拙作を読んでくれる人がいると実感でき、週一での投稿を続けることが出来ております。
誤字報告をしてくださった方々ありがとうございます。大変助かっております。
少しでも間違いを減らせるよう努力していきますので、今後ともよろしくお願いします。
1999年3月3日
京都旅行よりも、俺の中でウエイトが大きいのが「ゼーゲブレヒト」の名前についてだ。爺さんに聞いてみたんだが、アマテルの
エヴァに尋ねると、
「ゼーゲブレヒトについて詳しく聞きたいだと? それなら別荘の書庫に昔集めた史料がある。気になるのなら自分で調べればよかろう」
と返された。それって今となってはかなり貴重なものだよな。
でも、何でエヴァは「ゼーゲブレヒト」の史料など集めていたのだろうか?
「ム…… 余計な詮索などせず、とっとと行って来い」
問いを投げかけたら、クッションを投げ返されて部屋を追い出された。解せぬ。
エヴァが収集した史料で本棚の一角が埋まっていた。もしも失伝した原因の一端がエヴァにあったのなら笑えない。
書物は当然ながら日本語で書かれてはいなかった。投げ出さずに語学の勉強を続けていて良かったと思う。
『男、次元の海より渡りけり。名をばオリヴィエ・ゼーゲブレヒトとなむいひける。虹を纏いてアマテルの盾と成りぬれば云々……』。
そういや「魔法少女リリカルなのは」では女性だったけど、オリヴィエって男性名だったな。虹を纏う件はおそらく「聖王の鎧」のことだろう。
書物には色々なことが記されていた。オリヴィエの瞳は俺と同じ紅と翠のオッドアイであったこと。彼が何らかの事故でこの世界に流れついたこと。そして、アマテルが作りだした魔法無効化領域内でも何故か魔法が使えたこと。
これは完全にベルカ案件だわ。俺の虹彩異色の瞳も母や明日菜のパターン違い程度にしか考えてなかったが、まさか先祖返りに近いものだったとは。
あれ? ってことはやっぱりこの世界、「魔法先生ネギま!」と「魔法少女リリカルなのは」がクロスしているのか!?
1999年3月4日
もしもここが「魔法少女リリカルなのは」とクロスオーバーしている世界ならばかなり危険だ。なにせアニメ一期から地球滅亡の危機に陥る作品だからな。
身分証を得たおかげで図書館島を利用できるようになったのが役に立った。そこでインターネットで検索したら見つけてしまったのだ、海鳴市の名前を。
この時は本当に焦ったよ。
だが、調べていくうちに翠屋のホームページに辿り着き、この世界は「魔法少女リリカルなのは」とは明確に違う歴史を歩んでいたことが判明した。
主人公の高町なのはがミッドチルダに行かず、翠屋を継いでいるのだ。しかも、結婚して苗字も変わっている。なんなんだよ経営者の「なのは・ハーヴェイ」夫妻って。見た目は完全に三期での成長した姿だったから、別人ということはないだろう。
何というか、非常に複雑な気分だ。高町なのはは前世で好きだったキャラだけに、戦いの無い世界で家庭を持っていることが嬉しくもあり、結婚していることがショックでもあり……
おそらくだがこの世界、「魔法少女リリカルなのは」にとってはジュエルシードが飛来しなかったifにあたるのだろう。過去の新聞記事も漁ってみたが「闇の書」事件を彷彿とさせるような出来事も起きていない。
古代ベルカで起こった「何か」が原作ブレイクの引き金となったのかもしれない。詳しいことは分からないが、正直なところホッとしている。
1999年3月8日
明日から始まる京都旅行だが、どうやら楽しいだけでは終わらなくなりそうだ。
例によってエヴァと爺さんの会合を盗聴して得た情報なのだが、今回俺とエヴァが京都に訪れることを爺さんがMM元老院にリークしていたらしい。
今まで行方が分からなかった俺達の足取りが掴めた時、どの勢力がアクションを起こすのか。
そして、それはどの程度の規模になるのかを知ることで、今後の危険性を見極めるのが目的だそうだ。
しかも、今回の件には関西呪術協会も一枚噛んでいる。関西呪術協会の長は父の仲間でもあった青山詠春(現在は近衛詠春)なのだが、協会の中には彼が手綱を握れていない派閥があるという。
それこそが先の大戦で西洋魔術師に恨みを持つ一派だ。すでに何者かが彼らを焚きつけるべく蠢動しているとのこと。まぁ、俺を亡きものにしようとする元老院の一部勢力だろうとは想像に難くない。
ヤツらにとって俺は大戦の元凶である「災厄の魔女」の遺児。反西洋魔術師派を唆すのには俺以上の餌はいないだろう。
詠春さんはこの動きを敢えて黙認し、関東魔法協会の使者でもある俺を襲わせることで、それを口実に邪魔な派閥を一掃しようという魂胆のようだ。
……オリ主は囮にて最適……。
なぜだろう? 涙が溢れてきた。
それと、俺に危険が及ぶ可能性についてだが、
「危険だと? ハッ、笑わせるな。そんなヤワな鍛え方はしていない。凡俗の魔術師などいくら集めたところで私のハルカの足元にも及ばん」
とエヴァが切って捨てた。その信頼が重いぜ。
1999年3月9日 6:00a.m. 麻帆良学園都市
いよいよ、京都旅行当日だ。桜の季節には少し早いのは残念だが、この時期限定の特別展示などもある。心配ばかりしても仕方がない、楽しめるところは楽しまないと。
エヴァはてっきりゴスロリファッションで来るという俺の予想に反し、年齢詐称魔法で大人の姿になりスーツを着崩している。
前髪も普段のパッツンとは違い、右半分をかきあげていて非常に大人っぽい。グラマラスな体形も相まって、幻術と分かってはいるけれど目のやり場に困るったらない。
エヴァさんや、俺の反応を面白がって胸元を見せつけてくるのを辞めてくれませんかね。キャリーバッグに乗せられたチャチャゼロは助けてくれないし。
早く来てくれ明石教授!
「雪姫先生、そのくらいにしてあげたら? 真っ赤になっちゃってるわよ、彼」
俺に助け舟を出してくれたのは、聞き覚えのない女性の声だった。見れば、長い黒髪でキッチリとスーツを着込んだ女性が立っている。爺さんも一緒だ。
「なんだ明石、もう来たのか。せっかく今いいところなんだ邪魔をするな」
どうやらエヴァとは知己の間柄らしい。というか、明石って母親の方なのか!?
原作では彼女はこの時期にはもう鬼籍に入っているはず。また、原作ブレイクか? ブレイクなのか……?
「ハルカ君だったわね。私は今年から君の担任になる明石夕子。よろしくね」
「えっと……よろしくお願いします」
呆気に取られつつも、挨拶を返した俺の背中を夕子さんは
「元気が足りないわよ! 元気が!!」
とか言いながらバシバシ叩いてくる。
そんな彼女を尻目にエヴァと爺さんが会話する内容を、俺は聴覚を強化して少しでも聞こえないかと試みた。
「おいジジィ。アイツ本当に大丈夫なんだろうな?」
「フォッフォッフォ、心配いらんて。彼女はこう見えても凄腕の魔法先生での。本国から派遣の要請も来るほどじゃ。まぁ、ハルカ君も麻帆良におるし断ったんじゃがな」
また俺が原因かよ。
1999年3月9日 8:15a.m. 東海・山陽新幹線のぞみ新大阪行車内
大宮駅を出発し、東京駅から新幹線に乗った。後は乗換もなく二時間もすれば京都駅に到着だ。
今回同行するのは夕子さんだけかと思っていたのだが、案内として関西呪術協会の人も旅を共にするらしい。この人、格好が完全に神父なんだが本当に呪術師なんだろうか?
朝飯は駅弁で済ませた。新幹線を利用するからにはぜひ食べておきたかったので、満足している。
牛丼弁当のレヴューもしたかったのだが、イマイチ頭が働かない。子供の体では食後に乗り物に揺られていると眠気が襲ってくる。マズイな、とうとう船を漕ぎ始めた。
隣に座っているエヴァが俺の様子に気付いたようで、自分の膝をポンポンと叩く。膝枕をしてくれるつもりのようだが、俺としては少し気恥ずかしい。
エヴァはすごく期待に満ちた眼差しをしている。ここは素直に甘えておくのが吉か。
彼女の太股に頭を乗せて、俺の意識はまどろみの中へと落ちていった。
1999年3月9日 2:30p.m. 京都市内老舗和菓子店
午前中は軽く駅周辺を散策し、西本願寺や東寺などを訪れた。東寺で冬の特別拝観としてシンボルである五重塔の内部を見られたのは嬉しかったな。やはり、この時期の京都は普段は秘されている貴重な文化財を堪能できるのが醍醐味だ。
昼は案内の人が行きつけだという料亭へと連れて行ってくれた。
豆腐のコース料理なんて食べたのは初めてだ。中でも湯葉を天麩羅にする発想は前世でもなかったな。
余談だが、あの神父さんには特別メニューとかいう赫々と煮えたぎるような麻婆豆腐が出されてたけど、よくあんなもの食えるよな。
今はエヴァの希望で老舗の和菓子店に来ている。なんでも100年くらい前から訪れているお気に入りで、親父に封印される前まではよく通っていたそうだ。
中でもエヴァが一番気に入っているという練り切りは桜色の可愛らしい見た目をしている。
原作のイメージとは異なるなとエヴァを眺めていたのだが、彼女には俺が物欲しそうにしているように見えたのだろうか。
菓子を一摘みして、
「なんだ? これが気になるのか。ほら、一つやるから口を開けてみろ」
これはいわゆる「あ~ん」というものか。二人きりならともかく他人の目があるだけで羞恥心がマッハだ。
「どうした、早くせんか」
エヴァはニヤニヤしながら急かしてくる。チクショウ、俺の反応を楽しんでやがるな。俺は意を決して口を開いた。餌を貰う雛鳥もこんな気持ちなのかな。
「美味しい」
思わず声に出してしまった。
夕子さん達の生暖かい視線が辛い。というか案内の神父がメッチャ笑顔なのは何でだろう。
そういえば、昔やったゲームに和菓子を出す魔法を使える主人公がいたな。
完全な再現は出来ないだろうけどやってみるか。
練り切りの材料は確か砂糖に白あん、つなぎの食材だったな。製法はカウンター越しに見た。
こういうのは気分が大事だ。ちょっとエミヤのイメージもプラスして、
「――
何もない空間を両手で包みこみ、魔力とカロリーで像を結ぶ。
掌を開くとそこには練り切りがちょこんと鎮座していた。成功だ。
「投影魔術―― 貴様、何者!?」
真っ先に反応するのが、神父かい!
それにしても、二人のエロゲ主人公の力が合わさり最強に見える。
さて、味はどんなものかなと試食しようとした矢先に、エヴァに掠め盗られてしまった。
「まだまだ、修行が足らんな」
そう言ったエヴァの瞳は俺に向けられているようで、その実、別の「誰か」を映しているように感じられた。
それが何故だか無性に悔しくて、次こそは
「美味い」
と言わせてみせる。人知れず心に誓った。
1999年3月9日 4:25p.m. 京都市内某神社
今のところ特段襲撃もなく、普通に観光を楽しめている。
とはいえ何かあると分かっているのに、何の動きもないのもそれはそれで不安になるものだ。
ここらで俺の方から仕掛けてみるか。
「エヴァ、俺はちょっとトイレに行ってくるよ」
「そうか、ならば私達はここで待っていよう」
ここからトイレのある建物まではそれなりの距離がある。付いてくると言わないあたり、襲撃は無いと思っているのか、俺と同じようなことを考えているのか……
俺もここ数年でそれなりの実力を付けた。
エヴァからも
「逃げ足だけなら、既に私を超えているな」
と太鼓判をもらっているのだ。そうそう危機には陥らないだろう。
用を足してエヴァ達の元へ足を向ける。結局襲撃はなかったな。原作では白昼堂々襲ってきたのだが、今回は違うみたいだ。
そう思っていた矢先だった。
「虹彩異色の瞳に二股に割れた眉……。特徴の一致を確認。ようやく見つけたわ」
俺の前に一人の女性、いや少女が立ちはだかった。
コイツが刺客か? それにしては随分と若い。もっとも、「魔法先生ネギま!」の世界で見てくれの年齢は当てにならないが。
年の頃は十五・六歳くらいに見える。容貌はかなり整っていて、濡れたような黒髪をボブカットにしている。
体つきも女性特有の曲線美がハッキリと表れたシルエットで、彼女が漫画のキャラクターであればどれほど魅力的であったか……
残念だが今は敵同士、ならば油断はできない。
しかし、彼女の口から放たれたのは俺が予想だにしない言葉だった。
「エヴァンジェリン様はどこにいるのです」
……ん? 今エヴァンジェリン様って言ったか? 何者だこの女……。
「答えなさい、ハルカ・インペラトル・エンテオフュシア!」
ちょっと待て、ソイツはいったい誰のことだ!?
私事なのですが、この度10年愛用していたノートPCがお亡くなりになりました。
タブレットでの執筆作業って想像以上に大変なんですね。
来週末には新品が届くので、また2話投稿できればと思っております。