転生オリ主のテンプレ特盛ダイアリー    作:昨日辛雪

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作中の魔法理論がガバガバなのは不可抗力ということで、どうか一つ。




オリ主日記(2)

1993年12月24日

 

 紅き翼とともに麻帆良学園都市に到着した。先方も事情は把握済みらしい。宇宙人みたく長い頭で、髭を伸ばした仙人チックな爺さん、近衛近右衛門が出迎えとして待っていた。

 てっきり、学園中央に聳え立つ、樹高二百七十メートルもの巨木、世界樹こと「神木・蟠桃(ばんとう)」へと向うのかと思ったのだが、どうやら違うらしい。

 父は仲間と別れ、近右衛門とともに、俺を連れてどこかへと向かう。気がかりなのが、別行動をとる際、母が涙を浮かべて、俺の額にキスをしたことだ。まさか、今生の別れとは言わないよな。

 たどりついた場所は自然の中にひっそりと佇むログハウス。原作で見たことあるぞ、ここ。

 

 結論から言おう、俺の存在がバタフライエフェクトを引き起こした。父がエヴァンジェリンを「登校地獄(インフェルヌス・スコラテイクス)」の呪いから解放したのだ。

 

 ログハウスは原作の重要キャラ、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(以後、エヴァと呼称)の住居である。

 金髪のロングヘアーの幼女、まるで人形のような姿の彼女だが、その実「闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)」、「不死の魔法使い(マガ・ノスフエラトウ)」と恐れられた、元六百万$の賞金首で、吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウオーカー)にして最強無敵の悪の魔法使いだ。

 事実、原作でも最終巻まで最強格の地位を保っている。

 まさか、こんなに早く前世での推しキャラと出会えるとは想定外だ。

 

 彼女は原作開始から十五年前、今からだと五年前に、父に敗れ、学校から永久に出られない「登校地獄」の呪いをかけられた。それ以来、力も封印され、麻帆良学園本校女子中等部にて学生生活を強要されている。

 原作だと父は彼女に、

「光に生きてみろ、そしたらその時、お前の呪いも解いてやる」

と言って、卒業する頃に再会する約束をしていたが、スッポカしたまま消息不明となった。

 しかし、今、二年のブランクはあれ、確かに約束を果たしたのだ。

 ヤバイな。生まれてから一年もたたない内に、原作改変起こりすぎだろ。俺まだ何もしてないのに……

 これでは、原作知識という転生者のアドバンテージが失われてしまう。既に、原作の三巻内容とかメチャクチャだ。

 

 ただ、分からないのが、俺をこの場に連れてきた意味だ。

 エヴァは原作で当時既に既婚者だった父に告白して振られている。それでも、母のことを知らない彼女は最終巻まで片思いを続けていた。

 息子を見せることで、エヴァの未練を断ち切ろうとでもいうのか? それなら、ネギでもいいはずだ。俺が選ばれたのは偶然か?

 そんな、俺の不審をよそに、父は俺を、エヴァへと差し出す。

「おい、ナギ。なんだ、コレは?」

 その疑問はもっともだが、エヴァさんや、コレ扱いはちょっと酷くないか?

「俺の息子だ、お前が育ててやってくれ」

 親父ィ…… 父がすかさず爆弾を投下した。エヴァは当然キレる。

「ふざけるな、貴様!! いきなり現れて、息子だと!? 私に育てろだと!? 私の気持ちを知っていながらよくも抜け抜けと――!!」

 

 彼女が怒るのも無理はない。一途に思い続けていた相手と、やっと再会できたかと思えば、息子連れで、おまけにその養育を依頼される。

 とても、正気の沙汰ではない。俺だってキレる。エヴァの乙女心もズタズタだろう。

 力を取り戻した彼女の猛攻が、父を襲う。これぞ、まさしく「切なさ乱れ撃ち」。それを平然といなす父も父だが、俺もいるんだよ!? やめてください、死んでしまいます。

 

 エヴァの攻撃が途切れた時、父が原作を知る者ならば信じられない行動にでた。エヴァに向けて深々と頭をさげているのだ。

「頼む! 息子を…… ハルカを守ってやってくれ!! 俺はコイツの傍にいてやれない…… お前にしか頼めねぇんだ!」

 これには流石のエヴァも瞠目している。父を知っているからこそ、その驚きも一入(ひとしお)だろう。

 すかさず、近右衛門も父にならう。

「エヴァよ、ワシからも頼む。ナギの願いを聞き入れてはくれんかのぅ。その子を守るには、おぬしの名が必要なのじゃ」

 罵詈雑言を浴びせても、頭を頑なに上げない二人に、エヴァも根負けしたようで、

「はぁ、仕方ない。ジジィ貴様も協力しろよ。それと、ナギ、この貸しは高く付くからな」

と、渋々ながら俺を受け取った。

 というか、エヴァの名が必要って、「闇の福音」とか諸々のネームバリューだよな。俺の存在ってそこまで、厄ネタなのか。

 

 父の態度がエヴァが俺を受け入れた途端、いつもの砕けたものに変わる。

「いやぁー、エヴァンジェリンが引き受けてくれれば、安心だぜ。これで、俺も心置きなく仕上げにとりかかれる」

 仕上げ、その言葉が胸に突き刺さる。やはりそうだ。父はこれから造物主とともに眠りにつこうとしている。

 あの暖かな日々が終わる。それが想像以上に俺の胸を締め付けた。

 

「仕上げだと?」

 父の言葉にエヴァが反応する。

「ああ。あの大戦はまだ、終わってないってことさ」

「それは、どういう意味だナギ!?」

 彼女の疑問に父は答えない。ただ、別れを告げるだけだった。

「エヴァンジェリン。俺も、お前の気持ちは分かっているつもりだ。今も思い続けてくれてることもな。だけど、俺はお前に応えることはできない。既に愛する者がいるから」

 エヴァには辛い現実だろう。

 しかし、父は敢えて言葉にすることで、彼女の時間を動かそうとしている。

「あーなんだ。ほら、どうせならコイツをお前好みに育て上げればいいじゃねぇか。日本じゃ有名だろ? ゲンジなんちゃらってヤツ。それにハルカは俺よりもずっとイイ男になるぜ。なんたって俺とアリカの息子なんだからな」

 親父ィ、俺のハードルを爆上げすんなよな。でも、そんな顔で言われたら応えたくなるのが男の子ってもんだ。

 今の父はとても晴れやかな笑顔をしていた。息子の俺でさえ見入ってしまうほどの。

 

 父の言葉を受けたエヴァが俺を覗き込む。そして、恐る恐る指を伸ばしてきた。今こそ絶好のチャンス。とどけ、前世からの推しへの想い。

 俺は彼女の指を握り、

「エア」

と、なんとか声に出した。いや~単語を話すのは強敵でしたね。濁音には勝てなかったよ。

 

 失敗したかと思ったのだが、どうやら周囲の反応は違うようで、

「あー! ズリぃぞエヴァンジェリン。俺だって、まだ名前で呼ばれてないのに!」

「ほほう。これはこれは、将来有望じゃの」

と反応は上々だ。エヴァも心なしか頬を染めているようにも見える。

 さらにもう一発。彼女に手を伸ばしながら、

「エア、エア」

と繰り返した。

 これにはエヴァも気を好くして、俺を薄い胸板に抱き寄せる。赤ちゃんの魅力には誰も勝てないよね。

 

「ふん、いいだろう。ナギ、ハルカは今日から私のものだ。もう、返せと言っても遅いからな。私が育てる以上妥協はせん。私が直々に鍛え上げてやる。我が配下にふさわしい、立派な戦士…… 悪の四天王にな!!」

 あの~エヴァさんや、四天王はカマセ臭がするので、両翼とか右腕とかにしてくれませんかね。

 

 

1995年12月24日

 

 俺がエヴァに預けられてから、二年の月日が流れた。やっと脳内ではなく、ちゃんとした日記をつけることができる。

 呪いが解けた今でも彼女は変わらず、麻帆良のログハウスで暮らしていた。

 どうやら俺が成人するまでは、育児のバックアップが整ったここを拠点にするようだ。

 茶々丸の誕生だけでなく俺の強化プランのためにも、未来人・超鈴音との接触は必須なので安心している。

 

 二歳になり鏡で自分の顔を初めて見て、俺がエヴァに託された理由を悟った。

 予想通りの約束されたイケメンフェイス及び髪型こそ父譲りだが、金色に煌めく髪色も、眉尻が二股に割れた眉も、虹彩異色の瞳も、母の遺伝的な特徴を色濃く受け継いでいる。

 紅き翼面々が俺にあのような言葉をかけるわけだ。

 

 あの後、父は原作通りに消息を絶ち、母の安否も分からない。そこで何が起こったのか。それを知るには今の俺では何もかもが足りない。

 歯がゆいが、これが二歳児の現実だ。

 先月、父の死が公式な声明として発表された。その日、エヴァは俺を抱きしめ泣いていた。俺にはただ、彼女の背中をさすることしか出来ない。少しでもエヴァの悲しみを癒せればいいのだが。

 

 

1996年6月12日

 

 三歳の誕生日からエヴァは俺の修行を開始した。原作のシゴキを知っていたため戦々恐々としていたが、彼女も体の出来あがっていない子供に無理をさせるつもりはないようで、今は基本的な魔法の練習だけをしている。

 魔法を成功させると、彼女も喜んでくれる。それを嬉しく感じる自分がいるのだ。見た目幼女に褒められて興奮する…… 何かイケナイ扉が開いてやしないか?

 

 修行を始めるにあたり、俺はエヴァから詳しい事情こそボカされたが、自分の身を守るためにも力をつけなければならない運命にあるという話をされた。

 さすがに、「災厄の魔女」関連の話は三歳児には荷が重いと感じたのだろう、そのあたりのことを彼女が話してくれるのはおそらく俺を一人前と認めてくれた時。また、一つ目標が出来た。

 

 今日、日記を書いているのは他でもない、苦節一ヶ月の思考錯誤のすえようやくオリジナルの術が完成した記念だ。その名も「多重影分身の術」

 これは、本格的な修行を始めるまでに是が非でも習得したかった術だ。理由はサブカルチャーに浸かった人間ならば、お察しであろう。「NARUTO」の影分身を利用したチート修行法のためである。

 

 「NARUTO」のパクリじゃないかって? たしかにそうだが「ネギま!」の世界には存在しない術だから、オリジナルで間違っていない。

 この世界の影分身は、分身体に込めた魔力の密度によって実力が上下する。本体に近い強さの影分身を作ろうとすればするほど、魔力の消費が激しくなる。

 そのため、本体と同等の実力を持つ分身体の作成は、並みの魔法使いでは一体、実力者でも四体が限度だ。

 一度に多人数の分身体を作り出すこともできるが、結局は密度下げて数を増やしているにすぎない。そのため、「NARUTO」式の「多重影分身」とは全くの別物と言える。

 

 幸い、俺の魔力量は、原作で最大の呪力を誇る、近衛木乃香以上だと、彼女の父から太鼓判を押されているので問題はない。実際に、最大密度まで魔力を注いだ影分身を五十体同時に出現させることができた。

 

 ただ、課題もある。どれだけ魔力を込めようとも、分身体の密度が百%にならないのだ。

 試しに、この影分身に本を読ませ解呪したのだが、その知識は本体へ還元されなかった。現状では「多重影分身の術」を再現できたとは言えない。

 「NARUTO」の影分身は本体と分身で「チャクラ」の量が均一という特徴がある。やはり、密度百%の分身体を作れなければ、お話にならない。

 

 そこで、考えたのが、「NARUTO」の「チャクラ」は精神エネルギーと身体エネルギーを混ぜ合わせたもの。

 ならば、この世界で言えば「魔力」と「気」に置き換えられるのではないか。

 「ネギま!」世界の技術に「咸卦法(かんかほう)」というものがある。これは「究極技法(アルテマ・アート)」とも呼ばれる超高難度技法で、相反する「魔力」と「気」を融合して、身の内と外に纏い、強大な力を得るというものだ。

 俺は思った。これって実質「チャクラ」じゃねと。

 

 そして、一週間の修行のすえ「咸卦法」を身に付けた俺は、二週間で「咸卦の気」のコントロールを習熟させた後、それを用いて影分身を作成、見事に密度百%を実現したのだ。

 もっとも、エネルギーの消費も倍率ドンで、一度に出せる影分身の量も半分に減ったのだが……

 なにはともあれ、「咸卦の気」で作った影分身で修行をした結果、見事に解呪と同時に、分身体が修行で得た経験・知識の、本体へのフィードバックが確認された。

 これで、効率好く実力を磨くことが出来る。最強の俺への道の第一歩をやっと踏み出せたのだ。

 「多重影分身の術」を見せた時は、エヴァも目を丸くして驚いていたな。かなり、レアな表情だったから、脳内フォルダに永久保存しておいた。

 ただ、あの後、彼女が呟いていた、

「あの術は……いや、まさか……だが、ハルカという名に、あの容姿……本当にお前なのか……?」

という、言葉の意味は、いったい何だったのだろうか?

 

 改めて考えると、何気にチートだよな、俺の肉体って。デタラメな魔力量に、習得に年単位の鍛錬が必要な「咸卦法」を一月たらずで使いこなす才能。

 だが、慢心してはいけないな。才能とは種で、それを芽吹かせるのが努力だ。いくら、優れた才を持っていても、そこに胡坐をかいていては、せっかく出た芽も枯れてしまうというもの。

 それに、原作には一瞬で「咸卦法」を成功させたキャラもいたしな。

 勝って兜の緒を締めよ。成りたい自分、「クールな態度の内に熱い思いを秘めた漢」を目指してフレ! フレ! 俺!!

 




他作品の技術を、バンバン輸入できるのが転生者の強みかなと思いました。

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