宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
「高エネルギー反応ヲ探知。波動砲デス」
オートマタ兵から、警告を聞いたサーダは、にやりと笑った。
「ふふふ。野蛮な連中だ。すぐに最終兵器に頼ろうとする」
サーダは、防御システムを担当するオートマタ兵に命じた。
「主砲、砲撃中止! 波動砲の射線上に、防御システムを最大展開!」
サーダは、波動砲を撃とうとしているデウスーラの映像を眺めた。その艦首は、今にも波動砲を放とうと光り輝いている。
「お陰で、この星系は、かなり不安定になっている」
「デスラー砲、発射五秒前、四、三、二、一……」
タランの秒読みに合わせ、デスラーは、デスラー砲のトリガーを引いた。
「……デスラー砲、発射」
デウスーラの艦首デスラー砲に、眩しい閃光が走った。
その直後、波動砲のエネルギーが放出され、稲妻のような光を放ちながら、前方へと突き進んだ。
デスラーは、対閃光鏡越しに、その光跡を見つめた。すると、ほどなくして、超巨大戦艦の舷側へと命中したかに見えた。
しかし、突然その光跡は捻じ曲げられ、超巨大戦艦を迂回して、横方向に飛び去って行った。
「そ、総統! デスラー砲、外れてしまいました!」
タランは、驚きと共にデスラーに報告したが、デスラーも、唖然として前方の超巨大戦艦の姿を見つめていた。
タランは、科学士官の座席に自ら陣取ると、センサーの記録を急いで確認した。
「これは……! 波動砲の射線の空間が捻じ曲げられています。これは推測ですが、ブラックホール砲の技術を応用して開発された防御機構ではないかと思われます。興味深い……」
デスラーは、不快感を顕にしていた。
「感心している場合かね。すぐに対策を検討したまえ」
「し、失礼しました。直ちに検討に入ります」
デスラーは、吐き捨てるように言うと、頭を片手で抱えて後ろに下がった。スターシャは、そんなデスラーの背にそっと手を置いた。
「アベルト……。大丈夫ですか」
「……スターシャ。デスラー砲が当たらないとなれば、あれに対抗するのは、そう簡単ではない」
するとその時、通信士が報告した。
「敵、超巨大戦艦から通信が入っています。また、全艦隊に向けたオープンチャンネルです」
デスラーは、通信士を一瞬睨みつけたが、すぐに冷静さを取り戻して言った。
「繋ぎたまえ」
「はっ!」
再びスクリーンに、サーダの姿が映し出された。サーダは、可笑しくて堪らないといった様子で、笑い転げている。
その様子は、デウスーラだけで無く、集まったすべての人々の前に映し出されていた。
「ほほほ……。皆さん、これは失礼。余りにも、面白かったものだから、つい」
デスラーは、奥歯をきりきりと噛み締めて、サーダを睨んだ。
サーダは、尊大な口調で話し始めた。
「波動砲なら、我々を倒せると思ったようだな。さぞや、残念だったことだろう。もしかしたら、数撃てば当たるかも知れないぞ」
サーダは、そこで、何か思い出したような顔をした。
「ああ、そういえば……。一度撃つと、暫くの間は使用不能になるのだったな。なら、そこにいる地球艦隊と一緒に、並んで順番に撃ってみてはどうだ?」
サーダは、再び笑い出した。
デスラーは、怒りに震え拳を握り締めていた。
「どうした? もう、撃たないのか? なら、儀式の続きをやらせてもらおう。本艦の主砲による惑星攻撃を再開する」
その通信が切断された後、再び超巨大戦艦による、ガルマン帝国本星への砲撃が再開された。地表は、砲撃が命中した地点を中心に、核爆発のような大爆発が続け様に起こっていた。海は荒れ狂い、津波が小さな島々に襲い掛かっていた。
首都にいる人々は、まだ被害を受けていなかったが、遠く空が真っ赤に染まって行き、間もなく攻撃を受けるとパニックになった。
「やられるぞ! 逃げるんだ」
「逃げるって何処に!?」
「山の中とか、地下なら助かるんじゃないか?」
人々は、思い思いの助かる道を探し、走り出した。
地上車は渋滞を起こし、事故を起こした車が炎上して、さらなるパニックを誘っていた。
キーリングは、民衆を守れなかったことに、ショックを受けていたが、それでもまだやれることがあると、新たな指示を発した。
「グスタフ、少しでも国民を救出しよう。首都近郊の軍港の輸送艦に、人々を誘導させて、宇宙に上げるのがいいだろう。それでも足りなければ、艦隊を地上に降ろして救助に回してくれ」
「分かりました!」
グスタフ中将は、慌ただしく、地上の軍司令部へと連絡をとった。そして、艦隊の一部にも地上に降下する部隊の選定に入っていた。
「そうだ。グスタフ、もう一つ頼まれてくれないか。地上に配備されている残りの惑星破壊プロトンミサイルを試してみたい」
グスタフは、眉間にしわを寄せて考えていた。
「先程の艦隊による攻撃が、まるで通用しませんでした。恐らく、ミサイルを接近させたところで撃墜されてしまうのが関の山かと」
「確かにそうだろうな。しかし、私は最後まで諦めたくない。やれることは、すべてやってみないか?」
グスタフは、手を止めてキーリングと顔を見合わせた。
「……おっしゃる通りですね。分かりました。やってみましょう」
「ありがとう。頼むよ」
キーリングは、思いつく限りのやれることを終えると、その間なすすべもなく、ガルマン帝国本星が攻撃され続ける映像を見つめていた。しかし、そこでふと気付いたことがあった。
「何故……首都を狙わないんだ?」
首都の位置は、簡単に分かる筈だった。しかし、そこから遠い所を中心に、砲撃は続いていた。まるで、わざと撃たないように避けているようにも見えた。
ミルは、超巨大戦艦がガルマン帝国本星に攻撃を加える様子を、怒りに震えながら見ていた。
「サーダ……。何という恐ろしいことを。あんなことが儀式とは、いったい彼女は何をしようとしているんだ?」
サーベラーは、目を細めて、超巨大戦艦の姿を見つめた。
「ミル。何か、あれを止める手立てはないのか?」
ミルは、頭を振った。
「白色彗星がまだ残っていれば、もしかしたら使えたかも知れませんが」
サーベラーは、腕を組んで、悔しそうに唸った。
「ガトランティスの責任において、あれを止められたらよかったのだが」
ミルは、そのやり取りで、ふと思いつくことがあった。
「ゼール中佐。要塞都市帝国の残骸だが、先程大きな爆発が起きていたが、コアは無事だろうか?」
「コア……ですか?」
ミルは頷いた。
「要塞都市帝国の白色彗星化で、中心部に設置していた人工太陽のことだ」
「分かりました。センサーで、状況を確認します」
星名も、それに興味を示していた。
「そうか……。君は、それを人工太陽爆弾として利用するつもりだね?」
ミルは、あまり自信なさげにしていた。
「使えるかどうかは分からないがね。あれを再点火して接近させれば、通常兵器で撃墜することは不可能だ。そうやって接近させ、至近距離で爆発させれば、多少なりとも効果があるのではないか、と考えたのだ。再点火する方法も考えねばならないが」
星名は、記憶を辿って考えた。
「君たちの科学奴隷と呼ばれる科学者は、先程の戦闘で全滅してしまったが、あれは、元々ガミラス人の科学者のアイデアで作られたものだよね? 良ければ、頼ってみたらどうかな」
ミルは、星名の言葉に考え込んだ。
「しかし……。僕たちの言葉を、今更聞いてくれるだろうか?」
サーベラーは、彼の背を叩いた。
「そうやって、懸命に努力して、信頼を取り戻せばいい。あれを開発した責任者なら、先程デスラー総統の船にいたぞ。声をかけてみたらどうだ?」
同じ頃、ヤマトでは、艦橋の中央に士官が集まって、対策の議論を行っていた。頭上の大スクリーンには、アンドロメダの山南も映っていて、その議論に通信で参加していた。
「土方総司令、どうします? 波動砲が通用しないと分かりましたが、このまま手をこまねいていれば、ガルマン帝国本星は滅んでしまいます。例えば、惑星と超巨大戦艦の間の射線上に、主力戦艦を移動させて、波動防壁を展開して攻撃を妨害してみるのはどうです?」
それには、土方は、真田の方をちらと見た。意見を聞きたいのだろう。
「先程、あの砲の火力を分析して、計算してみました。恐らく、波動防壁は、保って十数秒間といったところでしょう」
山南は、残念そうにしていた。
「たったの十数秒か……。それじゃあ、何の役にも立たないな」
古代は、土方や真田の方を見て、先程感じた疑問を口にした。
「暗黒星団帝国に所属していると名乗ったサーダのさっきの話。我々に、わざと波動砲を撃たせていたと思われるふしがあります。それで僕は、以前ユリーシャが言っていたことを思い出しました。波動砲を使うと、宇宙が裂けてしまうと、彼女は言っていました。これについて、真田さんはどう思いますか?」
真田は、頷いて冷静に話した。
「我々に、意図して波動砲を撃たせていたと仮定すると、それによる、何らかの効果を期待しているものと推測される。古代の言う、波動砲で宇宙が裂けるという事象が本当に起きるかどうか、これを実験して証明するのは困難だ。よって、あくまで推測に過ぎないが、波動砲は、波動エンジン内に余剰次元を取り込み、それを前方に放出することで、その射線上の空間に、別の宇宙を作り出している。それが、崩壊することで、あの強力なエネルギーを生み出しているのだが、原理から言っても、空間を不安定にさせ、次元の裂け目が発生する可能性がある。しかし、これまでの実戦での使用結果からも、そんなに簡単には事象は発生しないと思う」
「では仮に、それが起きたとして、それを彼女が期待しているとしたら、いったい最終的に何をしようとしていると思いますか?」
真田は、再び考え込んだ。
「……古代。以前、ギャラクシーの近くにあった亜空間ゲート内の次元断層で、次元の裂け目が出来ていたことを覚えているか? 次元断層は、この時空連続体に存在する、並行宇宙への入り口となりうることが、あの時に判明している。お前も見ただろう。別の銀河が裂け目から現れようとしているのを」
古代は、その時のことを思い出していた。
「そうか……!」
あの時、古代は雪と美雪と共に、次元の狭間とも呼べる空間に、テレサに導かれて、別の宇宙の雪と出会った。この宇宙とは、別の宇宙。もう一つの可能性の、もう一人の雪の存在。
古代は、そのことと、今回のことを結びつけようと、必死に考えてみた。そうして導き出された答えは、余りにも滑稽で、想像を絶することだった。
「真田さん……。もしも。もしも、ですよ?」
集まった第一艦橋の士官たちは、古代の言い出すことに注目した。
「サーダは、既に消滅した故郷の星を取り戻すと言っていました。彼女の最終的な目標は、並行宇宙に存在しているであろう別の可能性として、故郷が無事に存在する世界の天の川銀河を出現させることなのではないでしょうか?」
土方も、山南も、そして真田も、集まった他の士官たちも、呆気にとられてその話を聞いていた。
「そ、そんなこと、出来る訳がないだろう。それを、あの女が考えているとしたら、相当にいかれてるぞ」
山南の言うことは、そこにいた誰もが感じていたことだ。しかし、真田だけは、それを聞いて可能性を探っていた。
「いや……仮に、そうだとすれば、今のところ、はっきりとした機能が不明なコスモフォワードシステムが、その鍵を握っているのかも知れない。以前、シャルバートから聞いた話から推測すると、コスモリバースシステムが、過去のある時点の再現をするものなのに対し、コスモフォワードシステムは、未来のある時点を確定させるものだと考えられる。並行宇宙が無数に存在していると仮定した場合、その中から、望む未来を確定させようとしているのではないか……? サーダは、ガルマン帝国本星を攻撃する行為を、儀式と呼んでいたが、もしかしたら、その未来の確定に必要なことだから、そう言っているのかも知れない。いや、これまでガトランティスによって引き起こされた、すべてのことが、未来の確定に必要だった可能性もある」
真田までもが、そのようなことを話した為、集まった乗組員は、しんと静まり返った。
古代は、真剣な表情で真田に尋ねた。
「そうすると……。波動砲で次元の裂け目を生み出し、別の宇宙から彼女の望み通りの故郷の星を出現させる為に、コスモフォワードシステムを使う……。そういうことでしょうか?」
「これまでに起きたことや、彼女の言動からも、論理的な考察だと思う。だが、あくまでも推測に過ぎない」
土方は、それを聞いて鋭い目つきで真田に聞いた。
「もし、そのようなことが起きた場合、その時、地球はどうなる?」
「別の宇宙の太陽系と衝突する、もしくは別々の座標で共存する、などの可能性が考えられます。何れにせよ、銀河系全体で見れば、現在のバランスが崩れ、太陽系同士の衝突などもあちこちで発生するでしょう。ことが壮大すぎて、何か起こるかシミュレーションも容易ではありません。少なくとも、現在の天の川銀河の秩序は、崩壊すると考えて良いと思います」
その時まで黙っていた島が発言した。
「だったら、もう、波動砲を撃たなければいいんじゃないか? それで、サーダの計画は破綻する」
古代もそれには頷いた。
「確かにそうだな。ああやって、ガルマン帝国本星を攻撃しているのは、僕たちに波動砲を撃たせようと煽っているんだろう」
土方は、そこまでの議論を聞いて、最後に話した。
「だが、このままでは、ガルマン帝国本星に甚大な被害が発生するのを止められん。こうしている間にも、ガルマン帝国やガミラス側が、何か対抗策を練っているかも知れない。我々からは、今の推論を説明して、情報を共有しよう」
「……なるほど、そういうことなら、ガミラスからも地上に艦隊を派遣して、救助活動を支援させてもらおう」
ネレディアの話に、グスタフは、笑顔で応じた。
「それはありがたい。ご協力に、感謝する」
話し合いに参加していたミルも、支援を申し出た。しかし、キーリングは、それに難色を示した。
「その申し出を、簡単に我々が受け入れられると思っているのかね? 我々が、破滅寸前まで追い詰められているのは、誰のせいかお忘れか? それに、仮にそれを受け入れたとして、君らの艦隊が地上に降りたら、国民は更なるパニックを起こしてしまう」
ミルは、そう言われて言葉に詰まった。
「そ……それは」
「あのサーダとかいう女に、ガトランティスが操られていたからと言って、君たちが多くの国民の命を奪った事実は、決して消えたりはしない」
肩を落としたミルに代わって、サーベラーが発言した。
「本当に申し訳ない。この戦いが終わったら、何らかの形で、償いを行わせて頂きたい」
ミルは、もう一度気を取り直して言った。
「ならば、私から、あの超巨大戦艦を止める手立てについて提案がある。それには、デスラー総統にご協力をお願いしたい」
デスラーは、冷酷な目線を向けて、ミルを睨んだ。彼は、自身を拉致し、スターシャを人質にされた原因を作ったミルを信用していなかった。
「……ミルくん。君は、面白いことをいうね。この私が、君の話をなんでも信用するお人好しに見えるのかね? スターシャ救出作戦では、確かに君の力は、必要だった。だが、泥棒に、盗んだ物を返してもらったというだけだ。私は、泥棒に感謝するお人好しはいないと思うのだが、君はどう思うかね?」
これにも、ミルは反論することは勿論、何も返す言葉が無かった。これほどまでに、地に落ちたガトランティスの信用を取り戻すのは、容易なことではない。しかし、ここで諦めては、ガトランティスがやり直すことは到底出来ないだろう。ミルは、再びデスラーに食い下がった。
「おっしゃる通り、我々の罪は重い。当然、感謝して欲しいなどとは考えておりません。我々は、罪を償いたいと思っているだけです。どうか、話を聞いて頂けませんか?」
スターシャは、デスラーの横に現れて、彼を諭した。
「アベルト。彼の話を聞いてあげて。彼がいなければ、ガトランティスが今、こうして停戦に合意することもありませんでした。彼の本気を、信じてもらえませんか?」
デスラーは、眉根を寄せて、スターシャの顔を見つめた。そして、サーシャもそこに参加した。
「アベ……いいえ、デスラー総統。わたくしは、ミルさんの本当の心を知っています。とても優しい方です。嘘がつけるような人じゃありませんことよ?」
ミルは、スクリーン越しに、スターシャとサーシャが、庇ってくれたことに、感動していた。
「スターシャさん……サーシャさん……」
デスラーは、ため息をつくと、頷いた。
「二人にこうまで言われてしまってはね……。仕方あるまい。話を聞かせてもらおう」
ミルは、要塞都市帝国の残骸の中から、無傷のコアを発見したことを伝えた。先程検討した、人工太陽爆弾として、超巨大戦艦にぶつけるという策である。
「この人工太陽を再び点火するには、元々これを開発したガミラスの科学者のご協力が必要です」
タランは、デスラーに呼ばれてスクリーンの前に現れた。
「そういうことでしたら、私の部下の科学士官に、点火作業をやらせましょう。原理は単純なので、作業を始めたら五分もあれば」
ミルは、感謝の表情を浮かべて、タランに会釈した。
「ありがたい。では、我々は、人工太陽を超巨大戦艦から離れた座標まで牽引して運びます。そこで点火に成功したら、我々がこれを牽引して、超巨大戦艦に向けて飛ばします。超巨大戦艦の火力をもってしても、人工太陽爆弾は、容易には止められない筈です。一発で撃沈することは難しいかも知れませんが、そこがウイークポイントになると思います。そこを攻撃すれば……」
デスラーは、そこで頷いた。
「ならば、デスラー砲でそのウイークポイントをもう一度狙ってみよう」
「待って、デスラー総統」
それまで、後ろに控えていたユリーシャが、突然発言した。
「なんだね?」
ユリーシャの表情は、真剣そのものだった。
「サーダは、私たちに、わざと波動砲を撃たせようとしている。この宙域では、もう何度も波動砲を使っている。これ以上、波動砲を使い過ぎれば、宇宙が裂けてしまうかも知れない。サーダは、その瞬間を狙って、コスモフォワードシステムで何かしようとしている。波動砲を使ってはいけない」
怪訝な表情をするデスラーに、スターシャは説明した。
「イスカンダルの帝国時代の過去の記録に、そのような情報があるのです。確かに、ユリーシャの懸念は分かるけど、宇宙が裂けるほど波動砲を撃つには、かなりの回数が必要な筈」
ユリーシャは、目を丸くしている。
「お……お姉様。お姉様が、そんなことを言うなんて……」
スターシャは、ユリーシャに頭を下げた。
「ごめんなさい、ユリーシャ。もう、イスカンダルを出た時から、贖罪に身を捧げるのはやめたのよ。私は、アベルトを救い出す為に、この手で波動砲を撃ったこともある」
「え……」
ユリーシャとサーシャは、姉の変わりように驚きを隠せなかった。
「大切な人を守る為に、血を流すことも辞さない。そういう生き方に私は変えた。……本当にごめんなさい」
困惑するユリーシャとサーシャ。三人の間に、深い溝が出来ていた。
土方は、そのやり取りを遮って発言した。
「実は、我々の方でも、今のユリーシャさんの話と同じ議論をしていました。サーダの狙いは、波動砲で宇宙の裂け目を作り、コスモフォワードシステムで、彼女らの母星を蘇らせようとしていることではないかと考えています」
その後を引き継いで、真田は各国の代表者に、先程の議論の内容を説明した。
「……と、いうことで、波動砲の使用を止めれば、彼女の計画は破綻する、というのが我々の考えです」
キーリングは、それを聞いて発言した。
「波動砲を使えば、あの女の策略に乗ることになると……。ならば、我々の本星に配備されている、惑星破壊プロトンミサイルを使いましょう。人工太陽爆弾で突破口を開いた所に、我々の艦隊が突撃をかけます。それに混じって、プロトンミサイルを飛ばせば、容易には撃墜出来ないかも知れない」
土方は、目を見開いた。
「そんなことをすれば、あなた方の艦隊も……」
「ええ。巻き込まれて、多くの兵士が失われるでしょう。しかし、誰かがやらなければ、我々の母星は……」
ミルは、真剣な表情で訴えた。
「ならば、その役目。我々ガトランティスが引き受けましょう」
その発言に、集まった人々は、一様に驚いていた。ミルは、構わず更に続けた。
「それが、あなた方に対する、我々の贖罪となるでしょう。やらせて頂けませんか?」
サーベラーは、ミルの後ろから、ひそひそと話し掛けた。
「ミル。気持ちは分かるが、兵にその命令を従わせられるとは思えんぞ」
「……サーベラー様。そうかも知れません。しかし、やらねば信用を取り戻すことは出来ず、我々がこの宇宙で生きる道が絶たれます。ならば、兵を欺いてでも、これをやらねばなりません。私が、自ら艦隊を率います。あなたは、今回の戦いには無関係。すぐに退艦下さい。代わりに、生き残ったガトランティスの国民を、あなたが導いて頂けないでしょうか?」
サーベラーは、ミルの覚悟を知った。清々しい表情で、彼はサーベラーの瞳を見つめていた。
サーベラーは、微笑して彼の瞳を見つめ返した。
「さすがは、ズォーダー大帝のご子息。その覚悟、確かに受け取った。存分に、戦ってくるがいい」
サーベラーは、彼の身体を抱き締めた。そして、彼の耳元でそっと言った。
「ズォーダー様にも、ちゃんと、お前のことを話してやると約束しよう。だが、出来ることなら、生き延びて、自分の口で、話すのだな」
「はい……。承知しました」
しかし、その時、ガルマン帝国本星付近に、空間の歪みが観測され、新たな艦隊がワープで現れていた。
百合亜は、レーダーを確認すると、多数の艦隊の光点が現れ始めていた。
「付近に新たな艦隊、多数がワープから出現しています! 艦種識別出来ません! 見たこともない船です!」
真田は、センサーで形状を確認して、ヤマトのデータベースと照合した。
「確かに、艦種はデータベースに登録されていないが……。この形状、すべての艦に、波動砲と思われる砲門があるように見える」
古代は、その話に耳を疑った。
「な、何ですって!?」
真田は、古代と土方の方を見て言った。
「これは……もしかしたら、イスカンダルの波動砲艦隊かも知れない」
サーダは、現れた艦隊の報告を聞き、大きな笑い声を上げた。
「遂に……来たか。これで、儀式の仕上げを行うことが出来る! 惑星への砲撃を中止しろ!」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。