次こそはと約束した。
これは、その2人の為の物語。
本筋から外れた、御伽噺の続き。
新と話し合った後、普段と変わらず仕事を終え、自室にて就寝したはずなのに、目が覚めると明らかに雰囲気が違う。
故に、皐月夜見はすぐに理解した。
(夢ですね)
彼女たち親衛隊が折神家において当てられた部屋は広い洋室。
親衛隊含む折神家の重役達は基本、そんな部屋で寝泊まりする。
荒魂は休むことがなく、それ故に何時出撃要請が出てもいいように本部の近くにいる必要があるからである。
夜見が目覚めた場所は、和室だった。これまた広い屋敷の一室と思われる。
しかし、この屋敷に来るのは今まで何度もあったこと。
早速起き上がり、この屋敷の主人達に会うことにした。
(……今日は誰が居るのでしょう)
屋敷の縁側を歩く夜見。月がよく見える。
(……この様な世界でも、月は見えるものなのですね)
昔に会った青年が思い浮かぶ。彼は月が好きだったと思う。太陽になれないなら、せめて月として夜を照らしたいとも言っていた。
(あの人は居るのでしょうか。……是非、新さんにも会って欲しいですね)
「夜見」
ふと、誰かに呼ばれた。辺りを見回すと、庭に1人の少女が。
蝶の髪飾りで髪をサイドテールに纏めている、藤色の瞳の少女。
「栗花落さん」
栗花落カナヲがそこにいた。
縁側に腰掛ける2人。お互い何も言わず月を眺める。夜見とカナヲが会った時は決まってそうするのだ。
「……お話しできてよかったね」
唐突に話しかけるカナヲ。これもいつも通りだ。
「……はい」
「ずっと……言いたかったって、言ってたもんね」
「……そうですね。本当によかったです」
「……今日は姉さん達もアオイもいないけど、皆、おめでとうって言ってた」
「……ありがとう、ございます」
皆から祝福されていることを知り、目頭が熱くなる夜見。
……こうした夢に近い時間の中だけとはいえ、家族のように接してくれていた、恩人達。その1人からのこの言葉だ。つい泣いてしまうのも無理からぬ話だろう。
「……ふふっ」
「……?」
「あ、ごめんね。ちょっと昔のことを思い出して」
「昔、と言いますと?」
「……夜見が初めてここに来た時の話。あの時の夜見って、私に似てたなぁって」
「……その話は何度も聞きましたね。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「いいの、カナエ姉さんもしのぶ姉さんも、アオイも私も……きっと、巌勝さんも。迷惑だなんて思ってないよ」
「……その、本当に、ありがとうございます」
「どういたしまして。……でも、夜見って昔の私みたいに、何も感じない、なんてことは無かったよね」
「……新さんのおかげでしょうね」
「……うん。多分、新がいてくれたから、夜見は大丈夫だったんだね。……私も、炭治郎に会ってから変わったって、皆に言われたから。同じ事なのかな」
「炭治郎……確か、栗花落さんの旦那様になった人ですよね?」
「うん。凄く……なんだろ、太陽みたいに暖かかったんだ……あ、だからなのかな?」
納得いったように笑みをより深くするカナヲ。その真意が見えない夜見は首を傾げる。
「新と炭治郎って、凄くそっくりなんだ。細かく見ると違うけど、多分根っこは一緒だと思う」
「……そうですね。新さんは、昔から太陽のような人でした。どれだけ辛くても、あの人が笑ってくれると、全部忘れられるような気がしたんです。勿論、今も」
「……話してるだけで元気を貰えるもんね。本当に凄いよ」
「ええ、本当に」
そう言って微笑む2人が思い浮かべる顔は言うまでもなく。
その後は、淡々と惚気とも取れるような会話が続いた。
「夜見ちゃんってさあ」
「急になんだ張り倒すぞ善逸」
「え、俺への当たり強すぎない? 泣いちゃうよ?」
「………………冗談だ」
「今の間何!? すっごい怖いんだけど!! いや、え、あ、そういう事!? ごめんねうるさくて!?」
「黙れ」
「はい……」
一方、竈門家にやってきた新もまた、夢の中にて友と話をしていた。
雷に打たれてから黄色くなったという髪が特徴的な少年、我妻善逸。
炭治郎と仲の良い彼もまた、時々炭治郎の家にいる。
なんでも、色々あった後、身寄りが無かった善逸が炭治郎のすすめでもう1人と共に転がり込み、しばらく過ごしたことでここに縁ができたという。
ちなみに、新が善逸に対して辛辣なのは、反応が面白いからである。
「……んで、何だっけ? 夜見がどうした?」
「ん? いや、夜見ちゃんってカナヲちゃんに似てるんだよねって話」
「カナヲ……ああ、炭治郎の嫁さんになったって子?」
「そうそう、その子。なんて言うかさ、音がそっくり」
「……相当なトラウマ持ちだなそれなら。何があったとかは聞く気もないがな」
「カナヲちゃんに関しては俺も細かくは知らないんだよね。炭治郎なら全部知ってるかもだけど」
「その炭治郎はお出かけ中、と。お前ら忙しねぇな?」
「あんまり何も無いから、暇になるんだよ」
「……だろうな」
2人してため息をつく。
しばらくして、善逸が話しだす。
「まあ、さっきも言ったけど、よかったな新」
「ありがとう……腹割って話すのってキッツイのな。炭治郎のコミュ力が羨ましいわ」
「あ〜、わかる、わかるよ。でもアレ炭治郎にしか出来ない芸当だよな」
「良くも悪くも馬鹿正直、表裏無しに、思ったことを包み隠さず言う誠実さ。禰豆子もそうだし、竈門家って何なんだ?」
「しばらく一緒にここに住んでたけど、ついぞわからずじまいだった」
「うーん、謎」
「……新も似たようなもんだと思うけどな」
「俺が? 無い無い、俺隠し事ばっかよ」
「ああ、いや、そうじゃなくて。なんて言うかさ、こう、分け隔て無く皆と接するっていうところ?」
「……」
「そしてその上で皆を元気にするっていうか……何だろ、ごめん、上手く言えない」
「…………あの塵共とは違うからな。俺は」
「……」
「いや、しかしそうか、似ているか、俺と炭治郎」
「えっ、あ、うん」
「……あの聖人と俺を一緒にしないでくれ。何かむず痒い」
「うーん、でも事実だしなあ」
会話が途切れ、新が耐えきれなくなったように立ち上がる。
「あ〜、ダメだダメだ。悪ぃ善逸、もういい時間だし帰るわ」
「……え、早くない? 日は昇りかけてるけど」
「いや、いつもこんぐらいの時間に起きてるぞ俺」
「健康的すぎない?」
「ヒシン神楽の練習を日課にしてるからな」
「……ああ、なるほど」
「んじゃな善逸。皆にもよろしく言っといてくれ」
「わかった、それじゃ」
善逸の言葉を聞き届け、即座に駆ける新。午前5時頃、夜明けは近い。
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蝶屋敷にて。
夜見を見送り、縁側に一人残ったカナヲは、その背中を思い出して呟く。
「……鬼の居ない世界で、
竈門家にて。
善逸は一人、ぼんやりと、かつて鬼狩りだった頃の記憶を、最終決戦の時を思い出す。
毛先の黒い白髪の少女が泣いている。
その腕の中には、緋色の髪をした血だらけの少年が、穏やかに微笑み、その手を少女の頬に添えている。
「……はぁ、やっぱり、本っっっ当に変わんないな……
それは、本来は無かった鬼退治の話。
その命を賭して未来を守った少年と、寄り添い続けた少女の話。
書きたいことが山ほどあるけど、やるべき事も山ほどあって雁字搦めな凡人の作品です。
(かなり前に)活動報告更新したので、よろしければ見てやってください。
今後の執筆活動についても書いてあるので。
……善逸とカナヲの口調おかしくないよね……?