転生オリ主のテンプレ特盛ダイアリー    作:昨日辛雪

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高評価くださった皆様、有難うございます。まさか拙作のバーが赤で埋まる日が来るとは思ってもおりませんでした。筆をとる上で大きなモチベーションになっています。

たくさんの高評価、感想、お気に入り登録を有難うございます。皆様のおかげで日間で一位にランクインすることができました。これを励みに執筆を続けていこうと思います。

誤字報告をしていただいた方々、まことに有難うございます。皆様のおかげで拙作の質を向上させることができました。たいへん感謝しております。

拙作を読んでくださった皆様に、改めてお礼申し上げます。



オリ主日記(5)

1997年7月14日

 

 体術の訓練と並行して攻撃魔法の修行も始まった。正式に修行を開始する以上、「師匠」と呼んだ方が良いのかとエヴァに尋ねたところ、

「いや、いい。ハルカには『エヴァ』と、ちゃんと名前で呼んでほしい」

と原作でも見たことがないような顔で言われた。

 いや、本当に何が起こっているんだ? 好感度上昇イベントなんて、まだ何もこなした記憶はないんだが…… 

 俺がアホ面さらしてるのに気付いたのだろう。エヴァは、

「不思議そうだなハルカ。フフ、今のお前では無理もない。いずれ分かるさ。そうだな…… ざっと、五・六年くらい後といったところか」

なんてマジマジと俺の顔を見て言うのだ。しかし、えらく具体的な数字が出てきたな。

 まぁ、分からんものを考えても仕方がない。今は目先のことに全力で取り組むさ。

 

 そう考えていたのだが、思わぬ所で「前世」に足を引っ張られることになった。

 俺という存在が日本語に馴染みすぎてしまっていて、ラテン語や古代ギリシャ語の呪文が頭に入ってこないのだ。英語力アジア最下位の国で生まれ育った弊害が、死後の世界で牙をむくとか誰も想像できないだろう。

 

 なんとか呪文自体は覚えられても、発音ミスって魔法が暴発すること多数。結果行き着いたのが、アンチョコ見ながら魔法を発動するスタイルだ。いくらなんでもダサすぎる。

 アンチョコさえあればちゃんと魔法は使えているので、センスは足りているはずだ。

 エヴァはエヴァで、

「麻帆良での日本語ベースの生活が仇になったか? いや、ヤツの息子と考えればこの戦い方は自然なのか? いっそ、アンチョコもアリでは…… 」

とか、おかしな方向に暴走する始末。いや、ナシだから。

 

1997年7月17日

 

 苦手を克服しようと努力するのは美点だが、得意分野でカバーしようとするのも人の知恵。俺は呪文を別の何かで代替する方法を模索することにした。

 

 最初に考えたのがリリカルでマジカルなデバイスだ。無詠唱魔法の存在から魔法を行使する際、必ずしも呪文を声に出す必要はないと考えられる。

 ならば、呪文の詠唱に相当する処理をコンピューターにやらせれば、自分は魔力を籠めるだけで魔法を発動することが可能ではないだろうか?

 俺は「多重影分身」を駆使して、必死にプログラミングを学び。呪文の詠唱過程をプログラミング言語に落とし込んだ。

 

 結論を言えば、コンピューターを使った魔法の発動には成功した。ただし、実戦では使えない。

 この時代のコンピューターのスペックは、呪文の詠唱過程を処理するには低すぎるのだ。声に出せば一言でも、データに変換しようと思ったら、そこに込められた信仰や歴史などもデジタル化しなければならない。

 すると複雑な情報処理能力が必要になり、コンピューターは巨大化。抱えながら戦うにしても、さすがに無理がある。

 それと単純にスペック不足で魔法の発動までのラグが大きい。これではアンチョコ片手に戦った方がマシだろう。

 やはりデバイスのような超科学の産物は超鈴音と接触するまではオアズケのようだ。

 

1997年7月20日

 

 デバイスの代替案として考えているのが、原作でネギが使っていた骨董品の魔法銃の仕組みを転用できないかということだ。使える魔法自体は一種類だけだが、引き金を引くだけで魔法が発動していた。

 そのカラクリを解き明かせば、詠唱無しでも魔法が使えるようになるかもしれない。

 幸い、エヴァは人形師としても超一流。人形作成のための工房には、魔導具を作るには十分なだけの設備と資材がある。

 手始めに、エヴァから工房使用と魔法銃の購入の許可をもらわなければ。

 

 で、エヴァに相談したんだけど……

「対価としてお前の血をいただこうか。悪い魔法使いに頼みごとをするとどうなるか、良い機会だから教えておいてやろう」

って、とても楽しそうに言うんだよね。

 別に血はかまわないけど、恥ずかしいから背後から抱きつくような体勢で首筋に牙を立てないで、腕とかにしてくれません?

 

1997年7月22日

 

 工房の利用許可は下りたので、早速魔法銃を解体してみようと思う。

 バラしてみると銃身に幾何学状の文様が記されている。試しに魔力を流してみると、魔法の矢が放たれた。

 なるほど、詠唱が持つ意味を幾何学文様で書き表すことで魔法を発動しているのか。

 これの法則性を見つけ出し詠唱を置換する作業は骨が折れそうだ。文様を刻む媒体についてだが、古今東西、創作分野で魔法の触媒といったら、やはりカードが鉄板だろう。

 

 思うように作業が進まない。理由は、本体である俺が体術修行組からのフィードバックで、時々使い物にならなくなるのもそうだが、詠唱を幾何学文様に置き換えるのが想像以上に難しい。

 ただでさえ多い情報量が、呪文の難度に比例して増加していく。加えて上位呪文になると古代ギリシャ語詠唱なんてものも出てくる始末。

 幸い、体術修行の方は出された課題はクリアしている。当面は影分身をこちらに優先的に回して人海戦術でやっていくしかない。

 

1997年7月25日

 

 雛型となる魔導具が完成した。金属製の菱形の立体で、上方部にはカードをスキャンする切れ込みがあり、側面には読みこんだ魔法を表示する電光パネルが付いている。なけなしの科学要素だな。

 カードに刻まれた文様を光魔法で読み込むことで魔法が発動するアイテムだ。暫定的にカードリーダーと呼ぶことにしようと思う。

 

 あとはカードを作るだけなのだが、普通の紙を使いましょうというわけにはいかない。耐久性もあるが神秘を内抱する以上、素材にもそれなりの格が求められる。

 そこで、カードの材料には敢えて仮契約を失敗させて作ったスカカードを使用することにした。

 魔法使いは魔法使いの従者(ミニステル・マギ)という前衛をこなすパートナーと契約を結び、ツーマンセルで行動するのが基本とされている。

 その際、従者契約のお試し期間として仮契約というものがある。これは魔法陣を敷き、その中で口づけを交わすと成立するもので、成功すればパクティオカードという魔法のアイテムが生み出される。

 これに対して、唇以外の場所にキスをするなどして失敗した場合に出てくるのがスカカードなのである。

 ちゃんとしたパクティオカードは無理だが、スカカードならば一般的な魔導具の改造と同じ要領で書き換えられる。

 やっていることは完全に魔法使いじゃなくて魔工技師なんだけど、エヴァは人形使いの血が騒ぐのか指導に熱が入っていたな。

 科学用語が嫌いなエヴァはデバイス作成時には退屈そうにしていたから、フラストレーションが溜まってたのかもしれない。

 

 ただ、スカカードの量産には苦労させられた。最初は影分身した自分自身とで仮契約を仕損じようとしたのだが、いくらマウス・トゥー・マウスじゃないにしても自分とキスするのは辛すぎる。

 そこで前世で好きだった創作物の美少女キャラに変化して、気を紛らわせる作戦を執ることにした。

 しかし、これにも大きな落とし穴があったのだ。

 エヴァがメッチャ見てくる。というか睨んでくる。しかも、心底冷え冷えする声色で、

「ハルカ、誰だその女は?」

とか聞いてくるのだ。室温が体感で二、三度は下がっている、魔力が漏れ出してますよエヴァさん! そんな状況で例え額であろうと口づけできるかって? 俺には無理、嫌い、しんどすぎ。

 イヤ、マジで怖いんだってエヴァが。

 

 そうはいっても、スカカードを出さないことには何も始まらない。適当にごまかして、

「この前読んだ小説のヒロインの姿を想像してみたんだけど、ダメかな?」

なんてフィクションの存在ですよとアピールしつつ作業を開始する。

 覚悟はしていたが、この後のエヴァの態度の変遷がヤバかった。舌打ちをする、額に青筋を浮かべる、もの凄い勢いで貧乏ゆすりを始めるetc……

 とうとう我慢の限界に達したのか、エヴァはとんでもない提案をした。

「おいハルカ!お前に私へ口づけをする栄誉をくれてやろう。唇は一人前になるまでは許可できんが、チャチャゼロからはよくやっていると聞いた。褒美だ、頬や額ならば特別に許してやる」

 腕を組み仁王立ちしながらも、視線は合わせず、頬には少し朱の色が差している。破壊力が強すぎる……

 しかも、

「なんだ、その女にはできて私にはできん理由でもあるのか? 」

とまで言われたら断ることなんて選択肢を選べるはずがない。

 

 そこからは理性がゴリゴリ削られる、ある意味で消耗戦だった。

 最初はドヤ顔で目を閉じていたのに、回数が増えるにつれ顔は真っ赤に染まり、

「んっ……」

とか、

「あっ…… やんっ!」

とか変な声まで出す始末。あなたそんなキャラでしたっけ?

 俺は耐えに耐えた。暴れ出そうとする本能を全理性にスクランブルをかけて撃沈。雑念を捨て、己の内を完全に「無」にしてやり過ごした。

 

 必要枚数のスカカードが貯まった。エヴァを見れば、茹で蛸みたいになっている。

 一時とはいえ煩悩を超克した成果なのだろうか、視界はクリアになり知覚が不思議と研ぎ澄まされ、雲の動きや木々のざわめき、星々の動きにいたるまでもが、あたかも手に取るように感じ取れる。まるで自然と一体化したかのような感覚だ。

 ひょっとしてコレ、覚醒イベントだったりしたのかな……?

 なんか今日はどっと疲れた気がする。

 

1997年7月27日

 

 カードの試作品第一号が完成したので、別荘の中で魔法を発動させてみようと思う。

 記念すべき一枚目は原作でネギの代名詞ともいえる魔法「雷の暴風」だ。

 カードリーダのスリットにカードをスラッシュして読みこませる。魔力の消費を確認して右腕を前に突きだすと、雷撃を纏った猛烈な旋風が一直線に放たれた。

カードリーダーのパネルにもちゃんと「雷の暴風」と表示されている。実験は成功だ。

 成功したのだが、何かが足りない気がする。何ていうか、味気ないのだ。

 理由はやはり音声がしないからだろうか? なまじ「魔法少女リリカルなのは」のデバイスを目指して魔導具の開発に着手しただけに、魔法の発動に合わせて魔導具から音が鳴るイメージが先行してしまっていたようだ。

 

 このままで運用するのは、いささか興が乗らないのでエヴァに頼んで声を録音させてもらうことにした。

「断る、なんで私がそんな面倒なことを」

 エヴァににべもなく断られてしまったので、某少年探偵も使っていた己のプライドをも傷付ける諸刃の奥義「おねだり」を使わざるを得なかった。

 敢え無く陥落したエヴァが採録をしている間、カードリーダーに音声認識機能を追加しますかね。

 こちらは魔法名を表示する機能に少し手を加えるだけなので、思いのほか作業は早く終わった。

 

1997年7月29日

 

雷の暴風(ヨウイス・テンペスタース・フルグリエンス)

 エヴァの声で術名が読み上げられ、魔法が天を穿つ。

 予備動作→ アナウンス→ 効果の発動。やっぱりこの一連の流れが様式美だよな。同じ魔法を使うにしても、テンションの上がり方が大違いだ。

 それにしてもエヴァに依頼して正解だった。流石は大魔法使い、発音が滑らかで美しい。エヴァの玲瓏たる声質も相まって聞いていて非常に心地よい。

 

 残るはカードリーダーをどのような武器に組み込むかだが、やはり基本に忠実に魔法使いらしく杖がいいだろう。

 先端や中央に取り付けたら扱いづらいので、石突の部分が妥当だ。長ものは持ち歩きに不便だから、中央部から前後にシャフトが伸縮する構造にしたい。

 そうなると基本的に中央部を握ることになるから、グリップを捲くことで使いやすさを向上させる。

 最後に先端を錫杖のような造形にすればオリジナル魔導具の完成だ。

 「多重影分身」を用いれば一人工場制手工業(マニュファクチュア)が可能だ、別荘を用いれば現実世界で五時間足らずで作り上げることができる。

 

 で、作ったんだけれども…… デジャヴュを感じるんだよなぁコレ。そう、あれはたしか前世の特撮番組で見たような気がする。

 思い出した。レンゲルラウザーだ、レンゲルラウザーだよこれは。色を緑に塗ってクローバーの意匠を加えれば完璧だ.

 一度そう見えると、コレじゃない感が凄い。仮にも転生者のメインウェポンがレンゲルラウザーってどうなんだ。

 いや、レンゲルも嫌いじゃないよ。でもさ、強化フォームを貰えなかったのが、なんていうか縁起悪く感じるんだよね。

 

 とりあえずコレは却下、作りなおしだ。

 そもそも、俺の戦闘スタイルは様々な歩法を駆使した近接戦闘だ。杖という選択肢からして間違えていた。

 作るならガントレット型だな。基本設計から見直しだが、やるならトコトンまでやってやる。

 さて分身体が作業している間、本体である俺は基礎体力の向上に努めるか。

 

1997年8月5日

 

 ガントレット型魔法具の開発には想像以上に時間がかかってしまった。だが、その甲斐あって満足のいくものに仕上がった。

 戦闘で使う用に選んだ魔法カード群、便宜上デッキと呼称しよう。このデッキを差し込む部分が左手腕に設けられており、そこにはカードの自動シャッフル機能が搭載されているので、物を動かす魔法を使えば欲しいカードを即座に引くことができる。

 カードを引くと光の魔法で構成された非実体のプレートが出現。そこにカードをセットすることで読み込まれ魔法が発動する。もちろん音も鳴る。

 また、このプレートには転送魔法も組込まれており、セットされたカードはデッキに戻る仕組みだ。

 「遊戯王」シリーズのデュエルディスクを参考に作ってみたのだが、想像以上に使い勝手がイイ。

 それにしても、ある意味これ以上の代物を科学の力だけで生み出した海馬コーポレーションの技術力は空恐ろしいな……

 




一話と二話を一部改稿いたしました。


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