宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
その頃、古代たちは、天井も高い、大きな通路に出ていた。そこでは、大きな音を響かせる何かがある様だった。太い配管が、あちらこちらに伸びていて、少し温度も高い様だった。警備と思われるオートマタ兵が四体程、通路の中央にある大きな頑丈そうな扉の前に立っている。それを確認した一行は、通路端に張り巡らされた太い配管の影に隠れた。
「ここは……?」
古代は、ネーラー大尉を振り返って質問してみた。彼は、物陰から様子を窺いながら、あっさりとそれに答えた。
「この要塞都市帝国の心臓部、動力炉です。その大きな扉の向こうに、格納されています。人工太陽エンジンを停止した今、それがこの要塞全体の動力を賄っています」
沢村は、ひそひそと古代に話し掛けた。
「人質救出後、ここを爆破すれば、この要塞の機能を停止出来るかも知れませんね」
古代も、少し同じ事を考えていた。だが、勢いよく頭を振った。
「いや、駄目だ。そういう訳には行かない。ここには、民間人も多数居る。それに、我々に協力的な人々もいるんだ。そんな事をすれば、この要塞の生命維持機能が、失われてしまうかも知れない。そうなったら、どうなるか分かるだろう?」
沢村は、頭をかいた。
「そ、そっか。確かにそうですね」
ネーラーは、目ざとくそのやり取りを聞いていた。
「聞こえていますよ」
古代と沢村は少し慌てていた。
「あなた方が、一般市民を虐殺するような意志が無い事が分かって、私も安心しました。実は、我々の部隊にも、家族が都市に住んでいる者が沢山おりますので」
古代は、頷いた。
「勿論、そんな事をするつもりはありません。しかし、あの都市ですが、あのような剥き出しでは、我々との戦闘で人々はさぞや怯えているんでしょうね」
「ええ。パニックが起きていると聞いています。しかし、いざとなれば、あのビルは、一つ一つが宇宙船なんです。ですから、中にいればそのまま脱出する事が可能なんです」
「ええっ!?」
古代と沢村は、その事実に驚愕していた。互いの顔を見合わせて、感心仕切りだった。
「凄いですね……」
「ああ、本当だな……。規模が大き過ぎて、何だか信じられないよ」
ネーラーは、動力炉の隅の通路を指し示した。
「あちらに、メンテナンス用のエレベーターがあります。警備を倒して、先を急ぎましょう!」
警備がオートマタ兵だから良かったものの、そうで無かったら、彼らは同胞に銃を向けなければならない。古代は、彼らが、並々ならぬ決意を固めている事に、改めて感心した。
その頃、星名と斉藤は、科学奴隷の研究施設で、まだ銃撃戦を続けていた。倒しても、倒しても後から後からオートマタ兵がやって来るのである。
斉藤は、頭を出して銃を乱射すると、すぐに引っ込めた。
「星名! もう、敵さんは、ロボット兵しか出てこねえな」
今度は、星名が銃を乱射して、頭を下げた。
「ああ。人手不足が深刻なんだろうね」
「お陰で、まだ持ち堪えられているが、この銃、いつまで撃てんだろうな!?」
星名は、そう言われてふと自分の銃を見つめた。
「なんか変なランプがついているね。もしかしたら、もうエネルギーが無いのかも知れない」
「ん……? 俺のもだな。なんか、点滅してるぞ」
斉藤は、そう言って、再び銃をオートマタ兵に向けて乱射した。オートマタ兵は、手足をもぎ取られると、その場に崩れ落ちた。残骸が多数散乱する酷い状態となっていたが、オートマタ兵は、その屍を乗り越えて、向かって来ようとしていた。
斉藤が頭を下げると、相手からの銃撃が襲って来た。デスクに、ばらばらと穴が開く。
「この遮蔽板に使っていたデスクも、ぼろぼろだな」
「そうだね。少し、移動しようか」
星名は、再び銃を乱射して、斉藤に言った。
「今のうち!」
「おお、助かるぜ!」
斉藤は、別のデスクの影に飛び込むと、再び遮蔽板としてデスクを立て掛けた。
「あ……?」
星名の銃は、そこで弾切れとなったらしい。引き金を引いても、弾が出なくなっていた。
「駄目だ。僕の銃は、使えなくなった」
「何だと!?」
星名は、斉藤が銃撃を始めた瞬間、素早く斉藤の元へと転がって移動した。
「こうなったら、僕らも、ユリーシャたちの向かった脱出用宇宙船の格納庫ってのに行こうか。もう、ユリーシャたちは、かなり遠くまで移動したと思う」
「仕方ねえ。そうするか!」
斉藤と星名は、身体を低くして、急いで格納庫へ向かう扉の方へと移動した。
「しまった……!」
扉が閉じないように物を挟んでいたはずが、恐らく銃撃戦の最中に吹き飛んでしまったらしい。扉は、固く閉ざされている。
「ロックされている。これは、開きそうもない」
「くそったれ! じゃあ、どうすんだよ!」
「万事休す……か」
斉藤は、銃を再び乱射した。しかし、途中で弾が出なくなってしまった。
「ちくしょう!」
斉藤は、床に銃を叩きつけた。
「ここまでか……」
オートマタ兵は、銃撃が止んだのをいい事に、大胆に迫って来た。
斉藤は、近くにあった椅子を掴むと、思い切りオートマタ兵の方へと投げ込んだ。椅子がぶつかった兵士は、頭を潰されて動かなくなった。
しかし、その程度で、敵の動きは止められなかった。数十体のオートマタ兵が、後から後から迫って来た。
もう駄目か、と思ったその時、離れた場所のエレベーターから、人影が、ばらばらと降りて来た。
その人影は、一斉にオートマタ兵に向けて、銃を乱射した。その攻撃で、数十体はいたオートマタ兵は、次々になぎ倒されて行った。
斉藤と星名は、呆気に取られて、そうっと頭を出した。そこには、多数のオートマタ兵士たちの屍が折り重なり、その向こうには、見知った顔が見えた。
「古代さん!」
「助けが来たのか!?」
古代は、斉藤と星名に気付くと、急ぎ足で近寄って来た。
「星名、斉藤隊長、無事だったか!」
三人は、無事を確認すると、ようやくほっと一息ついた。
古代は、星名に伝えなければならない事があるのを思い出した。
「そうだ……。星名、岬さんの事なんだが、彼女、今はヤマトに乗って外で戦ってくれている」
星名は、百合亜の名を聞いて、驚いていた。
「百合亜は、土方さんの空母シナノに乗ってるんじゃ……」
古代は、事の顛末を彼に簡単に説明した。
白色彗星の攻撃で、地球艦隊が壊滅的な被害を受けたこと、シナノも例外でなく大勢が亡くなり、奇跡的に土方や百合亜が助かったこと。そして、帰還途中に彼女が戦場に戻って、星名を助けたいと言い出し、それが切っ掛けで土方や古代を動かし、ここに辿り着けた事を説明した。
「そんな……! 百合亜が僕の為に、そんな目に遭ったのに、もう一度ここに戻ったって言うんですか?」
古代は、頷くと続きを話した。
「僕がここへ向かう前に、君の事を無事に連れ帰って欲しいと頼まれた。彼女、本当に心配しているんだ。確か、わがままばかり言って、君を困らせた事を後悔してるとか言っていたな。本当に、命をかけて、君の無事を願っている。何としても、無事に帰らなきゃいけないな」
「はい……。そう、ですね……」
星名は、あまりの事に頭が混乱していた。
先程まで、すっかりユリーシャの事で頭が一杯になっていたからだ。彼女を何とか助けたい。その一心で、戦っていた。
しかし……。
百合亜が九死に一生を得たというのにそんな事を?
命がけで、僕を連れ戻そうとしているなんて……。
ここ暫く、わがままや嫉妬心から束縛しようとする彼女に辟易とし、少し距離を置こうとしていたのは確かだった。その彼女が、それを自覚して後悔してるとも言っていたとは……。
彼女が恐ろしい目にあって怯えている姿。心配して寂しそうにしている姿。長い付き合いだからこそ、容易に彼女が今、どうしているか、何を考えているか、どんな表情をしているか、そんな様子が手に取る様に頭に浮かんでくる。
星名は、引き裂かれそうな心を隠し、任務に集中しようと拳を握り締めた。
彼らは、格納庫の扉の前に集まっていた。
ネーラー大尉は、自分のセキュリティカードを扉の端末に通すも、ロックは解除されない。
「駄目だ……。この向こうは、大帝などの高官クラスしか入れない様になっている。私レベルでは、入れないらしい。頑丈な扉だ。銃撃した程度では、破壊することは出来ないだろう」
星名は、それを聞いて考え込んだ。
「桂木透子……」
古代は、それを聞いて不思議そうな顔をした。
「桂木さんがどうしたんだ?」
星名は頷いた。
「ええ……。彼女、本当は、ガトランティス人だと聞きました」
「桂木さんが、ガトランティス人だって??」
古代は、意外な事実に驚いていた。
「彼女は、この扉の網膜スキャンの装置で、ロックを解除しました。僕の目の前で」
斉藤は、呆けた顔をしていた。
「するってえと何か? あの女の正体は、ガトランティスの高官だってことか?」
ネーラー大尉も、それには頭をひねっていた。
「恐らく、提督以上の軍の将軍、もしくはそれより上の政府の幹部クラスだと推測されます。いったい、誰なんでしょう?」
沢村は、ネーラーに尋ねた。
「その人の正体はともかく、今は中に入れなきゃ、どうにもなんないよ。他に入口は無いの?」
ネーラーは少し考え込んで、彼の船の仲間の士官と顔を見合わせた。
「探せばあると思うが、セキュリティレベルは同じ筈だ」
「じゃあ、爆弾でも使わなきゃ駄目ってことか」
古代は、航空隊の隊員を呼び寄せ、荷物を降ろさせた。
「我々が持って来た爆薬で、扉を破壊してみよう。沢村、準備を頼む」
「了解」
彼らは、扉から下がってデスクの影に入ると、沢村たち、一部の航空隊の隊員が爆薬をセットし終わるのを待った。
「終わった! 皆、気をつけて!」
そう言いながら、沢村たちも扉から離れて行った。扉まで続く、起爆装置に接続したケーブルを伸ばして、彼らもデスクの物陰に入った。
「じゃあ、やります! 三、二、一、点火!」
爆発物が吹き飛ぶ大きな破裂音がした。焦げ臭い匂いが広がり、彼らは、そっと頭を出して結果を確認した。
「あれ? 駄目か」
沢村は、扉に走り寄った。しかし、爆薬を仕掛けた部分が焼け焦げているものの、とても破壊出来そうもなかった。
斉藤は、沢村の背後から結果を確認していた。
「おい、何でもっと強力な奴を持って来ねえんだよ?」
沢村は、後ろを振り返った。空間騎兵隊の隊長の怒りの表情に、沢村は震え上がった。
「い、いや……。この爆薬は、航空隊の標準装備で……」
「そんな事は、聞いてねえ。こんな敵のど真ん中に侵入するにしちゃあ、用意が悪すぎねえかって言ってんだよ」
古代は、毅然とした表情で、斉藤に言った。
「今は、そんな事を言っても仕方がない。他の方法を探そう」
斉藤は、古代に食って掛かって行った。
「お前が指揮官だろうが!? この失敗は、お前の責任だぞ!?」
古代は、冷静に頷いた。
「君の言う通りだ。だからこそ、別の方法を早く見つけなければ。言い争うのは、帰ってからやればいい」
「無事に帰れればな。この扉の向こうにいるイスカンダルの三人を取り戻すまで、俺はここを出る気はねえからな」
「僕も、そのつもりだ」
古代は、ネーラーに相談した。
「何処か近くに武器弾薬庫はありませんか?」
ネーラーは再び考え込んだ。
「上から持って来るしかありません。艦船格納庫なら、いくらでも強力な爆弾などが置いてあるので。我々の部隊の仲間に連絡してみましょう」
古代は、先程のここまで来るのに掛かった時間を振り返った。敵に見つからずに、ここで一時間近くも待つ事になる。あまりにもリスクが高い。しかし、今はそれしか方法は無さそうだった。
「すみませんが頼みます」
しかしその時、エレベーターが到着する音がして、新たな侵入者が現れる事が分かった。
古代たちは、慌ててそちらに振り向くと、一斉に銃を構えた。
しかし、そこから現れたのは、加藤や山本たちだった。
「加藤! 山本! 無事だったのか!?」
加藤は、遠くで手を振って応えている。
「む……?」
しかし、その他に、ガミラス人たちが現れた事が分かった。
「デスラー大使……? 何で、こんなところに……?」
古代は、ランハルトが来ている事に驚きを隠せなかった。
彼らは、合流すると、これまでの経緯を確認し合った。
「なるほど。その扉が開かなくて困っていたんだな?」
ランハルトは、ガミラス兵の一人を呼び出した。
「彼が、無反動砲を持って来ている。これを試してみよう」
そのガミラス人は、背中に背負っていた長い筒状の砲を、手に持ち替えた。
「皆、もう一度下がってくれ!」
古代たちは、一斉に後ろに下がると、再びデスクの影などに隠れた。
二人のガミラス人兵士が中央に残り、一人が砲を支えて、もう一人が彼を支えている。
「耳を塞いでおけ!」
ランハルトの号令に、皆両手で耳を押さえた。
すると、二人の砲手は、無反動砲を前触れもなく撃ち出した。強烈な爆発音と爆風があたり一面に広がると、扉は、吹き飛ばされて格納庫内でくるくると回り、やがてけたたましい音を立てて倒れた。
「よし、皆行くぞ」
ランハルトは、先頭に立って中に進んで行った。
古代と斉藤は、呆気に取られてその様子を見守っていた。
「行くか?」
「そ、そうだな……」
古代は、加藤や山本らに声を掛け、ネーラーたちも一緒に、先に内部に侵入したガミラス兵士たちを追った。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。