彼女はすっごく美人でもすっごくかわいいわけでもないという公式設定があります。ちょっと芋っぽいのがかわいいは彼氏談。
魔女、沢城マコトの死亡からもう四年になる。戦闘中に魔女が死亡する件はそれが二件目だった。現在で全二件である。体を真っ二つにされても回復する魔法使いが、なぜ死亡したか。死因は分からない。唯一の目撃者、スプリット・フェイトはその後ジェムストラにトドメを刺すところごと記憶を失っていた。
「……。お久しぶりです、マコトさん」
魔法使いの体はかなり不定形であり、死亡時は完全に魔力の塊に変わる。魔力は一つに集まり、宝石のようになるのだ。研究施設のさらに奥が、簡素な墓になっている。その下に、彼女は宝石となって埋まっているのだ。
「スプリットさん、あまり元気じゃないんですよね。やっぱり私では彼女を助けてあげられないんでしょうか」
無論応えない。静かな空間に、ポツンと一つの墓。もう一人の墓はノースカロライナの本部にある。それの影響で、日本支部とアメリカ本部は立場が弱いところがある。本部にも関わらずだ。
それほど、魔女の死は異常事態なのだ。
「……あなたもスプリットさんも…反対していなかったと聞きます。バディを長く組まないようなシステムは最初からありましたから。私も察していました、
…恋愛感情があるとユナイトはできない。それ故、かなりのスパンで魔女はカウンセリングを受ける。恋愛感情がある相手とは、組ませないように出動させるルールなのだ。だから不自然なのだ。あの日、スプリット・フェイト…その頃は我妻千歌だが…彼女と一緒に出動したこと。誰が指示したかは分からない。そもそもごく一部しかその問題点を知らない。だが大声で公表はできない。人のプライベートが絡んだとき、クリーンな組織は大きく動けない。致し方ないことだ。私もこの調査をしようとしているが、五年で進展がないあたり諦めが多いのも事実だ。
「…凝ったお人形ですね!」
私の作る人形を眺め、梅花さんは楽しげであった。・
「ありがとうございます。あ、そこの目のパーツ取ってもらっていいですか?水色の」
「あ、はいはい」
「ありがとうございます。…そういえば梅花さん、恋人なんかは?」
「えっ!?居ませんけど!」
「それは知ってます。いいお相手は居ないのかなと。学校で」
今日は日曜日。エージェントの仕事のために特別なコースではあるが、彼女には普段学業がある。むしろそこで出会いを探せるというものだ。
「うーん、いい感じの男の子は居ないですねぇ」
そう言って上を向く彼女。そうして見えた首回りの擦り傷だが、特に言うことはない。いや、凛音さんとかなら聞くが。そもそも梅花さんは現時点で服もボロボロである。また野犬に襲われたりでもしたのだろうか。いや、彼女の強さなら熊かも知れない。もしくは狼。お祓いをしようかと問おうにも彼女は結構ですと即答する。自分でどうにかしたがる上意地っ張りなのだ。
「しかしまたなんで急に…私の恋愛事情が?」
「仮に同僚を恋愛感情を抱いたら…です」
「ああ、ユナイト出来ませんね」
時代はマイノリティに対して、かなり優しくなった。同性愛も、昔の時代に比べてかなり増えているそうだ。だが実際は違う。同性愛の公言に抵抗がなくなった、が正しい。…それがいい方向に働かなかったのが、ユナイトである。
「どれだけいいコンビでも、どれだけ強い二人でも…恋愛感情があっては一緒に出動できませんから」
「そうですねぇ…。そもそも私恋らしい恋したことないんで異性愛かすらもよくわからないですし」
「そうでしたか。いい人が見つかるといいですね!」
「それなんですけど…降蓮さんの麗美さんとの馴れ初めってどんな感じなんですか」
「秘密です」
「えぇー」
橋木麗美。かわいい名前だが男性である。実際にかわいいがコレは彼女の単なる色ボケでしかないのも知っている。21歳、大学生の恋人だ。
「ヒントにしようと思ったんですけどねー」
「一つ言えるのは…生きていればよい出会いがあるということです」
私は机の上に人形を立たせながら言った。我ながらいい出来だ。興味深そうに梅花さんは眺めていた。
「…うーん、他の人にも聞いてみようかなぁー。ありがとうございました。人形も面白かったです!」
そう言って去っていく梅花さん。素直でいい子である。…が、やはり心配だ。気になって見てみれば、やはり白水寺からかかる小さな階段で転んでいた。
「…ファイト」
「…?」
一発と答えて欲しかったが伝わらなかったようだ。数十年続く伝統あるTVCMなのだが、どうも彼女はあまりTVを見ないらしい。
「気をつけてくださいよー!」
ゆっくり歩いて去っていく彼女を見送り、寺へ。人形もちょうど完成したところで、趣味の時間も一区切りついた。時間は12:26。お腹も空いたので社員食堂へ行く事にした。
「降蓮。…食堂か?」
中庭でぼんやりとベンチに座る凛音さん。白水からのショートカットルートの中で中庭は通るのだ。
「ええ、ご一緒します?」
「いや、今はいい…」
「そのお洋服…任務終わりですね?」
ファンシーな魔服は私のデザインだ。彼は缶コーヒー片手に恨みがましく私を見る。
「おうよ、不本意ながらな。…ったく」
「あのですね、心理学専攻なめないでください。あなたの心理状況を見た上で描いたデザインなんですからね」
「だったらわかるだろ。俺のこの服に関しての想い!」
「ええ、実は気に入ってるんでしょう」
「んだとぉ?」
不平そうにコーヒーを飲み干し、自販機横のゴミ箱へ。少し暗悩ましげな表情で彼は去っていった。こんな会話をしているが、普段の様子から考えれば原因は魔服ではない。心配だがあまり任務終わりに問い詰めるべきではない。スプリットさんのような深刻な人ならともかく。
「あ、降蓮さん」
「へっ?ああ、那月さん!この前はどうも。機械のお魚さんは……。…あっ」
「一緒に粉々。新しいのを買うよ」
「巳月さんも寮でしたっけ。大変ですね…」
舞浜巳月は彼女の兄だ。二日前のジェムストラとの戦いで、兄妹の暮らす家はぶっ飛んでしまっている。現在は国からの援助のもと修理を始め、二人は寮生活のようだ。
「混んでるなぁ」
「そうですね…」
食堂の人混みの中、私は那月さんと一緒に列に並んだ。私が買ったのはわかめうどんの食券。ちなみに那月さんは唐揚げ定食だ。いっぱしの少女なのだしダイエット的なものを食べると思っていたが、そうでもなさそうだ。
「席全然ないね」
「そうですね…あっ、そこ空いてますよ」
「ほんとだ」
二人ちょうど並んで空いていた。ラッキーである。食券と交換したうどんと定食を持ち、私達は席についた。
「…那月と降蓮じゃんか」
向かい側に座っていたのは叡無さんだった。机の上のミルクレープはまだ食べ始めの模様。
「叡無さん。……聞くまでも無いですけど、それはデザートです?」
「昼食だよ」
「ですよねー。健康には気をつけてくださいよ?」
「糖尿病なっちゃいますねぇ……」
「なんだっていーだろ!任務後には補給が要んの!今日はちょっと暴れたりなかったけどよ」
そう言って食べ進める叡無さん。…少しやけ食い感がある。いや、ソワソワしているとでも言うか。
「…凛音さんとの任務でした?」
「そうだけど。任務の記録でも見たのか?結構場所も遠くて…あっ、カウンセリング?」
「いえ、彼も様子が変でしたから」
「そうなの?」
那月さんへうなずきを返すと、叡無さんの方も思い当たるフシがあったらしく、少し考え込んでいる様子だった。
「ふーん……」
「…ユナイトしたいんでしょう?凛音さんとまた」
「…は?」
いきなりの発言に、戸惑う叡無さん。それもそうだ。きっと自覚はないはず。だが原因が分かった以上どうにかしてやらねば。
「えっ…そうなの?」
「そうなのか?…いやでもよォ!」
「食べ終わったら白水寺に来てくださいね。ご馳走さま」
「えっ、降蓮さん早いね」
「そうですかね?本当ならあなた方の食べ終わりを待ちたいのですが…少し準備をします。先に失礼しますね」
私は食堂を後にし、研究室で女性同僚にいじられていた凛音さんを捕まえた。急だったようで、やはり戸惑う。そのまま白水寺へ。
「…はい?俺が龍騎とユナイトしたがってる?」
「そう思われます」
「いったいなんだって…」
「今回の任務は叡無さんとの初ユナイトでしたね?」
「ああ…そうだけど。ウイスキー・ボンボンだったかな」
「だからです。暴れたりなかった。彼女はそう言ってました」
「…!…俺も…それはちょっと思ってるかもしれない。俺らしくはないが…」
そんなことを言ううちに、白水寺に到着。数分して叡無さんが現れた。那月さんは寮へ向かったとのこと。
「…それでよ、オレは」
「待って。…あ、やっぱり。クリーム付いてます」
「あ?おっとホントだ。急いで食ったからな…」
そう言って、座禅を組んだ私の前に、膝を立てて座った。私の手振りを見て、凛音さんもあぐらの姿勢に。
「…なんのつもりだ?」
「深呼吸………対話です、ユナイトは語り合うことなのです」
「…は?」
「深呼吸!目もつぶって」
「あっはい…。すぅぅぅぅ…」
「すー…」
「「ふぅぅぅ……」」
私の言う通りに目をつぶって呼吸をする二人。ゆっくり目を開けば、そこに広がるのは真っ青な空間。私の魔法はホログラム生成だ。この程度の術が簡単なのは分かってるであろうが、それでもいきなりで二人は少し驚いた。
「…で」
「次は相手のことを考えるのです。ゆっくり息をしながら…」
「…俺は龍騎についてか?」
「じゃあオレはコイツ?」
「コイツってお前…」
「別に顔を思いうかべるだけでも構いませんよ」
「…」
そうして数秒ののち、二人は驚愕したように目を見開いた。そしてお互いの顔と私の顔を交互に見る。
「…やっぱり」
「ああ、なんか…ユナイトがしたい!」
「でもよ…それってどう言う事だァ?オレは別に…コイツに対してそんな……」
「当然です。恋愛などの感情の延長線でユナイトがしたくなることはありません、普通は。好きな相手とはユナイトするより一緒に居たくなりますよ」
「じゃあこの気分はなんなんだよ!」
「それはあなたの気持ちではありません」
「はァ?」
「ウイスキーの気持ちなんですよそれ。ウイスキー・ボンボンの『存在したい』が、お互いの心の状況が近づいたおかげで浮上しただけです」
「じゃあどうすればいい?」
話は単純だ。存在させてやればいいだけのこと。それを言えば、二人は納得したようでゆっくり立ち上がった。同じ相手との再ユナイトのインターバルは2時間。おそらくもう経っている。
「じゃあ行くぞ…おりゃっ!」
「でやっ!!」
二人のハイキックがぶつかる。身長的に逆に叡無さんが辛そうだ。低く合わせねばならない。だがその姿勢も一瞬。光の塊は2mちょうどぐらいの、かなり小さめのユナイト体へと変わった。紫の髪に入るピンクの差し色が目立つ。
「…へぇ、確かに気分がいいぜ。俺様再誕だ!」
「あなたがウイスキー・ボンボンですか」
「おうよ、にしても暴れたりねぇなァ…」
ギザギザの歯を不機嫌そうに覗かせたかと思えば、私を少しだけ見下ろし今度はニヤっと笑う。全体的に悪そうで、魔法少女の敵幹部と形容するのがちょうどいい見た目をしている。
「ちょうどいい。付き合ってくれよ降蓮!」
「…危ないですね!」
YesかNoか聞く気はないらしい。私の答えを待たず彼女はメリケンサックを装備して殴りかかってきた。さらにふぉとんすてっきと合体させ、ハンマーへ。乱暴に振りかかる。
「避けてばっかりじゃ面白くねぇぞ!」
「…事後報告の模擬戦の申請は面倒なので…あなたの責任にしてあげようと思って」
相手の戦意を削ぐべく、イヤな言葉をふっかけてみる。だがどうも効果はなさそうだ。さらにハンマーを振り下ろしてくる。
「…仕方ありませんねッ!」
私は左手の腕輪と右手の数珠を変形させ、ガントレットへ。戦闘は予想外だった。まさか暴れ足りないがこのレベルだとは。かなり不安定なようだ。
「へぇ、早着替えってわけ?」
寺から出ながら、私は魔服へ。さっきまで着てた袈裟と似ているが、色は赤と青だしかなり脱ぎ着がしやすい。
「オラァ!」
「うぐっ!」
彼女の蹴りを貰い、さらにハンマーでの振り上げを喰らう。そのまま砂利の上に叩き出され、さらに彼女が迫る。まだ38秒経過。三分逃げ回るのは難しいだろうか。
「降蓮さん!」
そんな私へ、那月さんが駆け寄ってきた。ウイスキーさんと私を交互に見たかと思えば、状況を把握した模様。ゆっくり息を吸った。
「無茶だよユナイト体相手は。………仏説摩訶般若波羅蜜多心経」
まさかそれで来るとは。私と彼女がユナイトする条件は一緒に歌うこと。正確には一定のリズムで声が合うこと。しかしそのセレクトかぁ…。私に合わせてくれたのだろうか。
「「観自在菩薩行深般若波羅蜜多…」」
まあありがたい事によーく覚えてる。合わせるのは一瞬であった。私と彼女は一つへ。服は融合して天女のように変わり、その上半身は透ける。服が完成したと同時に、体も完全に人型へ。
さて、この状況になったからには相手を止めねばならない。私は四本の手で二つの合掌を作り、薄く開けた目でウイスキー・ボンボンを見据えた。
「融合体顕現、魔女、
「来やがったか!」
彼女の鎚を右上手で止め、そのまま右下手で掌底を叩き込んだ。少しだけ後ずさるウイスキー。続いて鎚から光線を放つ。
「…効きませんよ」
「んだとぉ!」
「雑然、適当、強引、暴走、あまりにも力任せ」
「…テメェ!」
私の言葉へ露骨に怒りをあらわしながら彼女は跳び上がる。振り下ろした鎚をかわすのは楽だ。私の水色の髪を掴むウイスキーだが、魔力で生成した小魚をぶつけてやれば簡単に怯んでしまう。
「んのっ!」
「おっと…逃しはしませんよ?」
再び後ずさるウイスキーの腕を掴み、私は左上手に籠手を作り軽く殴りつけた。那月の装備品である魔力保存用の宝石と、降蓮の籠手を合体させたものだ。
「ぶちのめしてやる!」
「やらせはしません」
さらに鎚を振り回して投げてくる彼女。そこに土のホログラムを出現させ、壁にした。ただのホログラムしか生み出せない降蓮の魔法だが、私はそれに質量を持たせることができる。出現時間は縮まるが。
「…おりゃぁ!」
「雑ですね」
殴りかかる彼女へ足を引っ掛けて転ばせてやり、そして私は四つの腕全てに籠手を出現させた。その手でぱんと今一度合掌を作る。溜めた魔力を解放させる時だ。
「それでは、お仕舞いにいたしましょう………」
「…くそっ」
凛音とは共に戦ったことがある。だから知っている。私が
「ハァ!!!」
「うぐぉっ!?」
彼女の腹へ右両手の拳を叩き込んでやれば、背中側から衝撃波が出るほどの威力だ。このままユナイト解除まで殴り込むのみ。彼女の残り時間は1分。私は2分。…20秒で十分だ。
「はい!せい!ぜやっ!叩き潰してくれましょう!」
「おぐぇっ…!!」
女の子がしてはいけない表情と涙を浮かべながら、ウイスキーは怯む。コレならば必殺の攻撃を出すまでもない。四本の腕全てでの拳に吹っ飛ぶウイスキー。だが休む暇をあげるつもりはない。
「破ァ!!」
「いぐぇっ!」
上両手を固く握り合わせ、そのまま叩きつける。それが決め手になったようで、ウイスキーはそのままバラバラに戻った。
「…っとぉ…いってぇ」「あいててて…」
「全く……」
「あ、細目に戻った」
「…あー、もうウイスキーはこりごりだ」
「制御できるようになっておくべきですね。あなたがたの負の面が大きく出て……乱暴になってしまうのでしょう。不安定ですが、うまく慣らせば十二分に強くなれるはずです。……それでは失礼します」
言うだけのことは言った。ひとまず私の仕事は終わりだ。
「あー疲れた」
「ありがとうございます那月さん」
「べつにいいよ」
「悪いな降蓮に舞浜。お騒がせしちまって」
「…ああ、悪かった」
頭を下げる二人。そこまでされては申し訳ない。別に謝る必要はないと言うのに。
「いいですか?先ほど私が言った…というか」
「ボクも言ったからね。ボクと降蓮さんが…というか柴舟が言ったこと、忘れないでくださいね」
「次は暴れねぇよ。ちょっと練習でもするか?」
「…別にいいけどよ」
そう言って去っていく二人。ひとまず解決だ。
「そういえば那月さんはなんでここに」
「コレ兄さんが買ってくれたんだ」
「あっ、モーターフィッシュ!」
「降蓮さんが用事終わらせたら一緒に作ろうかなって。器用そうな人って言ったら降蓮さんだから」
「フフフ…そういう意味では大正解ですよ那月さん。早速作りましょうか!私も作りたい人形があるんです!」
彼女を連れて寺へ。かなり疲れたが、趣味で気晴らしでもしてやろう。私は人形の構想を固めながら戸を開けた。
「ありえないなんて聞き飽きた…目の前で起きたんだ。私から全てを奪った…魔力の暴走は!」
次回、「世界が奪ったもの」
以上、ジェムストラが出ない回でした。次回は…セリフで察せるかな?
It’s over, isn’t it?ですが、コレは「もう終わった事、そうなのよね?」という意味です。だからスティーブンユニバースを見ろ(意味不明)。
さて、コレにてシーズン1が1/4です。ちょっと短めかもですが人数が少ないので。1話投稿前のキャラ9人でエピソード組んだわけですが…そんぐらいの人数がちょうどいいわな!ユナイトはいつでもいくらでも出せるし。1話投稿後のキャラはシーズン2かなーと思います。プロットの関係なんでお許しを。
登場キャラが微妙に偏ってるのはたまたまです。