宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲124 逃亡Part2

 要塞都市帝国最下層――。

 

 ミルは、先頭に立って先を急いでいた。

 奥の通路を一行は駆け抜けて、科学奴隷の研究施設へと辿り着いていた。相変わらず、何故かそこはもぬけの殻だった。アナライザーは、頭のメーターを色とりどりに光らすと、彼らに言った。

「今、ココニハ誰モ居ナイヨウデス」

 ゼール中佐は、一行を振り返ると、小声で言った。

「ここからは、あちらにある艦船格納庫へ向かうエレベーターに乗ります。そこまで辿り着いたら、私の船に乗って下さい。私の部下たちもあなた方の味方です。どうぞご安心を。後は、隙きを見てここから船を出します」

 こうして一行は、足早に艦船格納庫へのエレベーターの前へと進んだ。

 しかし、そのエレベーターから、ガトランティスの兵士が五名、雪崩込んで来た。

 先頭にいたゼール中佐とミルは、慌ててスターシャたちを振り返った。

「何処でもいい! 物陰に隠れて!」

 スターシャたち一行は、慌てて科学奴隷の研究施設のデスクの陰に隠れた。そして、ミルとゼール中佐も、同じ様にデスクの陰に隠れた。

 ミルは、そこで唇を噛んだ。

 間に合わなかったか……。

 その兵士たちは、ミルに交代でついていた近衛兵のメンバーだった。ミルにも、そのほとんどが見知った顔だった。彼らは、ゆっくりとミルとゼール中佐の方へと近付いてくる。

 ミルは、やむを得ず、物陰から彼らに話し掛けた。

「なんだ君たちは。何をしに来たんだ?」

 ミルは、毅然とした姿勢を見せようと、試しにそう言ってみた。しかし、相手は一斉に銃を構えて、ミルが隠れているデスクに向け、照準を合わせた。

「大帝。あなたこそ、こんな所で何を? 我々は、現在敵との交戦中で、あなたがこんな所に来る理由がありません」

 彼らは、ゆっくりと前に進んで来て、もはや逃げる訳には行かなくなった。

 その兵士たちの表情は、暗い笑みを浮かべており、狂気を感じさせる。ミルは、そのような表情を、少し前に見たばかりだったのを思い出した。司令制御室にいた兵士たちも、あんな表情をしていたのだ。

「……イスカンダル人の人質をこちらに引き渡して下さい。大帝。あなたが今やっている事は、重大な背信行為です」

 まるで感情の無い声だ。不審に思ったが、ミルは、仕方なく聞いた。

「嫌だと言ったら?」

「あなたを逮捕します」

 そう言うと、一斉に銃撃が始まった。隠れているミルのデスクは、穴だらけになって行く。

「それが、逮捕しようっていう態度か!?」

 ミルは、やむを得ず応戦した。ゼール中佐も加勢し、銃撃戦が始まった。

 その時、斉藤はデスクを持ち上げると、デスクの足を掴んだ。そして、そのまま身体をデスクで隠しながら、近衛兵に向かって突進した。

「うおおおお!」

 近衛兵たちは、標的を向かって来るデスクに変えて銃撃を加えるも、目前まで迫ったそれを止める事は出来なかった。

 すると、そのデスクの後ろから斉藤に着いてきた星名がそこから飛び出した。星名は、近衛兵の一人に飛び掛かり、斉藤は、デスクを他の四人に叩き付けた。それを切っ掛けに、ミルとゼール中佐も飛び出して、二人に加勢した。斉藤は、一人の兵士を両手で力尽くで持ち上げると、他の兵士に投げつけた。ぶつかり合った兵士たちは、その強い衝撃であっという間に気を失った。

 星名も、兵士に馬乗りになって首を締め付けており、やがて意識を失わせるのに成功した。ミルとゼール中佐は、残りの二人に銃撃し、手足を撃たれた兵士たちは、あらぬ方向へ歩き出そうとおかしな動きをしていたが、やがて崩れ落ちて動かなくなった。

 星名と斉藤は、肩で息をしながら立ち上がると、一人一人兵士が間違いなく意識を失っているか確認した。

 星名は、そのうちの一人の異変に気が付いた。

「こっ、これは……!?」

「んー? どうした、星名」

 その頃には、透子も、イスカンダルの三姉妹も集まって、その様子を確認していた。

「この人たちは、ロボット……なのか?」

 星名が示したのは、一人の兵士の肩の部分だった。肩から腕の部分が外れており、体の中から機械が覗いていた。ミルも、腰を屈めてその兵士の肩の部分を確認した。

「こっ……これは……!」

 星名は、ミルに尋ねた。

「ガトランティスは、ロボット兵を使っているのかい? でも、この頭の部分は、とても機械には見えないな。血も流れているし……。サイボーグ化をしているのか?」

 ゼール中佐も、それを確認して、頭をひねっていた。

「いや……。我々は、兵士が不足しているので、オートマタ兵を多数使っているのは確かだ。しかし、直ぐにそうだと分かる見た目だ。こんな風なのを作っているのは聞いた事が無い」

 ミルは、それを聞いて思い付いた事があった。

「いや、待て……。これは、科学奴隷のサーダやシーラと同じではないのか? 彼女たちも、こんな風に、頭だけは本物で、身体は機械だと聞く……。それで、身体をメンテナンスする事で、ほぼ半永久的に生きていけると言われているが」

 透子も、その話を聞いて考え込んでいた。

「あなたの言う様に、この兵士たちは、サーダたちが用意したものと考えるのが妥当な推測だわ」

 ミルは、司令制御室にいた兵士たちの様子を考えると、あそこにいた者たちも、このような身体をしている可能性があった。

 しかし、そのような考察をしている暇は無かった。司令制御室からミルがここに下りてくるのに使った別のエレベーターから、十名程度の兵士が雪崩込んで来た。

 斉藤と星名は、倒した兵士たちが持っていた銃を掴むと、そちらに銃撃を加えた。

「みんな隠れて!」

 星名の声に、一行はもう一度デスクの陰に隠れた。

 向こうからも銃撃が始まり、再び銃撃戦となった。

 斉藤は、銃を乱射しながら、険しい表情でミルに言った。

「おい! どうするんだ!? 他に逃げ道は無いのか!?」

 ミルは、銃撃戦に加勢しながら考えた。

 もう、エレベーターは使えそうも無い。かと言って、非常階段も、恐らく同じように塞がれているだろう。

「やむを得ない。向こうの格納庫に行ってみよう!」

 ミルが指し示したのは、脱出用宇宙船の格納庫のあるという場所だった。かなり大きな空間がある筈で、逃げるのに時間が稼げると彼は踏んでいた。

「よし、あっちの扉の方だな? 僕が誘導する!」

 星名は、デスクの陰から陰に移動し、イスカンダルの三姉妹と、透子の居る場所に下がった。

「皆さん、腰を屈めたまま、あちらへ移動します。僕に着いてきて下さい」

 ユリーシャは、真っ青になっていたが、気丈に頷いた。

「分かった。お姉様たちも、行きましょう!」

「困ったわねぇ。わたくし、生き返ったばかりなのに、まだ死にたくないわ」

 サーシャの気の抜けたぼやきに、思わずスターシャも苦笑いを浮かべた。

「そうね。私も、まだやり残した事がある……。こんな所で、死ぬ訳にはいかないわね。何とか、皆で生き延びましょう」

 星名の先導で、スターシャたちは、低い姿勢で、デスクの間を進んで行った。

 彼女たちの後から着いて行こうとした透子は、アナライザーにも声を掛けた。

「あなたも行きましょう」

「桂木サン。アチラノ格納庫ニモ、複数ノ生命反応ガアリマス。恐ラク、科学奴隷ノ方々ガイルノデハナイデショウカ?」

 透子は頷いた。

「……ええ、多分ね。でも、行ってみるしかないわ」

 ゼール中佐は、星名たちが、遠ざかるのを確認して、ミルに声を掛けた。

「大帝! そろそろ我々もあちらに行きましょう!」

 銃撃戦が長引いている間に、更にエレベーターから下りてくる一団が居るのが見えた。

「そうだな。あなたも、もう行こう」

 斉藤は、ミルの方をちらりと見ると両手に銃を構えて乱射しながら言った。

「ああ! 先に行け! 少しでも、あいつらを足止めしておく! 俺も、直ぐに行くから心配するな!」

 

 星名たちは、ようやくその扉の前に辿り着いた。しかし、ドアを開けるには、横にある端末でセキュリティを解除しなければならなかった。星名が頭を悩ませていると、後ろから透子がやって来た。

「私に任せて」

 透子は、ミルから預かったセキュリティカードをドアの横の端末に通すも、エラーになってしまっていた。

「あら、大帝のカードは無効になってしまったみたいね」

「なんだって!?」

 星名は、一瞬青ざめていたが、直ぐに他の隠れる場所がないか辺りを見回して考え始めていた。

「仕方ないわね。別の方法を試してみるわ」

 透子は、端末に顔を近付けると、網膜スキャンを試してみた。すると、認証が通り、扉のロックが解除された。

「こっちのは気付かれて無かったようね」

 透子は、扉が開くのを眺めた。星名は、不思議そうに扉と透子を交互に見つめた。

「そういえば、あなたは、ガトランティス人だと言っていたな。いったい、何者なんだ?」

 透子は、にっこりと星名に笑顔を向けた。

「ふふ。直ぐに分かるわ。今は先を急いだ方がいいわ」

 格納庫の中に入った一同は、そこにあるものに驚愕した。暗く、中が良く見えないにも関わらず、そこにある黒い影が、その物体の巨大さを表していた。

 格納庫の中は、かなりの広さだったが、その物体はどこまでも続いており、どれ程の大きさかを、肉眼で推し測る事は困難だった。

 アナライザーは、頭部のメーターを光らせると、そこにいた皆に説明した。

「コノ物体ノ大キサハ、全長、約十キロメートル、全幅、約六千メートル、全高、約三千メートルデス。非常ニ大キナサイズノ宇宙船ノヨウデス。今、我々ガ見テイルノハ、形状カラ言ッテ、後部エンジンノズルト思ワレマス」

 サーシャは、上を見上げて、その大きさを確認しようとした。

「あら、あら。とっても大きい船なのね」

 しかし、スターシャとユリーシャは、その宇宙船が何なのか、心当たりがあった。その為、真剣な表情で黙ってそれを見つめていた。そして、星名も、その船に心当たりがあった。

「ま、まさか……!」

 星名は、透子に何か聞こうとしたが、彼女はさも当然といった表情で星名の方を見ていた。

 その時、ミルとゼール中佐が駆け込んで中に入って来た。

「皆、どうしたのだ? 追っ手が来ないうちに、逃げ道を探さねば」

 星名は、斉藤が居ないのに気付いて、二人に尋ねた。

「斉藤隊長は、どうしたんだ?」

「近衛兵団の足止めをすると言っている。後から来る筈だ」

 星名は、それに難色を示した。

「彼も一緒に逃げなければ」

 ミルは、星名に言った。

「そんな事を言っている暇は無い。追っ手はすぐそこまで来ているのだ。彼の心意気に答える為にも、我々は早く行かなければ」

 星名は、ユリーシャの方を見て少し躊躇した。ユリーシャもまた、彼の方を心配そうに見つめている。

「……分かった。なら、僕が残って斉藤隊長を待つ。君たちは、イスカンダルの三人を守って進んで欲しい」

 ユリーシャは、彼のその決断に、不安げな声を上げた。

「星名が行かないなら、私も……!」

 星名は、首を振った。

「駄目だ、ユリーシャ。大勢の人たちが、外で君たちの為に命懸けで戦っている。その人たちの為にも、君は早く行かなきゃいけない。僕なら大丈夫。君も知ってると思うけど、案外強いんだよ? 心配しないで」

 星名は、精一杯の笑顔を彼女に向けた。

 ユリーシャは、彼が意志を曲げそうにないのが分かっていたし、恐らくこのような状況でも、何とかするだろうと頭では分かっていた。しかし、それでも心配で堪らなかった。

「……必ず、もう一度会えるよね? 約束して。星名!」

 星名は、少し辛そうに頷いた。

「ああ、もちろんだ。約束するよ、ユリーシャ」 

 ミルは、待ち切れずに言った。

「では皆さん、奥へ進んで下さい。中は広い。奥に進めば、そう簡単には見つからずにすむと思います。それに、何処かに、別の出入り口がある筈です」

 スターシャは、その場から動こうとしないユリーシャの背を押した。

「行きましょう。彼の思いを無駄にしてはいけないわ」

 サーシャも、ユリーシャの手を取って引いた。

「気持ちは分かるけど、今は行かなきゃ。ね、ユリーシャ」

 ユリーシャは、名残惜しそうにしつつも、歩き出した。

 星名は、彼女の遠ざかる背中を暫く見つめていたが、やがて踵を返して、入って来たドアの隙間に頭を入れた。そして、後退しながら銃撃戦を続ける斉藤に声を掛けた。

「斉藤隊長!」

「星名!? まだ、そんな所に居たのかよ!?」

「援護する!」

 そう言った彼は、迫りくる近衛兵団へと銃を撃ち続けた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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