宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
何年ぶりかで山本は、コスモゼロα2の機体に乗り、ヤマトのカタパルトで待機していた。その山本の頭上を、加藤や篠原たちのコスモタイガー隊が高速で駆け抜けて行く。古代の指示で要塞都市帝国の偵察に向かう為だ。
ヤマトのもう一方のカタパルトには、揚羽がα1に乗って待機している。その揚羽から、山本に通信が入っていた。
「山本さん、篠原さんたち、大丈夫でしょうか?」
山本は、鼻を鳴らして言った。
「あんた、あいつ等を誰だと思ってるの? そんな事より、その機体を任されたからには、あんたの腕を戦術長の古代さんが買ってるってこと。期待に応えられるように頑張んな」
揚羽は、大役を任されたような気がして、プレッシャーを感じていた。
「わ、分かってます……!」
その昔、ヤマトがイスカンダルへの大航海に向かった時、山本も同じ様にその腕を買われ、この機体を任されエースパイロットの称号を獲得したと言う。古代と二人、何度も危険な任務を乗り越えたのは想像に難くない。揚羽は、その事を思うと、自然と質問を口にしていた。
「……この機体って、以前古代さんが乗っていたって聞きました。確か……古代さんと山本さんのお二人だけが使ってたんでしたよね?」
山本は、意識しないように、思い出さないようにしていた記憶を、あっさりと揚羽に呼び起こされた。
主計科に所属していたにもかかわらず、勝手にコスモゼロを使って飛び出したあの時、古代に怒られるかと思いきや、その腕を買ってくれて戦術科への異動を勧めてくれた。あの時の古代の表情は、今でも鮮明に思い出す事が出来る。
そんな事を考えている自分に、山本は苛ついていた。
「……だったら何?」
揚羽は、明らかに腹を立てている山本に萎縮していた。惑星エトスでの潜入任務など、山本と何度も行動を共にして来たが、どうやら自分は彼女に嫌われているのかも知れない。彼の漏らしたため息は、通信回線を通じて山本のヘルメットのスピーカーからも聞こえていた。
それを聞いた山本は、何も関係の無い揚羽に腹を立ててしまった自分に、嫌悪感を感じていた。
「……揚羽。コスモゼロは、今ではもう、この世に二機しか無い特別な機体だけど、量産型のコスモファルコンや、コスモタイガーよりも、運動性能は圧倒的に高い。誰が使っていた機体かなんて今は気にする必要はない。何故私たちがここに残されたか考えなさい。私たちの今の任務は、ヤマトの防衛。それだけだから」
「は、はいっ!」
加藤と篠原は、コスモタイガーを駆り、それぞれ部隊を二つに分け、先頭を飛んでいた。コックピット越しに合図した二人は、要塞都市帝国の都市部と小惑星部とに分かれた。それぞれの機体の後には、彼らの部下たちの機体が編隊を組んで着いて行った。
篠原は、都市部の方へと沢村たちを連れて向かった。ドームに覆われた都市のビル群からは、反撃がある訳でも無く、彼らは飛行を続けて観察した。
「篠原さん! 見てくださいよ。大勢の人が逃げ惑ってるみたいです!」
沢村からの通信を聞くまでも無く、篠原もその様子を確認していた。多数のガトランティス人と思われる人々が、ビルの間の道を逃げ惑い、群衆は何処かに隠れようとしているらしかった。
「どうやら、俺たち怖がらせちゃってるみたいだね」
「そうみたいですね……」
ビル群は、何層もの階層が積み重なっているらしく、ビル群の上に更にビル群がある構造になっている。人々は、奥へ奥へと入ろうとしているようだった。
その頃、ゲーザリーには、次々に戦闘準備の完了報告が届いていた。
「高射砲台準備完了!」
「回転砲台、エネルギー充填五十パーセント」
「戦闘機隊、発艦準備完了!」
ゲーザリーは、大きく手を振って指示を出した。
「ぐずぐずするな! 急ぐのだ!」
「参謀長! 市民がパニックを起こしているようです! 都市部で暴動のような動きがあります!」
ゲーザリーは、苦々しい表情で言った。
「直ちに治安部隊を派遣して鎮圧しろ! 要塞都市帝国の防御は簡単には破れないと伝えるのだ!」
その時、篠原には真田から通信が入っていた。
「こちら篠原」
空電音に続けて、真田の声が聞こえてくる。
「真田だ。そのドーム状の物だが、センサーによる調査によれば、ドームの表面に、何らかの防御壁が張り巡らされている。簡単に言うと、ヤマトの波動防壁みたいな物だ。あまり接近しない方がいい。触れれば、機体は分解してしまうだろう」
篠原は、口笛を吹いた。
「了解、真田さん。アドバイスどうも」
通信が切れた後、篠原は部隊全体に警告した。
「みんな聞いた? あんまり近寄るなよ」
篠原の部隊のコスモタイガーは、ドームから少し離れて飛行を続けた。
しかし、突如銃撃が彼らを襲った。
彼らは、編隊を少し崩すと、その銃撃を避けようと、翼を傾けて移動した。その間を、細いビーム砲の光跡が通り過ぎて行く。そのビームを放った対空砲台は、複数のビル群の上に現れると、次々に攻撃を開始した。
「敵の対空砲だ! ここからは、三機づつの編隊に分けて散れ!」
篠原の機体にも、その砲撃が迫る。彼は、機体を傾けてぎりぎりの所を避けた。
「危ない、危ない。みんな、あんなのに当たるなよ!」
どうやら、そのビーム砲は、ドームを壊す事無く貫通して彼らを襲っていた。沢村は、それを確認して疑問を漏らした。
「どうなってんだ。なんでドームが壊れないんだ?」
篠原は、操縦桿を思い切り引くと、機体を垂直に上昇させた。
「ヤマトの波動防壁と同じ仕組みなんだろ! みんな、少し離れるぞ! 遅れずに俺に着いて来い!」
篠原は、機体を上昇させ続け、都市の一番上まで見渡せる位置まで辿り着いた。そこからは、頭頂部と思われる部分に、丸い穴のような物が見えた。そこは、溶けて黒焦げになっており、少し煙が立ち昇っていた。そしてその縁は、まるでガラスを切り取ったかのような跡が生生しく残っている。
「あれって……!」
沢村の声に、篠原は答えた。
「例の循環路って奴だろうな。恐らく、あそこを波動砲で撃ち抜いたってことじゃない?」
「だったら、あそこから、中に侵入出来ませんかね?」
「ちょっと、様子を見てみるか」
篠原は、コスモタイガーの機体を傾けると、要塞都市の頂上を目指した。対空砲の光跡が激しくなる中、篠原は巧みにそれをかわしながら、真上から穴を撮影した。
映像を早速ヤマトへと送ると、真田から直ぐに返事があった。
「篠原、その穴だが、隔壁で閉鎖されているようだ。ヤマトの主砲で砲撃すれば破壊出来そうに見えるが、恐らくドームを覆う防御壁に阻まれるかも知れない」
その時、機体のレーダーが敵影を捉えていた。
「お客さんみたいだ。どっから出て来たんだ?」
レーダーには、数百もの敵機イーターⅠが飛来して接近しているのが映っていた。
「各機、応戦しつつヤマトへ戻るぞ! 空対空誘導弾用意! 確実に敵機だけを狙うんだ。間違って都市部へ落とすなよ!」
一方加藤率いる部隊は、小惑星部の方の偵察を開始していた。彼らは、眼下に小惑星部を見ながら、編隊を組んで観察を行っていた。
坂本は、月の表面の様なクレーターが広がるその光景を見ながら、加藤に通信で呼び掛けた。
「加藤隊長! 何も無いですね。ちょっと攻撃してみますか?」
加藤は、口をへの字にすると返答した。
「まだだ。何も無い所に撃ってどうすんだよ! ミサイルを無駄に使うんじゃない!」
しかし、その時機体のセンサーは、小惑星部の表面に何かを捉えていた。
「くっ……! あれは敵の砲台だ! 各機散開して三機編隊に分かれろ!」
加藤は、坂本のコスモタイガーを連れて大きく旋回した。そこへ、小惑星部から露出した砲台から発射された、強力な陽電子砲のビームが通り過ぎて行く。
「危ねえ。あれにかすっただけでも一溜まりもねぇぞ! みんな気をつけろ!」
その時、坂本は、加藤の編隊から離れて、小惑星部へと急速に下降を開始した。
「坂本! 勝手な事をするな! 直ぐに戻れ!」
坂本は、加藤の警告を無視して、小惑星部の表面に沿って低空で飛行した。
「あんな砲台、直ぐに破壊した方が良いに決まってる! 隊長、ちょっと待ってて下さい!」
「坂本! 貴様! 俺の言う事を聞け!」
坂本の機体は、そのまま飛行を続け、機体のレーダーが陽電子砲の砲台を捉えていた。
「空対地誘導弾を選択……!」
坂本は、正面のパネルをタッチして、兵装の選択を行った。そして、操縦桿に備え付けられたトリガーを直ちに押した。
坂本のコスモタイガーの機体下部のパイロンから、一発の空対地誘導弾が離れると、直ちにエンジンに点火して飛び去った。そのミサイルは、小惑星に沿って飛行し続けると、砲台の間近で少し上昇し、まっしぐらに目標に落ちて行った。
大爆発を起こした砲台は、木っ端微塵になって残骸を宇宙に散らした。
「へへっ……! 余裕だぜ」
しかし、その坂本の背後には、敵のイーターⅠの機体がわらわらと迫っていた。ナビシステムから、多数の敵機からのロックオンを示す警告音が鳴り響いている。
そして、イーターⅠは、続々と複数のミサイルを放つと、急速に坂本の機体を襲った。彼は、機体をきりもみさせてフレアを放ち、何発かミサイルを回避したものの、今度は複数のイーターⅠに背後を突かれて追跡され、機関砲による銃撃を受けた。
「や、やばい……!」
顔面が蒼白となった坂本は、慌てて操縦桿を引いて上昇しようとするも、そこにも敵機が迫っていた。
「かっ、囲まれた……!」
しかし、坂本の頭を抑えていた敵機は、突如として次々に被弾すると、小惑星部へと落ちて爆発した。
加藤たち航空隊の多数の機体が、坂本の周囲に飛来すると、坂本を追っていたイーターⅠの更に背後を取った。加藤は、正面に捉えた敵機に向け、操縦桿を巧みに操作し、照準を合わせた。その瞬間、トリガーを引くと、機首に備え付けられた機関砲から大量の弾丸が吐き出された。そして、加藤の僚機も機関砲弾を放つと、イーターⅠは次々に被弾してばらばらになった。
加藤は、坂本の機体の横に並ぶと、手を振って上昇する様に指示した。
「か、加藤さん……! ありがとうございます」
「この馬鹿野郎! 二度と勝手な真似をするんじゃねぇ! 良いから早く上昇しろ! ここじゃ、直ぐに敵に囲まれるぞ!」
加藤たちは、急いで上昇すると、次々に現れる敵機との交戦を続けた。
その頃ヤマトでは、真田が自席のセンサーの表示の確認を続けていた。
「たった今、要塞都市帝国の側面のリング状の部位が回転し始めた。エネルギー反応もかなり高まっている。間もなく、何らかの武器使用が行われる兆候だと思う」
それを聞いた土方は、急いで島に指示した。
「本艦を、下降させろ! 急げ!」
「はいっ!」
島は、思い切り操舵を押し込んだ。その操作により、ヤマトは、急激に艦首を下げて下降し始めた。
その瞬間、要塞都市帝国の側面のリングから、強力なレーザー砲が発射された。ヤマトの真上を、そのエネルギー弾が通過して行く。その砲撃は、角度を変えながら止まることなく次々に発射された。
真田は、早速分析した情報を艦内に伝えた。
「あの砲は、機動要塞ゴルバに搭載されているものと技術的には同じ物だ。しかし、出力が段違いにアップされている。しかも、連射可能となれば、波動防壁は簡単に突破されてしまう可能性が高い」
それを聞いた土方は、即座に指示を出した。
「いかん……! 本艦を、要塞都市帝国の下部へと移動させるんだ。あの砲撃から逃れるには、それしかない!」
土方の命令に、島は急いで応えた。
「了解、波動エンジン全開、よーそろー!」
ヤマトは、波動エンジン噴射口を輝かすと、急速に下降しながら前進して行った。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。