宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲135 要塞都市帝国の崩壊Part4

「機関出力三分の一、前進!」

 ゼール中佐のラスコー級巡洋艦は、ミルやサーベラーを乗せた後、要塞都市帝国の艦船格納庫から飛び立ち、艦船ゲートへと向かっていた。艦船格納庫の上空は、多数のガトランティスの艦船が浮かんでおり、同じように艦船ゲートを目指していた。

 既に、発進した眼下の艦船駐機場は、脱出用宇宙船が動き出したことで、あちこちが、崩れ始めていた。そして、ゲートのある小惑星部の外壁も、亀裂が広がり、徐々に崩壊が始まっていた。

 そして、そのような状況から、多数の艦艇が脱出しようとゲートに殺到しており、他の艦と接触しないようにするには、あまり速度は上げられなかった。艦船の群れがゲートに向かう中、その隙間を縫って戦闘機の群れも通過して行き、辺りは大混乱となっていた。

 そうしているうちに、遂に艦船同士が接触事故を起こし、落下して行く艦も出てしまっていた。

「まずいな。このままでは出られん」

 ゼール中佐は、前方の混乱をなすすべも無く見つめていた。

 同艦に乗せてもらっていた斉藤は、星名と共に艦橋の窓のそばからその状況を眺めて苛ついていた。

「おい、このままじっとしていたら、やばいんじゃねえのか!?」

 ゼール中佐は、唇を噛んで黙っていた。

「……やむを得まい。ここで、急げば更に状況は悪化してしまう」

 ゼール中佐のそばに立っていたミルとサーベラーも、他の策はないかと考えていたが、対案は浮かんでいなかった。星名も、暫く考えていたが、振り返って、ゼール中佐へと話した。

「艦の兵装を使用して、外壁を破壊して出口を広げるべきだ。そうすれば、脱出するスピードも上がる」

 ゼール中佐は、ちらと星名と視線を合わせた。

「しかし、こんな所で発砲すれば、更に崩壊が早まる恐れもある」

 そのやり取りを聞いていたミルは、自艦の前方に見える三隻のメダルーサ級戦艦に注目した。恐らくは、火焔直撃砲の火力を使えば、防壁の機能を失った小惑星部の外壁ならば破壊することが出来るだろう。しかし、下手をすれば要塞都市帝国の崩壊の方が早まり、この中に閉じ込められてしまうかも知れない。そうなれば、要塞都市帝国の最期と、運命を共にすることになる。

 サーベラーは、冷や汗をかくミルの様子を横から窺っていた。そして、彼女は彼の肩にそっと手を置いた。

「ミル……。戦って死ぬか、諦めて死ぬか。同じく死が避けられぬのであれば、戦って死ぬのがガトランティスの流儀。そうは思わぬか?」

 サーベラーは、笑みを浮かべてミルのことをじっと見つめている。ミルは、真剣な表情で、彼女の瞳を見つめ返した。

「……ふふ。すまぬ。少々出過ぎた真似をしたな。決めるのは、最高指導者であるお前だ。妾は、今となっては部外者に過ぎぬ」

 ミルは、少し間をおいて、彼女と同じように微笑した。

「とんでもありません。よろしければ、引き続きアドバイスを」

 二人は、小さく頷き合った。そして、ミルは、おもむろにゼール中佐に言った。

「ゼール中佐、全艦隊に通達! 回線を開いてくれ」

「は、はっ!」

 ミルは、通信マイクを掴んだ。

「脱出中の全艦艇に告ぐ。私は、大帝ズォーダーだ。これより、火焔直撃砲によるゲート周辺の外壁の破壊を試みる。我が艦前方のメダルーサ級戦艦三隻は、火焔直撃砲の発射用意をしてその場で待機してくれ。その他の艦は、ゲートから離れ、メダルーサ級戦艦の射線を確保しろ!」

 

 一方、山本は、小惑星部の外壁を歩いて篠原の所在を探していた。その足元は、次第に揺れが激しくなり、多数の亀裂が入って、今にも崩れ落ちそうになっていた。

「篠原! 私だ、山本だ! 何処に居るか返事をしろ!」

 山本のヘルメットからは、相変わらず、古代と加藤からの怒号が鳴り響いていた。

「山本! すぐに機体に戻るんだ」

「この野郎、早く戻って来い!」

 山本は、手首に装着した端末を操作し、二人からの通信を遮断した。

「……篠原!」

 彼女の周囲は、小惑星部の欠片が舞い、見通しも悪くなり始めていた。背中に背負ったバックパックの小型センサーで、生体反応を探させていたが、まだなんの反応も無い。

 加藤は、山本が通信を遮断したことに気付くと、コックピットのディスプレイを殴打した。

「あの野郎!」

 古代は、周囲に多数の小惑星部の破片が漂い、機体に小石が次々に当たるような細かな振動を感じていた。

「このままでは、僕らも巻き込まれてしまう……!」

 古代は、真上に小惑星部が見えるように機体を回転させ、スラスターを吹かしてゆっくりと山本の真上に移動した。

「古代、何する気だ」

 その動きを追った加藤は、古代の機体の横につけて、コックピット越しに彼を見つめた。

「僕も、下に降りて山本を連れ戻す」

 おもむろにキャノピーを開けた古代は、身体を固定するベルトを外そうとした。

「馬鹿、止めろ。お前は戦術長でこの作戦の隊長だろ。なんの為に、俺たち航空隊が、お前を命懸けで守ろうとしてると思ってんだ!」

「しかし……!」

「最悪の場合は、俺がここに残ってあいつを連れ戻す。お前は、先に帰還していろ」

「加藤……」

 

 山本は、大きなステップで、小惑星部の表面を円を描くように移動していた。最初に機体の残骸を見つけた場所から、同心円状に移動しながら、探査範囲を広げていた。しかし、それでもセンサーに反応は無い。

 山本は、足元の崩壊が早まり、次第に時間が無くなって来ていることに気付いていた。このまま、自身が諦めずに留まり続ければ、古代や加藤まで危険な状況に巻き込んでしまうであろうことも。

「でも……」

 篠原は、緊急脱出装置を使用していた。つまり、恐らくは生存している可能性が高い。だからこそ、どうしても諦める気にはなれなかった。

 そして、彼を連れ戻したら、言わなければならないことがあった。イスカンダルの旅路から、これまで、何があっても優しく見守ってくれていたことへの感謝を。その気持ちが、彼の愛情だったことを知っていたのに、蔑ろにしてしまったことも謝りたかった。自分にとって、かけがえのない人だと、今になって気付いたことを伝えたかった。

 だから、こんな形で永遠に別れるなんて、どうしても嫌だった。

 その時、彼女は少し離れた場所に、何かを引きずったような跡が、遠くへ伸びていることに気付いた。それは、何かが落ちて、滑って行った跡のように思えた。

 山本は、身体の向きを変えると、その方向を目指して勢いよく走り出した。相変わらず、低重力で大きくバウンドする為に上手く走れなかったが、こつを掴んで来ていた。ステップを力強く踏むと、その方向へと速度を上げた。

 そして、遠くに何か小さな物体が見えて来た。山本は、鼓動が早まるのを感じながら、そこを目指して地面を蹴り続けた。センサーが遂に反応し、そこに弱い生体反応があることが分かった。

「し、篠原……!? そこにいるの!? そこにいるんだな!?」

 彼女は、途中で着地に失敗して地面を転がった。砂まみれになった宇宙服も構わず、すぐに起き上がると、もう一度走り始めた。

 あともう少しで辿り着くその先には、間違いなくコスモタイガーの座席と思われる物体が転がっていた。そしてその横には、倒れている人影があった。

 山本は、目を見開いて、その砂まみれの人影が、ヤマト航空隊の物であることを確認した。

 間違いない。あれは……篠原だ。

「篠原!」

 山本は、再び通信機をオンにすると、ノイズだらけの通信機が、何か音を拾い始めた。

「……ら……ん……?」

 

「火焔直撃砲、発射準備完了!」

「こちらも、完了しました」

 艦船格納庫の内部では、ミルのもとに、三隻のメダルーサ級戦艦からの報告が入っていた。

「射線の確保も完了しました!」

 三隻のメダルーサ級戦艦の前で、ガトランティスの艦船は射線を確保しようと端に寄ってひしめき合っていた。肉眼で見ても、発射可能な状態になっている。

 ミルは、通信マイクを掴んで号令を出した。

「大帝ズォーダーだ。皆の協力に感謝する。メダルーサ級各艦は、直ちに火焔直撃砲を発射してくれ!」

 メダルーサ級戦艦三隻の艦首の火焔直撃砲の砲門が、明るく輝いている。

「火焔直撃砲、発射!」

 各艦は、同時に火焔直撃砲の砲撃を開始した。空間転移装置を作動させず、その強大なエネルギーの輝きは、直接外壁へと向かって行く。

 そして――。

 外壁に命中した火焔直撃砲は、その勢いで壁を吹き飛ばすと、大爆発を起こした。

 眩い輝きに、ミルやサーベラーたちも照らされ、目を閉じてその光を遮った。艦内にがたがたと大きな揺れが起きる。

 ミルは、目を薄く開けると、肉眼で外の様子を確認した。大きく開いた穴が、目の前に空いていて、暗い宇宙空間に瞬く星々の光が目に入った。

「大帝! 成功です! 直径三キロ程もある大穴が開きました!」

 しかし、同時に外壁の亀裂は、更に大きく広がり始めていた。

 ミルは、再び通信マイクを掴むと、全艦に命じた。

「全艦、直ちに、あの穴から脱出しろ!」

 ガトランティスの艦艇は、一斉にエンジンを吹かすと、その穴に向けて突進を始めた。

「俺たちも行くぞ! これだけ大きな穴なら、遠慮する必要は無い。全速前進!」

 ゼール中佐の命令で、彼のラスコー級巡洋艦のエンジンは、全開で唸りをあげた。

 千隻近い艦艇が、一斉にその穴に向けて発進する中、要塞都市帝国の小惑星部は、ばらばらになり始めていた。その崩れ落ちる外壁を超えて、次々にガトランティスの艦艇は、外へと飛び出して行った。

 

「……あ……玲ちゃん?」

 山本のヘルメットの通信機のスピーカーから、待ち望んだその声が聞こえてきた。元気の無い声だったが、間違いなく、彼は生きていたのだ。

「篠原!」

 山本は、溢れる涙でヘルメットの中に水滴を漂わせながら、最後のステップを踏んだ。

 そして、ようやくその人物の所に辿り着き、手を伸ばして身体に触れようとした。

 その瞬間、遂に足元が完全に崩壊し、ばらばらに崩れた外壁とともに、篠原の身体は小惑星部内部の艦船格納庫へと落ちて行った。内部に働く重力が、彼を内部に引き込んでいたのだ。

 そして、山本自身の足元の地面も突然崩壊し、同じように宙に舞うと、艦船格納庫へと落ちて行った。

「くっ……!」

 山本は、咄嗟に崩壊した外壁を蹴って、篠原の方へと手を伸ばした。

 あとわずかで手が届く。

 そして、篠原も、その山本の方へと手を伸ばした。

 その指先がわずかに触れ、山本は、強く腕を伸ばして、彼の手を掴んだ。

 彼のヘルメットの中の表情が、ほんの少し見える。

「篠原……。ごめん。間に合わなかったみたい」

 山本は、その手を掴んで、それを辿って彼の身体を掴もうと更にもう片方の手も伸ばした。

 宙に舞う二人の周囲は、崩れた外壁の大小の破片が舞い、それに押し潰されるか、艦船格納庫の床に叩きつけられるか、もはやどうにも出来なかった。

 篠原は、力無い声で、そっと彼女に話し掛けた。

「道連れに……しちまって……ごめんな……」

 山本は、彼のヘルメットに自分のヘルメットを重ねて、その顔を間近に見た。篠原の瞳からも、涙が溢れていた。接触したヘルメットから、互いの声が直接聞こえていた。

「いいんだ。私が、望んだんだから」

 篠原は、少しだけ笑みを浮かべた。

「……でもさ。最後に……会えて……嬉しかった……」

 その瞬間、山本が背中に背負っていたバックパックに、大きな衝撃があった。大きく息を吐き出した彼女は、残骸が背中に当たったものと思っていた。

 しかし、振り返った先には、小さな人影が見えていた。

「……古代……さん?」

 その宇宙服は、ヤマト戦術長のものとすぐに分かった。その腕から、ワイヤーが伸びており、山本の背中の装備にマグネットで接続していた。

「山本! 今からワイヤーを巻き上げる。そのまま、篠原を離すな!」

 山本と篠原は、目を丸くして、その光景を見ていた。

「あれ……? ……もしかしてさ……俺たち助かっちゃった……?」

 いつもの篠原の軽口を聞いた山本は、感極まって、涙を流した。

「そうみたいだ……」

 山本は、強く篠原を抱き締めた。

「……古代さん、大丈夫です。お願いします……!」

 その古代の身体も、加藤から伸びたワイヤーが接続していた。

 加藤は、キャノピーを開いたまま、コスモタイガーのスラスターを吹かして、繋がった三人を引き上げようと機体を動かしていた。

「やれやれ。どいつもこいつも、無鉄砲なこった」

 そう言いながら、加藤の瞳にも、光るものがあった。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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