宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
ガルマン帝国本星でも、頭上の白色大彗星が眩く輝き、爆発したかの様に見えていた。
街路や、総督府の前の広場に集まった帝国の人々は、それを見上げて口々に言った。
「見ろ! あそこの敵の本隊が爆発したぞ!」
「キーリング参謀長官が、やってくれたのか!?」
街頭などに設置された巨大なテレビモニターには、マスメディアが配信する緊急放送が始まっていた。アナウンサーは、深刻な表情で、説明を始めていた。
「帝国軍のキーリング参謀長官から、戦闘の模様を放送する許可が降りました。これから、ご覧入れる内容は、三十万キロ上空の月軌道付近のライブ映像です」
人々は、その映像を見てどよめいていた。
「やったのか!?」
「我々の帝国軍が勝った!」
「いや、まて、あれを見ろ!」
白色大彗星だったものの輝きが収まって来ると、それは、炎を上げながらばらばらに分解している。周囲の空間にはその分解した物が激しく火花を散らしながら燃え盛っていた。そして、その中心から、何かの影が現れ始めた。
「な、何だ!?」
「あれはいったい……!」
「何か、中にあるぞ!」
その頃ヤマトは、波動エンジンを始動して、白色大彗星の周囲を確認しようと接近していた。
「おもーかーじ」
島の操艦で、ヤマトは滑るように白色大彗星の周囲を回り始めた。そのヤマトに従うように、航空隊の機体がついて行く。
土方は、外の様子を頭上のスクリーンで確認しながら言った。
「そのまま、周囲を回り、状況を確認しろ。それから、相原、山南やリッケ大佐、グスタフ中将に通信回線を開け!」
「分かりました!」
古代は、一通りの攻撃準備を終えると、白色大彗星の様子を肉眼で確認した。燃え盛るそれは、次第に光が収まって来ていた。
「島! 見ろ、あれを!」
古代の指差す場所を、島も確認した。
「どうやら、爆発した訳じゃなさそうだな。さっきの攻撃、やっぱり成功したんだな?」
「恐らく……!」
古代は、真田に声を掛けた。
「真田さん、あの中に、何かある様に見えます。確認出来ますか?」
真田は、ようやく手を止めると、皆に状況を報告した。
「どうやら、白色大彗星の弱点を突くのには成功したようだ。間もなく敵の大要塞が姿を現すだろう。あの、燃え盛る物は、要塞の外装を外して投棄しているものと推測される。我々がこれまで知っているガトランティスの大要塞は、鋼鉄で出来た球体だった。もしかしたら、全く違う姿を現すのかも知れない」
デウスーラは、デスラー砲を発射した座標から動かず、艦体はその輝きに照らされていた。
「総統。攻撃は成功の様です」
デスラーは、満足気に頷いた。
「しかし……あれは何だろうね。変なものが、中から現れているようだが」
タランは、スクリーンの映像を拡大して、その様子を確かめた。
「これは……!」
分解した外装の中から、それは出現していた。燃え盛る外装の炎は、次第に消えて行き、その姿が明らかになった。
それはまるで、高層ビルの立ち並ぶ摩天楼だった。
彗星化する為に設けられた外装を剥がしたそれは、上部に、巨大な都市を大地から切り取ったかのように、ドームに覆われた高層ビル群の姿があった。そして、下部には、月を半分に切り取ったような小惑星が、ビル群を支えているようだった。
ヤマトでは、その異形の姿を確認しながら、周囲を回っていた。その光景を見たヤマトの乗組員も、あまりの異様な敵の要塞の姿に圧倒され、唖然として見守るしかなかった。それは、流石の土方も例外では無く、開いた口が塞がらないといった様子で見つめていた。
相原は、その時土方に報告した。
「味方の各陣営に通信回線が繋がりました」
「スクリーンに出せ」
しばらくすると、スクリーンに山南とネレディア、そしてグスタフとキーリングの姿が映った。山南は、土方の姿を見て、破顔して笑っている。
「土方さん! ヤマトは、無事だったんですね? 何だってまた、そんな所に居るんです!?」
土方は、苦笑して頷いた。
「いろいろあったんだ、山南。今は時間が無い。その話は後でな。キーリング参謀長官、グスタフ総司令、そしてリッケ総司令。どうにか、敵の彗星をあのような姿にする事に成功しました。これより、我々は、人質救出作戦を実行に移します。ついては私からの提案が」
グスタフは、キーリングと目を合わせてから、その話しに即答した。
「ならば、白色大彗星に飲み込まれなかった残りの敵と、後方に下がったガトランティスの三千隻の艦隊は、我々が相手をしましょう。あなた方は、出来るだけ速やかに、あの敵の要塞から人質を奪還して下さい」
土方は、まだ何も話していないにも関わらず、話をくんでくれたガルマン帝国の二人に、心から感謝して敬礼を送った。
「感謝します。本当にありがとうございます」
そしてネレディアも、それに同調してくれた。
「我がガミラス正規軍は、バーガーの艦隊がガルマン帝国艦隊に協力しよう。ただし、このミランガルと配下の駆逐艦八隻は、地球艦隊と行動を共にし、共同で救出作戦に当たる」
「ありがとう。両者共に、地球艦隊を代表して、礼を言わせて下さい」
キーリングは、頭を振ってそれに答えた。
「お礼を言うのはこちらの方だ。命懸けで戦ってくれたあなた方に、本当に感謝している。我々は、人質救出の成功を心から願っている。全てが終わったら、是非とも、あなたがたと直接顔を合わせて礼を言わせてもらいたい」
土方は、キーリングとグスタフとの間に、いつの間にか信頼が築き上げられ、絆のような物が生まれていたのを知った。それは、多くの部下の犠牲の上に、地球の未来が託されているのだと、強く感じるやり取りとなった。
「……私も同じ気持ちです。その時は是非とも」
グスタフとキーリングも、画面の向こうで敬礼を返した。
「互いの健闘を祈る」
そして、画面から消えて行った。
「これから、バーガーにガルマン帝国艦隊と共に敵艦隊を殲滅するよう指示を出す。ここからは、我々があなた方と行動を共にする。よろしく頼む」
ネレディアは、そう言い残すと、通信を切断した。
最後に残った山南は、にやりと笑った。
「土方さん。たった今、あなたに指揮権をお返ししますよ。よろしくお願いします。俺たちは、まずはブラックホールを作る敵の機動要塞の撃破に動きます」
山南も、敬礼して画面から消えて行った。
土方は、消えたスクリーンを見つめて、しばらくそのまま敬礼の姿勢をとって思いを巡らせた。
死んで行った沢山の部下や仲間たち。
いつの日か、自分もそちらに行く時が来る。
しかし、今はまだ、俺にはやらねばならん事があるらしい。
済まないが、もう少し、待っていて欲しい……。
土方は、敬礼していた手を下ろして、艦内を見渡した。
その時、ガトランティスの要塞から、その場にいる者全員へと、映像通信が入っていた。
その映像に映る中年の女、カミラは、可笑しくて堪らないといった様子で笑っていた。一頻り、その笑い声がその場に集まった各国の艦隊や、ガルマン帝国本星の民衆へと響き渡った。彼女は、ようやく笑いを抑えると、狂気じみた瞳を正面に向けた。
「……妾は、女帝ズォーダー。ここまでは良くやったと、褒めてやろう。この、要塞都市帝国は、これだけで充分に強力な兵器として機能する。汝らは、先程の我ら大帝の選択を反故にし、戦いを挑んで来た。その事を、これから大いに後悔する事になるであろう。そして、こちらには、イスカンダル人たち人質がいるという事を、忘れるでない。汝らが、如何に愚かだったか、これより存分に思い知らせてやろう……」
カミラは、横を見ると兵士たちに命令した。
「人質を、全員ここへ連れて来るがいい! 奴らが攻撃を止めねば、一人づつ処刑する所を見せてやるのだ!」
その時になって初めて、カミラは、ミルの姿が何処にも無いのに気が付いた。
「どうしたことか? 大帝は、何処にいる!?」
カミラは、まだ映像通信が繋がっている事に気付くと、慌てて切断させた。
「いったい、どうなっているか!? シーラ、大帝は何処だ!?」
シーラは、落ち着き払って言った。
「残念ながら、私も存じ上げておりません。しかし、先程の混乱の後からお姿が見えない様子。私の予想では、大帝は最下層へとエレベーターで降りて行ったのではないでしょうか? 日頃から、大帝は、随分とイスカンダル人の人質にご執心でしたから」
カミラは、血相を変えて言った。
「どういう事!? あなたは、何をのんびりしているの!? 直ぐに探しに行かなければ! ゲーザリー、ここは、あなたに任せます。私は、最下層へ向かいます」
ゲーザリーは、訝しげな表情になったが、直ぐに言った。
「……仰せのままに」
カミラは、急ぎ足で司令制御室を出ようと去って行った。その後から、静かにシーラは着いて行く。
古代は、先程のカミラの様子を見逃さなかった。土方を振り返ると、彼は確信を持って言った。
「先程の女帝の話ですが、恐らく、大帝である、彼が行動を開始したものと私は考えます」
土方は、大きく頷いた。
「我々は、それを信じて動くしかないな」
「しかし……土方艦長、いったいどうやって救出作戦を実行に移せばいいのでしょうか?」
土方は、腰を艦長席に落とすと、頭上で切り替わったスクリーンに映る要塞都市帝国を睨んだ。同じ様に都市を眺めていた百合亜は、素朴な疑問を口にした。
「あそこって……ガトランティスの一般市民が住んでいるんでしょうか……?」
島も、その様子を眺めた。きらびやかなビル群には、人の営みがあるのか、ちらちらと光が見え、動いている物も見える。
「どうやら、そうみたいだな。あそこを攻撃したら、一般市民の命を危険に晒す事になるみたいだ」
古代も、それを見て思案していた。
「そういえば、惑星ファンタムでミルと話をした時に、一般市民の話を聞いた。ガトランティスといえども、当然、家族や、子を生んで育てるという営みがあるに違いない。ガトランティスにも、普通の人々が大勢いる……。当たり前の事ですが、これまで、あまり考えが及びませんでした」
土方も、同じ様に考えていた。
「と、なると……。人質を救出したとしても、あのような都市の姿を見せつけられてしまった今、波動砲でただ撃破すると言う訳には行かなくなったな」
艦内は、しんと静まり返った。
「戦況次第だが、まずはあの都市は攻撃対象から外そう。上部の都市と、下部の小惑星のような部分の間に、リング状の部位があるな。あれは武器だろうか?」
真田は、映像を拡大して観測した。
「そのようです。エネルギーが増大し始めており、何らかの武器システムが搭載されているものと推測されます」
土方は、このやり取りから、決断を下した。
「よし、まずは航空隊を偵察に出そう。我々は、侵入路を探して内部に救出部隊を送り込まねばならない。しかし、その前に、都市部、小惑星部の双方を偵察して、それを探すと共に、敵の攻撃力、防御力を探る。直ちに航空隊を二手に分け、偵察を行わせろ」
「分かりました!」
古代は、早速、既に発艦した航空隊に呼び掛けた。
「加藤、篠原! 航空隊を二手に分け、要塞都市帝国の偵察をしてくれ。目的は、内部への侵入路の捜索と、攻撃力、防御力の偵察だ。どのような敵の攻撃があるか、現時点で不明だ。判断は任せるが、充分に注意してくれ。また、上部の都市部への武器使用は、ガトランティスの一般市民に死傷者が出る事が考えられる為、今は許可出来ない。そのつもりで」
「分かった」
「了解、戦術長殿!」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。