宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲125 救出作戦Part3

 要塞都市帝国、艦船格納庫――。

 

 古代たちのコスモタイガーは、小惑星部の戦闘機発着口から、ほんの僅か数秒の間に、次々に内部へと飛び込んで行った。しかし、最後尾の隊員の機体は、穴を塞ごうと自動的に展開された保護シールドに阻まれ、内部に侵入する事無く、激突して爆発四散した。

「さ、沢村さん、最後尾の月島がやられた!」

 揚羽は、後続の航空隊のメンバーがやられたのにぞっとしていた。その怯えた声を聞いた沢村は、唇を噛んだ。これまでも、彼も何度も仲間の死を体験して来た。簡単に慣れるものでは無い。それでも、自分を見失っては、危険に晒される仲間が増えるだけだと知っていた。

「分かってるよ! でも今は、自分を守るのに集中しろ!」

 要塞都市帝国の内部は、想像した以上に広い空間が広がっていた。天井と思われる場所に、多数のガトランティスの艦船が駐機している。

「こいつは、やべえな……。ざっと千隻ぐらいいるんじゃねえか?」

 加藤も、その様子を見て、ぼそっと感想を述べている。見渡す限り駆逐艦や巡洋艦、戦艦から空母まで、様々な艦種の船が居る。周囲には、外で飛び回っていたイーターⅠや、デスバテーターも、無数に駐機していた。

 古代は、全機に向けて通信を送った。

「恐らく、ここより少し上から、重力が逆さまに働いているように思われる。この境界線に突入する際に、バランスを崩さない様に、注意してくれ」

 山本は、黙って彼らに着いて来ていたが、完全に集中力を切らしていた。明らかに様子がおかしい山本に気付いた加藤は、彼女に声を掛けた。

「山本、お前らしくないぞ。古代だって、俺だって篠原の事は辛くない訳がねぇだろ。だが、今はそんな事を考えている暇はねぇ。全部終わってから考えればいい」

 山本は、再び涙を溢れさせた。

「でも……! 私が、無謀な事をしようとしたから。篠原はそれを止めようとして……!」

 古代も、胸が締め付けられる様な痛みを感じていた。篠原も山本も、咄嗟の判断で古代を守ろうとした事で、こんな事になってしまったのだ。

 山本が、何故自分を犠牲にしてまで古代を守ろうとしたのか。そして篠原が、何故その山本を止めてまで行動を起こしたのか。普段は朴念仁の古代にも、その理由が分からない訳では無かった。

 しかし、リーダーとしての作戦行動中に、自分が心を乱してしまう訳には行かなかった。

「山本……。彼の為にも、今は、こんな事は早く終わらせなければならない。加藤と山本は、僕に着いて来てくれ!」

 古代は、機体を回転させて背面飛行になると、機首を下げて、天井に広がる艦船の駐機場に向かって行った。

「山本、古代に続くぞ!」

「分かってる……! 分かってるけど……!」

 加藤の命令に、山本は辛そうな表情のまま仕方無く従った。

 コスモタイガーの編隊は、続々とガトランティスの艦船の真上に下りてそのまま飛び続けた。暫く進むと、滑走路と思われる場所が見つかった。コスモタイガーの周囲には、ガトランティスの戦闘機が、多数飛び回り始めたが、何故か攻撃してこない。

 加藤は、古代に声を掛けた。

「敵さんは、どうやらここでの派手なドンパチは望んでいないらしいな」

「好都合だ。しかし、機体を下ろしてからは、そうは行かないだろう。皆、覚悟を決めてくれ。行くぞ!」

 既に二機を失ったコスモタイガーの八機編隊は、高度を下げて、滑走路に下りようと車輪を出した。そうして、次々に着地すると、滑走路を走り続けた。滑走路脇の右の壁際から、ガトランティスのオートマタ兵が多数現れて、ハンドガンなどで機体への銃撃が始まった。

「あの滑走路の隅に機体を駐機させる!」

 先頭の古代は、機関砲を乱射しながら、機体を前に進めた。前方に現れたガトランティスのオートマタ兵たちは、機関砲の攻撃の前に、蜘蛛の子を散らす様に離れて行く。それでも、横からの銃撃は止まず、揚羽のすぐに後ろに居たコスモタイガーのパイロットの一人が、コックピットを撃ち抜かれて息絶えた。機体は、制御を失ってよろけると、脇に駐機していたデスバテーターに激突して、爆発炎上した。

「ぬ、沼津がやられた!」

「怯むな! 前だけを見ろ!」

 古代は、歯を食いしばって答えると、機体を完全に止めた。すぐにコックピットから降りると、自分の機体の影から集まるオートマタ兵たちにハンドガンで応戦した。

 コスモタイガーは、次々に駐機すると、隊員たちは続々と滑走路に降り立ち、集まって応戦を始めた。先程まで元気を失っていた山本も、必死に応戦している。

「どうすんだよ!? 古代!」

 互いに応戦しながら、古代と加藤は話し合った。

「ここに留まっていては、多勢に無勢で全滅してしまう。そこの通路から侵入しよう。まずは追っ手を撒く必要がある」

 古代の示した滑走路脇の壁際に、内部へと続くと思われる扉があった。すると、その扉が開くと、そこからもガトランティスのオートマタ兵が現れた。

「こいつもロボット兵かよ!」

 加藤は、激しくそこに銃撃した。そのオートマタ兵は、ばらばらになって動かなくなったが、後から後からオートマタ兵が現れる。

「おい、あそこから入るの厳しくねえか!?」

「みたいだな」

 沢村は、背後のデスバテーター群の影から、近付く人影に気付いた。

「み、皆、後ろからも来た!」

 沢村と揚羽は、そこに向けて銃撃を加えた。デスバテーターには、穴がばらばらと空いていく。

「古代、囲まれてるぞ!」

 加藤の呼び掛けに、古代もそちらを振り返った。しかし、その人影は、応戦する事なく、逆に銃を床に置いて手を振っている。

「……?」

 その時、揚羽の目の前に、その人影から何かが飛んで来た。転がった物体をよく見ずに慌てた揚羽は、大きな声で叫んだ。

「手榴弾だ!」

 その声で、一瞬隊員たちはパニックに陥った。

 古代も、目を見開いてその物体に視線を走らせた。しかし、それは、どう見ても通信機だった。古代は、少し落ち着いて沢村と視線を合わせ、彼の足元の通信機に指をさした。揚羽のせいで顔面が蒼白になっていた沢村は、その先をよく見て、呆れてからそれを拾い上げた。

「どういう事?」

 すると、沢村の手の中で、通信機から音声が聞こえた。焦った沢村は、通信機を取り落しそうになった。

「……こちらは、第一偵察部隊副長のネーラー大尉だ。君たちを支援したい。我々は、ゼール中佐の部隊の者だと君たちの指揮官に伝えてくれ」

 通信機からの音声は、古代にも聞こえた。そちらに向かおうとする古代の肩を、加藤は掴んだ。

「おい、古代。そんなの信用出来んのか?」

「……異星人とだって、分かり合えるはず。それが僕の信条だって、知っているだろ? まずは、信頼するところから始めなければ、永遠に分かり合える事はない」

 山本は、古代の方をちらりと見た。

「古代さん……!?」

 しかし、敵からの銃撃が激しくなり、それを気にしている場合ではなかった。

「ったく……! 勝手にしろ!」

 そう言いながらも、加藤は、古代を援護すべく、身体を低くして古代の背後に続いた。

 デスバテーターの機体の影には、三人のガトランティスの軍服を着た兵士がいた。三人は、銃を床に置いて、古代と加藤を待っていた。

「地球連邦防衛軍の古代進だ。ゼール中佐の手の者か?」

 彼らの中央に居た若い士官らしき人物が頷いた。

「その通り。私が、ネーラーだ。我々は、君たちの到着を待っていた。こちらに着いて来てくれないか?」

 古代は、銃を下ろして頷いた。そして、加藤を振り返った。

「分かった。加藤、皆を集めてくれ」

「……まじかよ。しょうがねえな……!」

 加藤は、デスバテーターの影から、他の隊員を手招きした。

 山本も、沢村や揚羽、そしてその他の隊員たちも、それに気付いた。

「皆、早く行って!」

 山本は、他の隊員たちを促して、一人敵への応戦を続けた。そうして、沢村が先導して皆がそちらに向かって行ったが、揚羽は山本と残って一緒に応戦を続けていた。

「ねえ、もういいから。あんたが行ったら、私も向かう」

「……山本さん、すぐに来てくださいよ」

「あんたに言われなくても分かってる」

 山本の様子を気にかけていた揚羽も、銃撃を止めて、背後のデスバテーターの方へと向かおうとした。

 しかし、その時、山本が身を潜めていたコスモタイガーは、敵の攻撃で突然爆発した。

 山本は、約三メートル程の距離を吹き飛ばされ、床に転がった。

「山本さん!」

 揚羽は、慌てて山本の元へと戻ると、彼女の肩を担ごうとした。山本は、ぐったりとしていて、起こすのが困難だった。彼女は、苦しそうに息をしているが、目立った外傷は見当たらなかった。

「大丈夫ですか!?」

「……」

 彼女は、意識が朦朧としていて、返事が無い。

 しかし、その彼らに、滑走路の壁際に居るオートマタ兵から再び銃撃が始まった。揚羽は、動かなくなった山本を床に引きずって、別のコスモタイガーの機体の影に入った。

 その様子をデスバテーターの影から見守っていた古代は、携帯通信機をオンにして、揚羽に言った。

「揚羽! こっちに来れるか!?」

「駄目です! 山本さんが意識を失っています。抱き抱えては、そちらに行けそうもありません!」

 それを聞いた古代は、彼らの元に戻ろうとした。

「止めろ、古代」

 止めたのは、加藤だった。

「しかし、あそこに二人だけを残して行くのは危険だ」

 加藤は、古代の胸ぐらを掴んだ。

「お前が言ったんだろう? 危険な任務だってな。篠原も、作戦を遂行させる為に、お前を生かす事を優先した。山本だってそうだ。それに、篠原が大事に育ててきた隊員がもう何人も死んだ! そういう犠牲の上に、俺たちがここまで来れた事を忘れんなよ! お前が前に進まなくてどうする!?」

 古代は、青ざめた表情で加藤を見つめた。

 頭の片隅に置いて、任務の遂行の支障の無いように出来るだけ考えないようにして来た事だ。それを、はっきりと言われてしまった。指揮官として、多くの部下の命を危険に晒して来たのは、なにも土方だけでは無く、自分自身も同じだったのだ。

「加藤……」

「勘違いすんな。あの二人だけを置いていくなんて俺にだって出来ねえ。俺が残ってあの二人を支援する。どうせ、ここで陽動する役割が居た方が成功の確率は上がる。お前は、沢村たちを連れて先に行け! なあに、心配すんな。俺は、前から悪運だけは強い方だ」

 そう言って、加藤は、揚羽と山本の居る場所へと、身体を低くして銃撃を避けながら戻って行った。

 古代は、加藤たちの姿を見て、それでもそこを動けずにいた。

「馬鹿野郎! 行け! 行かねえか!」

 加藤の叫びに、古代は、拳を握りしめて耐えた。今にも、泣き出しそうな気持ちになっていたからだ。

 そうして、古代は苦渋の決断をした。

「よし、沢村、それから他の皆も。先へ進もう」

「隊長たち……。大丈夫ですかね……」

 沢村は、酷く心配そうにしている。

「加藤の事を信じよう。今は、任務を優先する」

 古代は、ネーラーに真剣な表情で瞳を向けた。

「お待たせしました。それでは行きましょう」

 ネーラーたちは、身振りで答えた。

「では、こちらへ」

 古代たちは、ネーラーたち三人の後に続いた。ネーラーは、古代にこれまでの経緯を説明した。

「我々の指揮官ゼール中佐は、大帝と共に、最下層から人質のイスカンダル人を連れて、こちらに戻って来る予定でした。しかし、いつまで待っても来ない。我々の作戦が、上層部に気付かれた可能性が高い。こうなれば、あなた方と共闘した方が良いだろうと判断して、声を掛けさせて頂きました」

「そうだったんですね。あなた方の部隊は、みんなこの作戦に協力してくれているという事でしょうか?」

 ネーラーは、頷いた。

「我々も、中佐と思いは同じです。こんな戦いに明け暮れる日々に、終止符を打ちたい。国を裏切る事になりますが……」

 古代たちは、やがて戦闘機の駐機場から、艦船の駐機場へと移動した。そこは、一隻一隻を固定する台座があり、隠れる場所が多数ある。

「そこにあるのが、我々の部隊の艦船です。あれを見てください」

 そのうちの一つの艦船の真上に、巨大なガトリークレーンがある。

「あのクレーンを稼働させる為に、地下にメンテナンス用の通路があります。そこから、更に地下に潜ると、最下層へ向かうメンテナンス用の通路が続いています。少し時間は掛かりますが、見つからずに行くには、最適だと思っています」

 彼らは、ガトランティスの巡洋艦の真下に来ると、ガントリークレーンを稼働させるレールの付近に立ち止まった。

 そして、そこでネーラーの指差す先に、ハッチがあった。

「そこから入れます。我々が案内するので、ゼール中佐の支援に向かいましょう」

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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