宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲110 地球艦隊の壊滅Part4

「波動防壁、艦首最大展開!」

 山南の命令で、アンドロメダは、速度を上げて敵陣を強引に突破しようとしていた。

 アンドロメダは、前方で包囲していたガトランティスの艦艇に体当たりし、敵艦をまっぷたつにすると、そのまま真っ直ぐ進んだ。アンドロメダの後続には、既に波動防壁が崩壊した主力戦艦各艦が縦列隊形で後を追う。

「敵の攻撃をかわすには、速度をもっと上げるんだ! 亜光速でここを突破する!」

 しかし、包囲したガトランティス艦隊は、集中砲火を浴びせかけて来る。その為、後続の主力戦艦五隻は、次々に被弾して、艦体のあちこちに穴を空けられ、兵装に被弾して爆発を起こしたりしながら進んでいる。

 山南は、揺れる艦内で、前方を睨んで耐えていた。

「諦めるな! ガルマン帝国艦隊の陣地に辿り着けば何とかなる」

 レーダー手の橋本は、大きな声で警告した。

「艦長! 敵艦隊多数、我々に突っ込んで来ます!」

「何だと!?」

 橋本が頭上のスクリーンに映し出したレーダーチャートには、多数の敵艦が突撃してくる様子が表示されていた。

 山南は、歯を食いしばってその表示されている光点を睨みつけた。

「く……! 敵の無人艦隊か! 波動防壁を艦首に展開している本艦も、横から体当たりされればひとたまりもない。……仲村、南部! 蛇行して出来るだけ回避しつつ、敵艦隊に攻撃しろ!」

「分かりました!」

「了解!」

 南部は、無数に迫る敵艦隊の艦艇に狙いをつけようとした。

「くそ……! こちらにぶつかってきそうな奴を優先的に選択して砲撃! 全砲塔、自動追尾設定する。続いて魚雷発射管、全弾装填!」

 南部は、戦術長席のパネルを操作して、優先目標を自動追尾するように設定を急いだ。そうしながら、砲雷長の滝川にも声を掛けた。

「滝川、撃って撃って、撃ちまくるぞ!」

「南部さん、了解です!」

 そうして、設定を終えた南部は、指示を発した。

「攻撃開始!」

「主砲、及び艦首艦尾魚雷、攻撃開始します!」

 アンドロメダは、それぞれの主砲塔が目標に向けて回転すると一斉に砲撃を始めた。ショックカノンの青い光跡が伸びると、敵の駆逐艦に貫通し、更に他の艦艇にも命中した。砲撃は連続で行われ、敵の艦艇が次々に撃破されて行く。そして、艦首と艦尾の両舷から、魚雷が絶え間無く発射される。

 後続の主力戦艦からも、無事な兵装から同じ様に攻撃が開始され、山南隊の周囲は、激しい爆発や砲撃の光跡が飛び交った。

 砲撃を逃れた敵艦が、アンドロメダの頭上や艦底を、炎を上げて通り過ぎて行く。仲村による操艦で、ぎりぎり回避しているのだ。

 しかし、波動防壁を失った後続の主力戦艦は、次第に戦闘能力が失われ、最後尾にいた艦艇は、遂に速度を落として遅れて行った。

「艦長! 最後尾の主力戦艦が、機関部に損傷を受けた模様! 隊列から離れて行きます!」

 山南は、報告を聞いて眉間にしわを寄せた。

「……残念だが、まだ動ける艦の安全を優先する! 艦を止めるな! 増速して前進!」

「はっ、はい!」

 山南は、レーダーチャートの俯瞰図を睨んで状況を再確認した。

 敵の包囲網を突破するにも、体当たりする敵艦を回避する為に、蛇行運転を余儀なくされている。ここを抜けるには、まだあと五分以上はかかるだろう。その間に、後続艦は全滅する恐れがあった。

 山南は、艦長席の肘掛けを握りしめた。

 

 みんな、連れて帰りたいところだが。こいつは厳しいな……。

 

「……艦長!」

 山南は、そこで我に返った。

「今度はどうした!」

 レーダー手は、山南に笑顔を向けて来た。

「ガルマン帝国艦隊と、ガミラス艦隊の一部の艦隊が、こちらに接近して来ます! 我々の脱出を支援してくれるようです!」

 山南は、頭上のスクリーンを確認すると、レーダーチャートに、アンドロメダを目指して接近する多数の艦艇が映っていた。

「こいつは……!」

 よもや、ガミラス軍はともかく、ガルマン帝国艦隊が決死隊を編成して救助に来るとは山南も思いもよらなかった。

「よし! その艦隊と合流する! 直ちに艦をそちらに向けてくれ!」

「了解!」

 仲村は、艦の操舵を動かして、移動方向を調整した。

 数百隻のガルマン帝国艦隊と、ガミラス艦隊は、陽電子砲を放ちながら、どんどん接近して来る。

 山南隊を包囲していたガトランティス艦隊は、その攻撃を受け、陣形が崩れて行った。

「敵の包囲網に穴が出来た! そこに向け、全艦増速! 脱出するぞ!」

 アンドロメダを先頭に、山南隊は、まっしぐらに突き進んだ。ガトランティスの艦艇の間を突っ切り、加速した。そして、一分もすると遂にガルマン帝国とガミラス艦隊との合流に成功した。彼らに代わって、二つの艦隊は、ガトランティス艦隊へと攻撃を加えつつ、後退して行った。

 

 それからしばらくして、山南隊は、それぞれの艦体に多数の穴が空き、ぼろぼろになった状態で、地球艦隊の集結地点に合流した。

「リッケ総司令と、グスタフ総司令に、救援についての御礼を打電しておいてくれ」

「はい」

 ようやく安堵した山南は、軍帽を取って袖で流れる汗を拭った。そして、艦内を見回して、艦橋に居る南部を始めとした士官たちが、無事を喜び合っているのを見て微笑んだ。

「危ない所だったな。みんな、よくやってくれた。俺からも礼を言わせてくれ」

「こちらこそ!」

「お疲れ様でした」

 そう言って、みんなが元気に返答をして来た。

 山南は、艦長席の背もたれに身体を預けると、寄り掛かって目を閉じた。

 しかし、数分もすると、そんな山南の元に、士官らが集まって来た。それに気付いた山南は、身体を起こして、みんなの顔を眺めた。先程までの喜びも束の間、彼らの表情には、悲壮感が漂っていた。

「どうした?」

 彼らを代表して、南部が口を開いた。

「我々が向こうへ行っている間に、三基目の白色彗星に土方総司令の旗艦艦隊が襲われました。ほとんどの艦艇が沈むか、大破してしまったようです。空母シナノも、大破して戦闘不能です」

 山南は、呆気にとられてその報告を理解しようと努めた。

「……土方さんはどうした!?」

 山南は、真っ先にそれを確認した。

「土方総司令を始めとした生存者は、シナノから救出され、現在主力戦艦ハルナで治療を受けています。総司令も、骨折などの重症を負っているようです」

 いつも強気の南部が、表情を歪めている。よほどショックだったのだろう。

「山南艦長! 地球艦隊は、事実上の壊滅状態です……! もう、作戦遂行は困難だと思います!」

 山南は、内心では、南部と同じ様にショックを受けていたが、指揮官として出来るだけ落ち着いたふりをしなければならなかった。

「……その判断をするのは、お前じゃない。まずは、残存艦艇の状況を確認して報告してくれないか?」

 南部は、感情の高ぶりを抑える為、少し沈黙した。気を落ち着かせた彼は、もう一度報告を行った。

「はい……。戦闘継続が可能な艦艇ですが、駆逐艦十五、巡洋艦九、戦艦五。戦艦の数は、本艦を除いています。その他の残存艦艇は、何れも大破、または中破した状態で、乗組員に多数の死傷者が出ており、戦闘継続が不可能と報告を聞きました。本艦も中破し、艦体や兵装に多くの損傷を受け、多くの死傷者が出ています。無理をすれば動けなくもありませんが、とても万全とは言えない状態で、やはり戦闘継続が困難だと私は思います」

 山南は、南部と目を合わせて視線を交わした。南部の瞳は、恐怖心が顕になっていた。先程の死地からの生還によって助かった所に、艦隊の壊滅を知り、戦意を大きく削がれてしまったのだろう。

 

 俺だって同じだ……。

 

 山南は、恐怖を顕にする彼らに同情こそすれど、指揮官たる立場は無情だった。

「古代とリッケ総司令に連絡をとろう。ハルナとミランガルに通信を繋いでくれ」

 山南を囲む乗組員は、そこを動かなかった。みんな、目を下に向けて、項垂れている。

「復唱はどうした! これは命令だ!」

 通信士の佐藤は、山南の怒号で慌てて席へと戻って行った。

 その他の者は、それぞれが今の事態を不安そうに語り合っている。

 山南は、ため息をついて彼らに何も言わずにそっとしておく事にした。

 しばらくして、通信が繋がり、頭上のスクリーンに、古代とネレディアがそれぞれ映っていた。

「リッケ大佐。我々の救援に動いてくれて感謝する」

 山南は、軍帽を脱いで頭を下げた。

「気にするな。無事で良かった。何より、あなたまで失えば、この作戦の継続は困難になると判断して、救援を決めた。本当に助かって良かったよ」

 山南は、ぼろぼろのアンドロメダに戦闘を継続させようとする彼らの意図を確認して、苦笑いで応えた。

「私は土方総司令は、まだ生きていると聞いている。古代、詳しい状況を話せるか?」

 古代は、頷いた。

「土方総司令は、右腕上腕部からの複雑骨折と、頭部への裂傷と打撲、その他に、全身に軽微な火傷を負っている状態です。しかし、命に別条はありません。意識もありますが、何よりも、この状況に非常に強い責任を感じていらっしゃいます。私は、そちらの方が心配です」

 山南は、小さくため息を漏らした。

「指揮権に関しては、土方さんは何と言っている?」

「山南さんに引き継ぐと聞いています」

「あの土方さんがね……。分かった。現時点をもって、俺が指揮を執る」

 山南は、ネレディアに話しかけた。

「リッケ大佐。聞いての通りだ。地球艦隊の指揮は、私が継承する。正直、部下の士気も大幅に低下しており、作戦継続にも支障が出ていると認識している」

 ネレディアの脇に黙って立っていたランハルトは、前に出て話し出した。

「撤退する気か? それでは、スターシャ女王を始めとしたイスカンダルの皇女たちの救出だけで無く、君たちの兵士の救出も断念する事になる」

 ランハルトは、決然とした表情で山南に戦闘継続を迫る気だった。

 山南は、目を閉じて頭を振った。

「そうした方が、私の部下も安心するだろうな」

 ランハルトとネレディア、そして古代も、山南の決断を固唾を呑んで見守った。

「だが、ここで退いても、ガトランティスはいつか地球にもやって来るかも知れない。単に、戦いを先延ばしにするだけだ。ならば、ガルマン帝国と共に、ここでガトランティスを倒す……。あなた方と同じ様に、それが最善の策だと、私も考えている。何より、この事は、この戦いの前から土方さんに口を酸っぱくして言われているからな」

 ランハルトとネレディアは、スクリーンの向こうで、明らかにほっとしていた。ネレディアは、そこで山南に提案した。

「あなたの判断に感謝しよう。相談だが、ここからは、立場を入れ替えて、我々ガミラス軍が、地球艦隊の指揮権を持つべきだと考えている。そちらの軍の損害を鑑みての判断だ。我々の艦隊は、まだ数十隻を失っただけで、全体から見て、そちらほど損害は大きく無い。あなたが了承すれば、の話だが」

 山南は、憮然とした表情になった。

「……その話は、到底受け入れられない。艦隊の規模が縮小した今、尚更我々独自の判断で動きたい。必要なら、撤退を何時でも決断できるように。そうしなければ、私も、部下を従わせるのは困難だ」

 ネレディアは、腕を組んで思案している様子だった。

「……言いたい事は分かる。話は分かった。こちらも、独自の判断をここからはしたい。地球艦隊の指揮下から外れるが宜しいか? 無論、共闘体制は維持すると約束しよう」

「ああ。我々も、それで構わない」

「決まったな。では、地球艦隊の幸運を祈る」

 スクリーンから、ネレディアの姿が消えた。

 古代は、まだスクリーンに映っていた。

「……これから、どうしましょうか?」

 古代の問いに、山南は思案した。古代を、残存艦艇の指揮官に据えるというのも一案だった。しかし、ここまで艦隊の数を減らした今、その意味は無いと山南は判断した。

「古代。大破した艦艇を撤退させたい。お前が指揮をとって、ここから離れて安全な場所に連れて行ってくれ」

 古代は、本当にそれで良いのか不安になった。

「し、しかし。それでは……」

「あとは、敵の白色大彗星を何とかするのが、俺の役割だ。あれの、真上と真下を攻撃すればいいんだよな? 今ここには、ヒエイなどの五隻の主力戦艦が無傷で残っている。それだけで何とかするさ。他は、無事な艦も護衛で連れて行け」

 古代は、目を丸くした。

「アンドロメダと、五隻の主力戦艦だけで残ると仰っていますか?」

 山南は頷いた。

「あとは、ガミラスのリッケ大佐と上手くやるさ。これで駄目なら、どちらにせよ、撤退するしか無いんだからな」

 古代は、苦渋の決断をすることになった。山南たちを戦場に残して、自分がここを退く事が本当に良いのか。

 そして、彼はガトランティスのミルとの約束が頭をよぎった。今、自分が居なくなっても、山南たちがやることは変わらない。それは分かってはいたものの、本当にそれで良いのか。

 古代は、しばらく黙ったまま、決断を迷っていた。

 ハルナのスクリーンの向こうには、山南の隣に、南部が顔を出した。南部は、さも何でもないことの様に言った。

「古代。ここは、俺たちに任せてお前は安全な所に行け。地球艦隊最強の宇宙戦艦、アンドロメダとこの俺がいる。お前が心配する事なんて、何もないぞ」

 古代は、いつもの強気な南部の姿を見て、ほっとさせられた。

「南部……。ありがとう。気をつけろよ?」

「あったり前だろ? お前こそ、気を付けて行けよ」

 古代は、微笑んで南部に対して頷いた。

「山南さん。ご命令を受諾します。これより、古代一佐は、地球艦隊の残存艦艇を率いて安全地帯に撤退します!」

 三人は、それぞれ敬礼をして、通信は終了した。

 通信が切れたあと、南部はふうと息を吐き出した。

「さっきと、言ってることが違うじゃないか」

 山南の指摘に、南部は頭をかいた。

「そ、そうでしたっけ? これから、また忙しくなりますね。艦体の損傷の復旧作業の様子を見ておきます」

 そう言って、南部は艦長席のそばから離れた。

 山南は、南部が以前から古代をライバル視していたのを思い出した。あれが彼の、精一杯の強がりだったのだろう。

 山南は、艦長席のパネルに置いた軍帽をとり、もう一度被り直した。

「さあて、もうひと頑張り、やってみるかね」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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