宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲137 超巨大戦艦の出現Part2

 超巨大戦艦の艦橋――。

 

 サーダは、超巨大戦艦の艦橋の中央に設けられた自身の座席に座って前を見据えていた。忙しく働く機械仕掛けのオートマタ兵たち。この船には、生きている人間と呼べるのは、もうサーダしかいなかった。

 サーダは瞳を閉じると、静かに頭の中を整理した。

 

 遂に――。

 この時が来た。

 長い間待ち望んだ瞬間。

 これから、私はやらねばならない。

 これは、一種の賭けだ。

 このあとの立ち振る舞いが、これからの運命を決定づける。

 死んで行った多くの仲間たち。そして、長年苦楽を共にしたシーラの為に。

 必ずや運命を手繰り寄せ、勝利を勝ち取ってみせる――。

 

 サーダは、大きく息を吐き出すと、再び目を開けた。

 この緊張感が、ある意味心地良い。

 サーダは、ふと笑った。

「通信士、ガルマン星系全体に届くように回線を開きなさい。これより、集まった私の観客に語りかけます」

 通信士の役割を負ったオートマタ兵は、無言でその指示を実行した。

 

 その時、ガルマン帝国本星の街頭モニターの映像が切り替わり、アナウンサーがこれから緊急放送を流すと言っていた。直後に、そこには、サーダの姿が映し出されていた。その姿は、邪悪な意思を持つ侵略者には到底見えず、若く美しい一人の女の姿がそこにあった。

 人々の間では、さざ波のようにその侵略者の正体について意見が交わされた。

 そしてそれは、宇宙空間で超巨大戦艦と対峙する各国の艦隊の間でも同じだった。

 ヤマトの艦橋でも、乗組員は頭上の大スクリーンに映るサーダが、これから何を話すのかを、固唾を飲んで見守っていた。

 

 サーダは、大きく息を吸い込むと、ゆっくりと、静かに話し始めた。

「私は、サーダ。暗黒星団帝国軍情報部に所属している」

 サーダが見つめる先の超巨大戦艦の艦橋に備え付けられた大スクリーンには、各国の軍の代表者や、ガルマン帝国の地上の様子も映っていた。皆、一様に、自身に注目している。

 サーダは、そのことに満足そうに暗い笑みを浮かべた。

「まず最初に、すべてのガトランティス帝国の民に感謝する。これまで、我々の奴隷として、よくぞここまで戦ってくれた。純真無垢で、野蛮で無知なお前たちだからこそ、我々に操られているとも知らず、ここまでの成果を上げることが出来た。本当に、素晴らしい結果だ。この千年の間に、アンドロメダ銀河、マゼラン銀河、そしてここ、天の川銀河で、あらゆる文明を滅ぼし、あらゆる民族に、この宇宙に住む、すべての人々の敵として、憎しみを集めることに貢献した」

 

 これには、ミルはもちろんのこと、ユーゼラー提督もナスカ提督も、そしてあらゆるすべてのガトランティスの人々が、呆然として話を聞いていた。

「な……何をあいつは言っているのだ? 科学奴隷の分際で……」

 ナスカは、沸々と湧き上がる怒りの感情を抑えようとしていた。それは、ユーゼラーも同じだった。

 そして、同じように、ミルもうち震えていた。母カミラは、その本来の意思すら捻じ曲げられ、多くの人々を死に追いやるガトランティスの悪意の代表として操られていた。

「母上……」

 そして、サーベラーも、久しぶりに、心の奥底にしまった怒りの感情を湧き上がらせていた。

「そう……。妾も例外ではないということか……」

 

 そんな彼らの反応に満足したサーダは、その先の話を続けた。

「そして、ガルマン帝国の民にも感謝する。我々が、何故この地を最後の決戦の場として選んだのか。それは、この星系に、かつて我々の故郷が存在していたからだ。今はその痕跡すら存在しないこの星系の本当の第四惑星……。それこそが、我々の本来の故郷である。そして、ガトランティスとの戦いで、多くのお前たちの命が失われたと思う。それは、これから我々が行う故郷復活の儀式の生け贄として、必要不可欠だったからだ」

 サーダは、そう言い放つと、大きな声で笑い声を上げた。

 

 それを聞いたキーリング参謀長官とグスタフ中将は、愕然としていた。

「儀式の生け贄……だと?」

「わ……我々は、その為に、ここで戦わされていたと言うのか……?」

 そしてその困惑は、ガルマン帝国本星で見守る人々の間にも広がって言った。

「どういうことだ?」

「私たちは、生け贄にされるの?」

「ま、まさか侵略戦争ですら無かったというのか?」

 サーダは、自らが発する一言一言が、人々の間で混乱と怒りの感情に変わって行くのに満足して、更に笑いが漏れていた。

「ふふふふ……! そう。あなた方は、この儀式に無くてはならない存在。その血の一滴まで、我々は、我々の物として最後まで利用させてもらう!」

 ガルマン帝国の人々は、あまりのことに、理解が追いつかなかった。そして、怒りの感情が爆発し、人々は怒号を上げて抗議を始めていた。

 

 それを確かめたサーダは、もう一度大きな声で笑った。

「ほほほほ……! ……ああ、可笑しい。それから、一番の貢献者に感謝しなければね。イスカンダルと、その末裔たるイスガルマンのすべての民に」

 スターシャたちは、驚いて目を見開いた。サーシャもユリーシャも、これから彼女が何を言い出すのか、恐れの感情を顕にしていた。

「あなた方は、今回の計画のうち、その多くを担ってくれた。大きくは、三つある。一つは、波動砲という兵器を作り出したこと。もう一つは、コスモフォワードシステムという時空を操る発明をしたこと。この二つは、これから行う儀式に必要不可欠なもの。最後に、神のように崇められ、大切にされ、あなた方を救う為なら、命すら投げ出そうという、本来なら無関係なガミラス人や地球人をこの地に集めてくれたこと。ガトランティスが戦いの奴隷なら、あなた方は、科学の奴隷でもあり、偽物の神として、儀式のお膳立てをしてくれた」

 

 サーシャは、憤慨して言った。

「な……何ですの。何だか、あの方は、おかしなことを言っていますわ」

 ユリーシャは、その時はっと気が付いた。

「お、お姉様……」

 ユリーシャは、スターシャと目を合わせて言った。

「波動砲とコスモフォワードシステム……。コスモリバースシステムを元にして発明されたコスモフォワードシステムという物が彼女の手元にある。この二つを、故郷復活の儀式に使うということは……」

 

 サーダは、最後に地球人とガミラス人に語りかけた。

「ガミラスと地球の民にも、大いに感謝しよう。イスカンダル人を大切にする余り、お前たちは無関係なこの地にわざわざ集まった。この儀式を成功させるには、生け贄は、多ければ多いほどいい。だからこそ、我々はお前たちがここに来るようにイスカンダル人を人質にした。そして、地球人。ガトランティスの侵攻に対抗する為、何度も波動砲を撃ってくれたな。あと、もうひと押しで、我々が望む儀式を始められるだろう」

 

 それを聞いた古代は、愕然としていた。

「我々に……わざと波動砲を撃たせていた……?」

 古代は振り返って艦長席の土方を見た。

「土方艦長!」

 その時土方は、眼光も鋭く頭上の大スクリーンを睨み付けていた。土方は、古代の方を向いて彼と目を合わせた。

「……あれが、どういう意味か、お前には分かるか?」

 真田も、土方の方を向くと、考え込みながら話した。

「白色彗星は、今のところ波動砲でしか簡単には破壊出来ません。彼らは、この戦いで、ガトランティスに複数の白色彗星を使わせ、更に大量の艦隊を繰り出して、我々が波動砲をどうしても使わざるを得ないように仕向けて来ました。そして、それが意図して行われたということは、それによる、何らかの効果を期待しているということです」

 古代は、はっとして気が付いた。

「ま……まさか!?」

 

 その頃、デウスーラの艦内には、デスラー砲の発射用意を始めた為、そのエネルギー充填の音が鳴り響き始めていた。

「アベルト……! 何を始めるの!?」

 艦橋の中央の床からは、デスラー砲の発射装置が迫り上がった。デスラーは、スターシャを無視して、その銃のような形をした発射装置の背後に立った。

「スターシャ。もう、彼女の考えは充分に分かっただろう。君や私にとって、あの女はイスカンダルを愚弄する、不愉快な存在でしかない」

 そうして、デスラーは、デスラー砲の照準を、超巨大戦艦に合わせた。

 スターシャは、デスラーの元へ近づくと、焦りが混じった表情で言った。

「アベルト、待って。彼女のやろうとしていることが、ほんの少し、分かった気がするの」

 デスラーは、照準器から目を離すと、スターシャと顔を見合わせた。

「それは、……いったい何かね?」

 

 サーダは、人々の困惑、怒りや憎しみの感情が、自らに集まっていることを確信した。そして、にやりと口元を歪めて、通信回線を開いたまま、艦内に指示を出した。

「主砲発射用意。まずは、あの月を狙え」 

 超巨大戦艦の艦底部の巨大な砲塔は、その向きをゆっくりと変え、ガルマン帝国本星の月に照準を合わせた。

 サーダは、用意が整うまでの間、再び話し出した。

「これより、我々は故郷復活の儀式を開始する。ガルマン帝国本星の民は、我々の生け贄として、その身を捧げてもらう。まずは、この超巨大戦艦の威力、知らぬ者にも分からせてやろう」

 サーダは、武器システムを担当するオートマタ兵に、合図した。

 その瞬間、超巨大戦艦の艦底部の主砲が火を吹いた。

 強大なエネルギーの束が、真っ直ぐにガルマン帝国本星の月に向かって行った。そして、月に命中すると、巨大な爆発を起こし、月の中心部が真っ赤に染まっていた。

 

 キーリングとグスタフは、真っ青になって、その光景を見つめていた。

「な、何という威力だ!」

 それは、地上からも見えていた。いつもは薄く青白く見えていたその月が、見たこともないような赤い色に染まっている。

「み、見ろ!」

「我々の月が……!」

 やがて、暫く経つと、その爆発もおさまり、月面には、大きな穴のような黒ずんだ模様が現れていた。

 

 サーダは、大いに笑っていた。

「見たか、主砲の威力! 次は、ガルマン帝国本星の番だ。主砲、連続砲撃始め!」

 超巨大戦艦の主砲は、もう一度向きを変えると、今度はガルマン帝国本星へと、その砲門を向けた。

 そして、間髪入れずに、砲撃が開始された。

 ガルマン帝国本星に撃ち込まれた超巨大戦艦の主砲弾は、次々に本星へと命中し、地表を赤とオレンジ色に染めて行った。

 

 キーリングは、慌ててグスタフに言った。

「いかん! このままでは、本星に、甚大な被害が出てしまう!」

 グスタフは、大きな声で指示をした。

「ガルマン帝国軍に告ぐ! 本星攻撃を止めさせる。直ちに、全軍をもって、あの戦艦を撃沈しろ!」

 その号令を受けて、ガルマン帝国艦隊は、超巨大戦艦へと向かって接近していった。そして、陽電子砲や、ミサイルによる攻撃を始めようと射程圏内に侵入した瞬間、超巨大戦艦からの反撃が始まった。

 超巨大戦艦に備えられた無数の砲塔が一斉に火を吹くと、射程圏内に入っていたガルマン帝国の艦艇は次々に沈んで行った。

 グスタフは、一瞬のうちに、百隻近い艦艇が失われたことに気が付くと、慌てて指示を発した。

「後退だ! 後退させろ!」

 グスタフは、青ざめた顔でキーリングに言った。

「参謀長、駄目です。あれでは、近づくことさえ出来ません」

「くっ……! 通常兵器では、歯が立たないというのか……!」

 

 スターシャは、真っ青になって、ガルマン帝国本星が蹂躙されて行く様子を見つめていた。デスラーは、彼女の背に手をあて、力強く言った。

「スターシャ。あの星には、我々の同胞たちガミラスとイスカンダルの末裔が住んでいる。私は、一人のガミラス人として、あのような暴挙を見過ごすことは出来ない。私に、デスラー砲を使わせてはくれないかね?」

「アベルト……」

 スターシャは、すがるようにデスラーの顔を見つめた。

「……ごめんなさい。アベルト、皆を救って」

 デスラーは、静かに頷いた。そして、彼は再びデスラー砲の照準器を覗き込み、超巨大戦艦に照準を合わせた。

「総統、デスラー砲の発射準備、間もなく完了します」

 タランの報告を受けて、デスラーは、発射装置の安全装置のレバーを引いた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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