宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲126 救出作戦Part4

 戦闘空母ミランガル――。

 

 ネレディアは、慌てていた。通信マイクを掴むと、甲板員に確認の連絡をしていた。

「誰だ、雷撃機なんて発艦させようとしているのは!? 誰がそれに乗っている!?」

 ちょうど、ヤマトから艦載機の要塞都市帝国侵入成功の報が届いたばかりだった。敵の戦闘機発着口の発見方法を共有され、ネレディアも部隊を編成しようとしていた矢先の事であった。

 艦橋からのネレディアの声に甲板員は当惑していた。

 その雷撃機、ドルシーラに乗っているのは、ランハルトだったからである。ランハルトは、その甲板員に、命令を無視するように命じていた。甲板員は、板挟みにされてどうして良いか分からなくなっていた。

「ルカ少尉。カタパルトなどを使わなくても、発艦は可能だな?」

 後部座席に乗ったランハルトは、前に居るルカへと話し掛けていた。

「ブースターをつけているので問題はありません」

「そうか。俺は、お前の腕を信じている。やってくれ」

 ルカは、ヘルメットを被ると言った。

「分かりました。大使も、ヘルメットを被って下さい。では、出ます!」

 機体よりも大きなミサイルを抱えるドルシーラは、エンジンをフルパワーに吹かした。

 ルカは、甲板員に下がる様に手振りで伝えると、ブレーキを解除して、ブースターに点火した。一気に加速したドルシーラは、強烈なGがかかる中、垂直に上昇した。わざとトリッキーな動きをする事で、接近する敵機からの攻撃を交わそうとしていた。

「大使、大丈夫ですか?」

 ランハルトは、流石に体験したことの無いGに辛そうな表情をしていた。

「……構わん。そのまま行け」

 ルカは、そのままフルパワーで吹かし続け、要塞都市帝国の小惑星部へとどんどん接近していた。周囲の敵機や、味方の機体が、あっと言う間に通り過ぎて行く。

 その時、ルカとランハルトのヘルメットには、ミランガルからの音声通信が届いていた。その声は、怒りをぶちまける様な勢いだった。

「大使! 乗っているのは大使だな!? すぐに引き返せ! 死にに行くようなものだ!」

 ルカは、応えていいものか判断がつかなかった。しかし、少しの沈黙の後、ランハルトが先に応えた。

「リッケ大佐。すまないが、行かせてもらう。この任務は、地球人だけに任せてはおけない。我々ガミラス人の手で、イスカンダルの皇女たちを連れ戻さなければならない」

「だからと言って、あなたが出る必要など無いのだぞ! だいたい、ルカ少尉! 何故、大使の言う事を聞いた! すぐに戻って来なければ、お前を軍法会議にかけるぞ!」

「ルカ、安心しろ。俺が、そんな会議は開かせない」

 まるで、ネレディアの歯ぎしりが聞こえてくるような沈黙があった。

 ルカも、そこで初めて口を開いた。

「リッケ総司令。申し訳ありません。無事に帰ったら、軍法会議でも何でも受けます。私は、イスカンダルの皇女たちを誘拐したこの企みを、私の手でどうしても終わらせなければなりませんでした。私は、亡くなったガゼル提督の部下です。ガゼル提督や、大勢の仲間たちの為にも、この私の手で終わらせたいんです」

 そうしているうちに、ブースターを使い果たしたルカの機体の後から、味方の機体が連なっていた。

「おい、どうなっている!?」

 ネレディアも、その様子を知って艦内の士官を怒鳴りつけた。

「どうやら、追従しているのは、ガゼル艦隊の元乗組員の機体のようです」

 ネレディアは、呆然として、レーダーに映るその複数の光点を見つめた。

 艦橋には、その時、ランハルトの秘書ケールが上がって来た。

「リッケ大佐」

 ネレディアは、振り返ると、幼い少年の様なケールの笑顔が目に入った。

「部外者が、どうやって艦橋に上がったのだ」

 ケールは、それには答えず、彼女に近付いた。

「大丈夫です、リッケ大佐。僕には分かるんです。今のところ、嫌な予感は薄い。大使は、任務を成功させると僕は信じます」

 ネレディアは、苦々しく彼の笑顔を睨んだ。

「ガミラスとイスカンダルの混血ならではの予知能力と言うやつか。私に、そんなものを信じろと言うのか?」

 ケールは頷いた。

「信じられなければ仕方がありません。しかし、大使にとっては、スターシャ女王は勿論ですが、特にユリーシャ様の救出は、使命のようなものなのです。そして、この五年の歳月の大使付きの任務の間に築いた皆の絆があります。大使の護衛艦隊を指揮していたガゼル提督や、空母ダレイラの皆が命を投げ出したのは、イスカンダル、ガミラス、そして地球人の皆を守る為でした。しかし、それなのにユリーシャ様たちが誘拐されてしまった。この救出作戦を成功させなければ、彼らの死は、無駄になってしまいます。そんな事は、絶対に許す訳には行きません。だから、これを止めるのは、少し難しいかと思います」

 ネレディアは、ドルシーラの光点とそれに続く複数のデバッケを表す光点をもう一度眺めた。

「まったく……! 私は、フォムトの心配だけでも大変だというのに。こうも言う事を聞かない奴ばかりだとはな……!」

 ネレディアは、通信マイクを掴むと、今度は艦載機全機に呼び掛けた。

「現在、大使の乗るドルシーラが一機が飛行中。全機、これを敵機の攻撃から守るよう支援しろ。ドルシーラの後続の部隊に告ぐ。大使が無事に戻れる様に、支援しろ。もしも、大使の身に何かあれば、この私が許さんからな。そう思って行動しろ!」

 ネレディアは、通信を切断すると、ケールの方を見た。

「これで、満足か?」

 ケールは、にっこりと頷いた。

 

 ルカの周囲には、いつしか複数の仲間たちの機体が取り囲んでいた。その更に外側では、ミランガルの艦載機部隊が、敵機と激しく交戦している。そして、アンドロメダや主力戦艦からも砲撃が始まり、彼らを守るべく、周囲の敵機を撃ち落として行く。

「大使。どうやら、ここにいる皆が守ってくれるようです。これなら、どうにか無事に辿り着けます」

 ランハルトは、口元を緩めた。

「この機体のミサイルで、敵の戦闘機発着口を破壊できるんだろうな?」

「はい。強力な破壊力を持った弾頭のミサイルですから。中に飛び込んだら、ヤマト艦載機の位置を探して、そこに合流します」

 ランハルトは、大きく頷いた。

「よし、お前に任せた」

「はい!」

 ドルシーラとデバッケの編隊は、八機が集まると、ヤマトから共有された別の戦闘機発着口へと向かっていた。

「目標まで、あと四十秒……! ミサイルを発射したら、一気に中に飛び込む!」

 ルカは、正面に目標座標を捉えると、そこには何も肉眼では見えなかった。しかし、もたらされた情報を信じ、親指でトリガーを押した。

 ドルシーラの下に抱えていた大きなミサイルは、ゆっくりと機体から離れて行った。そして、エンジンに点火すると、前へ前へと徐々に速度を上げて進んで行った。

 このまま進めば、要塞都市帝国の小惑星部に激突してしまう。それでも、開口部が開く事を信じて、前方に突き進んで行く。ミサイルは、あと数秒で目標に命中する筈だった。

「全機、勇気のない者は、今のうちに引き返せ!」

 ルカは、そう言うと、回避が不可能な位置まで機体を進ませた。

 その時、発射したミサイルは、遂に目標に命中して大爆発を起こしていた。前方に不思議な煌めきが起きると、やがて開口部が現れた。戦闘機の発着口は、ミサイルで破壊され、大きな穴が空いている。

「各機、エンジン全開! 閉鎖まで十秒も無いぞ! 飛び込め!」

 ドルシーラは、遂にその穴に飛び込んで行った。続いて、デバッケが続々と中に入って行く。

 

 ちょうどその頃、コスモタイガーの影で応戦していた揚羽は、ようやく山本が意識を取り戻した事を知った。

「……私は、どうしたんだ?」

 山本は、まだ朦朧とした意識の中、銃で応戦している加藤と揚羽に話し掛けた。

「山本さん! 大丈夫ですか!?」

「お嬢! お目覚めか。お前、どこか怪我していないか?」

 そうだった。爆発に巻き込まれて、吹き飛ばされたんだ、と彼女は思い出した。山本は、自分の身体を触って、怪我が無いか確認した。

「大丈夫、だと思う……。頭がズキズキするから、脳震盪を起こしたんだと思う」

「良かった。だが頭か。一応、帰ったら、医務室で診てもらえ。無事に戻れたらの話だがな」

 加藤は、少し頭を出した途端に激しい銃撃を受け、再び頭を引っ込めた。

「状況は?」

「最悪だ。周りを人形に囲まれている。逃げ場がねえ」

 山本は、背後から接近する敵の姿を捉えると、即座にそこへ銃撃を加えた。撃たれてばらばらになったのは、ガトランティスのオートマタ兵だった。

「ロボットばかりか……!」

「あんな、おもちゃみたいな奴らがわらわら湧いて出てくる。あんまり、人間は出てこないぜ」

「古代さんは? 他の皆は?」

「俺が先に行かせた。今頃は、最下層を目指して進んでいる筈だ」

 山本は、それを聞いてほっとしていた。

 加藤は、再び頭を出すと、銃撃を加えて応戦した。

「こっちはそろそろ潮時だ。何とかしねえと、俺たちは全滅だ」

 加藤の銃は、引き金を引いても弾が出なくなっていた。かちかちと、何度か引き金を引くも、もう弾が出そうもない。

「エネルギー切れだ」

 加藤は、その銃を捨てた。

「あの……僕も切れました」

 揚羽も、頭を下げて振り向いた。

「って事は、私の銃が一丁だけ……ってことか」

 山本は、二人に変わって壁際から現れる敵に応戦した。

「俺の機体の後部座席に、まだ何丁か予備の銃が置いてある」

 加藤は、自分の機体を見つめた。その機体は、敵の銃撃で、すっかり穴だらけになっている。

「取りに行ってくる」

「……加藤隊長。コックピットまで登るなんて自殺行為です。敵の標的になるだけです」

 山本は再び頭を下げると、加藤に言った。その加藤は、頭を振った。

「敵さん、やたらと集まって来たぜ。どうにかしなきゃ、どっちにしろ、俺たちは死ぬ」

 山本と揚羽は、そっと向こう側を覗いて見た。

 数百体はいようかという、オートマタ兵が少しづつ彼らの元に近寄って距離を詰めようとしていた。

「……機体の機関砲を取り外して、奴らに使ったらどうです?」

「いい手だな。だが、そんな時間、無さそうだぜ」

 山本は、絶対絶命の状況に、考え込んでいた。しかし、間もなく、そんな時間も無くなるだろう。

 しかしその時、揚羽は、上空を見上げて、声を上げた。

「あ、あれ! ガミラスの航空部隊です! こっちに向かって来ます」

 加藤と山本は、そちらを見上げた。

 確かにガミラスの戦闘機隊が滑走路に下りようと接近して来る。

「味方だ! 助かったぞ」

「あと少しです! あと少しだけ、持ち堪えましょう!」

 山本は、近寄るオートマタ兵に、銃を乱射した。彼らは、倒しても倒しても迫ってくる。それでも、山本は撃ち続けた。

 すると、上空から滑走路に下りたデバッケから、機関砲の弾が吐き出され、オートマタ兵たちは、一度に数十体がばらばらに飛び散った。

 そして、滑走路を次々にガミラスの機体が降り立っていく。降り立った複数の機体は、コスモタイガーの近くに滑り込むと、機体を器用に壁の方へ向け、機関砲の砲撃を雨あられと撃ち込んだ。ガトランティスのオートマタ兵は、粉々になり、壁にあった扉も破壊していった。

 辺りは、急激に静かになると、ガミラスのパイロットが続々と降りて来て、周囲の警戒を始めた。そして、デスバテーターの影から接近するオートマタ兵士たちにも、ガミラス兵たちは続けざまに発砲した。

 山本らは、ガミラスのパイロットの方へと合図すると、彼らは手招きして合流に成功した。

 その時、ガミラスのパイロットと、山本たちも見守る中、最後の機体であるドルシーラが滑り込んで来て、急停止した。

 ドルシーラのコックピットから降り立った二人の人物は、山本たちの姿を認めると、ヘルメットを外した。

「ルカ! それにデスラー大使!」

 ルカは、山本たちに駆け寄ると、彼らの無事を喜んだ。

「……アキラ。私たちも応援に駆け付けた。無事な姿を見れて本当に良かった。アゲハ。君も来ていたんだな。久しぶり……!」

 揚羽は、絶対絶命だと思っていたところでのルカの登場に、感激していた。

「ルカ……! よく、無事に中に入れたね」

「ちょっと怖かったのは確かだ。でも、絶対にやり遂げなきゃと思ったら、勇気が湧いたんだ」

 山本は、仲良さそうな二人を見て、少し寂しそうに黙っていた。その姿を見ていると、どうしても古代の事や、篠原との楽しかった思い出が頭に浮かんで来てしまう。

 そういえば……。

 ふと彼女は思い出していた。古代が結婚すると聞いて落ち込んでいた時、そばで慰めてくれたのは、篠原だった。そんな事が、これまでにも何度もあったのに。自分に好意を寄せてくれた彼を、どうしてあんなに冷たくあしらったりして来たんだろう?

 彼が浮気性だと知ったからと、言い訳をして来たが、多分違う。単に、勇気が無かっただけだ。

 後悔の念が押し寄せ、寂しさ、そして虚しさに、どうしょうもなく押し潰されそうになっていた。

 ランハルトは、ゆっくりと彼らに近寄った。

「お前は、確か加藤だったな。古代も来ているんだろう?」

 加藤は、大使のランハルトの登場に驚いていたが、すぐににやりと笑った。

「……ったく、どいつもこいつも、命知らずなこった。だが助かった。まずは、礼を言わせてくれ。古代なら、先に行かせた。今頃は、ガトランティス人の味方が、中を案内してくれている筈だ」

 ランハルトは、それにほっとしているようだった。

「それは、良かった。先を越されたが、仲間は多い方がいい」

 ランハルトは、山本の方を見つめた。

「どうしたんだ? あまり元気が無いようだが」

「……何でも無い。あんたたちが来てくれたお陰で助かった。さっさと先へ進もう」

 山本は、加藤の機体に近寄ると、コックピットに登って後部座席に置いてあると言う、予備の銃を取り出していた。

 ランハルトは、それを見ながら加藤に尋ねた。

「彼女、いったいどうしたんだ?」

 加藤は、本人に聞こえないように低い声で話した。

「篠原を……長い付き合いの大事な仲間を失ったばかりさ。俺の親友でもあった。古代を守ろうと命を投げ出そうとしたあいつを、篠原が止めて代わりに死んだ」

「そんな事が……」

 ランハルトは、山本を心配そうに見つめた。

「分かった。俺も気にかけておこう」

「助かるよ。俺だけじゃ、あの生意気なお嬢を持て余してたところだ」

「だろうな」

 その時、山本は、加藤の予備の銃を持って戻って来た。

「隊長、これ。揚羽にも渡しておきます」

 山本から銃を渡された加藤は、彼女に礼を言った。

「ありがとうよ。よし、皆行こうか。目的地は、ここの最下層だ」

 加藤は、滑走路の壁際にあった、今は破壊された扉の方へと進んだ。

「古代たちとは別ルートになるが、ここから行ってみよう」

 彼らは、周囲を警戒しながら、遂に内部へと進んで行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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