聖剣聖剣って聖槍の方が強いから!!(迫真   作:枝豆%

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よん

 あれから数年経った。

 結果から言えば僕は北欧の学校を辞めた、ロセ(・・)とは仲良くなったし色々と面倒を見てもらったけど座学の点数が取れなさ過ぎて留年と同時に辞めた。

 ロセはドンドンと飛び級していき、そろそろ卒業資格を貰えるとのこと。僕の唯一の友達は意外と上手くやっていけている。

 

「まさか今代の勇者(エインフェリアル)が戦乙女の学校で留年とはのぉ。実に型破りじゃ」

「うるさいなぁ、野生児に勉強覚えろって方が無理あるよ。てか僕の場合は読み書きからできなかったし」

 

「遊んでばかりもいられんと言うことじゃ。これで身に染みたじゃろ?」

「まぁ、計算とか魔術とかは難しいから初歩しか出来ないけど。やっぱりないとあるじゃ便利さが違うね」

 

 初等魔術を一応会得しているロンの生活水準は少し上がった。

 例えば今まで焚き火をするのに態々木々の摩擦熱を使ってを火起こしていたが、今は初等の火魔術を使って燃やしている。

 

 そうやってロンは地道に原始人的な生活から水準をあげて、今やっとの思いで数世紀前くらいまでの生活をしている。電気などはまだ取り入れられないようだ。

 

「ところで爺さん、今日の依頼は?」

「なんじゃ、やけに聞き分けがいいのぉ。儂としては構わんのじゃが何かあったのか?」

 

「いやーロセが僕の生活のことニートっと呼んでくるんだよね、外で活動してるからニートじゃないっていったら、じゃあ『山ニート』っていうからさ。ちょっとは働こうかと」

 

「ロセといえば、確か学校でできた友達じゃったか? あんな女子(おなご)しかおらん花園におったんじゃからハーレムを作って帰ってくると思ったんじゃがな、たった一人だけは情けない」

 

「は!? べ、別にロセはそんなんじゃないし! てかハーレムってあんた何歳なんだよ自重しろエロジジイ」

 

 オーディンはある程度学校のことは聞いている。

 主に勉強めんどくさいとしか報告は無かったが、時折名前を聞くロセが友達ということは何となく分かっていた。

 如何にも戦乙女だと思うような性格かと思えば、ちょいと抜けてる、そう思えば飛び級する優等生。正直ロンの報告では謎だらけ過ぎてあのオーディンが実態を掴めていない。

 

「まぁよい。依頼という訳では無いのじゃが、どうも最近儂らのナワバリをチョロチョロしておる蝙蝠がいてのぉ」

「悪魔って奴だっけ?」

 

「そうじゃ、何人か戦乙女を派遣したのじゃが全て消息を絶たれている。恐らくやられたと見ていいじゃろう」

 

 途端に険しい表情になった。

 ロンの中で戦乙女が死んだ、というニュースは穏やかではない。それがロセであっても無くても、少からず一年で知らない仲ではなくなったということもある。

 

「分かった。じゃあ行ってくるよ」

「うむ、気を付けてな」

 

 それと同時にオーディンは少し気を落とす。

 学園に入れたことをほんの少しだけ後悔していると言ってもいい。

 

 勇者。北欧神話にとってその存在は神の次に強力である。

 だが神と勇者の間には大きな差がある。それは権能であり神格であり神性という神にのみ許された力の有無が大きく関わる。

 

 それ故に勇者は北欧の神々にとって娯楽と遜色はない。

 オーディンも毎回同じような勇者ばかり見てきた。それ故に飽き、一風変わった勇者を求めた。

 

 そんな時に出会ったのがロンである。

 初めて見た時、自殺願望かと思える無謀な行為をしていたにも関わらず聖槍の加護で何とか生きているような状態だった。

 名を与え、衣食住を与え、そしてもう一つの才能を見せた。

 

 神器。

 それもあの聖槍の本来の担い手を乗せていた馬の神器。

 

 オーディンは嗤った。

 知識を求め片目を犠牲にし、膨大な情報を得た時と同じくらいに笑った。

 

 面白い! 

 宿命を背負い、世界から寵愛を受け。それでも人間から愛を貰えない。

 

 聖遺物に愛され、亡き聖書の神に愛され。それでも信者からは愛されなかった男。

 

 

 こんな滑稽な話があるか。

 信仰する神から愛されているのにも関わらず、信者はそれを愛さない。

 

 

 道化だ。

 狂わしいほどの道化。

 

 だが今のロンはどうだろう。

 実力は今も変わらず伸び続け、近々神器の禁じ手に辿り着くだろう。

 

 恐らくロンは歴代最強の勇者と成れるだろう。

 だが、強いだけだ。強さなら神々にとって……オーディンにとっては蝿の様なもの。

 

 喜劇が欲しい。

 

 だがロンはまともな少年になってしまった。

 それは本来ならいい事なんだろう。

 

 ……だが勇者としては。

 決定的に面白味が欠けてしまう。

 

「ふぅー。弱ったのぉ」

 

 そして何より、危険なことから遠ざけたいという気持ちが芽生えてしまっているのも事実。

 この世界で誰よりも叡智な神が、こんな小さな悩み事に悩まされているのすら道化のソレだ。

 

「本当に弱った」

 

 

 ーーーーー

 

 

 空を駆けて周りを見渡す。

 本当にここらの山脈は素晴らしく美しい。

 

 圧巻の一言だ。

 ロンは高い場所にいることや綺麗な風景を見る事が一番好きだ。

 

 だからドゥンの上で空を駆ける事を非常に好いている。

 馬鹿は高い所が好き、とはよく言ったものだ。

 

「常々思うよ、神器がドゥンで良かった」

 

 逆にこの神器を持っていた故に聖剣を拒み、聖槍を寄せ付けたと言っても過言ではないが。それも含めてロンはドゥンが神器で良かったと考えている。

 恐らくドゥンがいなければ実験のとこに廃棄に巻き込まれていたかもしれないし、何より聖槍は降りてこなかった。それにオーディンに拾って貰えなかった。ロスヴァイセの窮地に間に合わなかった。

 

 

 ドゥンは必ず辿り着く。

 空を駆け、大地を走り、雷鳴の如く。

 

 そして道標の聖槍。

 

 

 ロンは何処へだっていける。

 

 

 ──槍を抜け

 

 ああ、何時ものあれだ。

 自分に危機が迫っている時、そして誰かの危機が迫っている時。

 

 そんな時に槍は何時も僕に語りかけてくる。

 

 大抵の敵には聖槍は過剰戦力だとは理解している。

 だがこの聖槍、かなりの目立ちたがりなのが玉に瑕だ。

 

「聖槍よ」

 

 最近になって聖槍からの神性がやけによく馴染む。

 握った感触と共に全身を覆うオーラの様なもの。それがココ最近は凄い。

 それこそ武器にある慣れ、では片付けられないほどの感覚。

 まるで聖槍と体が一体となる様な。

 

『……』

 ドゥンから不満が伝わってきた。

 余計なことを考えている暇があるなら気を引き締めろ。そう言われているような気さえする。

 

 ドゥンは基本的には無口だ。

 今まで言葉を発したのはたったの一度だけ。

 

 そんな無口な神器から不満が盛れた。

 

「ああ、わかってるよ」

 

 分かる。

 今回の敵は手練だということを。手を抜いて勝てる領域ではないということも。

 

 

 

 

 

 急降下。

 追われている一人の自分と同じくらいの子供に目掛けて、落雷の様に地に降りた。

 

「な!? コイツは」

 

 昔世話になった服装を着た組織の奴らがいる。

 そして、何故かその教会の祓魔師(エクソシスト)達は金髪のシスターを追っている。

 あと少し、ほんの少し遅れたら間違いなく殺されていただろう。

 

「退け! 我らは異端審問の結果、そこの魔女を殺すことが決議した! これは正義の行いである!!」

「何人たりとも邪魔はさせぬ!」

「然り!」

「然り!!」

 

 祓魔師達の圧にロンは参る。

 神を信じ、信者になることには何の文句もない。だが、上からの命令が全て正しいと思いその時点で思考が停止しているコイツらに嫌悪を抱く。

 

「はぁ、めんどくさいな……聞け! ここは北欧の主神オーディンの縄張りである! この美しき地を無許可で荒らし! 乙女の血でこの地を汚そうとするその愚行には目を瞑れぬ!! 去れ」

 

 形だけ。そう形だけでも、こう何ともらしいことを言えば後々正当性が生まれる。何せここは本当に北欧の神々の地であることには違いない。

 爺さんからは蝙蝠の討伐と聞かされていたが、こちらも随分と穏やかではない。

 

「黙れ異教徒! 我らが父に比べればオーディンなど恐るるに足らず!」

「然り!」

「然り!!」

 

(うわ、これダメだわ)ロンはそう思った。

 

「お嬢さん何したの? 奴さんプンプンだよ?」

「す、すみません! 教会の近くに傷だらけで倒れていた悪魔さんを治癒して」

 

 悪魔? 

 悪魔を治した? 

 

 どうもきな臭い。

 本来なら悪魔を治すなんて事は出来ないはずだ、それが教会のシスターであっても。だが、嘘を着いているわけではなさそう。

 となるとそれは事実だ。

 

 だがそれ以上に悪魔が教会の近くで倒れているものか? 

 ありえないだろ。逆に教会の奴らからボコボコにされた可能性の方が高い、そしてその悪魔を例えシスターでも治しに行くとは考えにくい。

 

 爺さんからの悪魔の依頼。

 そして悪魔を治したシスター。

 

 

 もしかしたら何か繋がりがあるんじゃないか? 

 

「退け異教徒! さもなくば貴様ごと」

 

 聖槍に力を込める。

 今回ばかりは敵の量と発せられる殺気で手を抜ける相手ではない。それはロンよりもドゥンの警戒で分かる。

 

 初めから全力で行こう。

 

 

最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)

 

 真名解放をしたのは随分と久しぶりだ。

 装飾から青の()が解ける、解けた楔の役割をしていた物は篭手となり身を守る防具となった。

 白銀に光るその聖槍。本来の姿により近くなったその力の塊は、この場において一番の存在感を示していた。

 

「お嬢さんコッチに来て」

「に、逃げた方が安全なんじゃ」

 

 そんなシスターの見当違いの発言にロンは笑った。

 その笑いを見て教会の人達は気味悪がる。こんな場所で笑えるものなのか……と。

 

 

「この場において、僕の傍より安全な場所なんて無いよ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「は、はい! 分かりました!」

 

 シスターを僕の後ろに乗せて教会の信者達を見渡す。

 

「貴様、それは聖遺物の……ならば魔女と共にその槍、返してもらう」

「自分達が世界の中心にいるだなんて思うもんじゃないぞ、クソ信者ども」

 

 

 なんでも自分達の思い通りにする教会側に色んな感情を込めて中指を立てた。

 そこには色んな感情があったはずだ。だがロンの中で1番大きかったのは苛立ちだった。このシスターだけでなく槍すらも自分達のものの様に扱うその態度。

 そしてなによりシスターの魔女認定だ。何があったのか知らないし、別に興味もない。でもこの格好を見るからに……。

 

 

 お前らは同じ仲間だったんじゃなかったのか? 

 

 使い捨てられた自分と、切り捨てられたシスター。

 どうにも自分と重ねてしまって、救わなければと心が叫ぶ。

 

 

 

 

 夜の北欧。

 教会の戦士、シスター、聖槍使い。

 歪な戦いが始まった。




北欧の山ってなんであんなに綺麗なんだろうね。一度だけスイスに行ったことあるけど、マジでずっと眺めてられる。



お気に入りの数と評価の数が今までで一番比例してない。
もっと頑張らないとタイトル詐欺って言われそうだ。
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