということが分かったのだが爺さんから飯も食えときつく言われた。

 大人は理不尽だ。

 

「偏食のなにが悪いんだよな〜。自分だって酒ばっかり飲んでるのにさ」

「聞こえておるぞ、ロン」

 

「げ、爺さん」

 

 爺さん。そう呼ばれたのは山で出会った老人、名をオーディンと言うらしい。そして一応神様である。

 神は神でも教会の信仰されてる神ではなく、北欧の神だ。

 

「ロンよ、そうフェンリルの子を持ち出すな、ロキがまた暴れるぞ」

「知らないよ、この2匹が僕のところに来るんだから。文句があるならハティとスコルにいいなよ」

 

「餌付けすれば懐いてしまうであろうが、餌付けをやめろ」

「そんなこと言ったって僕の昼ご飯一人で食べきれないし」

 

「ならば量を減らせばよかろう」

「爺さんが肉食えって言ったんだろ!?」

 

 ああ言えばこう言う。

 こんな思い切りのいい関係に慣れたことに素直に喜べないのもまた一興。それこそ本物の家族のようにすら見える。

 

「何も豚でなく野ウサギでもよかろうに」

「ウサギって可愛いじゃん、〆るとき掠れる鳴き声とか……ホントもう……」

 

「豚には感じんのか……」

「豚って可愛いの小さい時までだからね、大人は食べるに限るよ美味いし」

 

「なら全て食えばよかろう」

「肉が美味いのは4口目までだよ」

 

「何をドヤ顔で言っておるのじゃ馬鹿者」

 

 肉が美味いのは4口目までという暴論に対し呆れる主神オーディン。

 だが不思議と憎めないのが憎たらしい。拾ってから半年近く、オーディンにとってもロンはただの聖槍に選ばれた者と言うだけでは無くなっていた。

 

神器(・・)の方は上手く使えとるのか?」

「どうだろ、多分大丈夫じゃないかな? 喋んないから分かんないけど仲悪くはないと思うよ。元々そういうものなんでしょ?」

 

「聖槍に神器とは、出鱈目な存在じゃわい。いや、だから選ばれたのかもしれんのぉ」

 

「もう用がないならいくよ、じゃあね爺さん!」

 

 返事は聞かずに走り去った。

 ハティとスコルのように僕の神器も喜怒哀楽があればコミュニケーションが取れればいいんだけど。基本「Yes」か「No」しか反応しないし。

 厳格な感じなんだろうなー。

 

「【白亜の天翔馬(ドゥン・スタリオン)】」

 

 僕の神器を取り出した。

 聖槍とは違って、これは僕が産まれた時からずっと持っていたものらしい。爺さんはそういう知識に関してはとにかく凄い(語彙力)

 

 昔の英雄の馬だったらしいが、死んだことによって神器として生まれ変わったらしい。だから馬というよりも鎧? みたいな感じに思える。

 まぁ馬っぽくないということは確かだ。

 

 爺さんに聞いたところ、神器はだいたいそんなもんじゃ。とのこと。

 

 僕はドゥンに跨り大地をかける。

 知らない土地はいい、全くの未知を常に僕に教えてくれる。

 走ることは気持ちいい、風を切る感覚は全身が喜ぶ。

 

 少し景色を見たくなった。

 

「ドゥン、上にいこう」

 そういうと速さに掻き消えて聞こえるはずのない僕の声が届いたかのようにドゥンは空を駆けた(・・・・・)

 

 それは跳躍ではなく文字通り空を駆けた。

 空間に波紋を残して。

 

 大地を駆けるのもまたいいが、それと同じくらい空を駆けるものいい。

 

 色褪せる景色が常にいいものだ。

 

 世界は何と素晴らしいものか。

 

 北欧の山々を走り周り、随分と楽しそうなロン。

 少々子供っぽいが、ロンは子供である。歳にすればまだ10にも満たない程の幼子。

 

 大自然を相手にするにはまだまだ小さい。

 だがそれを可能にする神器に恵まれたことで、毎日こんなことをしている。

 

 爺さんを困らせて、スコルとハティに餌をやって、ロキにキレられて、ドゥンに跨る。

 

 そんなロンの生活はいい意味で変化を遂げる。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

「ごめん爺さん? 聞き違いかも、もう一回言って貰える?」

 

 聞き違いかも、という限りなく低い願いはオーディンの次の一言で潰えた。

 

「じゃから北欧の学校へ通えと言っておるんじゃ」

「……それってあれじゃないの? 魔術とか魔法とか戦乙女になる場所じゃないの?」

「……まぁそうとも言えるのぉ」

 

「……爺さん……ごめん爺さん、実は僕、男なんだ」

「分かっておるわい!」

 

 ならなんでそんなほぼ女子校みたいな所に入れようとするんだよ。

 北欧の戦力は神と戦乙女しか見たことないぞ、それはつまり学校でもそんな感じなんだろ? 

 

「……てかなんで今更、爺さんも言ってたじゃん。僕はそこいらの戦乙女より強いって。今更その戦乙女の養成校に通っても僕が得られるものってないんじゃないの?」

「確かにロンは実力だけで言うなら下手な戦乙女よりは強い。ポテンシャルを見れば神クラスになることも充分にありえる。じゃがのロン、お前さんはまだ子供じゃ」

 

 子供って。

 確かにそうかもしれないけど、今更何も知らない無垢な子供になれって。それこそ冗談じゃない。世の中が綺麗事では回ってないことは既に知っている。

 世界の裏側ではどれだけ残酷な事が行われていたのかも。

 

 自分の住んでいる場所が普通だと思い込んでいた過去の自分。

 あの地獄が普通だと感じていた日々。

 

 それが如何に哀れな事かをロンはつい最近になって知った。

 

「行けば分かる、儂のこの眼にかけてもよい」

 

 オーディンは眼を賭けた。

 知識の為に眼を捨てた爺さんに眼を賭けると言われても嘘くさいが……。

 

 

「分かったよ、でも飽きたら辞めるから」

「やんちゃ坊主が」

 

 山での数奇な出会いから爺さんに拾われ、僕は正直頭が上がらない。普段はやんちゃして誤魔化しているけど、そこの所もしっかりと見透かされてるんだろう。

 あの爺さんの横顔を見た時にそう思った。あのニヤケ面は予めこうなることを予想していたんだと思える。

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 早い話が浮いた。

 それはもう浮きに浮きまくった。

 

 担任が主神からの推薦でここに来たから失礼の無いように。みたいな紹介をしたせいで完全に浮いた。

 元々浮くのは分かっていたが、担任がああいって浮いたから全ては担任のせいだ。

 

 数日通って分かったことは、僕と同じように浮いているのが一人いるということ。そして女子率が圧倒的というか、もう女子校の域だった。

 生徒も先生も全部女、これは肩身が狭い。

 

 初日で辞めてやろうと思ったが、爺さんに言われた手前そういうこともできない。

 僕は世界を広げるのは好きだ、自分が知らないことに触れたり見たりするとそれだけで心が踊る。何だかぽわぽわした気分になる。

 だが、性別変化とかそういう扉を開けたい訳じゃない。

 

 

 この瞬間にロンのぼっち生活が始まった。

 話相手はドゥンくらいだ、話しかけても帰ってこないが。

 

 休み時間は常に屋上で休憩か一人飯。

 常に楽しいことをしていた爺さんの近くや山では考えられない位の退屈さだ。

 

「あー……暇だな。昼寝しよ」

 

 午後はサボろう。

 そういうのも大事という根拠の無いものでサボることを肯定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、あの」

 

 屋上で寝ていると既に夕日が傾いている。既に授業は終わっているのだろう。

 そして僕がこの学校で声をかけられたこと。それがとても不思議だ。

 

「そろそろ下校時間……です……よ」

 

 少女はとても震えた声で僕に声をかける。

 何せ担任があんなことを言ったんだ、僕に何かあれば戦乙女としての未来が無くなるということも充分にありえる話。そんな危険な爆弾に寄り付きたくないだろう。

 それなのに声をかけた。

 

「え、あー。ありが……」

 

 声の方角を見た時少しだけ意外だった。

 なにせらその子は他の人とは違って、僕と同じような立ち位置にいる。

 

 

「ぼっちちゃん」

「ぼぼ、ぼっち!?」

 

「……あ、ごめん気にしてるよね」

 

 その言葉が琴線に触れたのか彼女は非常に動揺した。

 

「は、はァっ!! は!! べ!! 別に私はぼっちじゃありませんしッ!! 私は好きで一人でいるんですッ!!!」

 

 この動揺具合でロンは悟った。

(あ、これめっちゃ気にしてるやつだ)と。

 それと同時にちょっと泣きそうになっている、ということを。

 

「だ、第一あなたに言われたくないです! 初日からクラスの誰からも声をかけて貰えないし! 私でも初めの方は声をかけて貰えてましたから!! それにあなた転入してきて間もないのになんでサボってるんですか!! やる気あるんですか!!」

 

 あ、まだ続けるんですね。了解です。

 というか初めは話しかけられてたんですね、何をやらかしたら話しかけて貰えなくなったのかとても気になります。

 

「真面目に授業受けてるのにガリ勉とか真面目子とか言われて! 今は田舎者だなんて言われて!! どんどん浮いちゃって!! しまいには転入生にもボッチだなんて呼ばれて!! わ、わたすだってぇ! みんなと放課後にぺちゃくちゃお喋りしてぇさー!!」

 

「よし、分かった落ち着こう。なんかよく分からないけど色々わかったから落ち着こう……な?」

 

 多分田舎者って言われるのは、そうやって方言で話してしまってるからだよ。だなんて、この場ではちょっと言いづら過ぎる。

 というかこれがこの学校に入って初めての会話とか、僕も悲惨すぎるでしょ。

 

「ど、同情されたー」

 

 涙ながらにそんなことをいう彼女。

 もうなんなんだよこいつめんどくせぇな。

 だなんて思っても口には出しませんよ、ええ絶対口に出したらこれ以上泣くことは分かっていますしそんなことはしません。

 

「こんなチビに」

「んだと田舎モン! 情緒不安定過ぎんだろ最初のオドオドキャラどこに消えたんだよ! あとてめぇが田舎モンって言われんのは方言使ってるからだよ気づけ!!」

 

 ロンに身長の話をしてはいけない。

 この少女の心に色濃く記された。そしてこのロンという男、キレたらめちゃくちゃめんどくさい。ということも追記された。

 

 そこからはただの悪口の言い合い。

 基本的には「田舎者」と「チビ」の二種しか飛び交わなかったが、それなのに二人のメンタルはゲッソリと削がれた。

 

「……おいボッチ」

「私はボッチじゃありません!」

 

「名前は?」

「って聞いてませんし!? ……ロスヴァイセですよーだ」

 

「そっかー、ロスヴァイセか〜」

「なんですかその深みのある言い方は! だいたいまだここでサボってい──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロスヴァイセさ、お前僕の友達になってよ」

 

 

 

 

 




勇者(エインフェリアル)ルート突入。百均ヴァルキリーが友達になった?


銀髪、巨乳=最強

銀髪、巨乳、方言女子=神

神=ロスヴァイセ QED

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