太一のアドベンチャー   作:はないちもんめ

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書き途中の奴一杯あるのに書いちゃったよ…全部、LAST EVOLUTION 絆が良すぎたのが悪い


0 違和感

声が聞こえる。

 

そんな感覚を太一が最初に感じたのがどれくらい前だったのか本人すら忘れたが、少なくとも一月は経っているだろう。

 

最初はふとした瞬間に起こり、間隔もある程度はあったので、気のせいかと済ますこともできたのだが、最近は頻度が上がっており流石に気のせいで済ます訳にはいかなくなってきた。加えて、見られているような視線まで加わってきたのだから尚更だ。

 

そんな現状に太一はため息を吐く。全く授業に集中できない。これで自分の成績が落ちたら、どうしてくれるのだと一人頭の中で呟いていたが、お前最初からあんまり授業聞いてないだろというツッコミは言ってはいけないのだろう。

 

(姿や目的が分かればある程度対処する方針も立てられるんだが…両方分からねぇんだよなぁ…)

 

太一はがっくしと項垂れる。流石に声や視線だけ感じるという程度では方針など立てられるはずがない。ヤマトのようにファンクラブとかあるのなら、熱狂的なファンという可能性も僅かに存在するが太一にそんな熱狂的なファンなど存在しない。強いて言えば妹、ゴホン、ゴホン。兄弟愛って良いよね。

 

光子郎とかに相談しようとも思ったのだが、何を相談すれば良いのかすら分からない。と言うか、仮にこれが人なら相談するのは仲間ではなく警察だ。まあ、多分違うとは思うが。

 

しかも一番妙なのは、ここまで自分に接近している癖に悪意などが全く感じられない所だ。視線に関しても同様である。つまり、悪意などはないのだが自分の前に姿を見せることが出来ず、かと言って自分に気付いて欲しいことがあると言うことだ。何という面倒くささだろうか。

 

(あーーー!うっとうしい!俺に何の用があるんだよ!!!)

 

授業が終わったにも関わらず、太一は席から離れずに頭を思いっきり掻き回す。元々、考えるより先に行動するタイプなので考えるのは得意ではないのだ。まあ、最近は少しはマシになったが。

 

そんな感じで自分の考えに没頭していた太一は側に近づくオレンジ髪の少女に気が付かずに肩を叩かれることで漸く話しかけられていることを知った。

 

「ちょっと太一!聞いてるの?」

 

「おわ!って何だ空か…って何を?」

 

「やっぱり聞いてないんじゃない」

 

空は太一の答えにため息を吐く。全くこの幼馴染みときたら困ったものだ。

 

「進路希望調査の紙出したのかって聞いたの。まあ、あんたのことだからスポーツ推薦で行けるんでしょうけど忘れずにちゃんと出しなさいよ」

 

「あ、ああ。そうだな。分かった」

 

「それで?」

 

「それでって?」

 

「あんたは私に言うことないの?」

 

「は?何で?」

 

本当に太一からしたら、空に言うことはなかった。むしろ、何故そんな質問をしたのかと言う質問をしたいくらいである。

 

「…そう。分かった。じゃあね」

 

「おー、じゃあな」

 

え?お前それだけ言いに来たの?と太一は聞こうかと思ったのだが寸前で止めにした。この幼馴染みなら、それだけのために話しかけることなど日常茶飯事だからだ。空の日頃の苦労が忍ばれる。

 

そんな思考を追いやって再び太一は思考モードに没頭する。そんな太一を後ろからチラリと見ながら携帯を手にした空は誰かへとメールを打った。

 

『ヒカリちゃんの感覚の通りだと思う』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後のサッカーも終わった太一は口を大きく空けて欠伸をする。最近は色々と気になることが多くて少しだけ寝不足だ。しかも、幾ら考えても全く正解に辿り着く気がしないのが困った所だ。とは言っても、これは太一の問題ではない。元から解決を導き出すために必要なピースが全く足りていないのだ。この状況で解決策を導き出せと言う方が無理と言うものである。

 

(面倒なことにならなきゃ良いんだけどな)

 

そうなることを心底太一は願う。ヴァンデモンの事件が終わったばかりだというのに、また新たな事件が起きるなど真っ平だ。何処かの少年探偵じゃあるまいし。

 

「やっと来たか。遅ぇんだよ」

 

「ん?」

 

突然の聞き覚えのあり過ぎる声で現実へと戻った太一は声と同様に見覚えのあり過ぎる3人の顔に対して悪態をつく。

 

「誰が遅ぇんだよ。元々約束なんてしてねぇだろうがヤマト」

 

「部活はとっくに終わってるはずだろ」

 

ヤマトの言うように太一の部活自体はとっくに終わっている。だが、ボンヤリと考え事をしながら準備をしていたので帰るのが遅くなってしまったのだ。

 

なのでヤマトの言葉は的を得ていた。しかし、何となくそれを言いたくなかった太一は誤魔化すように頭を掻いた。

 

「俺にも色々あんだよ。部活が終わったからって直ぐに帰るとは限らねぇだろ」

 

「お前に学校で部活以外の用事なんてないだろ」

 

「あるだろ!例えば…ホラ…宿題とか」

 

「空の答え写してるだけだろ」

 

「うっせぇ!何なんだよ!イヤミでも言いに来たのかよ!」

 

「はいはい、うるさい二人とも。話が進まないでしょ」

 

仲は良いはずなのだが、何故か喧嘩が絶えないこの二人の仲を取り持つのは基本的に空と決まっているので手慣れた様子で二人の間に割って入り、喧嘩の仲裁に入る。

 

黙って見ていた光子郎は、その気を逃さずサッと話を本題へと変えた。

 

「それで太一さん。何を隠しているんですか?」

 

「何で俺が何かを隠してる前提で話が進んでんだよ。別に何も俺は隠してなんて」

 

そこまで言って3人の顔を見ると、3人が3人ともジト目で太一を見ていた。

 

その顔を翻訳すると『そんな建前は良いから早く話せや』ということになる。そして、その翻訳を太一はポケトークもビックリのレベルで正しく受け取っていた。

 

はぁ、と太一はため息を吐く。

 

これはアレだ。絶対に無理なやつだ。ある程度話をしないと絶対に納得してくれないやつだ。

 

まあ、ある程度も何も太一が今分かってることなどほとんど無いに等しいのだが。

 

更に太一はため息を吐く。

 

そしてお手上げという風に手を上げた。

 

「わーったよ。言うよ。言うからその顔を止めてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分、続きます

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