他もゆっくり投稿していくので、よろしくお願いします。
以上、忙殺されそうな凡人からでした。
「……あぁー」
「……その、大丈夫、ですの?」
「これが大丈夫に見えんなら目ぇ腐ってるぜお嬢。眼科行くことをおすすめする」
「新がここまで疲れているのを見るのは初めてかもしれないな」
「全国飛び回るより辛いね。ああ辛いとも……はぁ〜」
折神家、親衛隊専用休憩スペースにて。
新は、ぐったりとしていた。
それはもうぐったりしている。かの卵を模したぐったりキャラクターもびっくりのぐったり具合だ。
何故こうなったのか、それを説明するには、刀使の事情についても語らねばならない。
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刀使というのは、これまでも説明してきた通り、荒魂を祓う役目をもつ巫女、要は少女達。
荒魂を倒すため、うら若き乙女達は日夜頑張っているわけである。
ところが近年、少子化につれて刀使となりうる者がかなり少なくなってきている。
そもそもが、荒魂と戦うという危険な仕事。我が子をそんな戦場に出したくないという親御さんも多い。
というか実際、シャレにならない被害が何度も出ている。後に残る程の大怪我をした者もいる。
それらの理由も合わさり、徐々に刀使の絶対数は減っているのだ。
しかし、相手は災害とも呼べるもの。人間の都合に合わせてくれる相手ではない。
抑える者がいなけりゃ被害は増えるばかりである。
こりゃいかんということで、刀剣類管理局は常々刀使を増やそうと頑張っている。
そして、新がやってきて約数ヶ月経ったこの日。
夏も過ぎ、木の葉が色付いてきた頃。
親衛隊に与えられた任務は雑誌の取材に応じることだった。
刀使への取材を通して憧れやなりたいという希望を持ってもらおうという刀剣類管理局の思惑と、話題に事欠かぬ刀使を取材したいという出版社の思惑が上手く合致した結果、こういう事がよくあるようになった。
親衛隊以外にも各五箇伝の代表とも言える刀使はよく取材されていたりする。
が、親衛隊の宣伝効果は飛び抜けて凄まじいものがある。
第二席の此花寿々花。彼女の気品溢れる立ち振る舞いに憧れを持つ者がいる。
第三席の皐月夜見。彼女のミステリアスな雰囲気に惹かれる者がいる。
第四席の燕結芽。彼女の強さと元気な笑顔のギャップが可愛いという者がいる。
そして何より、第一席の獅童真希。彼女の紳士的な言動は、男女問わず心を鷲掴みにしてしまう。
新が真希の事を「姉御」と呼ぶのはこのためである。曰く、
「ヘタなイケメンよりイケメンしてるよな、あの人」
との事。
……紫は、この自分の義理の息子に目を付けた。
第五席の折神新。この少年、正統派のイケメンである。非常に整った顔立ちをしている上、170に届く背丈があり、その身体は無駄なく鍛えられているのだ。
前に通っていた中学校にて、バレンタインの日に本命と思しきチョコをかなりの数貰っていた、というか実際何度か告白されたという実績もある。
この事を知った夜見がしばらく不機嫌になり、新が困惑したのは別の話である。
ともかく、彼がいればかなりの効果が見込めるのでは無いかと思ったのだ。
出版社側としても、新を取材できるのは願ってもない事である。
新は、紫の采配で突然親衛隊入りした謎多き少年として、刀使のみならず一般の人々の間でも噂になっている。
“謎多き”というのも、彼が素性を明らかにしていないのが原因となる訳だが。
新は五感や第六感を活かした探知能力を買われ、機動部隊の指揮権は無いが、代わりに荒魂討伐における単独行動を許されている。
つまり、彼と任務にあたる人間はいないのだ。いて結芽や夜見ぐらいである。
それに加え、彼の仕事の速さ、出撃時には狐の面を着けていることから、それらしき人物を見かける事もないし、素顔も分からない。
その代わり、緋色の髪、狐の面、青い彼岸花と太陽をあしらった羽織、右腕の鈴に赫い刀という特徴はよく知られており、その扱いはもはや都市伝説に近い。
そんな少年の素性を1番最初に取材することができるこの機会を逃すわけがない。
そうして、
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「想像はできてた。わかってた。けど、あそこまでマシンガンで聞いてくること無くない? 元から人と話すのは苦手な部類なんだよ俺は」
「お疲れ様でした」
「全くだぜ。姉御1人でいいだろうが、こういうのは。実質リーダーなんだしよ」
長々と話したが要するに、新のぐったりは単なる取材疲れである。
今は夜見の膝枕で英気を養っている。
……夜見の膝枕である。
この2人、例の1件以降距離感がやたら近いのだ。
話し合った次の日から一気に近くなり、肩を寄せ合って眠る姿や、新の胡座の中に夜見が収まっている姿がよく目撃されている。
その姿はまるで恋人……を通り越して、最早夫婦であり、間接的に原因を作った結芽ですら、この変わりように開いた口が塞がらなかった。
余談だが、この2人は付き合っていない。寿々花がそれとなく聞いたところ、口を揃えて否定していた。
何度か真希や寿々花、果てには森元さんが苦言を呈したり鎌府女学院の学長が嫌味を言ったりしていたが、まるで変化がない。
紫はこころなしか嬉しそうである。
ただ、2人とも業務に支障がなく、何なら効率が上がったので、放置状態となっている。諦めたとも言う。
まあなんにせよ、2人が揃えば(特に夜見が)人が変わったようにイチャつくということだ。
「でも、新おにーさんの事大分分かってきたと思ったけど、そんなこと無かったね」
「……確かに。炊事が得意っていうのは知っていたけどね」
「時々食堂で料理を作っていますものね。その日は決まって和食ですし、何より凄く美味しいですわ」
結夢の言葉に同意する真希と寿々花。
新の料理上手は炭治郎にコツを教わったからだったりする。
「逆に和食以外は作れん。カレー作ろうとすると何故か肉じゃがになるし……」
「何かの呪いじゃありませんの? それは」
「他もかなり……なんだろうか、日本人的、というか……」
「趣味は篠笛、独楽に囲碁、将棋。独楽は毎日持ち歩いてる……どんだけ独楽が好きなのさ」
「独楽の上に独楽乗せられる程度には上手いつもりだ」
「篠笛は……時々聴こえますわね。裏山の方から」
「あれ新だったのか。最近天狗でも住み着いたのかって噂なってたんだ」
「毎朝ヒシン神楽を舞っているからな。ついでに吹いてる」
「将棋は紫様の影響で始めたのですか?」
「おお。時々対局してたよ。囲碁はついでにやってみたら存外面白くて、今でも続けてるよ」
「新おにーさんって遊ぶの好きだよね? 部屋に結構遊び道具あるもん」
「そりゃ好きだとも。独楽とか以外にも双六、花札、その他諸々な。チビん時に鱗滝って人に教えて貰ってた……元気かね、あの爺様」
ぼんやりと思いを馳せる新。少々変わっていたが、とても人の良い老人だったと覚えている。同い歳のお孫さんと、その妹とよく遊んでいたとも。
頭を撫でていた夜見が、思い出した様に口を開いた。
「……都市伝説になっているというのは、流石に笑ってしまいそうでした」
「フフ、ああ、僕らは本人を知っているだけに尚更だ」
「……狐の面、外そうかな……あ〜、でもなぁ」
「お気に入りのやつだったりするの?」
「さっきの鱗滝さん、何か厳しい天狗の面を着けててな……あっ、カッコイイな、俺も欲しいなって思って、教わりながら彫ったんだ」
「随分と慕っていらしたのですね?」
「まぁな。紫は昔からああだし、朱音も忙しいしってな感じだったからな。よく遊び相手になって貰ってたんだ。……最初見た時、不思議とこの人には逆らえないな、って思ったんだよな」
「へぇ〜」
新の昔話に場の空気が和んだ。人の楽しい思い出を聞くのも、また楽しい事である。
「ところで、皆この後の予定どうなってんだっけ?」
「僕と寿々花は荒魂の調査があるね」
「私は研究のお手伝い!」
「新さんも私も、紫様の補佐を」
「だな。んじゃあ残った仕事も頑張りますかっと。あ、膝ありがとな夜見」
「いえいえ、これくらいなら何時でも」
「それでは、私達も行きますわね。結芽、ご迷惑をおかけしないように」
「もー! 寿々花おねーさんいっつも子供扱いしてくるじゃん! やめてよね!」
「いやいや、結芽僕らにとってはまだ子供だよ」
「あ、ひどーい! 自分達もまだ子供じゃん! 新おにーさんも何か言ってよ!」
「ハッ、子供扱いに怒ってる内はまだ子供だよ。違ぇってんならしっかり手伝ってこい」
「おにーさんまで……いいもん、お仕事頑張って見返すもん!」
子供扱いに怒り、新に煽られて走り去って行く結芽。
その背中を微笑ましく見守り、残った4人も気合いを入れ直す。
こうして彼等の日常は過ぎていくのだ。
日輪コソコソ噂話
新君は告白された時、皆に
「忘れられない子がいるんだ」
って答えていたよ。誰の事だろうね。
新君の容姿は、髪を下ろした炭治郎に義勇さん成分が入っている感じでイメージしています。