太一のアドベンチャー   作:はないちもんめ

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久しぶりの投稿ですが、あんまり進展がない…


5 急襲

「光子郎さん、大輔君、お兄ちゃんは!?」

 

太一がハックモンと話すために、少しばかり距離を取った直後に文字通り血相を変えたヒカリが到着するや否や息も絶え絶えに完全に言葉足らずの質問を発した。気持ちは分かる上に意味もわかった光子郎は特に質問を返すこともなく、淡々と状況を説明していく。

 

とは言え、光子郎が分かっていることもほとんどないため、曖昧にしか答えることはできないのだがそれでもヒカリが現状を把握するにはそれで十分だった。

 

「なるほどな…それであのハックモンとか言う奴は本当に信用できるのか?」

 

「できないでしょうね。ただ、敵意がないことだけは確かです。仮に敵意があれば、僕たちは三人とも既に無事では済んでいないでしょう」

 

至極、当然のテイルモンの質問にあっさりと返答する。

 

良く考えてみれば自分たちは相当危険な橋を渡っていた。無事で済んだのははっきり言って偶然だ。危機感が足りなかったなと光子郎は反省する。突然の出来事だったとはいえ、テントモンやアグモンを側に呼んでおくことくらいは簡単にできるはずの対処法だったからだ。

 

「何の話してんだよ…光子郎さん。やっぱり、俺たちも聞いた方が良くないっすか?」

 

心配そうな顔で太一とハックモンの様子を伺っているヒカリを見るに見かねた大輔は、俺たちも行くべきではないかという提案を光子郎にした。しかし、光子郎は無言で首を振った。

 

「止めておきましょう。ハックモンの言葉通りであれば、彼は決して僕たちには内容を打ち明けないでしょう。テイルモンが来た今となっては強引に迫ることも可能でしょうが、相手に話す気がなければ意味はありません。僕たちが近づいたことで太一さんにまで言わなくなってしまったら最悪ですし」

 

事前に太一から事態を聞くことの言質は取った。こうなってしまっては、この後に太一から事情を聞くことが最善の方法だ。

 

それは客観的に見ても間違ってはいない方法だ。しかし、最善であるということが必ずしも最良の結果をもたらすとは限らない。

 

例えば

 

「お兄ちゃん!」

「「太一さん!」」

「太一!」

 

この場の全員にとって完全に予想外の第三者が乱入した時がそれだ。

 

急に太一の様子がおかしくなった次の瞬間。太一の影から出てきた黒いナニカが太一の腹部を貫いた。

 

突然の事態に呆然とする中、最初に動いたのは大輔だった。

 

そのすぐ後に動き出したテイルモンの静止も聞かずに、太一の元へと走り出す。

 

ナニカに貫かれた太一はそのまま影の中へと引きずり込まれようとしている。ハックモンがそれを食い止めようと太一の身体を引っ張っているようだがほとんど意味を成していない。

 

最早、逃げる事は不可能と悟ったのか太一は近づく大輔に対して声を荒げる。

 

「来るな、大輔!お前まで持っていかれる!」

 

「何言ってんすか!この状況でそんなことできるわけないっす!」

 

言葉で大輔が止まらないのを悟った太一は顔を顰めると、まだ自らの腕を掴んで離さないハックモンに対して懇願するように言葉を発する。

 

「ハックモン!俺のことはいい!大輔を遠ざけてくれ!」

 

太一を救いあげることが無理だということを薄々感じ初めていたハックモンは聞くやいなや太一の腕を離し、近づく大輔とテイルモンに対して猛然と突進をして無理やり太一から距離を取らせた。

 

転がる大輔とテイルモンの間をヒカリと光子郎が駆け抜けるが時既に遅し。

 

太一の身体は完全にこの場から姿を消していたのだった。

 

太一が消えた事実を受け止めきれないヒカリは、先程まで太一がいた場所を見つめている。テイルモンはそんなヒカリを心配そうに見つめている。

 

何もできなかった事実に大輔は歯を食いしばる。そして、自らの邪魔をしたハックモンを睨みつける。

 

「ハックモン!お前…何で邪魔した!!」

 

純度100%の怒りを一身に浴びながらも、そんなことは知らぬと言わんばかりにハックモンは平然と言い放つ。

 

「あの場において最善の選択だと思ったからだ。こちらとしても完全に予想外の展開だったが、勇気の紋章の少年一人であれば何とでも修正できる。これ以上、予想外を増やして事態の悪化を生じさせたくはない」

 

「テメェ!」

 

遂にキレた大輔は光子郎が止める前にハックモンに掴み掛かろうとするが、ヒラリと躱されて逆に大輔の方が地面を転がる羽目になった。その様子を冷静に見ながらハックモンは言葉を続ける。

 

「冷静になって話を聞け。勇気の紋章の少年は九分九厘生きている。順序は多少入れ替わったが、結果として状況はあまり変わらない。我々の依頼を勇気の紋章の少年がこなせば直ぐにでも帰って来れるだろう」

 

「んだとぉ!じゃあ、テメェらが太一さんを連れ去ったんだろ!」

 

「先程の知識の紋章の少年の言葉を聞いていなかったのか?連れ去りたいのであれば私はお前たちが三人の時に誘拐することも可能だった。それをしなかったことが私の無実の証明だと思うが」

 

ハックモンの言葉は恐らく真実だろうと光子郎は推測した。ハックモンがわざわざこんなことをして太一を攫う理由がない。他にも方法は幾らでもあった。何より、太一が襲われてからのハックモンの行動は全力で太一を救おうとしているようにしか見えなかった。

 

「僕も貴方が犯人だとは思っていません。しかし、それは太一さんが無事に帰ることを保証しませんし、何より貴方が太一さんに依頼した内容も不透明です。信頼して欲しいなら教えてください。太一さんに貴方が依頼することは何ですか?こうなってしまっては、太一さんにしか言えないなどといった理由は聞けません。話してください」

 

有無を言わせない光子郎の言葉によって周囲に沈黙が流れる。テイルモンもヒカリを気にしながらではあるが、何時でも動けるように体勢を整えている。

 

永遠にも思えるような沈黙が過ぎ去った後、ハックモンに静かに。しかしハッキリと言葉を発した。

 

「申し訳ないが私からは話せない。しかし、その依頼の難易度は大したものではない。勇気の紋章の少年がそれをする気があるなら直ぐにでも完了する依頼だ。過去のお前たちの冒険のような危険はない。身の安全は私が保証しよう」

 

「であれば納得ができません。それなら太一さんがしなければいけない理由がない。貴方が自分でやれば良いでしょう」

 

「それはできない。それは勇気の紋章の少年、いや、八神太一だからこそ、可能な依頼だからだ。私も含めて他の誰でも代わりになることはできない」

 

太一さんにしか?その言葉に光子郎の脳内に疑問符が浮かぶ。太一の妹のヒカリならば話は分かる。八神ヒカリには不思議な力がある。他の選ばれし子供にはない不思議な力だ。しかし、太一にそんな力があることなど見たこともなければ聞いたこともない。では、太一にも隠された不思議な力があったということなのだろうか。

 

光子郎の疑問に答えるような形でハックモンは話を続ける。

 

「勘違いしているようだが、別に八神太一に特別な力があるわけではない。まあ、選ばれし子供に選ばれた段階で特別と言えなくもないがそれはお前たちも同じことだ。お前たちにとっては特別なものではない」

 

「じゃあ、なぜ太一さんにしかできないんですか?」

 

「悪いがそこまでは話せない」

 

会話を繰り広げていたところ、光子郎は徐々にハックモンの身体を通して見えないはずの景色が見えてきていることに気が付いた。最初は目の錯覚かとも思ったがどうやらそうではないらしい。それが意味するところは一つしかない。

 

「っ、ハックモン!」

 

「待ちやがれ!まだお前には聞きたいことがたくさんあんだよ!」

 

光子郎と同時に気が付いた大輔がハックマンを捕まえるべく、再度飛びかかる。しかし、それはハックモンを捉えることはできずただ空間を通過しただけだった。

 

体勢を整えて、再度見やればハックモンは完全に姿を消していた。その事実に大輔は拳を地面に叩きつける。

 

「ちくしょう…ちくしょーーーーーーー!!!!」

 

残された場所には大輔の叫び声だけが虚しく響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、大輔たちの場所から首尾良く逃げ出したハックモンは一息つくこともなく、動き出した。

 

事情をほとんど説明しなかったハックモンだが、自らの言葉に背く気は全く無い。巻き込んだ以上、何があっても太一の身を守るべく行動に移るためだ。

 

しかし、そんなハックモンの背中に声をかける男がいた。その声には怒りが滲んでいた。

 

「ハックモン…何故、あんな嘘をついた!」

 

「ゲンナイか。デタラメを言うな。私の言葉に嘘は全く無い」

 

「ああ、確かに無かったろう!だがアレでは嘘を言っているのと一緒だ!確かに太一君にとってはこの任務の難易度は低いだろう!だが、それを実行できるかどうかは別の話だ!」

 

「では、他にどんな選択肢がある?これまで散々可能性を模索したはずだ。しかし、他に対処可能な選択肢がないまま期限を迎えた。ホメオスタシスも好き好んでこんな選択をしたわけでは無い」

 

「それは…分かっている!だからといって!」

 

「もうよせ。こんな議論は今更無意味だ。賽は投げられた。後は勇気の紋章の少年の決断次第だ」

 

そう言って歩き出すハックモンの足を止める言葉をゲンナイは持ち合わせていなかった。

 

その事実にゲンナイは握っていた拳を更に強く握りしめる。

 

「分かっている…この任務ができるのは太一君しかいない。それに太一君であれば達成することはこれまでのどんな冒険よりも遥かに簡単だ。だが…だが…あの子達にとってはこの依頼は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダークマスターズを倒すよりも…アポカリモンを倒すよりも…これまでのどんな冒険よりも苦しいものに決まっているじゃないか」

 

 

 




次回
希望
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