日輪の子は夜と踊る   作:凡人EX

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戦闘回と日常パートです。

先に言います、ごめんなさい。


日輪の子と燕

 ──折神家・中庭

 

「えい!!」

 

「……」

 

 刀の擦れる音と鈴の音。発生源には2人分の影。

 

 片方の振り下ろした刀を、もう片方は軽く受け流す。

 

 休憩に入ったらしき職員たちも見守る中、昼近くのこの時間に試合をしているのは、新と結芽である。

 

 数分前に始まった2人の試合だが、戦況は一方的なものであった。

 

(あーもう! ぜんっぜん入らない!)

 

 結芽が一方的に攻めているのだが、その悉くを新は受け流している。

 

 赫刀の角度を変え、また体の向きを変え、後ろからの突きだろうと、左からの逆袈裟だろうと赫刀の峰で滑らせて受け流す新。

 

 それを崩そうと結芽はフェイントを混ぜたり、ちょこまかと動きまわったりとしているが、全てを赫刀で流される。

 

 結芽にとってこのようなことは初めてである。

 

 結芽のトリッキー過ぎる動きに着いてこれる刀使はそうはいなかったためだ。

 

 真希や寿々花は着いてくるが、最終的にはその苛烈な攻めに押されるというのが大体。

 

 つまるところ、結芽は守りを崩せないという事が初めてなのだ。

 

 更に言うなら、新に斬りかかっても全く手応えがない。まるで水を斬ろうとしているような、そんな錯覚をしてしまう。

 

 崩すビジョンが全く見えてこないのだ。

 

(おにーさんが水の上に立ってるみたいに見えるし、本当にわけわかんない!)

 

 そう思う結芽の視界には、凪いだ水面に映る月、その上に立つ新が見えた。

 

 

 

 

(……速く鋭い。なるほど、親衛隊で一番強いと自信満々に言うだけはある)

 

 一方の新は、冷静に結芽の剣を分析していた。

 

 透き通った世界とそれによる直感によって、今のところ全て捌いているが、それでもいつ限界が来るかなどは分からない。

 

(気になる部分はあるが……まあいいか。()()もいつか崩れるかもしれんし、結芽には悪いが早く終わらせてしまおう)

 

 次が最後、新はそう決めた。

 

 

 

 

 守りが崩せず一向に攻めきれないため、結芽は一度体勢を立て直そうと離れる。

 

 

 

 

 瞬間、異常な程の寒気が背筋を這った。

 

 その場の空気が凍った。

 

 見物していた周りの職員たちも顔を恐怖に凍りつかせ、遠くの鳥たちも一斉に逃げるように飛び立った。

 

 その場を支配するのは、圧倒的な死の気配である。

 

 結芽は本能的に更に後ろに飛び、防御の姿勢をとる。

 

「ヒシン神楽・演目・(けがれ)ノ弐──」

 

 新の声が途中で切れ、瞬きの間に新の姿が消えた。

 

 次の瞬きで、新は結芽の目の前に迫っていた。

 

 その全てを飲み込むかのごとき眼差しに喉が一気に乾く。

 

 心臓を冷たい手で鷲掴みされているみたいだ。

 

「──彼岸一閃(ひがんいっせん)

 

 結芽の首を狙って赫刀が煌めく。

 

(──あ)

 

 もうダメだ、そう思った結芽。目をぎゅっと瞑って痛みに備える。

 

 

 

 

 しかし、一向に斬られる感触がない。

 

 新が首を斬る前に、結芽の写シが解けていたのだ。

 

 写シを維持するのは刀使の精神力。

 

 いくら刀使が常に死と隣り合わせとはいえ、11歳の女の子が死の恐怖に耐えられるような精神力を持ち合わせているわけもない。

 

 あまりにも大きいプレッシャーを真正面からぶつけられた結果、結芽の写シは解けたのだ。

 

 それに気づいた新は、首を刎ねる前に何とか止まった。

 

「あっぶねぇ」

 

 右からそんなやけに明瞭な呟きが聞こえた途端、止まっていた時間が動き出したかのように、結芽はペタンと地面に座りこんでしまった。

 

 心臓が鳴り止まず、肺が空気を求め、頭が、心が、体が、生の実感を取り戻した。

 

「……あ〜、結芽?」

 

 いつの間にか前で屈んでいた新。先程の冷たい声から一転、ものすごく申し訳なさそうな声になっている。

 

「その、大丈夫か?」

 

 そう言われて結芽は

 

「……ぅ」

 

「ん?」

 

「うぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 ガチ泣きした。

 

「え、ちょ、どーしよこれ……」

 

「うわぁぁぁ、こ゛わ゛か゛っ゛た゛ぁぁぁ!!」

 

「あぁあぁごめんごめん、悪かった、怖かったよなぁ」

 

 とりあえず結芽の頭を撫でる新。

 

 職員たちはポカンとその光景を見て口を開けるばかりだった。

 

 

 

「本当に死んじゃうかと思った……」

 

「いや、マジですまん。紫様はあれでも平気で続けるし、結芽もそんぐらいいけるかと……」

 

 泣き止んだ結芽を連れて食堂にやってきた新。

 

 いちご大福ネコなるもののグッズを買うことを約束させられたが、仕方ないと割り切る。

 

 席について、2人で食事を取りながらさっきの試合を振り返る。

 

「しかし……結芽って強いのな」

 

「……凄かった?」

 

「ああ、マジで凄かった。まだ伸び代もあるし、いつか追い抜かれるなこりゃ」

 

「そうでしょ! 私が一番凄いんだよ!」

 

「俺を倒してから言え」

 

「む、絶対おにーさんより強くなるもん。それまで待っててよね!」

 

「……」

 

 新は確かに本心から褒めたのだが、随分と単純である。

 

 結芽という少女が、自身の強さを誇示することに執着していることを新は知らない。

 

 凄いと言われた事が余程嬉しかったのか、打って変わって元気になる結芽。

 

 しかし、新は結芽の待っててという言葉を聞いて、その顔に影を落としたが、

 

「そうだな。いくらでも待っててやるさ」

 

 一瞬でその影を取り払い、ニカッと笑ってそう言った。

 

 

 

 話は変わり、結芽は新に、先程から疑問に思っていた事を聞く。

 

「ねぇおにーさん」

 

「なんだ」

 

「よく刀使の動きについてこれるよね」

 

 やはり疑問なのはこの点。新はなぜ刀使の動きについてこれるのか。

 

 刀使同士の試合だと、無関係な人間から見れば文字通り目にも留まらない速さで剣技の応酬を繰り広げるわけだ。

 

 なぜ()使()()()()()()ついていける動きに、新は普通に対応できているのか。

 

「……呼吸や体の動かし方か? 見ればわかるのもあるが」

 

「体の動かし方はまだわかるけど、呼吸?」

 

「そう、呼吸。この辺の詳しい話は追々皆にも話すつもりだが、簡単に言うと酸素を多く取り込んで、一時的に身体能力を増強させているんだ」

 

 俺も実はよくわかってないけどなと心の中で付け加える新。この話は炭治郎や師匠に聞いた理論であるため、実感はない。

 

 やはりというか、結芽もよくわからなかったようだ。

 

「よくわかんないけど、それって私にもできる?」

 

「……本人の資質によるところが大きいらしいからなぁ。出来るかもしれんし、出来んかもしれん。俺には分からん」

 

「おにーさん教えられないの?」

 

「できないことは無いが、長ーい時間がかかるんだよ。1、2年ぐらいな」

 

「やっぱりいい」

 

 時間がかかると聞いてすぐにそう答える結芽。彼女にとっては時間は非常に惜しいのだ。

 

 一息つく新。ふと、ちょっとした考えを閃く。

 

「まあまだまだあるが、そうだな……この後研究棟に行くつもりなんだが、結芽、お前暇だろ」

 

「うん、出撃もお仕事も何も無いよ?」

 

「じゃあ一緒に来い。そこで俺がわかってる限りのことを話すつもりだ」

 

「……それって私行っていいの?」

 

「邪魔さえしなければな」

 

「……うん、行く」

 

「よし、さっさと飯食って行こうか。森元さんも首を長くして待ってるだろうし」

 

 うんと頷き、そうと決まればと言ったふうにご飯をかきこむ新。

 

 日はまだ傾かない。




Q.何を謝ったのか?

A.戦闘描写の拙さと結芽ちゃんを泣かせたこと。結芽ちゃんのキャラがブレまくってます。

Q.鈴の音とはなんぞや?

A.新君は右手首に常に10個の色違いの小さい鈴を巻き付けてます。

Q.全体的に雑じゃねーか!いい加減にしろ!

A.凡人の力量不足でございます。本当に申し訳ありません……
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