聖剣聖剣って聖槍の方が強いから!!(迫真   作:枝豆%

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さん

 我が北欧の学校では月に一度の周期で魔獣の森に放り出される。

 何だか少しゲームの名称じみた名前だが、気分は憂鬱だ。

 

 この言葉を聞けば納得してくれるのではないだろうか?? 

 

 

 好きな人と組み班を作りなさい。

 

 

 初めてそんな残酷な言葉を聞いた。

 こんな残酷な事が言葉があったということに驚きだ。

 

 そういう訳で誰からも声をかけて貰えることはなく一人で魔獣の森に入らなければならない。こういう月一のイベントごとに一人で向かわなければいけない僕の気持ちは下がりっぱなしだ。

 

「はぁ、憂鬱だ」

 

 10歳くらいの子供が言うには早すぎるその言葉。だが、人生経験だけで言えば並の比ではない。

 

「ドゥン、空に」

 

 ロンはドゥンに跨り空に昇った。

 このイベントは何も魔獣を倒すことが目的では無い。サバイバル技術や罠の設置、野営の張り方と一日森に放り込まれるということに意義がある。

 だから平たくいえば生徒の自主性に任せる。とのこと、僕一人の為に野営するのも面倒だし、ご飯もさっき果物を採ったから余裕。

 このまま一日ドゥンと一緒に空に居よう。

 

 

 

 

 

 それにしても憂鬱だ。

 あの時の言葉、まさか断られるだなんて思って無かったから……。

 

 

「──友達になってよ」

「このタイミングでッ!!? い、い、いい……嫌ですよォ!!! ロンのばーかばーーか! 下校時間過ぎてますよ! べー」

 

 割と本気でああ言ったのに断られて挙句に暴言を吐かれ、最後は舌まで出された。多分暴言の延長戦であんな感じになったのだ……うん、そうに違いない。というかそうであってくれないと立ち直れない。話して数分でそこまで嫌われてたら、僕はこの学校を本気で辞める。

 

 ともあれ僕やロスヴァイセの浮いてる組はこの月一イベントに一人で臨む訳だが、今頃アイツも時間の潰してるんだろう。なにせガリ勉で優等生な訳だし。

 え、僕? 最近やっと読み書きが出来るようになりましたけど何か? 

 

 

「あー、もういいやご飯たべよ」

 

 勉強のことを考えるとお腹が減る。

 背負っている袋からリンゴを出して齧った。

 

 瑞々しさがあり北欧産のリンゴはとても美味しい。

 

 オーディンやその他の神々から離れたことによって、ロンの偏食は一気に進んでいる。朝はリンゴ、昼はぶどう、夜はミカンだなんてメニューはざらだし毎食リンゴということもよくある事だ。

 因みにロンはゴミを出すのが面倒だからといい、ぶどうとミカンは皮ごと食べる派だ。流石にヘタは食わない。

 

 そうやって半日くらい果実を齧りながら空にいると、所々で光が上がり始めた。夜間に魔法陣は良く目立つ。

 野営して各々仮眠を取ろうかというこのタイミングでだ、教師陣の性格の悪さが表立ってしまう。

 

 だが僕もそうは言っていられない。

 戦乙女とは本来空を飛べる。なのに僕と同じく空に陣取らない理由、それは。

 

 

「gyaaaaaaaaaaaaoooooo」

 

 空にいたとしても魔獣が攻めてくるからに他ならない。

 本物の戦乙女ならば分からないが、彼女らはまだ訓練生。空を飛びながら複雑な魔術の展開はちと厳しい。

 だが僕はやることが単純なので分かりやすい。

 ドゥンで駆けて蹴散らす。

 

 ただそれだけで勝ててしまうから神器とは偉大だ。

 こんなバケモノ地味た力を持つ神器ですら、13の最上位に位置する神器には適わないだなんて、それはもうバグの領域だろう。

 ドゥンは前足で空飛ぶ魔獣を踏みつけ、押し潰す。

 

 余りの脚力により魔獣は物凄い速度で地上に落とされ、地面には小さくクレーターのようなものが発生する。

 

 これの程度なら聖槍を取り出す必要も無さそうだ。

 何せあの槍は無駄に強すぎる。その事を考えると周りへの被害を考えた時に、ほかのクラスメート達が不憫でならない。

 

 ロンの槍の攻撃が衝撃となって森を削ぎ落とすことも充分にありえる。何よりドゥンで充分なのだからいいだろう。

 

 それから魔獣は留まることを知らずに延々と流れてくる。

 地上から狙われることは無いが、逆に空にいる魔獣は全て引き受けていそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 私は最近過ちを犯した。

 それは本来なら気にも留めないようなこと。

 

 転入生から「友達になって」といわれ断ってしまったことだ。

 正直な話、私には友達というものがいない。だからその言葉を聞いた瞬間は嬉しかった。それこそ、ばぁちゃんに連絡してしまいそうなほど。

 

 でもふと思った。友達ってなんだろう……と。

 

 何度も言いたくはないが私には友達はいない。放課後に友達と出かけて服を買いに行くことも、カフェでお茶することも、美味しいケーキ屋さんに行くことも。

 

 私は彼の友達になってもいいのか? 

 そう思った時、途端に恥ずかしくなった。

 

 私では友達になる事はできない……と。

 

 

 

 

 

 

 

 月に一度の学外合宿が始まった。

 いつもの様に一人で臨むことになるだろう。恐らく彼もそう。なぜなら私達には友達がいないから。

 あの時屋上で話していた楽しそうで活発なロンは教室にはいない。ずっと詰まらなさそうな顔をしている。それが悪い事ではないのかもしれない、それでも私は少し心苦しくなった。

 

 一人で野営をして一人で魔獣を狩る。

 この学校での単位で攻撃魔術を私はドンドンと取っている。代々ウチの家系はそういう戦闘面ではないのだが、家の居づらさなどから逃げた結果でこうなった。

 でも私は攻撃魔術には才能があったらしい。ドンドンと習得して実用段階まで持っていき、単位をどんどん稼いで近々飛び級する予定だ。

 

 彼は今どうしているのだろう。

 

 友達になるという誘いを断ってから。いや、多分あの屋上で話した時から私は彼を気にしている。

 そしてそれは恋などでは無いということも分かっている。

 多分それは罪悪感だ。

 

 その罪悪感が心に引っ付いて取れない。

 

 だから私が立派な戦乙女となった時には彼に。

 

 ──勇者(エインフェリアル)に。

 

 

「──しまッ!」

 

 気を抜きすぎた。

 背後から魔獣に回られ囲まれている。

 

 対一戦闘なら問題ないのだが、数が数だ。

 冷や汗がでる。

 

 こうなったのも自分が気を抜いていたことが原因。

 私の実力ではこの大群に勝てる確率は良くて五分五分。

 

 それでも、立派な戦乙女になると決めたのだから。この程度の窮地、乗り切ってみせる。

 

「やぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彗星の如く。

 黄金の光が地に落ちた。

 

 落雷のように速く、羽のように軽やかで。

 その光は私の周りを一掃した。

 

 手には黄金の槍。

 乗りこなすは白馬。

 

 勇者、英雄……。

 

 私は初めてこの目で見た。

 

 

 

「……白馬の王子様」

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 ──ヤリをヌけ

 

 

 途端に胸がざわめく。

 前にもあったこの感じ、何かの声が胸に谺響する。

 

 次第に胸は暑く、体は火照る。

 

 熱い、熱い! 熱い!! 

 

 雑魚相手に槍など不要。そう切り捨てていたのに、槍自ら出たがるなど聞いたことがない。

 これもまた聖槍の力なのか? 

 

 右手をそっと胸に添える。

 そしてその手を胸からそっと離す。

 

「こい、聖槍」

 

 真名を解放するわけにはいかない。

 必殺のアレを撃つには色々と手間がかかるし、何より真名解放するだけでも槍の神性で空間が持たない。

 

 だから今取り出した聖槍の形は黄金を包み込むように青いもので囲まれている。だがそれでも充分に強い武器だということが、この本来の聖槍の姿の化け物具合を教えてくれる。

 

 

 そして僕は槍の導かれるままにドゥンを動かし空を駆けた。

 地を蹴る音と遜色なく、地面には波紋と踏みしめる大きな音。

 

 

 目的の場所が見えた。

 ドゥンを下降させ僕は槍を構えた。

 

 空から僕は落ちる。

 黄金の槍と呼ばれる聖槍を持ち、あの少女の周りの敵を僕は。

 

 

 

 

 

 

 高速の突き。

 ただでさえロンの突きは音速を超える光速へと達している。

 

 その光速の突きとドゥンの光速の駆け抜け。

 その2つを合わせたなら、それは既に時空を超えると同等といえる。

 

 不可避で一撃必殺のその突き。

 

「【騎駆剱穿(ストライク・スタリオン)】」

 

 地面ごと魔獣を根こそぎ潰した。

 ある一部を除いて、そこはボロボロだ。

 

 彼女が立っている場所を除くと。

 

 

 大丈夫か? ロスヴァイセ──。

 そう声をかけようとしたら、彼女は思ってもみない言葉を呟いた。

 

 

「……白馬の王子様」

 

 真顔でそんなことを言うロスヴァイセ。

 確かに乗っている馬は白馬といえば白馬だ、それにこの聖槍も神性をほとんど押さえているこの状態ならそう見えるのかもしれない。

 ……でも。

 

 

 

「ポンコツで田舎モンで優等生でメルヘンは流石に属性詰め込み過ぎだぞロスヴァイセ」

 

 馬に乗っているにも関わらず、ロスヴァイセは思いっきりジャンプをして殴ってきた。

 

「ちょ! 何すんの!? 助けたんだけど!? 何故殴る!!??」

 

「私はポンコツじゃありませんしメルヘンでもありません!! 少しでも夢を見た私の純情を返してください!!」

 

「なんでだよ!? てか田舎モンは認めるのかよ! あと心奪われてる時点でメルヘンも確定じゃねぇか! なんだよ白馬の王子様って、今時いる訳ねぇだろ! ちょっとは羞恥心とか学べよポンコツ」

 

「ぽ! ポンコツ!? また言いましたね!!」

 

「いーやお前はポンコツだね! なんで囲まれたのに逃げなかった! というよりなんで囲まれた!! トロトロしてるから死ぬ目に会うんだよポンコツ!」

 

 ロンの言葉は核心をついていた。

 こんな馬鹿みたいな言い合いでも、それでも今回に限ってロンは全面的に正しかった。

 そしてその言葉をロスヴァイセも分かっている。自分の不注意がこんな結果を招いたこと、ロンが来なかったらもしかすれば殺されていたこと。

 

「……んなこと……わたすが一番……わがっでる!!」

 

「んなバカみたいなことしてぇ、ロンにだすげてもらっで! 情けないって、わたすが一番んわがっでる!」

 

 それはロスヴァイセの嘘偽りのない言葉だった。

 自分の不甲斐なさとか、そういった負のものが一気に押し寄せて。それで今爆発した。

 

 

 泣いた。

 ずっと泣いてた。

 

 かける言葉もない。

 

 

 でも、ここに居続けるのも危険だってことは分かる。

 

「ロスヴァイセ、後ろ乗れ。移動する」

 

 顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。

 あまり見るのも悪いと思い、視線を合わさずに手をつかんで引き上げて後ろに乗せた。

 

「ドゥン、上に」

 

 ドゥンのスピードも心做しか何時もよりゆっくりだ。

 こちらにかかる負担も少ない。

 

 

 ふと、心の声が聞こえた気がする。

 ロスヴァイセの心の声が。

 

 言うか言うまいか悩んだが、いつまでも黙っているのは辛いので声を出した。

 

 

 

「今ロマンチックだなーって、思ったろ。どこまでお花ばt──」

 

 

 

 ……痛い。




ロスヴァイセ、幼女=メルヘン(確信


最果てにて輝ける槍 真名解放前(①FGOのグレイEXTRA attackの槍)聖槍

最果てにて輝ける槍 真名解放(②乳上の持つロンゴミニアド)白銀

最果てにて輝ける槍 宝具=必殺(③乳上宝具ロンゴミニアド)黄金、なんか纏ってるやつ


【FGOとの違い】
胸から飛び出した時は①、胸から取り出し名前を聖槍からロンゴミニアドに変えると②、円卓の過半数を獲得できれば③。

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