エロ画像が女優でアイドルの白鷺千聖さんに見つかってしまった。
「これはどういうことかしら?」
……死んだな、これ。


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エロ画像が女優でアイドルの彼女に見つかった件。

 

「これはどういうことかしら?」

 

眩しいぐらいニコニコと微笑んでいる千聖さんが僕にそう問いかける。でも僕には笑っているように見えない。むしろ彼女の後ろに鬼の姿が見えるような気がするのは気のせいだろうか。

僕は今正座している。正確にいうとさせられている。そしてそんな僕の前に立つ千聖さんは両手を腰に当てて立っている。これが俗にいう仁王立ちというやつである。さすが女優、風格がある。などと考えている場合じゃない。

 

「黙っていてはわからないわ」

 

僕が呆けていると追求の言葉がやってくる。口調は優しげだが、どうしてなのか重圧を感じる。

 

「大丈夫、怒らないわよ」

 

千聖さんはそういうが、火山噴火一秒前みたいに感じるのは僕が勘違いしてるだけなのか。

ただこの状況はもう詰みみたいなもので、もう正直に答えることしか選択肢は残っていなかった。今ここから逃亡しても結局のところ後に再び追求されるだけだし。

 

「……女性の身体の画像です」

 

千聖さんの手元にある僕のスマホに写し出された画像について僕は答えた。つまりまあ、エロ画像ですはい。ただバカ正直には答えづらく、僕はちょっとボカして答えた。

 

「ちょっとよく聞こえなかったわ。もう1度答えてくれないかしら」

 

ひぇ。顔は笑ってるのに目が笑ってない。ふざけるなとその目は語っているように見えた。怖い。思わず僕は顔を横に逸らす。

 

「エロ画像です」

 

今度はちゃんと答えた。

ああ、ちょっと前の僕、何故スマホを千聖さんに渡したのか。

僕の部屋でゆっくりとした時間を過ごしていたら、偶々話題がスマホのホーム画面の話になった。僕は初期設定のままにしていることを話すと、千聖さんが『貴方に合う画像を選んであげる』と言い出して、僕はスマホのロックを解除して彼女に渡した。

おそらく千聖さんはどんな画像があるか確認するために写真のアプリを立ち上げて、そこで例の画像を発見したのだろう。うわあ、僕の馬鹿。なんで画像を消さずに渡したのか。なんでスマホを渡してしまったのか。後悔の念は尽きないとはまさにこのこと。

 

「貴方も男だものね。こういうことに興味があるのは当然よね」

 

理解を示すようなその言葉に気が緩んでしまう。

しかし、恐る恐る千聖さんのほうを向くと、その表情は相変わらずだった。

 

「ねぇ、聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

 

「……なんでしょうか」

 

千聖さんの言葉にはとてつもない圧を感じてしまう。その圧力に怯えながら逃げたくなる気持ちを抑えて彼女の言葉の続きを待つ。

 

「どうして『巨乳』の画像ばかりなのかしら」

 

「ひぃ」

 

『巨乳』を殊更強調して言う千聖さんに僕は思わず悲鳴が漏れ出てしまう。

 

「あら、どうして悲鳴を上げるのかしら」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

僕は素早く床に頭をぴったりと引っ付ける。土下座である。

 

「私には貴方が必死に謝っている理由がわからないわ」

 

ふふふっ、なんて笑っているが全く笑っているように見えないし聞こえない。正直言って怖い。

 

「それで、どうしてかしら?」

 

「……えっと……あー……それは」

 

僕は一体なんて答えればいいんだろう。わからなくて僕は口ごもってしまう。

 

「もしかして大きい方が好きなのかしら? なら、ごめんなさい。私じゃ満足できないわよね……」

 

「そ、そんなことはないです」

 

千聖さんがあまりにも卑屈なことを言い出したので余計に反応に困る。千聖さんのおっぱい、そんな卑屈なことを言うほど小さいとは僕は思わないんだけど。

 

「気を使わなくてもいいのよ。私は別に気にしていないから」

 

そんなことを言うが、千聖さんは絶対に気にしているよ、これ。

 

「気なんて使ってないです……」

 

「そう。それで、どうしてなのかしら?」

 

これ、答えないと終わらないやつなのね。延々と『どうしてなのかしら?』を聞かれるパターンだ。そう思った僕は意を決して、答えることにした。正直に、思ったとおりに。

深呼吸をして、口を開く。

 

「……正直大きい胸は好きです」

 

「……………………」

 

「ひぃっ」

 

僕が答えると千聖さんの瞳の光が消えた。千聖さんは黙ったまま。室内温度がぐっと下がったような気がする。

千聖さんが何も言わないのが答えだ。怒ってる。怒ってるで済むレベルじゃないかも。カムバックハイライト。

 

「あらあらあら、何もそんなに怯えなくてもいいじゃない。別に取って食ったりなんてしないわよ」

 

むしろそれ以上に酷い目に遭いそうなのは僕の気のせいであってほしい。

 

「はぁ……貴方も男の子なのね。『大きい』胸が好きだなんて」

 

「待ってください」

 

「何かしら?」

 

一番大切なことをまだ千聖さんに伝えていない。

 

「僕が一番好きなのは大きい胸でも小さい胸でもなくて、千聖さんの胸だから」

 

僕はきっぱりはっきりとその言葉を千聖さんに言った。言ってしまった。どう考えても変態発言だ、これ。

 

「…………え?」

 

千聖さんは惚けた顔をしていた。上手く聞こえなかったんだろうか。だから僕はもう一度伝えることにした。

 

「僕は千聖さんのおっぱいが大好きです!」

 

「…………聞こえているわよ、馬鹿」

 

ああよかった聞こえていたんだ。伝わっていたんだ。よかった。……いやよくない。

千聖さんの表情はちょっとだけ頬を赤く染めていて、呆れていた。先程の、表面上だけ微笑んでいて内心は……みたいな顔とは違う。僕はそれだけで安心してしまう。

 

「変態」

 

「ごめんなさい」

 

「はぁ」

 

千聖さんは一つ溜め息をつく。

 

「……許してあげるわ」

 

「ほっ」

 

「ただし」

 

なんとかお許しを頂いて一安心だと思っていると千聖さんは続けて口を開く。千聖さんは何を言うのか、ちょっとだけ怖い。

 

「さっきの言葉、私以外には言わないこと。言ったらどうなるかは……わかるわね?」

 

「はい、わかってます」

 

しっかり釘を刺された。独占欲なのかな。それなら嬉しい。ま、千聖さんの心配は杞憂に終わるだろう。僕が千聖さん以外にこんなことを言うことは永遠に絶対にない。

これで一件落着かなと思っていると千聖さんはスマホのエロ画像を指差して

 

「あと、スマホのエッチな画像は全部消去してもいいわよね?」

 

と無慈悲なことを仰った。あれ、またさっきの表情に戻ってるぞ。あれあれ、おかしいなぁ。微笑んでいるのにそんな風にはちっとも見えない、そんな顔をしている。怖い。

 

「それとこれとはまた別……」

 

「――私の胸が一番なのよね?」

 

「…………」

 

「私の胸が大好きなのよね?」

 

千聖さんの追撃が続く。止まらない。千聖さんの攻撃の何が痛いって、僕の発言を元に追撃してくるから心にズブズブ刺さるのだ。もう勘弁して欲しい。これはもう白旗を揚げるしかない。

 

「はい……消してもらって大丈夫です」

 

「声が小さくなっていってるわよ。未練があるのかしら」

 

仕方ないじゃないか。エロ画像との出会いは一期一会なんだよ。もう二度と手に入らないかもしれない。二度とヌくことができないかもしれない。未練がましくもなる。男の子だもん、仕方ないじゃないか。

なんて思うが絶対に千聖さんには言わない。間違いなく理解を得られない上に、酷い目に遭うだろう。

 

「なんでもないです! 消してください!」

 

「ええ、わかったわ」

 

僕が白旗を揚げると千聖さんは満足げににっこりと微笑んだ。今日一番の笑顔だ。良い笑顔です……。

 

「ああ、それとパソコンの方の如何わしいデータも全部削除しましょうか」

 

「………………なんのことです?」

 

「惚けても無駄よ」

 

バレてる。え、なんで。どうして。頭をフル回転させても答えは出てこない。

 

「復元できないぐらいに壊してもいいのよ? もちろん、代わりは私が用意してあげるわ」

 

僕が固まっていると千聖さんは恐ろしいことを平然と言い放った。千聖さんなら代わりをすぐに用意できそうなところが余計に恐ろしい。

 

「冗談、ですよね?」

 

「私は本気よ」

 

ああ、ヤる気満々な顔してますね。これは折れるしかない。

 

「消します」

 

「よろしい」

 

僕は大人しくパソコンにある如何わしいデータを全て削除した。一切残らずに消した。

千聖さんはその様子をじっと見ていた。削除漏れがないようにずっと監視していた。怖かった。

 

「ところで、どこまでが持っててセーフなんですか?」

 

僕は千聖さんの基準が知りたくて尋ねてみた。決して抜け道がないか探すとかそういう意図がある訳ではない。

 

「如何わしいものは全てアウトよ」

 

ばっさり。そんなの当たり前でしょう、と言わんばかりだった。

そして千聖さんの笑顔が怖い。さっきまで和らいでいた千聖さんの表情が僕が尋ねた瞬間に変わった。さっきもしてたけどその顔は止めてほしい。

 

「グラビアの写真集とかは?」

 

「アウト」

 

「18禁じゃないですよ」

 

「ダメなものはダメよ」

 

どうやらR指定じゃなくもダメらしい。厳しい。え、これ、どうすればいいの。思春期男子にそれは拷問だよ?

 

「じゃあ、パスパレの写真集は?」

 

「余計にダメよ」

 

これはさすがに大丈夫だろうと思ったが予想外の答えが返ってきた。ちょっと怒ったような表情で。

 

「えー……なんでですか?」

 

「みんなをそういう目で見るのはダメよ」

 

千聖さんはヤキモチを焼いているんだろうか。

 

「嫉妬ですか?」

 

「そうよ、嫉妬よ。いい? 私だけをそういう目で見なさい」

 

千聖さんは潔く嫉妬だと認めた。やっぱりちょっと怒ったような顔で。でも怖さなんて無いに等しい。僕は嬉しくてつい笑ってしまう。

 

「なに笑っているの」

 

「千聖さんが嫉妬してくれてるのが嬉しいんですよ」

 

「馬鹿」

 

千聖さんの口調は罵倒するようなものではなく優しかった。彼女の顔は綻んでいた。

 

「本当に馬鹿ね」

 

千聖さんは繰り返し言った。今度はちょっと呆れ気味に。でも頬が緩んでいたのは相変わらず。

 

「……それで、約束してくれる? 私だけをそういう目で見るって」

 

さっきまでの表情とは一転して、真剣な顔でさっきと同じ問いかけをしてきた。

僕の答えは一つだ。さっきも同じことを答えようとしていた。

 

「もちろんです。千聖さんだけを如何わしい目で見ます」

 

迷うことなんてない。間髪入れずに僕は言った。

 

「よろしい」

 

真剣な千聖さんの表情が心なしか嬉しそうに見えた。気のせいだろうか。

 

「ねぇ、貴方にご褒美をあげる」

 

「ご褒美?」

 

「ええ、私の言う事素直に聞いてくれたご褒美。……目を瞑って」

 

ご褒美って何? と混乱しつつも僕は大人しく千聖さんに従ってを目を瞑る。

しばらくして、唇に柔らかくて熱い感触。僕は驚いて目を開けて、身体を硬直させてしまう。目の前には千聖さん。彼女を認識した時にはその感触は消えてしまっていた。

今、何が起きたんだ? 僕は今、何をされたんだ? そんな疑問が頭の中を何度も駆け巡り、オーバーヒートしてしまう。

目の前の千聖さんは柔らかく微笑んでいた。余裕がありそうな彼女の頬が赤くなっているのは気のせいだろうか。

 

「……どうかしら? いちおう初めてなのだけれど」

 

ハジメテ。確かに初めてと言った。千聖さんの初めて。余計に混乱してしまう。

ああ、上手く思考が纏まらない。どうしよう、なんて答えようか。

 

「最高、でした」

 

僕は結局思ったことを口にした。それ以外の回答なんてあるのか、いやない。

僕は彼女の唇を目で追ってしまう。それに気付いた千聖さんはくすっと笑った。

 

「ねぇ、もう一回してみない?」

 

今度は貴方からしてほしいわ、なんて言われる。僕は反射的に頷いていた。

 

「来て」

 

千聖さんが目を閉じた。僕はロボットのような動きで彼女のその綺麗な顔に近づく。その瑞々しい唇にゆっくりと口付けをした。キスって気持ちいいんだ、なんてありきたりな感想だけが思い浮かぶ。だんだんと無駄な力が抜けていく、僕も彼女も。貪りつきたい気持ちもあったけど、それ以上に今はこのまま千聖さんとただ繋がっていたかった。

僕は千聖さんから離れる。時間にして十数秒。たったそれだけの時間が永遠のような長さに感じた。胸がいっぱいになって幸せな気分になる。それと同時にもっとしたいという感情も湧き上がってくる。

千聖さんは瞳を開けて、それから僕を見て悪戯っぽく笑う。

 

「どうだったかしら? 貴方は満足できたかしら?」

 

「大満足です」

 

「もっと私とこういうこと、したい?」

 

「……したいです」

 

「ふふっ、約束をちゃんと実行できたらね」

 

千聖さんはズルい。策士だ。そんなこと言われたら守らざるを得ないじゃないか。

ああ、それにしても今日はいい日だ。千聖さんにあの画像が見つかった時は死んだかと思ったけど、なんだかんだで千聖さんの初めてを貰えた。これはあれだ。万事塞翁が馬ってやつだろうか。

ただ人間っていうのは欲深い生き物で、どうしてもその先のことを考えてしまう。千聖さんとのこの関係だってそうだ。ついつい考えてしまう。具体的にいうと千聖さんのおへそとかお尻とかおっぱいとか、そういうのがどうなってるのかなって。

 

「貴方はやっぱり変態ね」

 

そんな僕の視線に気付いたのか、千聖さんは呆れていた。

 

「……そういうのは、まだお預けよ」

 

まだってことは、いつかは……。そう解釈してもいいんだろうか。僕が千聖さんに尋ねてみても彼女は曖昧な言葉ではぐらかした。

なんだか千聖さんの手のひらで転がされているような。それもいいか。

 

 




『Easy come, Easy go!』のジャケットのモカちゃんの太ももに顔突っ込みたいと思った変態は手を挙げなさい。



…………私です。

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