日輪の子は夜と踊る   作:凡人EX

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日輪の子は訪れる・後

「本当にごめんなさい!!」

 

「……ごめんなさい」

 

「お、おぉ」

 

 寿々花は今、めちゃくちゃ謝っている。

 

 なぜこうなったか、というのは簡単だ。自分が行った場所の荒魂を退治し、一度真希と夜見と合流。真希と夜見は後始末を、寿々花は電話に出ない結芽を探しに来た。

 

 そこで見つけたのが鍔迫り合いしている少年と結芽だった。それは即ち、一般人に刀使が襲いかかっているという構図になる。

 

 だから特大の雷を落とし、今は体が折れ曲がらないか心配になるほどに頭を下げているのだ。こっぴどく叱られた結芽も不服そうだが謝っている。

 

「(親子かコイツら)まあ、怪我はないし別にいい」

 

「本当にごめんなさい、まさか一般人を襲うなんて」

 

「……寿々花おねーさん」

 

「はい?」

 

「この人一般人じゃないと思うよ? だって荒魂倒してたもん」

 

「失礼な、一般人だぞ俺は……多分」

 

「……はい?」

 

 思わず高い声が出た寿々花だが、一瞬の思考の末に一つ、違和感に気づいた。

 

「……なぜ御刀を?」

 

「今気づいたのか?」

 

 一般人が刀を持っているはずがないのに、目の前の男はなぜ持っているのか。というか、普通に犯罪である。

 

「んな事言われてもな……」

 

「ねぇ、それ御刀なの?」

 

「ぶっちゃけ俺にもわからん。“日輪刀”と呼ばれてたって事しかわからん」

 

「ん〜、でもこの人凄く強いんだよ! ここにいた荒魂を全部倒しちゃったんだもん!」

 

「……ということは、貴方がこの惨状を?」

 

 寿々花の言う惨状とは、ノロが道路のあちこちに溜まり、道路や建物にいくつかのクレーターがある状態のことである。

 

「それに関しては是だ。まあ、荒魂を倒せる一般人だっているだろ多分。俺はその一人ってだけだよ」

 

「そんな一般人がいてたまるものですか」

 

「あんな炎とか水とか出すなんて、刀使でもできないよ!」

 

「炎? 水? 何の話ですの?」

 

「この人が刀を振る度に何か水がドバーってなったり風がビューってなったり火柱がゴォーってなったりしてたの!」

 

「……はぁ」

 

「そんな助けを求める様な目で俺を見るな。ただの幻覚だ……てか、俺もう行っていいか?」

 

「ダメ! 私と勝負して!!」

 

「嫌だね、誰が好き好んで命懸けで戦うってんだ」

 

「いえ、あなたにはそれ以上に聞きたいことが……」

 

「後で聞くから。いい加減行かねーと集合に遅れるから行く。そういう事にしとく。じゃあな」

 

 そう言った次の瞬間。少年の姿が忽然と消えた。比喩誇張なく本当にいなくなった。気配すらも消えたのだ。結芽も同じく、彼を見失ったらしい。

 

「えっ? 寿々花おねーさん、おにーさん消えちゃったよ!?」

 

「……とりあえず、ノロの回収をしませんと」

 

 

 

「そんなことがあったのか……いや、にわかには信じ難いな」

 

 数分後、真希、夜見と合流した寿々花、結芽。先程起こった事を説明すると、やはりというか、真希も非常に困惑した。

 

「……目の前で消えた、というのでしたら、幽霊か何か、だったのかもしれませんね」

 

「ちょっと、怖いこと言わないでください!」

 

「それはないと思うけどね~。だっておにーさんちゃんと生きてる感じしてたもん」

 

「だとしたら随分活き活きした幽霊だったんだろうね」

 

「もう、真希おねーさんまで怖いこと言わないでっ!!」

 

「と、とにかく早く戻りましょう? 新しいこの歓迎会を開きませんと」

 

「そうだね、後はノロを回収するだけだし、早く戻ろう」

 

 四人は折神家に帰る。ただ、夜見には一つ気になることが。

 

(……荒魂を祓える少年に、緋色の髪。……まさか)

 

 

 折神家に到着した四人。先程会議から帰ってきた紫に呼ばれ、局長室にいる。

 

 夜見が淹れた紅茶を飲みながら、新しい親衛隊のメンバーを待っている。

 

「……紫様、そろそろ約束の時間ですよね?」

 

「……うむ、遅いな。彼奴は約束の十分前には集合場所に来るようなやつだが」

 

「……? 紫様は、新しい人とは個人的な繋がりが?」

 

「ん? ああ、繋がりというか、息子だ」

 

 紫のその一言に、局長室は一度静まり返った。

 

 数分置いて、親衛隊の驚愕の声が折神家中に響いた。

 

「どっ、どど、どういうことですの!?」

 

「紫様に……息子? あれ? 息子ってことは……」

 

「待って紫様!! 新しく来る人って男の人なの!?」

 

「おや、言っていなかったか?」

 

「絶対誰も聞いてないよ!!」

 

 それはそれは驚いている親衛隊。

 

 真希はショックが大きかったのか、考え込んでしまっていて、寿々花は挙動不審に陥っている。

 夜見は目を見開いてフリーズ、結芽もかなりパニックを起こしてしまっている。

 

 紫は、自分に義理の息子がいることを隠していたわけではない。聞かれなかったから答えなかった、というだけなのだ。

 

 つまり、この情報を折神家の関係者で知ったのは、森元さん以外では彼女達が初めてなのだ。

 

 紫の親族……特に妹の朱音は勿論知っているが。というか、紫が不在の時、よく新の遊び相手になっていたのが朱音だったりする。

 

「勿論血が繋がっている訳では無い。色々込み入った事情があって預かることにしたんだ」

 

「……なるほど」

 

 現実に戻ってきた真希はかろうじてそう返す。それとほぼ同時に扉をノックする音が。

 

「来たようだな。入れ」

 

『失礼します』

 

 その声に反応する寿々花と結芽……そして夜見。扉が開けられる。

 

「新しく折神家親衛隊に入ることになりました、折神新です。色々文句はあるでしょうが、これからよろしくお願いいします」

 

 かなり粗暴な態度で挨拶する少年。そして、寿々花と結芽の方を見て、

 

「な? 後で聞くっつったろ?」

 

 悪戯が成功した子供の様な、屈託の無い笑みを浮かべた。




遂にやってきた新君。
夜見さんの、そして新君の心境やいかに。
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