甘々にユナイトして   作:さわたり

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この作品はやけに敬語キャラと男口調キャラが多い。女口調でスプリットさん目立つ。


第四話

幼馴染の誕生日パーティー。はっきり言ってしまうと、私はその子のことが好きだった。少し気弱だけど優しくて、私は彼の手を引っ張って走るのが好きだった。

 

「…久しぶりだな」

 

三年前?…嘘だ。私にとって、あの事故は昨日のことのよう。燃え上がる家の中、動けたのは私だけだった。…思考の強化。その魔法が、自分がどう逃げればいいかを教えてくれた。

 

「ごめん…できるのなら助けたかった。君は…君だけじゃないマナや愛、誠一も生きてた。それに…ママも…パパも……!!それなのに…」

 

彼の墓石の前で、私はただ泣くことしかできない。今日で彼、水国洋介は18歳。…生きていればだ。

 

「何故…私だけ……」

 

さらに跪き、花を置く。彼がくれた腕時計を見つめ、想いを馳せる。だからこそ、私は信じたくなかった。

 

「…本当に君なら救われないよな」

 

魔法使いだった彼の…魔法の暴走が原因であったこと。それでも、私の目にはしっかりと残っていた。泣きながら真っ赤に燃える彼が。私のパパについた火を消そうとする間に、部屋が燃えがって行ったのが。いくら消火器を使っても、燃え続ける彼の姿が。

 

 

第四話 世界が奪ったもの

 

 

「…斎藤研究員」

 

「お?霧谷か」

 

意外な遭遇だ。霊園で彼と会うとは。少女らしい見た目はいつも通りだが、その服装はコートを着たかなり地味でシンプルなものだ。…私もそうだが。

 

「…帰か?」

 

「そうですが」

 

「俺もだ。家?本部?」

 

「東京本部です」

 

「…俺もだ。何で来たんだ?」

 

言っているうちに駐車場に到着した。黒のコンパクトカーを指差してやると、彼は納得したようだった。行き先も同じなので乗せることに。

 

「……」

 

「…」

 

私はあまり人と話すのは得意ではないし好きでもない。だから必要がなければ、私から話すことはあまりない。それにお互い墓参りを終えたところ。不用意に何かを言い出す気にならないのも当然だ。

 

「そういやよ、今日はお前は行くのか。自衛隊」

 

「…ええ」

 

「俺行ったことねーのよ。聞かせてくれよどんな様子だったか」

 

やはり仕事の話が振りやすいのだろう。自衛隊への訪問の任務についてだ。彼らがいなければ私達は戦えない。何せ、住民の避難は自衛隊の任務だからだ。

 

「…なんか渋滞してんな」

 

「そうですね」

 

助手席でキョロキョロとする斎藤研究員。何を思ったか、外へ出ながらコートを脱ぎ去った。その下には派手な魔服。スカートの下に履いていたジーンズを脱ぐと、完全に戦闘時のスタイルだ。

 

「…やっぱり来やがった」

 

ほぼ同時に、ジェムストラの出現の通達が。彼はすぐに腕を翼に変えて飛び去っていった。一気に携帯電話への警報が入ったようで、一般市民は車を置いて逃げ出す。駆けつけた自衛隊員達が、その誘導を行う。

 

「クラックの…戦闘エージェントの方ですね」

 

「そうですが」

 

「向かわれないのですか?」

 

一人の男性隊員がそう言うが、しかし車が混雑してまま置かれる中で歩いて行くのはかなりの無茶だ。その様子を察したらしく、彼は通信機に何かの要請を出した。

 

「…!」

 

「お待たせしました!」

 

ヘリコプターである。柄にもなく驚いてしまった。降りてきたハシゴに捕まって登っていき、乗り込むと同時に発進した。

 

「目的地に到着!」

 

たった数分だ。その現場では誰かがユナイトしている瞬間のようであり、斎藤研究員が援護を行なっていた。敵はレジストコード「ビクスバイト」、トラ型だ。

 

「…ありがとうございます」

 

「いえ…健闘をお祈りします!」

 

敬礼する隊員へうなずきを返し、私は吊るされたロープを降りた。斎藤研究員はこちらを一瞥。ほぼ同時に誰かのユナイトが完了した。

 

「へぇーい皆様!このPPPが現れたからにはもう安心!一瞬で救命アンド殲滅しちゃいまショウタイム!!」

 

「相変わらずやかましいなお前…」

 

PPP(パチパチパニック)、エージェント万李とエージェント龍騎ユナイト体だ。単に近くにいた斎藤研究員と私とは違い、二人は任務として向かわされたのだろう。

 

「ぎゅりりり!」

 

「泣き虫は良くないですよぉん!あたいが泣き止ませちゃいます!いないない…ばあ!!」

 

出現させた巨大なハンマーでビクスバイトのアゴをかち上げ、さらに蹴りつける。だが若干ビクスバイトの方が大きいのもあり、のしかかる形で、攻撃。PPPは膝を曲げて姿勢を崩しつつある。

 

「オォウ…ねえねえそこのカワイコちゃん?」

 

「わかっている」

 

ほんの少し申し訳なさげな視線を私へ向けるPPP。私はすぐに放置されていたバイクに乗り、円を描くようにビクスバイトとPPPの周りを動きながら銃撃を飛ばした。

 

「ヘェイ!よそ見はだめでございますよ!虎さん、いや…子猫ちゃん!!」

 

「みゅげっ!」

 

困惑するビクスバイトへ、PPPはパンチを叩き込む。さらにハンマーを分解し、パーツの一部になっていたナックルダスターを装備、さらに殴りつけた。

 

「どりゃ!!」

 

「ぐにゅえっ」

 

「ナイス凛音さァん!」

 

斎藤研究員のステッキの振り下ろしをくらい、ビクスバイトは怯む。そしてPPPがスパイクで踏みつけ、私の援護射撃の中ハンマーを組み直した。

 

「オゥケイそのまま撃ってて沙雪さん!。グッバイキティ!」

 

トドメとばかりに一気に振り下ろす。ぼんっという音とともにビクスバイトは消え、赤い宝石が残った。

 

「ミッションコンプリート!ご視聴ありがとうございました〜!!」

 

そして最後にPPPが一礼し、そのままエージェント万李とエージェント龍騎へと分離。そそくさと帰っていった。

 

 

 

 

「本当ですか?」

 

「本当です。シュミレーターを使ってみますか?」

 

時間は間に合い、一時帰還ののち私は自衛隊への訪問に向かった。そして新規入隊者の面々に、クラックジャパンについての説明。それを終えて懇親会をする中で、私はあることに誘われたのだった。

 

「…こちらです。マニュアルはこの通り」

 

「ありがとうございます」

 

ヘリコプターの操縦訓練。基本的に運転手をしている私に、長く勤めている島田隊員がその誘いをくれたのだ。

 

「やっぱりお上手ですね」

 

「ありがとうございます」

 

「免許の取得やその試験も我々が用意できます。通ってくだされば…」

 

先ほど、交通の面でかなり面倒なことになってしまった。足止めを食らっては、戦闘以前の問題だ。私はすぐにうなずいた。

 

「ありがとうございます」

 

「それはよかった。先ほど運転手と言っていましたし…」

 

「はい」

 

「では、戻りましょうか」

 

一通りの操作訓練を終え、私は懇親会へと戻った。大きな会場で、立ちながら適当なテーブルで食事をする。至ってシンプルなものだ。

 

「…沙雪」

 

「エージェントスプリット。何かご用ですか?」

 

「いえ、見かけたから声をかけただけよ。知ってる人があまりいないもの」

 

軽く辺りを見回して言う彼女。ほとんど反対側のテーブルで、エージェント降蓮が数名と真面目そうに話をしているのが見えた。対し、我々には必要最低限の会話しかない。

 

「……」

 

「……」

 

「CJの…エージェントのお二人ですね?」

 

自分で言うのもなんだが、私とエージェントSF(スプリットフェイト)が無言でテーブルに向かう空間に、よく声をかけられるものだ。礼儀の正しそうな、これまた真面目な雰囲気の青年だ。

 

「あちらの方から聞きましたよ。運転スキルと戦闘スキルでは、お二人は素晴らしい腕をお持ちと」

 

「お褒めに預かるほどじゃありませんよ。私の場合はただ運と相性が良かっただけ」

 

静かに答えるエージェントSF。あまり感情のこもらない一言だが、彼はあまりそれを気にしてはいないようだった。青年はメモを取り出し、個人的に私達の戦場での話を聞きたいようだ。

 

「この際二つ名でお呼びしましょうか」

 

「どっちでもいいですけど…まあ、スプリットの方が好きです」

 

「それはよかった。貴女が倒されたジェムストラについて……」

 

話は数分で終わった。私に対しての質問は、様々なケースでの交通状態や、それに合わせた移動手段などについて出会った。

 

「ありがとうございました。お二人ともすみません。貴重なお時間を」

 

そう言って頭を下げ、去っていく青年。他の隊員達の元へ行き、貰った情報について共有しているらしい。それを見て、エージェントSFは、少し表情を暗くした。

 

「仕事に熱心ね…。私とは違う、かも」

 

「貴女は十二分に熱心では」

 

「…どうなのかしらね。ユナイトに対する、この感覚……。そもそも魔女に向いてないのかも」

 

「…一人で戦えているなら問題はないはずです」

 

「これから起き得るじゃないの。沙雪は…ユナイトどう捉えてるの?」

 

「戦闘のための手段です」

 

「そう、やっぱり」

 

「……が、どう捉えるのも自由なものでもあります。実用化されてまだ9年。概念としてはっきりしないのも致し方のないことです。だから貴女のように抵抗を持つことは不自然ではありません」

 

「…そうかしら」

 

「ええ、私は…ユナイトは自由であるものと、思います」

 

正直私は驚いていた。当たり障りなく話を進めるためだけのつもりの発言だったが、そこに私の「感情」が存在していた。

 

「へぇ。…貴女、そうですかぐらいしか言わないと思ったけど」

 

「そう、ですか」

 

「フフフ、それはジョークのつもり?」

 

「…」

 

「……とにかく、やっぱり人によって違うものなのね…」

 

そう言ったかと思うと、深呼吸。ありがとうと一言私に言ったかと思えば、彼女はエージェント降蓮の元へと向かった。

 

「……ユナイト、か」

 

私はあまり深く考えたことはなかった。たった今、「自由であるべき」と言う考えが自分から掘り起こされた。どう言う意図なのか、私自身もよくわからない。どう言う自由なのかも、だ。

 

「……」

 

ぼんやりと思案していたとき、突如サイレンが鳴り響いた。通信機に連絡はなし。曰く、ジェムストラではなく単なる火事のようだ。自衛隊基地で起きるのは不自然だ。しかしそれを気にしているような時間はないようである。

 

「こちらです!!」

 

避難経路に従い、移動して行く。数十人が同じ道を通ると動きづらいので、6つほどのルートに分かれてだ。

 

「…!!」

 

そんな時、部分的に抜けた床に私は足を取られてしまった。腕をぶつけ、その勢いで腕時計が炎の中へ。…まずい。彼からのプレゼントだというのに!!

 

「……何をしてるんですか!?」

 

駆け出す私を止めようとする男性隊員。だが私は止まるわけにはいかない…!!

 

「……どこだっ!!」

 

私を追おうとするも止められる隊員。消火器を使う音を背に、私はさらに腕時計の捜索を続けた。

 

「何っ!?」

 

そんな瞬間、爆発が巻き起こり壁と床が部分的に崩れる。腕時計は無事だろうか。汗を拭いながら見渡す私の元へ、足音が近づいた。

 

「あれれ、バカがいたよ。炎の中に飛び込んでくるとかさ」

 

「バカだな。そうじゃなけりゃこれを探してるやつだね」

 

二人だ。炎の中を平然と歩く二人。男とも女ともつかない者と、女っぽい者である。

 

「君はこれの持ち主?」

 

「…!」

 

女っぽい方が投げ渡してきたのは、まさに私の腕時計であった。

 

「何故これを…」

 

「落とし物だからさ。僕は優しいの」

 

「感謝する」

 

そうして去ろうとするが、瓦礫に塞がれて行けない。壁を壊してやろうと思った時、女っぽい方が私の前へと近づいてきた。

 

「ベリル、なんのつもり?」

 

「分かるだろ?こいつ魔力持ちだよ。しかも僕らの部下を壊して回ってる組織の…!」

 

女のような方は『ベリル』という名前らしい。私へさらに近づいたかと思えば、グリップのようなものを取り出した。

 

「無駄足だよ。私達の目的は…」「いいからさ、燃料ならフェルドスパーが探して」

 

「…はいはい」

 

中性的な方は『フェルドスパー』。そいつは炎の奥に消え、私の目の前にグリップを握ったベリルが残った。

 

「お前、部下と言っていたな。ジェムストラを…」

 

「ジェ…はいぃ?あんたらはそう呼んでるの?」

 

「……無機物の体。動植物を模した形状、機能」

 

「で、倒せば石に戻るでかいヤツ?ああ、じゃあそいつだねえ」

 

そう言いながら、グリップの先端を左の掌へ。そしてグリップを引っ張ると、左手からずるりと鎖が現れた。鎖でできたムチとでもいうか。

 

「…私を倒すのか」

 

「そうだよ。あんたらにうろうろされちゃ…僕らには邪魔で仕方がない!」

 

駆け出してムチを叩きつけるベリル。すんででかわし、至近距離で銃撃を叩き込んだ。だが怯む様子は見せない。

 

「大したことないね!」

 

「…っぐ!!」

 

今度は思いっきりくらってしまった。さらに迫ってくるベリルへ、今一度銃を向ける。

 

「…!?……すっごいねぇキミ」

 

奴が打ってくるムチを、後ろへステップで下がりながら狙撃。当たらないギリギリまでおしのけ、そのままベリルに数発当てた。思考を強化すれば容易い。

 

「面白い!」

 

しかしそれでも怯む程度。決定打にはならず、さらに攻撃を避け続けるのは苦痛極まる。

 

「さて…ちょっとばかりぶっ倒れてもらおうかな!」

 

「!!」

 

ベリルが床へと鎖を叩きつけ、足元が揺れた。その瞬間、私へと急接近。バランスを崩しつつある私へ膝蹴りとムチでの連続攻撃をたたき込んだ。

 

「…っ」

 

「おりゃっ!!」

 

さらにかかと落としの追撃。立てないというわけではないが、私は苦痛に耐えかねていた。

 

「いつまでやってるんだよベリル」

 

「お、フェルドスパー。僕が戦ってる間に…」

 

「回収したさ」

 

そう言ったのちフェルドスパーが私を見て、思案を始めた。身構える私を蹴り上げたかと思うと、手からライフルを奪われる。そして上へと銃口を向け、

 

「グッバイ魔力持ちさん」

 

ぱぁん。私の最後の視界は迫りくるコンクリートの天井だった。

 

 

 

 

 

真っ白な天井と真っ白なベッド。病室だ。

 

「………覚めたか」

 

「エージェント天奈」

 

「体調はどうだ。怪我は治ったようだが」

 

「何日が経った?」

 

「半日。まだ深夜1時だ」

 

我ながら回復力に驚く。魔女はそういうものなのだ。彼女曰く、私は救助された時には全身が複雑に骨折し、見てられない状態だったらしい。

 

「…飲むか?」

 

「いや、いい」

 

綺麗な模様のカップから紅茶を飲みながら、彼女は私を見た。アンティークは日常使いしないだろう。ただ単に食器のセンスがいいだけだろう。まあ、よく分からないが。

 

「……何があったんだ?」

 

「敵がいた。口ぶりは…ジェムストラを司る者のようだった。ベリルと、フェルドスパーという名前らしい」

 

「興味深い」

 

「それと…それと……」

 

思い出しているうちに、コンクリートの塊に叩き潰された瞬間が思い起こされた。さらに焼かれる体。その瞬間の炎とあの日の炎が、重なる。

 

「……っ!」

 

「どうしたんだ?」

 

「いや、悪い記憶が。大したことではない」

 

「…そう、か。不幸だった、な。その、3年前は」

 

「ああ」

 

彼女なりに気遣おうとしているのだろうか。それでの思い出すものは思い出す。ぎりぎりと悲しみが胸をつく音がする。

 

「だが原因不明、なんだろう?魔力の暴走…本当なのだろうか」

 

「本当か?だと…。ありえないなんて聞き飽きた…目の前で起きたんだ。私から全てを奪った…魔力の暴走は!」

 

「…。そうか。すまないな」

 

彼女の視線が下がる。珍しく大声を出した私に、彼女は申し訳無さそうだった。戦っていれば原因が分かるかもしれないという彼女の気遣い、励ましなのだろうか。

 

「…いや、私こそ悪かった」

 

「……。早く、治ってくれ。私達は心配してるんだ」

 

立ち上がって去っていく彼女。誰もいない病室で、私はあの日の恐怖を反芻し続けていた。




「私が見つけたんです。だから私がやるんです!!」

次回、「来訪者」

えー、待たせた上ぐだぐだしましたごめんなさい。テンポ悪くてビミョーながら、重要なキャラが出る回です。今のところ面白そうなのが第十二話だけなクソプロットな。 イベントというかエピソードの案あればくださいな。
ちなみに。クラックの職員は公務員です。国連から発足した組織ですが、運営は各国に任せられているので。無論技術や方針は常に共有されながら。
さて、シーズン1はこれで1/3です。短い。
あと、一旦幻想仮面少女に戻ろうと思ってたり。思ってるだけでなんとも。それではまた〜。
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