宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲102 ムサシ、戦場へ

 惑星ファンタム――。

 

 相原は、地上に降りた真田たちが不在の間、ムサシに残って通信の傍受に努めていた。ムサシの艦橋の窓の外には、多数のガミラスや、ガルマン帝国の艦艇が漂っている。

 

 相原は、ヘッドセットを頭に着けたまま、椅子を左右に揺らしていた。

「本当に、僕は戦場に行かなくて良かったんですかねぇ。早紀さん、どう思います?」

 相原は、椅子を艦長席の方に向けると、藤堂早紀に話し掛けた。

「今は非常時ですし、寧ろ、軍の方が残ってくれて、私は心強いと感じているんですよ」

 相原は、頬をかいて少し照れていた。

「そ、そうですかね?」

 早紀は、笑顔で頷いた。

「そうですよ。軍の方は、他に雪さんが残ってくれていますが、お子さんもいて大変な時ですし。今は、一番、あなたを頼りにしてるんです」

 レーダー手の席に居た雪は、美雪を膝に抱えて、あやしながらレーダーの監視をしていた。彼女は、聞いていないふりをしながら、二人の会話に耳を大きくしていた。

「……いつの間にか、下の名前で呼んでる。かなり仲は進展しているのかも」

 雪は、ぶつぶつと独り言を口にしていた。

「あ、ごめんなさい。私、雪さんに失礼な事を」

 雪は、どきっとして身体を硬直させたが、聞こえて無かったのだろうとほっとしていた。

「う、ううん。藤堂さんの言うとおりだもの。だから私は、古代くんに着いていくわけには行かなかったのだし」

 雪は、座席に美雪を座らせると、相原の方へと近寄った。

 そして、小声で言った。

「相原さん、どうなの?」

「えっ……! さ、早紀さんのことですか!?」

 雪は、思わず苦笑いした。

「それも是非聞きたいけど……。そうじゃ無くて、その後、戦況について情報はある?」

 相原は、真面目な顔になると、雪と同じ様に小声になった。詳しい戦況については、雪にしかまだ話していなかったのである。

「ヤマトとイセが、白色彗星に飲み込まれたかも知れないという件ですが、あの後続報はありません」

「そう……」

 雪は、早紀に見えないように辛そうな顔をした。

「最新情報では、大村隊、井上隊がガトランティスの攻撃で壊滅したという情報があります。これで、戦闘は最終防衛ラインに移る筈です。恐らく、土方総司令は、戦闘の準備をしている頃でしょう」

「……」

 雪の表情は、更に暗くなった。

「古代さんの乗るシナノも、いよいよ最前線に立つ事になります。心配ですね……」

 雪は、声を震わせて言った。

「私にとっては、古代くんも、土方さんも大切な人。心配だけど、今は信じるしかない」

 ひそひそと話す二人の様子を見ていた早紀は、不穏な空気を感じていた。

「あの、何かあったんですか?」

 雪は、勢い良く振り返ると、頭をぶんぶんと振った。

「ううん、何も。真田さんたちから何か連絡はあったか聞いていたの」

 早紀は、訝しげな表情をした。

「そうですか……」

 

 惑星ファンタムのシャルバートの隠れ家――。

 

 真田と新見は、サーシャを伴って、地下に居るシャルバートの元を訪れていた。前に訪れた時と同じテーブルの座席に座り、向かい合って話し合っていた。

「何度も押しかけて申し訳ありません。コスモフォワードシステムの一件で、私は色々と考えました。同じ様な事にならない様に、イスカンダルの波動砲艦隊を、何らかの方法で処分出来ないかと考えています。波動砲艦隊は、ガトランティスだけでなく、ガルマン帝国や、ボラー連邦も、あらゆる民族が欲しがるでしょう。悪意を持った人物の手に渡れば、恐ろしいことが起きてしまいます。私としては、そのままにしてはおけません」

 シャルバートは、気怠げに真田たちの顔を見つめている。

「そうね。それも一つの方法だわ。もう、私たちには必要の無い物だから。サーシャもそれでいいの?」

 サーシャは、不思議そうな顔でシャルバートの方を見た。

「それって、今から千年も前に作られた物なんでしょ? 古くなって、もう使えないんじゃないの?」

 シャルバートは、小さく笑った。

「あら、頭がいいのね。でも、そういう事態も考えて作られている物なの。だから、問題無く動く筈よ。そう。ここの施設が今でも正常に稼働している様に、同じ様な仕組みが、船を形作る部材にも使われているの」

 新見は、それに興味を持った。

「そんな事が可能なんですか? それは、私たちも是非知りたい技術です」

「ああ、ごめんなさい。私は科学者じゃないから、それには答えられないわ」

「それは、失礼しました」

 シャルバートは、棚に並ぶ黒い箱たちを見つめた。

「科学者たちは、あそこに入っているから、彼らに聞けば分かるでしょう。現存する波動砲艦隊を無くしたとしても、彼らを安全な場所に移さなければ、結局は同じ事。それとも、あの箱も破壊する?」

 新見は、頭を振った。

「いいえ。倫理的にも、我々は、そのような事を考える事はありません」

「なら、あまり私たちの科学力に興味を持たない方がいいわ。知らなくて済めば、あなたたちには責任は発生しない」

 サーシャは、そこで口を開いた。

「今、皆が、ママを助けようとして、怖い人と戦っているの。その人たちをやっつけるのに、それって役に立つの?」

 シャルバートは、興味深そうにサーシャの顔を眺めた。そして、テーブルに手をついて腰を上げ、サーシャに顔を近づけた。

「そうね。多分、大いに役に立つわ。あなたが、そうしたいのなら、私は構わないわ……」

 サーシャは、シャルバートの顔が恐ろしく、悪寒が走っていた。

「う、うん……で、でも、危ないんだよね」

 シャルバートは、にっこりと笑った。

「そう。危ないわ……」

 シャルバートの顔は、真顔になった。それを見たサーシャは、震え上がった。そのサーシャの身体を、新見は抱き寄せた。

「怖がらせないで」

「あら、ごめんなさい」

 シャルバートは、悪びれるでも無く、澄ました顔で身体を引いた。

「サーシャ、あなた次第ね。あなたが使いたければ、いつでも使えるのよ」

 真田は、サーシャの顔をちらりと見て、考え込んだ。

「シャルバートさん。それで、どこにあるんです? 五百隻もの大艦隊だ。簡単に隠せる規模では無いと考えますが」

「……それを聞いてどうするの?」

「先程から申し上げている通り、廃棄する手段を考えます」

 シャルバートは、目を細めて真田を見ながら、何か考えているようだった。

 そして、ゆっくりと右手を上げると、人差し指を突き出した。真田たちは、その指の指す方を見上げた。

「この惑星には、一つ月がある。あれは、本物の月では無いわ。月に見える様に、細工が施されている」

 真田は、上を見上げたまま、つぶやいた。

「月……か」

「ここから、リモートで艦隊を動かす事は可能よ。難しい作戦行動は、直接人が乗って操艦する必要があるけど、単純な動きなら、目標を決めて、命令を下せば、太陽に突っ込ませる事も出来る。そうする?」

 真田は、頷いた。

「そんな事が。ならば、直ちに実行しましょう」

「待って」

 サーシャは、新見に抱きついたまま、真剣な表情で言った。

「ママが、ちゃんと助けられたって分かるまで、待って。そうしたら、士郎パパの言うとおりにするから」

 真田は、複雑な表情で、サーシャと見つめ合った。

「……分かった。君の言うとおりにすると約束しよう」

 サーシャは、真顔で頷いた。

「……ごめんなさい」

 

 惑星ファンタム軌道上――。

 

 真田たちは、その後ムサシに戻り、第一艦橋を訪れた。

「おかえりなさい」

 早紀は、真田たち一行の姿を認めると、声を掛けた。

「どうでした?」

「うん。ようやく、イスカンダルの波動砲艦隊の隠し場所を聞き出すことが出来たよ」

 早紀は、驚いて尋ねた。

「そうだったんですね! それで、いったいどこに?」

 真田は、彼女に少し笑顔を向けた。

「それは、知らない方が良いかもしれない。誰が興味を持つか分からない。知っている人間は少ない方が良いと思う」

 早紀は、苦笑いして言った。

「す、すみません。そう、ですよね」

 その時、相原は大きな声で言った。

「雪さん、島さんからのメッセージを傍受しました!」

「島さんですって!? じゃあ、イセは無事なのね?」

 状況を聞いていなかった他の面々は、相原の座席に集まった。

「どういう事だね?」

 相原と雪は、顔を見合わせていた。

「す、すいません。戦況を傍受していたのですが、皆さんを心配させると思って、内緒にしていました。イセは行方不明との報があったのですが、島さんからメッセージをキャッチして、思わず大きな声を出してしまいました」

 相原は、申し訳無さそうな顔をしている。雪は、そんな相原に報告を促した。

「そ、それより、ヤマトは無事なの?」

「はい。艦自体は無事なようです。しかし、ほとんどの乗組員が怪我を負ってしまったそうです」

 真田は、冷静に言った。

「少し、私たちにも分かるように教えてくれないかね?」

「す、すみません」

 相原は、これまで傍受した戦況を皆に説明した。

「……そうだったのか。古代にミランガルから散布してもらった亜空間リレーは、正常に機能しているようだね。それで、島は何と?」

「はい。イセとヤマトは、艦が無事だと言う事と、ヤマトは多数の怪我人が出て、艦を動かせる乗員が必要とのメッセージでした。恐らく、土方総司令に向けたメッセージだったのでは無いかと思われます。しかし、余程注意していなければ、傍受する事が難しい、暗号化した短いメッセージです。果たして、土方さんたちが受け取れたかどうか……。先程から、同じメッセージを断続的に送信しています。恐らく、連絡はまだついていないのでは無いかと思われます」

 雪は、真田の方を見た。

「真田さん、ヤマトの乗員が心配です」

 真田は、雪の方を見て、目で同意した。

「発信座標は、掴めているのかね?」

 相原は、頭を振った。

「おおよそは」

 新見は、真田の方を見て言った。

「先生、もしかして、この島くんの連絡は」

「うむ。恐らく、ヤマトは乗組員による操艦が不可能になり、運用を停止したものと思われる。島のこの連絡は、運用を再開する上級士官を求めているのだろう」

 雪は、眉をひそめて首をひねった。

「何で、イセじゃ無くて、ヤマトを動かそうとしているのでしょうか?」

「これは推測だが、ヤマトの乗組員の治療を、イセで行っているのではないかな。それで、イセの戦闘での運用が難しくなった。それに、ヤマトは波動砲を搭載している。白色彗星に対抗する為に、ヤマトの運用を再開したい……。しかし、乗組員が居なくて動かせない。そんな所じゃ無いか。運用の認証に必要なのは、航海科の士官の他に、戦術科の士官、船務科の士官、それに技術科の士官、後は……」

 ちょうどその時、第一艦橋の扉が開き、徳川が現れた。

 第一艦橋の面々は、その徳川に視線を合わせた。彼は、視線に耐えられず、頭を抑えた。

「ど、どうしたんじゃ? わしの顔に、何かついとるのか?」

 真田は、軽く笑みを浮かべると、サーシャの方を見た。

「澪、私も、君のママの救出を手伝おうと思うのだが、行ってもいいかね?」

 それには、驚いて目を丸くした新見が反論した。

「先生! 何を仰っているんですか!? 先生は、今は軍人では無いんですよ!? わざわざ、危険な戦場に向かうなんて……!」

 サーシャは、困惑して、新見の剣幕に驚いていた。真田は、不安気な彼女の頭を撫でると言った。

「戦況は芳しく無く、ヤマトで苦難を共にした仲間が助けを求めている。それに、それだけではない。これは、私たちの『娘』の為でもある」

 新見は、悲しそうな表情になって、真田から視線を反らした。

「こんな時に、澪ちゃんのことを持ち出すなんて……ずるいです!」

 真田は、何と話そうかと考えていた。その間、雪や、早紀、そして相原は、黙って様子を窺っていた。徳川はと言えば、事情が掴めず、困惑しきりだった。

「……新見くん。私はね、メ号作戦の時のことを思い出してしまったのだよ。あの時、私は最後の地球艦隊が、陽動作戦の囮だと知っていて……古代守が死地に向かうかも知れないと知っていて、彼を送り出した。今回は、戦地へ向かった仲間を助ける事が……私にも出来る事がある。同じ後悔はしたくない。分かってはくれないかね?」

「……なら、私も行きます。先生と一緒に、私も行きます」

 真田は、悲しそうな表情になった。

「気持ちは有り難いが、技術科の士官は、私だけで充分だ。それに、君には、安全な場所で、澪の事を頼みたい」

 新見は、腰を屈めてサーシャを抱き締めた。そして、悲しそうな顔で、真田を見上げた。

「そんなの、ずるいです……!」

 真田は、同じ様に腰を落として、二人の身体を抱き締めた。

「すまない。だが、私は、死地に向かうつもりは、毛頭無い。仲間を助け、そして澪のママを救い出す。必ず、ここに、スターシャ女王と一緒に戻ってくる。約束するよ」

 新見は、身体を震わせていた。彼女には、簡単に納得するのは難しい事だった。そしてサーシャは、事態を理解したのか、新見と同じ様に不安気な表情をしていた。

「士郎パパ。絶対に、約束、守ってくれなきゃやだよ。それに、薫ママを悲しませないで」

「分かってるさ」

 そんな中、徳川は、まだ事態を理解していなかった。

「すまんが、誰か、わしにも何が起きているのか、教えてくれんか?」

 早紀は、小さく笑うと、そんな徳川に状況を説明した。

 雪は、それぞれの話が落ち着いた所で、真田に話し掛けた。

「真田さん、私も行きます。ヤマトに登録済みの船務科の士官が必要でしょう?」

 真田は、立ち上がって、冷静に彼女に言った。

「いや、それには及ばない。新見くんと共に、君は残って欲しい。そして、戦況を確認し、いち早く地球に状況を伝える役割を担ってくれ」

 雪は、それでも食い下がった。

「私だって、大切な人を助ける役割を負わせて下さい。真田さんが先程言ったのと、気持ちは同じです」

 真田は、頭を振った。

「君は美雪くんの事を、第一に考えるべきだ。古代は、君が戦地に来る事を、決して望まないだろう」

 雪は、足元に絡み付いている、美雪を確認して、唇を噛んだ。

「本当に……新見さんの言うように、ずるい人になりましたね」

 真田は、真面目な顔で言った。

「かも知れない。だが、間違った事は言っていない」

「だから、ずるいって言ってるんです」

 

 そうして、数時間後、惑星ファンタムの現場に残っていたガミラス回遊艦隊のゲール少将の艦に、ムサシの乗組員はコスモシーガルを飛ばして移乗していた。

 ゲールは、苦み走った顔で、ゲールの元に挨拶にやって来た地球人たちを眺めていた。

「何で、わしがこいつらの面倒を見ねばならんのだ……!」

 サーシャは、新見の手を離れてゲールの元に近寄った。そして、少し怒ったような顔で、ゲールを見上げた。

「オジサン」

 ゲールは、途端に表情を和らげると、手揉みして言った。

「これは、これは、サーシャ様。何か御用ですか?」

 サーシャは、頬を膨らませて言った。

「皆、私の大切な人たちなの。だから、やなこと言わないの!」

「は……。はい、勿論。やなこと何て、わし、言いましたかな?」

「言った」

 ゲールは、慌てて平謝りしている。そして、気を取り直して部下に命じた。

「おい、この人たちに、居室を割り当て、案内しておけ!」

「は、はい!」

 早紀は、その時スクリーンに映るムサシの姿に見入っていた。

「相原さん、大丈夫かな……」

 

 その頃、ムサシには、徳川と真田、そして相原が残って、出発の準備を行っていた。

「徳川さんは、本当に、一緒に来て頂いても良かったんですか?」

 真田は、航海科の座席に陣取り、発進準備をしながら、機関科の席で波動エンジンの稼働を制御している徳川に尋ねた。

「わしはな、退役後は、孫の愛子の世話が出来ればそれで充分だと思っていたんじゃ。だがなあ、大きくなってからは、わしとは遊んでくれなんだ。だから、暇を持て余したわしは、このムサシの機関士に志願したんじゃよ。今だってそうだ。このムサシある所が、今のわしの居場所じゃよ」

 真田は、少し手を止めて笑みを浮かべた。そして、再び手を動かした。

 相原は、いつもの通信士としてではなく、レーダー手の席で、監視を行っていた。

「真田さん、周囲に敵影無し。連続ワープの敢行は、可能です」

「了解した。では、そろそろ行こうか」

「了解です」

「了解じゃ」

 

 ムサシは、波動エンジンを始動すると、ゆっくりと惑星ファンタムを離れ始めた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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