宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲139 宇宙の綻び

「主砲、新たに出現した敵艦隊に向けて一発だけ撃て! 但し、命中させてはならん!」

 サーダの命令で、艦首をイスカンダルの波動砲艦隊に向けた超巨大戦艦は、主砲を発射した。主砲の強大なエネルギー弾は、波動砲艦隊の間を通り抜けて行った。

 それを切っ掛けに、波動砲艦隊は、波動砲の発射準備を始めた。

「これで、この艦が敵と認識しただろう。イスカンダルの科学奴隷はやり遂げたのだな。シャルバートに、ガトランティスを憎ませ、波動砲艦隊で攻撃を命じるように仕向けた。すべて、計画通りだ……!」

 

 ヤマトでは、真田が新たな報告をしていた。

「あの艦隊から、多数の高エネルギー反応を検出しています。これは、波動砲の発射準備をしている時のパターンです」

 百合亜は、レーダーの探査結果を報告した。

「所属不明の艦隊、約五百隻。陣形を扇形にとって、その先に、超巨大戦艦がいます!」

 古代は、青ざめてその光景を見つめていた。

「サーダは、いったいどうやってイスカンダルの波動砲艦隊を……!?」

 土方は、相原に命じた。

「通信回線を開け! あの艦隊を運用している者に、直ちに攻撃を止めるように伝える!」

 真田は、その命令を撤回させた。

「艦長、待って下さい。あれには、生体反応が検知出来ません。恐らく、プログラム通りに命令を実行する無人艦隊です!」

「何!?」

 

 スターシャは、青ざめてその艦隊を見つめていた。

「あ……あれは」

 サーシャとユリーシャも、その艦隊の姿に見覚えがあった。

「帝国時代のイスカンダル艦隊……」

 タランは、観測したデータを報告した。

「全艦から、波動砲のエネルギー充填時のパターンを検出しています。生体反応も確認出来ない為、コンピュータ制御の自動運用がなされているものと思われます」

 ユリーシャは、スターシャとサーシャに呼び掛けた。

「いけない。これでは、サーダの思い通りになってしまう。お姉様がた、今こそ、もう一度祈りを捧げる時です!」

 スターシャは、二人の表情を見た。ユリーシャの悲痛な顔。そして、サーシャの残念そうな表情。あの祈りを捧げるには、余りにも三人の意思はばらばらだった。

「ユリーシャ……。今は上手くいく気がしないわ」

 その時、デスラーは、タランに命じた。

「デスラー砲、発射用意」

 ユリーシャは、憤慨して言った。

「だ、駄目です! そんなことをしたら……」

 デスラーは、デスラー砲の発射装置を掴むと、冷静に言った。

「あの、波動砲艦隊を殲滅する。それ以外に、この窮地を脱する方法があるかね?」

 タランは、そのデスラーに報告した。

「総統。本艦は、先程デスラー砲を撃ったばかりで、まだ撃てません」

 デスラーは、不機嫌そうな顔になった。

「だったら、土方総司令に、拡散波動砲とやらで、あの艦隊を殲滅するように言おう」

「そ……そんな……。お姉様たちも、何か言って下さい!」

 スターシャも、サーシャも、表情は暗く、黙っている。

「ど、どうしたんですか!?」

 スターシャは、静かに口を開いた。

「私たちが撃たなくても、あれは撃つでしょう。最善の方法は、あの艦隊を消滅させること。私は、アベルトの策に……賛成よ」

 サーシャも、横目でユリーシャを見つめた。

「あの祈りが通用するのは、相手が生きた人間の場合でしょう? 機械仕掛けのあれに、あの祈りは通用しないわ」

 ユリーシャは、すっかり諦めて、戦って決着をつけようとする二人の反応に愕然とし、ふらふらとよろけた。その彼女の肩を掴んで支えたのは、ランハルトだった。

「ランハルト」

「落ち着いて下さい、ユリーシャ様」

「でも、でも……!」

 ランハルトは、努めて冷静に話した。

「お気持ちは分かります。しかし、この状態では、私も叔父の言うことは正しいと思います。こんな時は、冷静になって、ことの成り行きを見守ることも必要です。今は、あなた方三人の意思が、統一されていません。その時が来るのを待ちましょう」

「そんなことを、言っていたら、手遅れになるかもしれないよ?」

 ランハルトは、なんと言うべきか少し悩んだ。だが、大したことは言えそうもない。そんな時、ランハルトの近くにいたケールは、彼に暗い表情で言った。

「大使……。これまで感じたことの無い、嫌な予感がしています」

 そう言うと、ケールは、その場にへなへなと座り込んだ。

「おい、大丈夫か?」

「ケール、大丈夫!?」

 ランハルトとユリーシャは、屈んで彼を気遣っていた。ケールの顔色は、真っ青になっている。

「すごく……気持ちが悪いです。頭が朦朧としています」

 ユリーシャは、不安そうな顔で、ケールの身体を抱いた。

「ケール……かわいそう……」

「そうか……。このままでは、懸念していることが起きてしまうのだな? しかし、どうすれば」

 ケールは、苦しそうにしながらも、気丈に話した。

「僕のこの近い未来を知る力は、万能ではないですよ……。外れたことだって、今までにもありますから。だから、未来は、確定している訳ではないと僕は思っています。無数の可能性の分岐した未来があり、皆の選択が、その因果を決定づけている。だから、二人とも、そんな顔をしないで下さい……」

 ケールは、意識を失って、その場に倒れそうになった。それを抱き止めたユリーシャは、ランハルトの方を見た。

「どうしよう、ランハルト……」

「今は、とにかくケールを医務室に運びます。まだ時間はある筈です。あなたも、スターシャ様たちも、少し、冷静になるべきです。ユリーシャ様、良かったら一緒に医務室に行きませんか?」

 ユリーシャは、ランハルトが伸ばした手をそっと掴んだ。

「分かった。そうするよ」

 ランハルトは、ケールの身体をユリーシャから受け取ると、抱き上げて立ち上がった。

 

 そうして、遂にイスカンダルの波動砲艦隊から、波動砲による攻撃が始まった。五百隻からなる波動砲の光は、周囲を明るく照らして伸びて行く。

「防御システム、艦首最大展開!」

 サーダの命令で、超巨大戦艦の艦首に目には見えない空間の歪みが形成された。

 周囲から一斉に撃ち込まれた波動砲の光跡は、次々に超巨大戦艦に命中しようとして、その方向が捻じ曲げられた。そして、あらぬ方向に波動砲のエネルギーが飛び交い、その一つが、ガトランティス艦隊の端をかすめて行った。そこにいた複数の艦艇が一斉に被弾するか消滅し、艦隊は逃げ惑い、パニックになっていた。

 ユーゼラー提督は、慌てて艦隊に命じた。

「退避! 退避だ。超巨大戦艦から、もっと距離を取れ!」

 ナスカ提督は、同じく自身の艦隊に指示を出した。

「冗談ではない! 波動砲の流れ弾などに当たれば、ひと溜まりもないぞ! 後退しろ! 後退だ!」

 

 同じく、ガミラス艦隊にも、その波動砲の流れ弾が命中し、その一部が消滅してしまっていた。

 バーガーは、急いでネレディアに連絡していた。

「おい、ネレディア! こいつは、洒落になんねえぞ! もっと遠くへ離れよう」

「……了解だ。もはや、我々の手には負えん」

 

 そうしている間にも、波動砲の流れ弾は、今度はガルマン帝国本星の月の端にも命中していた。命中した場所は、粉々に砕け散り、岩石が宇宙を飛び交った。その岩石がガルマン帝国艦隊に衝突し、被害を受ける艦艇が出ていた。

「艦隊を、もっと後方に後退させろ! 急げ!」

 グスタフ中将の命令で、一斉に艦隊は移動した。

 

 地球艦隊にも、波動砲の流れ弾が当たりそうになり、山南は慌てて指示をしていた。

「拡散波動砲の準備なんてしてる場合じゃない! すぐにこの場を離れるぞ!」

 既に、デスラー総統からの要請を土方が受け、主力戦艦による拡散波動砲攻撃の準備を始めていたが、それを中断し、艦隊は後退を始めた。

 その時ヤマトでは、艦を退避させようと、島が操舵を握り締めて、後退を開始していた。

「反転百八十度、よーそろー!」

 その間も真田は、イスカンダルの波動砲艦隊の観測を続けていて、ある事実に気が付いた。

「この艦隊は、波動砲の連射が可能なのか……!」

 

 超巨大戦艦の艦橋は、波動砲の閃光が見えないように窓を閉鎖していた。艦首に設けられたカメラで捉えた映像が、スクリーンに映し出されている。激しい波動砲の輝きは、絶えることなく眩しく艦体を包んでいる。

 サーダは、狂喜してその様子を眺めていた。彼女は、この宇宙の秩序を守るべく活動していた星巡る方舟の存在も調べ上げていた。それが、長い年月、宇宙の綻びを閉じて回っていたことも。

 超巨大戦艦のセンサーは、艦首付近に集中して撃ち込まれた波動砲により、今まさに、次元の綻びが発生しようとしていることを検知した。

 

 もう少しだ……。

 既に、この星系のいくつかの座標で発射された波動砲が、この宙域を不安定にさせている。最後のこの波動砲の連射により、小さな次元の裂け目が生まれ、それは、巨大な裂け目に大きく広がる筈だ。そうなれば、例え方舟が来ようが、閉じることが出来ない程の大きさになるだろう。

 

 サーダは、おもむろに、再び全チャンネルをオープンにするようにオートマタ兵に指示をした。これから行う演説により、未来を確定させる最後のお膳立てを行う。

 自身に憎しみを集め、彼らにこれから起こることを認知させ、絶望させること。その思いこそが、未来の確定に必要な儀式だった。悪夢のような出来事がこれから起こると、知らしめることで、彼女の望む運命を手繰り寄せるのだ。だからこそ、生きて恐怖する多数の人間の存在が必要だった。

 

 各国の艦隊や、ガルマン帝国本星の人々に、再びサーダの映像が送られた。サーダの高笑いが映像として映し出され、人々は恐怖に突き落とされた。

「皆の者、我が暗黒星団帝国は、この地で復活を遂げる。間もなく、この宇宙は裂け、並行宇宙から別の銀河が現れる。何処にも逃げる場所などない。そして、そこに存在するであろう、別の宇宙の暗黒星団帝国が、この銀河全体を支配するだろう。更には、この宇宙の生きとし生けるもの、その血の一滴まで、暗黒星団帝国の物となる。お前たちは、この儀式の生け贄となり、間もなく全員がその身を捧げることになる。我が暗黒星団帝国復活の礎となることを喜ぶがいい!」

 サーダは、悪魔のような恐ろしい表情で、笑い転げていた。

 

 それを見たガルマン帝国本星の人々は、サーダの言葉の意味を、理解しようとしていた。

「別の銀河系が現れるだと?」

「そんなことが、出来る筈がない」

「これが、本当だったら、どうなってしまうんだ!?」

「銀河系全体が、めちゃくちゃになるってことだろう?」

「私たちは、もう助からないの?」

「終わりだ……。この世の終わりだ……」

 

 ヤマトでも、乗組員は真っ青になってその演説を聞いていた。もはや、波動砲から逃げることに精一杯で、誰もが、これから起こることを止められそうもない。

 古代は、それでも彼女に立ち向かって行った。

「サーダ! そんなことをすれば、君も命を失うことになるかも知れないじゃないか!? 君は、それでいいのか!?」

 ヤマトの大スクリーンに映る彼女は、古代の言ったことに、笑みを浮かべた。

「私は、もう二千年もの間、この時の為に生きて来たのだ。我々の故郷を取り戻すことが出来るのなら、そんなことはどうでもいいことだ」

 古代は必死に考えた。彼女を思い留まらせる言葉を。古代は、咄嗟にそれを思いついた。

「君は、間違っている!」

 サーダは、古代に興味を示した。

「ほう……? 私の何が間違っていると?」

 古代は、真剣な表情で言った。

「君は言っていたな? 君らの故郷を滅ぼした未知の敵の存在がいると。その敵が、何処を探してもいないと」

 サーダは、不機嫌な表情になった。

「だからどうした。奴らは、我々が圧倒的な力を手にしたことを恐れ、遠い宇宙に逃げ出したんだ。だから、何処にもいないのだ」

 古代は、頭を振った。

「ガトランティスを影から支配してきたという、君たち自身が、その何者かに密かに支配され、今回のことをやらされているとは思わなかったのか? それが本当に無いと言い切れるのか? 君たち自身が、ガトランティスと同じように、被害者かも知れないのに。その敵は、今まさに、君を嘲笑っているのかも知れない」

 サーダの表情から血の気が引いて行くのが、誰の目にも明らかだった。

「今ここにいる我々は、方舟によって蒔かれた種から生まれた共通の種だ。この銀河団一帯に住む、本来は分かり合えた筈の仲間なんだ。君たちも、ガルマン帝国もボラー連邦も、ガミラスもイスカンダルも、そしてガトランティスも僕ら地球人も、同じ姿形をして、同じような営みをする同種の生命であることに変わりはない。君たちの故郷を滅ぼしたという、その敵は、この宇宙をめちゃくちゃにしようとする、僕ら皆の共通の敵だ。こんなことをしなくても、僕らが協力して、その敵に立ち向かうことが、本来やるべきことじゃないのか?」

 サーダは、古代の言葉に動揺し、ふらふらとよろめいて、自身の椅子に掴まった。

「な……何を……貴様は……」

 古代は、言葉が彼女に届いたと悟った。もうひと押し、古代はかける言葉を探した。

「……僕らは、必ず分かり合える。僕は、様々な異星の人々と出合い、一時は憎しみ合ったこともある。でも、信じ合い、愛し合うことで、互いを尊重し、理解し合えると学んだ。僕らだって同じだ。一緒に、すべてをやり直さないか?」

 土方は、黙って古代を見つめていた。彼の異星人とも分かり合えるというその思い。それが、この宇宙を救う鍵となるかも知れなかったからだ。

 サーダは、頭を抱えて項垂れていた。

「ふざけたことを言う……」

 しかし、彼の言葉は、彼女を激しく後悔させるのに十分だった。

 あの憎い敵が、自らを操っているという可能性。自身が仲間だと思っている暗黒星団帝国自体が、本当に自分の仲間かどうかも疑わしく思えて来ていた。そして、自分が信じている暗黒星団帝国の歴史そのものが、急に疑わしいものに感じていた。

 

 ……もし、彼の言うことが正しかったら?

 

 サーダは、目前のイスカンダルの波動砲艦隊を見つめた。自動運転で動くあの艦隊は、超巨大戦艦の主砲で攻撃すれば、たやすく沈めることが出来るだろう。

 しかし、その迷いの中、遂に艦のセンサーで、次元の綻びが作り出されたことを知った。

 

 もう、後戻りは出来ない――。

 

 サーダは、艦内へと連絡した。

「コスモフォワードシステム、起動用意」

 古代は、動揺して、彼女に呼び掛けた。

「サーダ、止めるんだ。そんなことに、何の意味がある!」

「意味はある。この計画では、私か、シーラのどちらかが、その身をコスモフォワードシステムのコアとして捧げる予定だった。そのシーラは、既にコアとなってここにはいない。彼女の死を、彼女との約束を、私は無駄にすることは出来ない」

「そんな……!」

 サーダは、寂しそうに最後に古代に笑顔を向けた。

「残念だよ。もっと早く、お前と知り合っていたらな……」

 その瞬間、通信が切れた。

「サーダ! 待ってくれ、サーダ!」

 土方は、全艦に命じた。

「古代。残念だが、もう間に合わん。少しでもこの場を離れる。全艦、ワープで離脱!」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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