宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲101 異次元の狼たち

 亜空間――。

 

 ヤマトとイセは、フラーケンの乗る次元潜航艦と共に、亜空間に潜んでいた。その三隻の背後には、巨大な艦体を誇示しているデウスーラⅢ世が、静かに漂っていた。

 ヤマトとイセが、白色彗星に飲み込まれそうになっていたあの時、フラーケンの次元潜航艦は、魚雷攻撃でガトランティス艦を撃沈し、二艦を牽引して、この亜空間に引き込んでいた。

 

 イセは、艦体のあちこちが損傷していたが、火災を消火し、穴を塞ぎ、応急処置が施されていた。

 艦載機格納庫は、火災の後も生々しく、あちこちが炭化して黒く染まっていた。

 加藤は、艦載機を可能な限り隅に寄せるか、甲板に出し、格納庫のスペースを空けた。それは、ヤマト乗組員の怪我人を寝かせる為の野戦病院として使う為だった。

 乗組員のほとんどが大小の怪我を負っており、簡単なシートを引いた上に寝かされている。島は、その間を辛そうな表情で歩いて、見知った顔がまだ生存しているのか確認した。残念な事に、慣性制御装置の故障した艦内で投げ出された彼らのうち、何名かは死亡した者も出ていた。

 島は、太田の姿を見つけると、そばにしゃがんで声を掛けた。

「大丈夫か?」

 彼は、かろうじて意識を取り戻しており、いつもの様に笑顔を浮かべようとしていたが、力が入らないらしく、上手く行かないようだった。

「島さん……。約束、守れなくてすみません。ヤマトを頼むって言われたのに……」

 太田は、胸骨を骨折しているらしく、息をするのも辛そうにしていた。

「気にするな。それでも、やれる事をお前はやってくれたんだろ。分かってるさ」

 太田は、瞳から涙を零した。

「す、すみません……」

 島は、彼の身体にそっと触れて笑顔を向けると、立ち上がった。太田の隣には、同じく寝かされている北野の姿があった。

 衛生士がちょうど彼の状態を診ている所だった。

「容態は?」

「まだ意識が戻りません。手足の骨折と、脳震盪を起こしています。頭の状態が心配ですが、今、医務室の測定装置は、もっと酷い怪我人を診ているので……」

「分かってるさ。装置が空いたら、検査してやってくれよ」

「はい、艦長。勿論です」

 更に彼の隣には、西条が座り込んで泣きじゃくっていた。彼女は、右腕を包帯で吊っていた。

「……西条さん。大丈夫かい?」

 彼女は、泣きながらこくこくと頷いた。

「わ、私は腕の骨折だけで済みましたから、大丈夫です。でも、北野くんが……」

 島は、彼女のそばにしゃがみ込むと、肩をそっと叩いた。

「大丈夫さ。この程度で、こいつがくたばるもんか。それに、西条さんがそばについていてくれるなら、きっとすぐに元気になるよ」

 西条は、顔を上げて、島の方を見た。

「ごめんなさい。島さんの艦も大変な時なのに……」

「まあね。でも、何とかなるさ。そうだろ?」

 島は、彼女にも笑顔を向け、立ち上がった。

 そこに、篠原と沢村や、揚羽たち航空隊のメンバーがやって来た。

「篠原。無事だったんだな?」

 篠原は、手を広げておどけてみせた。

「俺たちは、いつでも出れる様に、機体に乗ってコックピットで身体を固定してたからね。お陰様で無事だったってわけ」

 そこに、加藤もやって来た。

「悪運の強い奴だな」

「ちょっと、ちょっと。それ、酷い言い草じゃない?」

 加藤と篠原は、互いに笑い合って拳をぶつけていた。

 島は、そんな懐かしい面々が無事なのを見て、ほっとしていたが、ヤマトの乗組員のほとんどが、床に並べられている様子を見ると、どうしても気分が沈み込んでしまう。

「しかし、これじゃあ、病院船だな。イセは、まだ動かせるが、戦闘ではもう使えない」

 加藤は、同じ様に床を眺めた。

「寧ろ、ヤマトの方がまだ使えるようだぜ。大きな損傷は、第三艦橋がもげた事ぐらいだ。今、アナライザーと一緒に、イセの甲板員が何人か向かって、応急処置を施している」

「しかし、乗組員が、この様子じゃな」

「そうだな……」

「おい、あれ」

 篠原は、指を指した。他のメンバーも、その指の先を見ると、そこにはデスラー総統と、タラン、そしてフラーケンたちがやって来ていた。フラーケンの後ろには、薮の姿もあった。

「あ、あいつ薮じゃん……」

 デスラーたち一行は、島たちの前に静かにやって来た。

「デスラー総統。我々を助けてくれた事、感謝しています。本当にありがとうございました」

 島は、深々と一礼して、デスラーを迎えた。

 デスラーは、手を上げて頭を振った。

「気にしないでくれたまえ。たまたま、知った顔が困っている所を通り掛かったまでだ」

 島は、顔を上げるとぎこちなく笑顔を向けた。

「は、はあ」

「それよりも、どうだね? ヤマトの諸君の様子は」

「ご覧の通りです。航空隊のメンバー以外の、艦を動かす乗員のほとんどが動ける状態じゃありません。死亡者がごく少数だった事が、不幸中の幸いと言った所です」

「それは、困ったね……」

 デスラーの表情は、本当に困っている様だった。

 島は、そこまでヤマトの乗員を思うデスラーの姿を不思議に思って眺めた。そうしていると、デスラーの横に控えていたタランが、何か言いたそうにしていた。

「タラン閣下……?」

 話を振られたタランは、咳払いをしてから話し出した。

「デスラー総統は、白色大彗星の弱点である、真上と、真下の攻撃を一緒にやってくれる波動砲搭載艦を探しています。そして、ヤマトが、その役割に相応しいと、総統はお考えなのです」

 デスラーは、続けて話した。

「確か、ヤマトは乗組員の認証が無いと、勝手に動かせない……そうだったね?」

 島は、眉をひそめてその発言を訝しがった。

「……よくご存知で。その通りです。あなた方が動かす事は出来ませんよ」

 デスラーは、満足そうに頷いた。

「君には、その権限はあるのかね?」

 島は、目を丸くしていた。

「えっ……!? ま、まあ、そうですね。私には権限があります」

「他に、何人必要なのかね? 良ければ、この薮もお役に立てるかもと思って、連れて来たのだが」

 島は、目を細めて薮の姿をちらりと見た。薮は、フラーケンの背後に隠れてこそこそしている。

「薮には、その権限はありません。しかし、お心遣い、感謝します」

 島は、デスラーの目的が、ヤマトを自分の思うように動かす事だとして知り、警戒し始めた。

「そちらの、航空隊のメンバーはどうなんだね?」

 加藤は、デスラーを露骨に睨みつけた。

「残念だが、俺達にはねえな」

「そうかね。ふむ……。そうすると、この船の乗組員では動かせないのかね?」

 島は、頭を振った。

「無理です。過去にヤマトに乗艦していて、登録済みの士官だけが、ヤマトを運用する事を認証出来ます。イセの乗員では、私が該当しますが、私だけでは無理です。それぞれの部署の代表者が居て、初めてヤマトは動きます。そうやって認証後は、誰でも運用に関わる事は出来ますけどね」

 フラーケンは、そこで口を開いた。

「だったら、ヤーブの事はやっぱり置いて行こう。こいつは、役に立つ筈だ」

 薮は、フラーケンに無理矢理前に連れ出され、恥ずかしそうにしている。

「お、俺でもよかったら……」

 島は、呆れて頭をかいた。

「ま、まあ。……ありがとうございます」

 タランは、この不思議なやり取りを整理すべく、再び話し始めた。

「島艦長。話は簡単です。あなたも、我々も、同じ目的を目指して行動しています。スターシャ女王たちを救い出し、それと同時にガトランティスをここで倒す事です。そうする事で、この宇宙に再び平穏が訪れるでしょう。その後、イスガルマン人を解放する活動を我々は行うつもりですが、それはすべてが終わった後の話。今は、スターシャ女王を何とかして救い出す為に協力したい。それだけです。総統が、いつもの調子で話すので、かなり警戒されたようですが、他意はありません」

 デスラーは、タランの顔を見て、目を細めている。

「私のいつもの調子とは、どういう意味だね?」

「総統の話し方は、人を恐れさせ、何か自分に不利益を及ぼすのでは無いかと警戒させてしまいます。私は、慣れているので、総統のお考えが手に取る様に分かりますが、普段話しをしない方は、それが分からず疑心暗鬼に陥ってしまいます」

 デスラーは、不満そうな顔をしている。

「そうなのかね? ならば、改善しようじゃないか。今度ゆっくりと君とその点について話し合ってみたいものだね」

「ええ。望むところです」

 島は、二人のやり取りを見ても、まだ少し疑っていたが、それ以上話しても、分かりようも無いと、そう結論付けることにした。

「……もう一隻、という事なら、土方総司令とお話しされて、協力を伝えてはいかがでしょうか? アンドロメダや、主力戦艦といった、ヤマト以外の波動砲搭載艦がこの宙域に居ますから」

 タランは首を振った。

「私の考えでは、それは得策ではありません。次元潜航可能なデウスーラは、この戦いの最後の切り札です。最後まで存在を秘匿していてこそ、ガトランティスに不意を突く事が出来ます。思いの外、ガルマン帝国も、祖国の正規軍も、あなた方地球艦隊も、ガトランティスに苦戦を強いられているようですから、尚更これは重要な事です」

 島は、言われてみればと、タランの話が腹落ちした。

「なるほど。確かにそうかも知れません」

 タランは、更に話しを続けた。

「勿論、我々がここでじっとしている間に、地球艦隊が目的を達成する可能性もあります。それなら、それに越したことはありません。しかし、もしも地球艦隊が失敗したら……。我々は、その時、最後の希望となる。その為にも、今は姿を現すべきではありません」

 島は、目を閉じてその話を思案した。

 イセも、戦える状態では無い今、タランの言うとおりここでじっとしていることで、最後の勝負を仕掛けられるかも知れない。それには、何人かヤマトの認証可能な乗組員を連れて来なければならないが、決して不可能な事では無い。

 島は、ようやく納得してデスラーとタランの方を向いた。

「分かりました。しばらく、我々はここで様子見と行きましょう。その間に、出来る限り艦の修理と、皆の治療を進めておきます」

 デスラーは、重々しく頷いた。

「ふむ。では」

 デスラーは、右手を島の方へ差し出した。島は、驚いて思わずデスラーの顔をまじまじと見た。

「こういう時、地球人は、手をこうやって繋ぐのだろう? 私も、ギャラクシーにいる間に、勉強させてもらったのだよ」

 島は、心の中で苦笑いをして、デスラーの手を握った。

「ありがとうございます。それでは、しばらくの間、よろしくお願いします」

「いいとも」

 デスラーが手を離すと、一行は、踵を返して立ち去って行った。

 そこに残された薮は、きまりの悪そうな顔をして、後頭部を手で抑えて身を屈めていた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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