太一のアドベンチャー   作:はないちもんめ

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珍しく早めに更新できましたわ


12 模索

「そうか…それは残念だったね」

 

あの戦いの後、デジタルワールドから人間界に戻されたヤマト達は、今起こった事をデジタルワールドに来られなかった望月と裕明に説明した。

 

「なあ、望月さん!もう一度、ハックモンと話をさせてくれよ!」

 

「それは難しい。基本的にこちらからアクションを取れないんだ」

 

「そんな…」

 

ヒカリの顔がサッと曇る。その事実に即座に気付いたテイルモンや空はフォローを入れているが、あまり効果があるようには見られない。

 

京もそんなヒカリを心配そうに見ていたが、顔を怒りの表情へと変えて大輔に詰め寄る。

 

「大体ねぇ!アンタが力づくとか言い出すから、戦闘することになったんでしょ!ちょっとは冷静に話し合いとかできないわけ!?」

 

「だ、だってよぉ」

 

「だっても何もない!」

 

そうなのだ。そもそも戦闘になった原因は大輔の不用意な一言が原因だ。流石にハックモンの反応も極端に過ぎたが、大輔があのような発言をしていなければ戦闘になることは無かっただろう。

 

「まあまあ、京君。その辺で。今はこれからどうするかを考えようよ」

 

京の気持ちは分かるが、ここで大輔を責めても何の解決にもならないと考えた丈はやんわりと嗜める。

 

「決まってるだろ。こっちからアクションを取れないなら探すしかない。もう一度デジタルワールドに行こう」

 

「落ち着け、ヤマト。俺には良くわからんがデジタルワールドってのは広いんだろう?闇雲に探して見つかるものなのか?」

 

「ヤマトさんのお父さんの言う通りです。闇雲に探しても時間を無駄にするだけです」

 

だが、どうすれば良いのか?そのための方法は誰にも浮かんで来ない。気まずい沈黙の中、思い出したようにテントモンは叫ぶ。

 

「そうや、コウシロウハン!ゲンナイハンから連絡は来てないんでっか?」

 

「ダメです、来てません。そもそもゲンナイさんもホメオスタシスの配下のような立場です。勝手に動くことは難しいのでしょう」

 

光二郎の言葉に一同の空気は更に悪くなる。他にどうしようもないのか?全員に焦る気持ちが湧き上がる中、テイルモンや空に心配されていたヒカリがボソッと呟く、

 

「チンロンモン…」

 

「え?」

 

「なんて言ったんだ?ヒカリ?」

 

「チンロンモンに聞いてみるって言うのはどうかな…?」

 

ヒカリの言葉にざわめきが広がる。チンロンモンはデジタルワールドを支える四聖獣だ。確かに、ホメオスタシスに対しても一定の発言権はあるように思われる。

 

「でも、チンロンモンだってホメオスタシス側でしょ?私たちに協力なんてしてくれるの?」

 

「確かに微妙ね。私たちに協力してくれる保証なんてないわ」

 

「しかし、他に打つ手もないんだ。探してみるのも良いんじゃないか?」

 

話し合う中で一同の中から希望のようなものが芽生えてくる。しかし、ここに関しても同じ壁が立ち塞がる。

 

「でも、チンロンモンも何処にいるんでしょうか?」

 

「結局、そこなのよね…」

 

どうしても話は振り出しに戻ってしまう。どちらの方法を取ろうとしても、どの道、場所が分からない。

 

子供達が頭を悩ませていると、それまで沈黙を守っていた姫川が淡々と告げる。

 

「分かったでしょ?今、出来ることなんて何もないわ。大人しく八神太一君のことを待ってた方が無難ね」

 

「仲間がパートナーだったデジモンを殺すまで待つなんて出来るわけないだろう!」

 

「出来ないことを理解するのが大人への第一歩よ。理解しなさい」

 

「何が大人よ!」

 

「ちょ、ちょっとミミ君、冷静に!」

 

「大人だったら、仲間を思い遣ったらいけないの!?大人だったら、世界のためにパートナーを殺さないといけないの!?」

 

ミミには全てが理不尽にしか映らなかった。どう考えても許容など出来るはずがない。少なくとも、ミミには到底無理だった。

 

「いけないことは無いわ。ただ、出来ないことは出来ないのよ」

 

「どうして、どうして、そんなこと言うのよ…姫川さんは…大切な何かを失ったことは無いんですか!?」

 

ミミの嗚咽の混じった言葉に、今まで詰まることなく返答していた姫川の言葉が止まる。何事かを思い出しているかのように目を閉じていたが、暫くすると、自嘲気味に笑った。

 

「そうかもね」

 

「姫川…さん?」

 

姫川の予想外の反応と雰囲気に泣くほど感情が昂っていたミミも少し冷静になる。

 

しかしその反応も一瞬のことであり、直ぐにいつも通りの澄ました表情を浮かべる。

 

「そんなことはどうでも良いわ。今、分かることは貴方達に出来ることはないってこと。志だけは認めるけど」

 

そこまで言うと、一呼吸置いて姫川は続ける。

 

「そんな志が貫けるほど…世界は優しくないんだから」

 

その言葉は姫川が自身に呟いているように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないね、話を脱線させた」

 

「いえ、こちらの方こそ…」

 

姫川は発言後、直ぐに用事を思い出したと言って部屋から出て行ったがそれに追いかけるように西島も部屋を出て行ったため、部屋には子供達と望月、裕明だけが残された。

 

「あの姫川という女性…どんな人なんですか?」

 

「突然、何だよ親父」

 

「いや、何となく気になってな。突き放しているように見えて突き放していないというか…言葉と態度がマッチしてない違和感がある」

 

「流石、記者さんですね」

 

記者の勘といでもいう奴なのか、姫川の態度に引っ掛かりを覚えた裕明からの質問に望月は苦笑する。

 

「その違和感を解決させたいなら、あの2人と会話されると良い。何か得るものがあるはずです」

 

「あ、いや、今はそんな時間はねぇんす!早くチンロンモンを探さねぇと!」

 

「だったら、尚のことあの2人と会話すると良い。少なくとも私と話しているよりは得るものがあるはずだ」

 

「何でです?望月さんの方が上司なんですよね?では、望月さんの方が事情については詳しいはずでは?」

 

「役職としてはね。ただ、デジタルワールドの知識自体で言えば、彼等の方が遥かに詳しいだろう。彼等は君たちと同じだからね」

 

そう言うと、望月は子供達を見る。とは言え、見られている子供達は何故見られているのか分からず首を傾げる。

 

「あの2人も君たち同様、選ばれし子供達なんだ」

 

衝撃の事実にヤマト達は驚きの余り、言葉を失う。最も早く言葉を告げられる状態になったヤマトが真っ先に疑問をぶつける。

 

「そんな馬鹿な。大人は選ばれし子供になれないはずだ」

 

「いえ、ヤマトさん。彼等が選ばれし子供達だとしたら僕たちと一緒にデジタルワールドに来れたことに説明がつきます。本当の話なのでしょう」

 

そもそも光四郎は、望月が来られないのに姫川達だけがデジタルワールドに来られた事実に疑問を持っていた。あの時はそんな事を問いただしている時間はなかったので聞くことはできなかったが、意外な展開から理由を知ることができた。

 

「恐らくですが、あの2人が選ばれし子供になったのは3年前…僕たちがアポカリモンと戦ったすぐ後なのでしょう。3年前でしたら、あの2人も子供と言える範疇にいると思います」

 

「残念ながらその推理は外れだ。彼等が選ばれし子供達になったのはそれ以前だ」

 

「そんなわけ無いだろう。そうだとすれば、ヒカリ達よりも前に選ばれし子供になったことになる。そんなこと…が…」

 

話している途中でテイルモンにある仮説が浮かんだ。

 

あり得ないとは思ったが、しかし、それを否定する材料など全く無い。むしろ、それ以外に望月の話を肯定できる余地が無い。

 

「まさか…あの2人は…」

 

「あの2人は石田ヤマト君達以前にデジタルワールドから選ばれた子供達…私達が補足している範囲ではという話にはなるが…」

 

望月は一瞬間を置くと落ち着いて続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まりの子供達。初代選ばれし子供達だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫ちゃん!」

 

「ここではその呼び方はしないでちょうだい」

 

「そんなことはどうだって良い!」

 

西島の呼び名に不快感を露わにした姫川の態度を気にするでもなく、西島は姫川の肩を掴んだ。

 

「何であんなこと言った!」

 

「本当のことでしょ?志が立派でも現実はそんなに優しくないわ」

 

「違う!そうじゃない!姫ちゃんは誰よりも…八神太一君の気持ちがわかるはずだ!なのに何故、あんなことを言った!」

 

西島は知っている。姫川が何よりも大切な存在を失っていることを。そのことを誰よりも悲しんでいることを。

 

「私の気持ちを貴方が決めないで!」

 

明確な拒絶を示すかのように、肩に置かれた西島の手を姫川は振り払う。

 

「見捨てても平然と生きていける。私の気持ちなんてそんなものなのよ」

 

「嘘をつくなよ!」

 

「うるさい!貴方に私の気持ちなんて…絶対に分からないわ!」

 

姫川の言葉に西島は返す言葉を失った。自分は失ってはいないから。その事実は絶対に覆らない。理解しようとしたところで理解など絶対にできない。それを西島は知っていた。

 

追いかける気力も、返す言葉も失った西島は去っていく姫川の背中を黙って見送った。見送るしか無かった。

 

「くそ…」

 

西島の悪態が誰もいない廊下で静かに響いていた。

 

 

 

 




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