転生オリ主のテンプレ特盛ダイアリー    作:昨日辛雪

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高評価、並びに感想、お気に入り登録ありがとうございます。執筆の励みになっています。

誤字報告くださった方、毎回助かっております。ありがとうございました。

前話の感想でいただいた年号のズレに関しましては、修正の方向性が決まったので該当記述をGWを目途に追記する予定です。






オリ主日記(11)

1999年4月6日

 

 小学校に進級したことだし、エヴァに以前貰った個室のベッドを利用したいと申し出ることにした。

 母や麻帆良の裏事情を知って以来、爺さんは俺にも情報を提供してくれるようになった。そのため、盗み聞きはもう必要ない。

それに、最近はエヴァが雪姫の格好のまま寝る時に密着してくるのだ。

 寝室に入る度にカリンが向けてくる視線もウザったい。だがそれ以上に京都で雪姫の姿を見た時、俺が赤面したのに味をしめたのか、エヴァのスキンシップが最近過激になってきている。

ワザと挑発するような所作の数々に俺の理性はボロボロだ。

 

 そんな訳で別々のベッドで寝ることを提案したんだけど

「なんだハルカ、カリンと一緒に寝たいのか?」

エヴァの予想外の返しに俺は言葉を失った。

 カリンを見れば、体を両手で抱きしめるように隠している。なんか若干顔を赤らめて俺を睨んでるんですけど、やめてもらえませんかね。どんな想像したんだよ。

 セプ子が今あの部屋はカリンが使っていると耳打ちしてくれた。確かに修行漬けで別荘と書庫の往復ばかりしていたけど、よもや自室を失っていたとは……?

 

 あっヤッベ、エヴァが玩具を貰った子供みたいな笑みを浮かべている。アイツがあの笑い方をした場合、高確率でヒドイ目に遭うんだよ。

 えっ? 何やってんの⁉ 雪姫状態のエヴァが不意にワイシャツのボタンを緩め、その肢体を惜しげもなく俺に見せつけてきた。早く隠せよ! カリンがガン見してんぞ!

 じわじわと近づいてくるエヴァから捕食者のオーラを感じ、一歩、また一歩俺も後ずさる。

 コツンと背中に硬いものがぶつかった……クッ、壁際に追い詰められたか。

 エヴァは俺の鎖骨の間から顎までのラインを指で撫で上げて、顔をクイっと上に向かせる。無理やり合わせられた視線の先で、エヴァの瞳は官能的な光を放っていた。

「そうかそうか、ハルカも色を知る年齢になったか。でだ。本当のところ、どの私が一番好みなんだ?」

 いや、どのって言われても全部なんですけど……

「この姿か?」

 エヴァはそう言うと、俺を抱き寄せて豊満な乳房へと沈みこませる。

「それとも、このくらいがいいのか?」

女子高生くらいの体形に年齢詐称魔法で変化したエヴァは、側面に回り込み、しな垂れかかりながら俺の腕をガッチリ挟んで、敢えて耳元に吐息がかかるように囁く。

「フフ、実はこの姿にそそられているんじゃないのか?」

 最後は元の十歳程の少女の姿で、背後からホールド。そのまま首筋に牙を立てて、吸血してきた。

「さぁ、答えを聞かせてもらおうか」

 再び前面からエヴァが真っ直ぐこちらを見つめてくる。血に濡れた唇を舌でなぞる仕草が艶っぽい……いや、そうじゃない。どうする? なんて答えてもドツボにはまる気がするぞ。

 

 誰か助けを! だめだ。セプ子はのほほんとしているだけだし、カリンはトリップ中、チャチャゼロは

「悪ッテヨリ、タダノイジメッコダナ御主人」

完全に楽しんでやがるな。クソッ、誰も頼りにならない。こんな時、タカミチがいてくれたなら。

 仕方がない。こうなったら三十六計逃げるに如かず、戦略的撤退だ!

「これで勝ったと思うなよ!」

 無駄に高度な歩法を駆使して、俺は脱兎の如くログハウスから逃げ出した。今夜は爺さんに匿ってもらおう。

 

……無理でした……

 

1999年4月11日

 

 エヴァの別荘で何もない空間に向かって手を翳す。すると光の刃が何本も同時に出現した、効果範囲内に敵がいれば木っ端微塵に切り刻まれてたことだろう。

 これが京都でバアルと名乗った『貴族』が使っていた謎の斬撃の正体だ。この技は、そうだな「空間殺法」とでも名付けよう。

 どうやらセプ子の言っていた

「ハルカ様の中にはバアル様の力が宿っておられます」

というのは本当のようだ。

 あの時俺の中に入って来た光の玉…… あれがバアルの力とみて間違いないだろう。なぜ不死身のはずの『吸血鬼の真祖』であるバアルが復活しなかったのか? なぜ俺はバアルの力を吸収することができたのか? 疑問は尽きないが、幸い俺の体は未だ普通の人間のままだ。その証拠に指を少し切ってみても超回復はしなかった。

 

 だが、全く変わった所がない訳ではない。俺の得意魔法は親父由来の雷と風だが、バアルの力を吸収して以来、光の魔法も完璧と言っていいほどに使いこなせるようになっていた。

 光魔法といえばカリンも体に光を纏って戦っていたので、教えを請おうと思ったのだが、彼女の魔法は「神聖魔法」という某一神教に由来する人々の祈りの力で、全くの別物らしく参考にはならなかった。

 

 「咸卦の気」の性質変化にも異変が見られた。「咸卦の気」は「NARUTO」に出てくる「チャクラ」とよく似ているのだが、これも「チャクラ」と同様に火・風・雷・土・水の性質に変化させることが出来る。

もっとも、俺は風と雷にしか「咸卦の気」を変換出来ないため、他の属性に関しては前世の知識からの推測でしかないがな。

 例えば京都で使った「水遁・水龍弾の術」の場合、「咸卦の気」を水に性質変化できない俺は大量の水がある場所でしか使えないという制限がある。

 性質変化できる特性は遺伝によって決まっているのだが、バアルの力を取り込んでからというもの、「咸卦の気」を本家には存在しないはずの光に変換できるようになっていたのだ。

 一体俺の体に何が起きている? 原理も詳細も分からないことに不安は募るが、分からないことをいつまでも考えていても仕方がない。取りあえずは、いずれ来る造物主と戦うためのギフトだとでも思っておこう。

 

 このバアルの力の他に俺の頭を悩ませているのが、リョウメンスクナノカミの置き土産だ。

 スクナ様は

「我の力の一端を小僧にくれてやる。器はあるのだ、再び相まみえる時までに使いこなしてみせろ」

と言って、俺の体に勝手に憑依した後、妙な感覚だけを残して湖の祭壇へと帰ってしまった。

 神様の考えることは、人間には計りかねる。

 

1999年4月15日

 

 スクナ様が残した力の正体が皆目見当もつかない。自分の中にどれだけ手を伸ばしても届かない不可思議な領域が存在しているような奇妙な感じだ。

 もしかして気と魔力を消費し尽くしたら、使えるようになるんじゃないかと思い、術を乱発しても徒に疲れただけだった。

 苛立ちが募っているのがバレていたのかエヴァから

「何を焦っているのか知らんが、少し頭を冷やせ」

と新技の開発がてら、氷の茨で小一時間その場に縫い付けられてしまった。

 

 不思議なことに、茨に絡めとられ身動きできずにいると、俺の中にあるスクナ様の残滓に徐々にではあるがピントが合っていくような気がする。

 力の輪郭は何となく見えてきているのだが、薄ぼんやりとしていて焦点が合わない。

 それでも、着実にスクナ様の力の鼓動は強くなっていく。

 結局この現象の正体を掴む前にエヴァの術が解け、体を動かした途端に力の感覚も霧散してしまった。

 あれはいったい……

 

1999年4月17日

 

 俺は今、エヴァの別荘で座禅を組んで瞑想をしている。

 先日の一件で、スクナ様が俺に託したのは動かないことで知覚できる力なのではないか、という仮説が生まれた。

 エヴァの書庫を漁ってみても、それに関する資料を見つけることはできなかった。ならば、転生者らしく試していくしかない。

 前世の記憶の中でその条件を満たすもの。それは「NARUTO」にでてくる「自然エネルギー」である。

 これは文字通り自然界に存在している、個人が保有するものとは比べ物にならない力なわけだが、体内に取り込むには自然と一体になるために微動だにしてはいけないという制約がある。

 そのため茨に拘束され見動きがとれなくなった時に、感じ取れたのではないかと考えたのだ。

 

 あの力の正体が「自然エネルギー」ではないかと意識してみると、スクナ様から託された力を核として、外部から微弱ながらエネルギーが流入しているのが分かる。どうやら、俺の仮説は間違っていなかったようだ。

 思えば、日本の神々は自然崇拝とセットになっている事例も少なくない。リョウメンスクナノカミが「日本書紀」の記述では「人」となっているのに、鬼神として顕現したのは農耕を指導した自然神として人々から祀られ、彼等の畏怖や祈りが形となった結果なのだろう。

 本来、「自然エネルギー」を感じ取れるようになるには相応の修行を要する。スクナ様は自身が信仰の対象となることで手にした「自然エネルギー」の一部を俺に与えることで、その過程を一足飛びにしたのだ。

 

 作中で主人公は「精神エネルギー」と「身体エネルギー」によって「チャクラ」を練り、そこに「自然エネルギー」を取り込むことで「仙術チャクラ」を生み出していた。「仙術チャクラ」を使用すると「仙人モード」と呼ばれる形態に変化して、「忍術」ではなく「仙術」が使用可能になり、すべての能力が大幅に強化される。

 俺に当てはめると「咸卦法」にこの「自然エネルギー」を合わせられれば、理論上「仙人モード」を使えるようになる。これを習得できれば劇的に強くなれるはずだ。

 

 「仙術チャクラ」は「気」・「魔力」・「自然エネルギー」を均一の配分で練らなければ発動できない。今のままでは「気」と「魔力」に対して取り込める「自然エネルギー」の量が少なすぎる。

 瞑想しながら思い出すのは、スカカードを生み出した際に到達した自然と一体になる感覚。あの時のように煩悩を捨て去り、「俺」と「世界」の境界を希薄にして、自然に溶けていく。

 するとどうだろう。大気に満ちた命の息吹が怒涛の勢いで俺に流れ込んできた。

 あれ? 力の量が多すぎないか⁉ いけない、制御がきかな――

 

1999年5月1日

 

 やっと謹慎が解けた。記憶がないとはいえ、あれだけ別荘を壊してしまったのだから仕方がないと理解しているのだが、二週間の修行禁止は酷くないか?

 それにしても、随分と久しぶりに叱られたな。もちろん自分の軽率な行動は反省している。それでも前世ではそれなりに大人をやっていたから、ああいった経験は新鮮だった。

 「自然エネルギー」は取り込む量が少なすぎれば「仙術チャクラ」を練ることができず、逆に多すぎると、動物に体が変化し、最悪の場合は石になってしまう。

 「NARUTO」では蝦蟇から仙術を教わっていて、「自然エネルギー」を吸収しすぎるとカエル化している描写があったが、鬼神であるスクナ様由来の力で暴走した俺はどんな姿になっていたのだろうか?

 不幸中の幸いで、別荘は外部から切り離された空間であった。そのため、流れ込んできた「自然エネルギー」の総量にも限度があり、エヴァ達との戦闘で発散できたようだ。

 怪我の功名ではないが、この謹慎期間にも意味はあったと思う。カリンやセプ子と言葉を交わす機会が増えたのだ。なんだかんだこれから一緒に暮らしていくんだ、相互理解を深めるのも必要だろう。

 

 本来であれば今日から修行再開といきたいところだが、木乃香に麻帆良を案内してもらう約束をしてるんだよなぁ。

 修行を禁止され暇を持て余していた俺は、学園長室に入り浸って爺さんと囲碁の対局をしていた。

 無遠慮に居座るのも悪いかと思ったのだが、木乃香から

「おじいちゃんからお茶にしよて誘われたんやけど、ハルカ君もこーへん? なんや珍しいお菓子もあるみたいやて」

と言われれば、わざわざ下級生の教室まで来てくれたのに無下にすることも出来ない。

 今回の約束も一緒にテーブルを囲んでいる時に、爺さんの発案から結ばれたものだ。あれ? ひょっとして俺、上手いこと乗せられている?

 

 別にデートという訳ではないが、今日の服装はかなり洒落ている。カリンがやたら乗り気でコーディネートしてきた理由には気付かないフリをしておこう。

 とはいえ木乃香のことは嫌いじゃない、むしろ好ましいとさえ思っている。この歳にして家事スキルは完璧だし、面倒見のいい彼女が、何かと俺の世話を焼こうとするのも微笑ましい。

 もっとも俺は保護者目線だし、木乃香は木乃香で俺を弟みたいに捉えているようだから、爺さんやカリンの望む展開にはならないだろう。

 

 時計を見れば約束の時間まであと十五分くらいはある。紳士の嗜みとして早めに来て、落ち合う予定の場所で待っていると

「あれ? ハルカ君早いんやね。待たせてもうたん?」

どうやら木乃香が来たようだ。

 ここは

「いや、俺も今来たところだ」

と返しておくのが鉄板だろう。

「えへへ。今日はお洒落して来たんよ。なぁなぁ、この服どうや? 似合うてる?」

 白いワンピースのスカートは端を摘み、クルリと一回転する姿は大変可愛らしい。素直に感想を伝えると、木乃香は喜んでくれた。

 

 木乃香に麻帆良を案内されるなかで、原作で見た場所をチラホラ発見した。気分は聖地巡礼しているヲタクのソレだな。

 今は高台のベンチで、木乃香が作ってきてくれた弁当を昼食にしている。ふと視線を巡らせると、そこには広大な麻帆良の風景が広がっていた。

 なんというか本当に広いよな麻帆良学園。とても一日では回りきれない。これなら「散歩部」なんて部活があるのも頷ける。

 そういえば、午前中に見て回った限りでは「超包子」を見つけることは出来なかった。やはり超鈴音はこの時代にまだ来ていないようだ。

 考えてみれば、彼女が現れたなら自らエヴァに接触しようとする筈だ。気長に待つしかないな。

 考え事をしていたからだろうか

「ハルカ君かわええわ。ほっぺにお弁当ついとるよ。景色に見とれんもええけど、食べる時はちゃんと食べるものを見なあかんよ」

 

木乃香に頬についてた米粒を指で掬われてしまった。彼女はそれをそのまま食べて、ご満悦の様子。

 あまり子供らしいところは見せなかったからな。「お姉ちゃん」として振舞えたのが嬉しいのだろう。

 アニメなどではよく見たシーンだが、いざ自身にされると殊の外恥ずかしいものだな。

 

 食後は休憩がてら、そのままベンチで会話していたのだが、木乃香は一人の少女が通りかかったのを見つけると

「千雨ちゃんやん。こんな所で偶然やね」

と人懐っこい笑顔で話しかけた。

 少し面倒そうにしながらも、律儀に受け答えしている少女の名は長谷川千雨。彼女も原作に登場していた人物だ。オレンジ色の長い髪を三つ編みにして二房に分けている。この世界の人って髪色がカラフルだよな。

思わぬ主要人物との遭遇には驚いたが、確かに今いるのは小等部の生活圏内だから、彼女がいても何ら不思議はないな。

 あの髪型は学園祭編でもしていたな。それにこの頃は、まだ眼鏡をつけてなかったんだなぁ、なんて二人を見ながら思っていると、千雨が俺の姿をその視界に収めた途端、一瞬フリーズ。再起動した彼女は血相を変えてこちらに詰め寄ってきた。

ガシっと肩を掴まれる。鍛えているから痛みはないが、掴まれた部分が皺となっており、かなり強い力で握っているのがうかがえた。

「お前……やっぱり夢に出てきた……」

 彼女の表情にあるのは焦燥感。一目惚れみたいなピンク色の展開でないことは一目瞭然だ。それにしても夢? なんの話をしているんだ?

「お前が私に何かしたのか!? お前も『魔法使い』って奴の仲間なんだろ⁉ なぁ!!」

 ドキリとした。何故ここで「魔法使い」の単語が出てくる⁉ ここには木乃香もいるのに――

 俺の知らないところでバタフライエフェクトの余波が生まれたのか? とにかく詳しい話を聞かなければ。

「落ち着け」

 ダメか。余程切羽詰まっているのか俺の言葉が届いていない。心配して声をかける木乃香も眼中にない様子だ。

 マズいな。あまりの剣幕に人が集まってきた。目立つのは避けたいんだが……

 

「何の騒ぎだコレは。この場は私が収める、お前達は下がっていろ!」

 助かった。雪姫状態のエヴァが野次馬共を散らせてくれた。これで少しはマシな状況になる。

「雪姫先生、よかったぁ」

 木乃香の少しホッとしたみたいだ。そりゃ、同級生が突然ああなったら不安になるよな。こういう時は子供の姿がもどかしい。

「先生? コイツがか?」

 肩を握る力が弱まった。千雨がエヴァを見て呆然としている。

「コイツとは随分な挨拶だな小娘」

「小娘って、あんたも私と大して変わんねー歳じゃんかよ!」

 この返しには、流石のエヴァも面食らっている。

 ん? エヴァの姿を改めて眺める。やはり何もおかしなところはない。幻術は解けておらず大人・雪姫の見た目だ。

「なにゆうとるの千雨ちゃん? 雪姫先生は大人の女やよ」

「よく見ろ近衛! どこからどう見ても、私ら位のガキじゃんか‼」

 必死な貌で雪姫を指さす千雨とは裏腹に、木乃香は言葉の意味するところが分からず只々困惑している。

 木乃香の様子に千雨は力なく項垂れ、そのまま座り込み泣き出してしまった。

「チクショウ。どうなってやがんだよ……もうやだ、こんな場所……」

 

 どう収拾つけんだ? これ……

 




「ネギま!」ssの鉄板ネタである千雨魔改造、当作でも始動です。

もう持たせるアーティファクトも決めているので、早く登場するシーンまで書きたいですね。


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