太一のアドベンチャー   作:はないちもんめ

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映画を観て衝動で投稿


13 過去

「あの人たちが最初の…」

 

「選ばれし子供達…」

 

「嘘…」

 

子供達は予想だにしていなかった衝撃の展開に絶句する。

 

「じゃ、じゃあ、あの人たちのパートナーは!?一体何処に!?」

 

「さて…ね。それ以上のことは彼女達に聞くのが筋だろう。チンロンモン達に会いたいのであれば尚更、無駄にはならないはずだ」

 

「そうですか…もしかして望月さんも」

 

「生憎と私は違うよ。ただのしがない研究者さ」

 

何かの間違いでこんな所にいるがねと苦笑する望月を見て裕明は少し考えると、子供達に告げた。

 

「では、俺は望月さんに話があるから後はヤマト達で彼女らと話して来てくれ。後で合流しよう」

 

「親父は良いのかよ?」

 

「同じ選ばれし子供達同士でなければわからないこともあるだろう。俺は俺で確認したいことがあるしな」

 

「あ、ああ。分かった」

 

ヤマトはそう言うと即座に部屋を出ていく。他の子供達も後に続くように追いかけたことで部屋には裕明と望月だけが残された。

 

「さて…と。それで裕明さんが私に聞きたいこととは何でしょうか?」

 

「何故教えてくれたんでしょうか?」

 

「何故…とは?」

 

「姫川さん達のことですよ。何故そんな重要な情報を子供達に?話通りだとすれば、ホメオスタシス側の行動は貴方達にとっても都合が良いはずだ。それなのに、何故それを邪魔しうる可能性をわざわざ?」

 

「何故でしょうねぇ」

 

「望月さん」

 

「本当にわからないんですよ。確かに貴方の言う通りだ。先程の情報は国家として秘めておいた方が良い情報だ。まあ、合理的な理由としてあげるならあの子達の心情を良くしておいた方が後々良い結果を生みやすいというのもあるかもしれませんがね」

 

ただ建前無しであれば単純な理由だ。

 

「あんなに泣きそうな顔の子供達を…見ていられなかったのかもしれませんね」

 

一人の子を持つ親としての非合理的な感情である。

 

「なるほど…」

 

その言葉を聞いて裕明の表情も柔らかくなる。

 

「貴方は役人に向いていないようだ」

 

「自分でもそう思いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西島さん!」

 

「あ、ああ、君たちか。申し訳ないけど今ちょっと立て込んでてね。話だったら望月さんに聞いてくれないか?」

 

何故か急いでいるように見える西島の腕をヒカリは慌てて掴む。驚いたような顔を浮かべているが、生憎と気遣っている場合ではない。兄と元パートナーの危機なのだ。それ以外のことは後回しだ。

 

「西島さんと姫川さんじゃないとダメなんです!お願いです!協力してください!」

 

「その通りです!西島さん、いえ、西島先輩!協力してください!」

 

賢の言葉に西島は驚きから目を広げる。だが、理解するとその顔に苦笑を浮かべる。

 

「望月さんから聞いたのか。まあ、隠すつもりもなかったけど」

 

本来であればあの様子の姫川を一人にはさせたくなかったのだが、この子供達の真剣の様子を見て西島は無視できないと感じた。

 

なにより、「元」選ばれし子供たちとしてはこの子達に返しきれない恩がある。

 

「分かったよ、話を聞こう。とりあえず協力云々はその話次第で良いかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何…ここ…」

 

「山ですね」

 

「んなもん見れば分かるわよ!!何なのこの高さ!」

 

伊織の見たままの感想に京は思わず声を荒げる。

 

ヒカリを除く先代の選ばれし子供達はムゲンマウンテンを思い出していた。あの時も登るの大変だったなぁという苦労の思い出が頭に浮かぶ。

 

何故なら今からこの山を登らないと行けないからである。

 

理由は簡単。チンロンモンがこの頂上にいる可能性が高いからだ、

 

「なんで、またこんな高い山に登らないといけないのよー!チンロンモンのバカー!」

 

「ミ、ミミ君静かに!」

 

流石にそんなに小さい理由で機嫌を損ねたりはしないと思うが、今から頼み事をする相手の悪口を言うのはまずいだろうと考えた丈は止める。気持ちはわからなくもないが、他の大部分のメンバーの心配はそれよりも別のところにあった。

 

「この山の上にチンロンモンがいるんですか?西島先輩」

 

「恐らくとしか言えないけどねぇ。ところで、その先輩って言うのはやめてくれないかい?」

 

何というか少しこそばゆい感じがして、西島はどうにも苦手だったのだが空は気にせずに笑顔で述べる。

 

「何言ってるんですか。先輩は先輩じゃないですか」

 

「そうっすよ!俺らの大先輩なんですから先輩は当然っす!」

 

大輔もそれに乗じるように意見を述べる。どうやら、先輩呼びは避けられそうもないらしい。

 

ヒカリ達から事情を聞いた西島は『会えると断言できるわけではないけど、チンロンモンがいる可能性が高い場所に案内することはできる』と告げた。

 

それを聞いたヒカリや大輔を筆頭にすぐにでも行動に移そうとした積極派グループは、そのままデジタルワールドに行こうと言ったのだが、西島と丈を中心とした落ち着いて準備を進めて明日の朝に出発した方が良いと主張する慎重派グループと真っ向から対立した。

 

特にヒカリは自分一人だけでも行くという構えだったので、中々に話し合いは難航したが、その場所を知っている西島が安全とは言い難い所であると言ったことに加えて、既に暗黒の海との間には時間のズレが生まれているので太一から見るとそこまで時間が経っていないという事実が慎重派を後押しして翌日の早朝に出発することとなった。なお、今のヒカリを一人にしておくことは危ないという判断から京やミミと一緒に空の家に泊まっていた。

 

「しかし既に時間のズレが起きているとは…もう手遅れなどということはないのでしょうか?」

 

「今の所は大丈夫。現段階ではこれ以上悪化することはないしね」

 

「どういうことでしょうか?」

 

山を登りながら光四郎は気になっていたことを西島に尋ねた。事態は割と深刻な様相だと思われるのだが、何故か西島が余裕そうに見えるのが気に掛かったからだ。

 

「前にも言ったけど、今回のことは八神太一君と暗黒の海のコロモンのリンクが繋がっていたことが原因だ。リンクの片割れである八神太一君が暗黒の海にいる今は異なる世界が引き寄せ合うことはないよ」

 

その言葉にヒカリは表情を暗くする。逆に言えば、太一はコロモンを殺さない限り元の世界に戻れないということだ。戻れば世界の消滅のトリガーとなり得る可能性が高い。

 

「ごめんね」

 

「え?」

 

そんなヒカリの様子を見て西島は謝罪をする。

 

「お兄さんを巻き込んでしまってすまない。本当なら、僕達だけで対処しなくてはならなかったことだ。僕にもっと力があれば…」

 

西島はグッと拳を強く握る。後悔の念が有り有りと伺える。

 

「そんな謝らないでください!西島さんのせいじゃ…あの時だってハックモンはお兄ちゃんを守ろうとしてくれましたし、姫川さんも」

 

そこまで言ってヒカリは何となく違和感を感じた。今まで大して疑問に思わなかったが、考えてみれば妙な話だ。

 

「そう言えば何で姫川さんは私の所に来たんですか?最初からお兄ちゃんの所に向かえば良かったのに」

 

「そう言えばそうだな。何で姫川はヒカリに会いに来たんだ?」

 

今まで怒涛の展開が進んで忘れていたが、姫川はヒカリに会いに来ていた。何故、ヒカリに会う必要があったのか聞いていなかった。

 

「ああ、それはね。あの時はまだ太一君とヒカリさんのどちらとコロモンのリンクが結ばれているのか分からなかったんだ。だから一応ヒカリさんの様子も見てたのさ。まあ、恐らく太一君の方だという予測はできてたけどね」

 

「どうしてなんですか?」

 

「ヒカリさんの様子に違和感がなかったからさ。ヒカリさんくらい敏感な子が、暗黒の海とのリンクがあったら太一君みたいな反応じゃ済まないよ」

 

「要するに、アイツが鈍いせいで事態の深刻さに気が付かなかったってことか」

 

「ま、まあ、そうと言えないこともないね」

 

余りにもあんまりなヤマトからの意見だが、強ち間違いでもないので西島としても否定はしきれない。実際、太一かタケル以外でリンクが結ばれたら、声以外の違和感を感じただろう。

 

「そう考えると、確かに耐性が強いっていうのは良いことばかりじゃないわね」

 

「気づいた時には手遅れなどということになりかねませんからな」

 

京とホークモンの会話が全てを物語っていた。実際、太一を放っておけば恐らく影響が出始める段階でなければ気づかなかっただろう。

 

「まあ、そういうことも含めてバランスなんだろうね。僕らの時も姫ちゃんが耐性あったしね」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。昔は僕らのリーダーって感じで皆の中心だったんだ」

 

「あの様子からじゃ想像できないなぁ」

 

「コラ、ゴマモン!失礼だろ!」

 

「はは、良いんだよ。でもね、ああ見えて僕らのことを考えてくれてるんだ。パッと見は想像できないけどね」

 

西島は昔を食べ懐かしむような顔を浮かべる。

 

「危険があると分かると率先して自分から飛び込んでいくタイプでね。見てるこっちとしては、気が気じゃなかったよ」

 

「何か他人の話を聞いている気がしないわね…」

 

「僕もです…」

 

誰とは言わないが、何処かのバカにそっくりである。

 

「しかも、自分の気持ちを相手に伝えるのが下手でね…本当は優しいのに…敵を作りがちな所は昔から進歩しないんだよね」

 

「苦労したんですね」

 

今は暗黒の海に行っている何処かのバカのことを空は思い出す。ヤマトを筆頭に誰かと揉め事を起こした数は数えきれない。その度に止めたのは大部分が自分であった。

 

「はは。でも僕としては下手くそでも話してくれたら嬉しいんだけど…なかなか上手くいかないね」

 

困ったように大吾が笑っていると地の底から響くような声が響く。

 

「自分では動かず、他者が動くのを待つ…その消極的な姿勢は変わらないな大吾」

 

子供達の背中にゾクリと寒気が走る。声しか聞こえないにも関わらず、存在感だけで只者では無いと瞬時に察した。そして、その存在の敵意が自分たちに向けられていることを。

 

「皆、気を付けろ!何か来るぞ!!」

 

「ヤマト!上だよ!」

 

誰よりも早く戦闘準備を整えたヤマトは、全員に警戒の声をかけると同じく戦闘準備を終えていたガブモンは頭上を見上げる。

 

そこには大きな鳥型デジモンの姿があった。

 

「何あれ!?火の鳥!?」

 

「キレイ…」

 

荘厳な姿を見せたその鳥型デジモンに、子供達の多くは無意識的に畏怖を抱いた。だが、西島だけは違う反応を浮かべた。驚愕を全面に出しながら溢れるような言葉を漏らす。

 

「スーツェーモン…!?」

 

「今更、どの面を下げて元パートナーデジモンに会いに行くつもりだ?この臆病者めが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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