宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
地球艦隊が集結していた座標に、空間の歪みが発生し、そこから真っ白な輝く物体が現れた。
白色彗星は、出現座標に居た地球艦隊やガミラス艦隊を押し潰すと、そのまま逃げ惑う地球艦隊とガミラス艦隊に襲い掛かった。
空母シナノも、白色彗星の超重力に捕まり、艦の制御が困難に陥っていた。
「全艦、フルパワーで離脱しろ!」
土方の叫びも虚しく、最も白色彗星の近くにいた艦が、次々に白色彗星に飲み込まれて行き、押し潰されて粉々に四散して行った。
「土方総司令! 駄目です、本艦も完全に捕まりました。フルパワーでも少しづつ引き込まれて行きます!」
艦内の乗組員は、騒然となって対応を続けていたが、次第に絶望感が高まっていった。
「馬鹿者! まだ諦めるな!」
そうは言ったものの、状況は最悪と言ってもいい状態だった。横に立つ百合亜も、顔面を蒼白にして震えて立っていた。
「ひ、土方さん……!」
土方は、表情を歪めて、彼女の恐れを受け止めた。
「艦隊を壊滅させる訳にはいかん。何か策を考えるんだ。お前も、まだ諦めるな!」
そんな中、シナノの少し離れた位置で、同じ様に引き込まれた主力戦艦が何隻も、フルパワーで脱出しようとしている。
それを見た土方は、急いで指示を発した。
「波動砲を搭載した主力戦艦を失えば、この作戦は失敗に終わる。各艦、近くにいる艦にロッケットアンカーを打ち込んで艦を繫ぎ合わせろ! 二隻以上の波動エンジンのパワーを使えば、まだ離脱出来る! 直ちに実行しろ!」
指示に従った各艦は、相互にロケットアンカーを打ち込み合い、鎖を引き寄せて二隻以上の艦を繋ぎ合わせた。そうして、再びフルパワーで脱出を試みると、少しづつ、前に進み始めた。
「主力戦艦、各艦徐々に脱出に成功しつつあります!」
報告を聞いた土方は、少しだけほっとした様な表情になった。
「本艦の近くに、ロケットアンカーが届く艦艇が居れば、すぐに同じ事を実行するんだ!」
「駄目です、付近に届きそうな艦艇がいません!」
土方は、眉間にしわを寄せ、眼光も鋭くレーダーチャートを見つめた。
「本艦にもしもの事があれば、山南、古代の順に、生き残った艦に、艦隊の指揮を引き継ぐ。直ちに通信を送っておけ!」
土方は、作戦指揮所の中央の会議テーブルに両手をついて考えを巡らせた。そして、顔を上げると百合亜に言った。
「岬くん」
百合亜は、泣きそうな表情になりつつも、気丈にまだ土方の指示の伝達を行っていた。
「最後の瞬間まで、決して諦めるな。本艦も、他の艦と連結して脱出するチャンスがあるかもしれん。他の艦の動きを決して見逃さないようにしてくれ」
「わ、分かりました……」
百合亜は、必死に心の中で祈った。
星名くん……。
必ず、助けに行くから……。
こんな所で、死ねない……!
その時、レーダーチャートに、新たな艦影が映るのを彼女は発見した。
「土方さん! 古代さんのハルナが来ました!」
ワープから出現した主力戦艦ハルナは、白色彗星の重力圏外に、その姿を現していた。
土方は、艦隊の指揮権を移譲する候補の古代をここで失う訳にはいかないと考えていた。
「駄目だ……! 古代に、直ちにここを離れるように伝えろ」
その時、通信士は、古代からの通信を受け取っていた。
「古代艦長からの通信を受領! これより、波動砲で白色彗星を撃破するとのこと!」
「何!?」
古代は、正面に迫る白色彗星を見据えて、ハルナの乗組員に指示をした。
「直ちに波動砲の発射用意……! 続いて、特別対応を指示する」
副官の葉山は、古代の指示に驚いていた。
「ま、待って下さい! こんな所で波動砲の発射用意などしていたら、ここから逃げ出せなくなります!」
「それを今から指示する。策はある。僕を信じてくれ」
古代の表情は、至って冷静だった。とても、無謀な指示をしようとしている様には見えない。
「わ、分かりました」
そのやり取りを受けた艦の戦術長は、準備を始めた。
「波動砲発射用意……! エネルギー充填を開始」
「波動エンジン、エネルギーの充填を始めます」
ハルナは、そこで完全に停船し、全てのエネルギーを波動砲に振り向けた。
「間もなく、本艦も、白色彗星の重力圏に捕まります」
古代は、その報告に、静かに頷いた。
レーダー手は、新たにレーダーで確認した内容を報告した。
「古代艦長、前方に、土方総司令の旗艦シナノが見えます。どうやら、脱出が困難になっているようです」
古代は、レーダーの表示を少し睨むと、シナノの位置を確認した。
「シナノは、我々の艦隊旗艦だ。白色彗星への攻撃と同時に、シナノの救出作戦も展開する。シナノに接近出来るように、今のうちに位置調整。白色彗星の重力圏に入ったら、シナノにロケットアンカーを打ち込んで固定してくれ。本艦は、シナノを連れてここを離脱する」
ハルナは、舷側のロケットを噴射して、位置を移動した。そして、ちょうどシナノを正面に見据える位置につけた。
その直後、ハルナはがくんと艦体が大きく揺れた。
「白色彗星の重力圏に突入しました!」
風に流されるように、ハルナはふらふらと白色彗星に向けて吸い込まれて行った。
古代は、頭上のスクリーンに捉えた前方の映像を見た。そこには、小舟の様にシナノがふらふらとしながら、漂って徐々に後退している。白色彗星の重力圏から抜けられないのだろう。
「今行きます。土方さん……」
古代は、艦長の証である軍帽を被り直した。
「エネルギー充填、八十パーセント!」
「艦長! シナノまで、およそ後一分程度で最接近します」
着々と準備が整っていく。
古代は、冷静に命令を発した。
「航海長、ロケットアンカー射出用意! 目標、前方の空母シナノ」
「了解、ロケットアンカー射出準備! 位置調整の為、舷側スラスターを吹かします」
「古代艦長!」
副官の葉山が警告した。
「間もなく、白色彗星の重力圏から脱出不可能な位置まで接近します!」
古代は、黙ってスクリーンに映るシナノの背景に輝く白色彗星の光を見つめた。
「構わん。波動砲の発射用意を続けてくれ」
「古代さん!」
古代は、そこでようやく作戦を明かす事にした。
「恐らく、シナノの現在位置は、もはや白色彗星から離脱するには、このハルナと力を合わせても不可能だ。そこで、我々は、白色彗星を波動砲で撃破すると同時に、その反動を利用して、シナノと共に離脱する。心配するな、必ず成功する」
葉山は、古代の言っている意味を理解した。それでも、彼は艦を危険に晒す今回の作戦について、半信半疑だった。
「し、しかし、そんな方法が本当に上手く行くんですか? 未だかつて、そんな方法を試した事は無い筈です」
古代は、薄く笑って言った。
「確かに、危険な作戦だ。きっと、士官学校の教本からは削除されているんじゃないかな。大丈夫。前に試した事はあるから」
葉山は、古代の言わんとする事に気が付いた。
「……ヤマトで試した事があるんですね?」
古代は、大きく頷いた。
「そう。以前、実戦で試して成功している。僕を、信じてくれかい?」
葉山は、そこで初めて納得した顔になった。
「承知しました。用意させます!」
「頼む」
その時、航海長から報告があった。
「間もなく、シナノにロケットアンカーが届く位置まで接近します!」
「よし、ロケットアンカー用意!」
「ロケットアンカー、あと三秒で射出します!」
航海長は、狙いを定めて言った。
「射出!」
ハルナの艦内に、ずしんと響く音が鳴った。
発射されたロケットアンカーは、白色彗星の重力に気取られながらも、うねりながらシナノに向かった。
そして、シナノの両舷にロケットアンカーが突き刺さった。
「錨上げー!」
その号令と共に、ロケットアンカーの鎖が巻き取られ、ハルナは急速にシナノに接近した。
「よし、舷側に固定しろ!」
「はい! 固定完了」
目の前に、シナノの艦橋構造物がはっきりと見える。恐らく、双眼鏡を使えば、艦内の様子も覗くことが出来るだろう。
「エネルギー充填、百二十パーセント!」
「ターゲットスコープ、オープン!」
戦術長は、ターゲットを覗くまでも無く、この位置からなら、一発で命中させられるだろうと考えていた。
古代は、遂にその時が来たと判断した。艦内通信のマイクを掴むと、命令を全艦に伝達した。
「乗組員全員に告ぐ。間もなく、波動砲を発射する。これにより、強い衝撃が艦内を襲うだろう。全乗組員は、何かに身体を固定してくれ」
土方は、その時スクリーンに艦外の様子を映させた。
「古代……」
百合亜も、希望を胸にハルナの姿を見つめていた。
「良かった……! これで、助かります!」
土方は、古代から連絡を受けた作戦の内容を考えていた。
「沖田の考えた作戦とはな……。総員、直ちに身体を固定しろ。岬くんもだ。急ぎたまえ!」
「はいっ!」
土方自身も、与えられた座席に着くと、ハーネスを装着して、身体を固定した。
「総員、対ショック姿勢を維持!」
ハルナとシナノは、艦体をくっつけたまま白色彗星へと引き込まれて行った。シナノの波動エンジンは、相変わらずフルパワーで唸りを上げていたが、もはやそれも白色彗星の超重力には逆らえなかった。
「波動砲、発射用意完了しました! 総員、対ショック、対閃光防御!」
「カウントダウンを開始します!」
古代は、自身も耐閃光ゴーグルを装着した。
「波動砲発射の直前に、重力アンカーを解除。タイミングを誤るな!」
「五、四、三、二、一……!」
「重力アンカー解除!」
その瞬間、ハルナの重力アンカー装置のボルトが外れ、その大きな音が艦内にこだました。
「……発射!」
戦術長は、波動砲のトリガーを引いた。
その直後、ハルナの艦首波動砲は、大きな光を放った。
そして、波動砲のエネルギーは、ハルナの前方に向けて発射された。その反動で、ハルナとシナノは、物凄い勢いで、白色彗星から遠ざかって行った。
発射された波動エネルギーは、あっという間に白色彗星を貫き、その反対側から抜けて行った。白色彗星は、大きく膨らんだかと思うと、眩く輝き、爆発四散した。
その爆発により、白色彗星に引き込まれていた他の地球艦隊の艦艇が吹き飛ばされた。そのうちの一隻が、シナノに迫る。その光景を、肉眼で確認した古代は、シナノの艦橋構造物を、その艦が体当りして爆発するのを目撃した。
「しまった……!」
その艦の爆発により、ハルナ自身も艦首付近が大破炎上した。
「隔壁を閉鎖! 後方に注意しろ!」
バックで後ろに高速で下がるハルナは、後方にいる艦艇を避けるべく、舷側のロケットを噴射した。ぎりぎりの所で回避しながら、ハルナはシナノの艦体を連れて下がって行った。
「状況報告!」
古代は、軍帽を脱いで、額の汗を拭った。
「艦首波動砲口付近がもぎ取られてしましました! それ以外に艦体のあちこちを損傷しており、火災が発生しています! 数名の軽傷者も出ています」
「消化班と救護班を直ちに向かわせろ!」
古代は、艦橋構造物を完全に失ったシナノの姿を青ざめた表情で見つめた。よく見れば、飛行甲板も大破しており、とても艦が動く状態では無かった。
「救助隊を直ちに編成し、シナノへ派遣する!」
そこまで言うと、古代は葉山の方を見た。
「すまない。君の船を大破させてしまった」
「いえ。素晴らしい策でした。流石は古代さんです。勉強になりました」
葉山は、作戦の成功に感動して、古代を尊敬の眼差しで見つめていた。
古代は、微笑んで自分の軍帽を彼に投げた。
「こんな状態で申し訳無いが、指揮権を君に返す。僕は、これから救護班と共に、シナノの様子を見てくる」
葉山は、慌てた様子で言った。
「古代さん! シナノは、完全に大破しています。他の乗組員に任せて下さい」
古代は、そんな葉山を無視して、艦橋を出るエレベーターのあるドアに進んだ。
「すまない。土方さんの無事を確かめないと。我々地球艦隊には、まだ土方さんの力が必要だ。これは、大事な任務だよ」
そう言い残すと、古代はドアの向こうに消えた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。