色々端折っていますがご了承ください。
色々あった。
それはもう大変だった。
アイツを避難させて1週間程は、俺ものんびり暮らしてた。
「おじゃましま〜す、死ね!!」
野生動物(冬眠してる熊とか)を仕留めて食わせてもらったり、
「なんだこれ、美味そう」
適当な木の実を見つけて食ったり(草とか葉っぱとかも食ったけど腹を下したからしばらくやめた)、
(こんなもんを一晩ぶっ通しでやれってか! キッツ!)
頭に流れ込んでくる踊りを練習したり、まあ色々やった。
そこまでは良かった。俺の暮らしが変わったのは人型の荒魂を殺った後だ。
その日、俺は刀があったとこに埋まってた本を頑張って読もうとしていた。当時は字が読めず、悪戦苦闘とかもできずうんうん唸ってただけだったが。
3周目に入ろうとした時、前に村を襲ったやつと同じ気配を感じた。
こっち来るなよとか思うも虚しく、即座に刀で突いてきやがった。
刀を逆手に持って受け流すと、そいつは俺から距離をとって話しかけてきた。
「素晴らしい。殺すつもりで突いたが、まさか受け流されるとは。今までのやつらよりは楽しめそうだな」
「うっせー、こちとら読めん紙を読もうとしてんだ邪魔すんな」
「読めぬのならば読む意味があるまい。それより俺に付き合え、俺の糧となれ」
「せめて聞く耳持てやクソッタレが!!」
悪態をつく俺を無視し、急接近して今度は上段に斬りかかってくる仮称田中。
話を聞きそうにないのでとりあえずバラバラにすることにした俺は、呼吸を変え、心を無に落とした。
雑音が消え、自分の気配が透き通り、血が、筋肉が、感じ取れる。
時間の流れが遅くなり、全てが透けて見えてくる。まあ、田中の中身は妙にドロドロした何かしかなかったが。
そこまで来たら後は殺すだけだ。
雷の様に速く、水の様に流れ、風の様に暴れ、炎の様に強く、岩の様に頑強に、花の様にたおやかに、獣の様に食らいつき、そして死神の様に静かに。
途中から気配が増えたり、何か田中が喚いてきたが、煩わしいのでその隙にとっとと切り捨てた。
一息ついて、気配が全く離れないことに気づく。
妙だ。コイツらと同じ気配がする。のに、人間臭い。
声をかけたら跳んできた。跳躍力すげぇなとか思ったわ。
まあ、それが折神紫との出会いだった。
そこからはお互いに質問だった。よくもまあそんな事が出来たものだと、自分でも思う。気配が田中に似てたからか? 人間は嫌いだったはずだが。今もまあそうではある。
その質問が終わった後、いきなり家に来いとか言ってきた。流石に頭おかしいと思った。何言ってんだろコイツと。
ふざけてるのかバカなのか。どっちもだったんだろう。結果的には助かったが。
「んで、結局連れてこられた訳だが」
「文句は言わないでくれ。君のような子供を一人で置いておく訳には行かないんだ」
「いや、文句っつーか……家だよな? これ。長老の家よかでけーぞ?」
もう色々面倒だったので無抵抗になった俺が連れてこられたのは、クソでかい屋敷だった。いや、でかいってか広い。そりゃ山よりは狭いがアレと比べるのは違うだろうと、小さい頃でもわかった。
家に入って座らせられる。使用人が全てわかっているように動いていたが、もう皆俺が来ることを知っていたらしい。今更ながら、紫の手際が良かったのだろう。
「さて、男の子用の服なぞないが、どうしたものか……」
「俺これでいいんだけど」
俺の当時の服装はモコモコしたジャンパーとズボン。もうこれだけで良かった。今までの服よかはマシだからな。後、刀と本は持ってきた。
「それ以外にも着るものがあった方がいい。一日中それでは服が臭くなるからな」
「それは勘弁だ。また服屋に連れてってくれよ」
「そうしたいが、いい加減職務に戻らないといけないんだ」
「終わってからでいい。俺はどうせやることないんだろ?」
「ああ。色々な手続きが終わるまではこの家で大人しくしておいてくれ」
そっから俺の怠惰な生活が1年ほど続いた。家事の手伝いぐらいはしたが。後は紫に付き合って試合したこともあったな。
戦績? 一本も取れなかったわチクショウ。月日が経つにつれて一本も取られないように立ち回れるようにはなったがな。
まあ、そんなある日。
「学校行くか?」
「行く」
即決で小学校に通うことになった。保護者は紫だ。いつの間にやりやがったアイツとか思った。なんせ、紫が俺の母になったんだからな。
戸籍がない俺を息子として引き取ったことを知ったのは小学校卒業頃だった。なぜもっと早く気づかなかったのか。
知った時に「俺お前の息子だったのか!?」と本気でビビった。
そして、中学からは学校の関係で少し遠くに住むことになり、それ以来あの家には帰ってない。
……正直、紫から徐々に人間の匂いが薄くなってきていて、そろそろヤバイかなって頃だったってのがある。
まあ、仕送りなんかはしてくれてたし、連絡はしていたから、特に仲が悪くなったとかではない……はず。
小学、中学と過ごしてきたが、人間は千差万別だと知った。
村のヤツらと根っこが同じやつもいれば、善性に偏ったヤツもいた。
いいヤツがいるのはわかった。しかし、それでも……
──アイツにゃ敵わんな
アイツは……なんだろうか。透明だった。どこまでも透き通っていて、純粋だった。長いこと一緒にいてわかった。
羨ましかった。それと同時に、可愛そうで仕方なかった。クソどもにいたぶられ続け、自分を閉ざしたアイツが……
いや、何を上から目線に語ってんだ。
何にせよ、アイツが心を開いてくれることを祈るばかりだ。世界は綺麗だと気づいてくれることを願うばかりだ。
現在、中学三年生の俺。今まで特に友達を作らず(いるっちゃいるが少ない)、それでもクラスで浮くことがないという位置をキープしている部活無所属の少年となっている。
──な〜んか、嫌な予感がするんだよなぁ。不思議
そして今は休日。集合住宅でボーッとしている俺の第六感が危険を教えてくれている。
なんなんだろうかこの予感。俺何かしたっけ? 何もしてないよな?
最近ひったくりを見つけたんで手刀で気絶させて警察に突き出した程度だ。
……あれ、それじゃね? いやないな。あれはいい事の部類のはずだ。確かに人を殴ったことに変わりはないが、いい事のはずだ。
それなのに嫌な予感がするのはおかしい。
などと考えを巡らせていると、携帯がなった。紫からだ。即座に電話に出る。
「あい、もしもし?」
『新。今何をしている?』
「別に何も? 学校休みだから家に引きこもってるが」
『そうか。時間はありそうだな、少しいいか』
「スゲー嫌な予感するけどいいぜ」
『ありがとう。では、私が最近、実力のある刀使を集めて折神家親衛隊を組織し始めていることは知っているか?』
「ああ、時々話題に出るな。それが?」
『単刀直入に言おう。お前も入れ』
「断る」
即時対応は大事。親衛隊の話をし始めた時点で怪しいと思ってたんだよ!
「何が悲しくて刀使の中に入らにゃならんのだ」
『実力のある刀使を、と言っただろう。お前、私と何度か試合して互角じゃないか』
「今もそうとは限らんだろ! 確かに神楽は続けてっけどさぁ!?そもそも俺刀使でもねえし!」
『実力があれば問題ない。まあまずは帰ってこい。そこで今の実力を見る』
「……はぁ、わーったよ。アンタと試合すりゃいいんだな?」
『先に言うが手を抜くなよ? そんな事をしたら……わかるな?』
「怖ぇよヤメロ!」
お見通しらしい。くそぅ。
まあ、いくらなんでもそんなに戦えるはずもない。きっと大丈夫だ。……大丈夫だよな?
主人公の名前→折神新
新たな人生を歩みたいという彼自身の希望による名前。
戸籍上、折神紫の息子である。
赤い目に白みがかった緋色の髪を持つ。
若干五歳にて透き通る世界に入門したかなりの化け物。
紫と出会った頃には使いこなしている。
そんな新が親衛隊になるまで、後三週間。