宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲14 偽装夫婦

 翌日――。

 

「おはようございます」

 基地の託児所にやってきた雪は、美雪を預けに来ていた。近頃は、ここで、長い時間、他の子どもたちと一緒に過ごすのが日課になっていた。

「おはよー」

 先に居た真琴は、エプロン姿で雪から美雪を受け取った。

「真琴さん、どうしたの? その格好」

 真琴は、笑顔で言った。

「ここで保育士やることにしたんだ」

「へぇ〜。そうなの?」

「看護師は、今のところ足りているみたいだったから。翼の近くにもいられるし、一石二鳥でしょ?」

「私もそろそろ職場復帰しようと思ってたんだよね」

「雪さんもここで働けば? 子供が増えて人手不足なんだよね」

「うーん。そうだね。古代くんにも相談してみるよ」

 そんな何気ない話をしていると、雪はあるものを見てぎょっとした。

 部屋の隅で、真田が一人の女の子を膝の上に抱っこして、本を読み聞かせている。

「……浦島太郎は、乙姫にもらった玉手箱を遂に開いてしまいました。その途端、箱の中から、もくもくと煙が立ち上りました。すると、何ということでしょう。浦島太郎は、あっと言う間におじいさんになってしまったのです……」

 サーシャは、目をぱちくりさせて、絵本の浦島太郎の絵を指さしている。

「何で、何で、どうしてこうなっちゃったの!? タロウ、可哀想!」

 真田は、感心したように頷いた。

「とても良い質問だ。何故こうなってしまったのか、一緒に考えてみよう」

 真琴は、雪の耳もとで囁いた。

「朝から、サーシャちゃんの手を引いてここに現れたの。何でも、昨日、スターシャさんが出発する時に、預かって欲しいって頼まれたんだって」

「よりによって、何で真田さん!?」

「真田さんも、分からないみたい。でもね、さっきから見てると、サーシャちゃん、凄く懐いてるよ」

 雪は、昨日の事件の顛末を古代に聞いていたが、この情報は抜けていた。

 確か、最後の作戦会議の場にいた人で、残ったのは、古代くんと真田さんと、ガミラスの士官だけだったはず。もしかして、軍の任務にかかわっていないのが、たまたま真田さんだけだったから……?

 そういえば、真田さんは、タランさんと懇意にしていたようだし、その関係で、スターシャさんとも仲良くなっていたのかな……?

 雪の疑問は尽きなかったが、真田も分からないのなら、どうにもならない。

「いったい、竜宮城とは、どのような場所だったんだろうね?」

 サーシャは、頭を悩ませているらしい。目がきょろきょろと、あちこちを眺めている。

「きっとね、すっごい、とおいところだったんだよ。だからね、お友だち、みーんな死んじゃったの」

 サーシャは、両手を大きく広げている。

 真田は、嬉しそうにそれに答えた。

「いい着眼点だ! そう、竜宮城は、実はとてつもなく、遠い所だった可能性がある」

 雪と真琴は、二人のやり取りに呆れて、自分の子どもたちの面倒を見始めた。

 そこへ、新たに一人の女性がつかつかとやってきた。

 雪と真琴は、突然現れた新見薫の姿に気がついた。様子を見守っていると、彼女は真田の姿を認めて、まっすぐにそこへ向かった。

「……何を、なさっているんですか?」

 新見は、真田の目の前で立ち尽くしている。

「新見くん、よく来てくれた」

 新見は、訝しげな表情で、サーシャと真田の姿を見ている。

「私をここへ呼んだのは……。もしかしてその子のことが関係ありますか?」

 サーシャは、新見のことを感じが悪いと思ったのか、頬をふくらませている。

「真田、このオバサン、だあれ?」

 新見は、大きく目を見開いた。

「お、おば!?」

「オバサンは、オバサンだよ」

 新見の表情は、みるみる強張っていった。しかし、そんな新見の様子に、真田が気づくはずもなかった。真田は、いつものように、冷静に言った。

「サーシャ、この人はね、私の大切な友人なんだ」

「ふーん。そうなんだー。お友達なら、しょうがないなぁー」

 このガキ……。

 新見は、怒りを堪えて身体が震えていた。いくら、守の遺した子だとはいえ、失礼極まりないと思っていた。

「新見くん、君に、頼みがあるんだ」

 新見は、不機嫌そうな声を出した。

「……何でしょう?」

 真田は、まっすぐに新見の目を見つめて言った。

「私の、妻になってくれないか」

 新見は、目を丸くして口元を手で覆った。

「ええっ!?」

 後ろで耳を大きくして話をこっそり聞いていた真琴が、誰よりも大きな声で叫んだ。新見は、あまりのことに声も出せず、その場に固まっていた。雪も含めて、そこにいた真田をよく知る者たちは、固唾を飲んで彼の次の言葉を待った。

 真田は、皆の反応にバツが悪そうに困惑した表情になって立ち上がった。

「こ、……ここでは何なので、少し出ようか」

 新見は、顔を赤らめている。

「は、はい……」

 保育所を出ていく彼らを、雪と真琴は、呆然としたまま見送った。

 

 真田と新見とサーシャは、三人で連れ立って上層階のテラスにやってきていた。人気のないそこで、サーシャは一人走り回っている。

「実は、スターシャ女王に頼まれた。サーシャを、何処かへ匿って欲しいとね」

 それが、先程のプロポーズと思しき発言と、どういう関係があるのか、新見は不安な気持ちになった。

「どうも、嫌な予感がすると言っていた。ガトランティス艦隊がミルを迎えに来ていたこと、彼らの艦隊がボラー連邦へ向かったという事実は、彼女を不安にさせるのに十分な事態だったようだ。これから、何か恐ろしいことが起きる予兆のようなものを感じ取ったらしい。イスカンダル人の生態は、まだ我々にも謎が多いが、どうやら予知能力のようなものが働くことがあるそうだ。そして、自身の身に何かあれば、イスカンダルの血を引くサーシャは、最後の希望になる可能性があると」

 新見は、ますます困惑していた。

「君は、非科学的だと思うかも知れないが、私の勘も、従った方がいいと感じている。古代は、この基地に欠かせない軍人だが、私は科学技術省に所属していて、軍人ではない。私なら、ここを離れて、安全な場所へ雲隠れすることも可能だ。スターシャは、そこまで考えて、守の親友だったことも知った上で、私を頼ってくれたようだ」

 新見は、ここまで聞いて、先程のプロポーズの理由に思い当たった。そして、少し苛立ちながら尋ねた。

「私と、子供のいる夫婦を装い、スターシャ女王の子供と悟られないようにし、いざとなれば、サーシャちゃんをここから連れ出す……。つまり、そういうことですか?」

 真田は、相好を崩して頷いた。

「さすがは、新見くんだ。そのとおりだ!」

 途端に憮然とした表情で、新見は身を震わせた。

「……」

「新見くん?」

「……どうせ、そんなことだろうと、思っていました。ええ、そうです。最初から分かってましたから!」

 真田は、急に怒気を含んだ彼女の言葉にさすがに気がついた。

「じゃあ、何を、そんなに怒っているんだね?」

「でしたら、何故なのか、よく考えて見てください! 論理的に考えれば、すぐに解を導けるはずです!」

 当惑する真田のそばに、いつの間にかサーシャがいた。

「喧嘩してるの?」

「喧嘩なんてしてないから!」

 明らかに怒り出した新見は、後ろを向いてしまった。

 そこで、真田とサーシャは、二人で同じ様に腕を組んで考え込んでいた。

「あのね、ママとアベルトもね、喧嘩することがあるよ。でも、いつも負けるのは、アベルトなの。そうすると、すぐに仲良しに戻るんだよ。だから、真田がごめんなさいした方がいいよ」

 新見は、先程の怒りも忘れて興味を惹かれてふり返った。

「デスラー総統は、スターシャさんの尻に敷かれてるってこと?」

 サーシャは首をひねった。

「尻に敷かれてるってなあに?」

 真田は、サーシャに優しく教えた。

「仲のいい男女のうち、女性の方が強くて、男性がいつも負けてしまう時に言う言葉だよ。必ずしも、悪い意味じゃない。互いに好きだからこそ、そういう関係になる男女もいる」

 新見は、にやりと笑っていた。

「ふうん。あの人がねぇ。何か、不思議な感じ」

「二人は、どっちの方が強いの?」

 そう言われた真田と新見は、見つめ合った。

「どうかしらね。先生は、どうも男女のことになると、かなり学力は低いようだから」

 サーシャは、心配そうに真田を見つめた。

「真田、頭悪いの?」

 真田は、心外だ、といった顔をしている。それには、新見は吹き出していた。

「そんなに面白いかね?」

 新見は、笑いを堪えながらサーシャの頭を撫でた。

「ええ、とても。サーシャちゃんと一緒にいると、楽しそうね」

 新見は、心を決めて真田に言った。

「先生。お受けしますわ。夫婦のふりをする件」

 真田は、ほっとしたような表情になった。

「良かった。こんな事を話せる相手は、私には君しかいないから」

「それは光栄ですわ。でも、そこまで警戒する必要が本当にあるんでしょうか?」

 真田は首を振った。

「分からない。だが、スターシャの予知能力が本当だとすれば、警戒するに越したことはないだろう」

 新見は、腰を落としてサーシャの目線まで下がった。

「サーシャちゃん、ママが戻るまで、私たちがママとパパになってもいい?」

 サーシャは、二人を代わる代わる眺めて、うーん、と考えている。

「いいよ。でもね、ママはいつ帰って来るの?」

 真田と新見は、心配そうにサーシャの様子を窺った。

「もしかしたら、少し長くなるかも知れない。お母さんに早く会いたいかい?」

 サーシャは頷いた。

「でも、アベルトが危ない目に合っているんだよね? だから、ママには、アベルトを助けてねってお願いをしたの。ママとアベルトが仲良くしてると、私も嬉しい気持ちになるから」

 真田と新見は、黙ったまま、微笑んでサーシャを見つめた。

「……でも、一緒に連れて行ってくれなかったママには、ちょっと怒ってるの。サーシャを置いていくなんて……。これって、いくじほうき? っていうんだよね?」

 新見は、少し驚いて聞いた。

「そんな言葉、誰に教えてもらったの?」

 サーシャは、あっけらかんと答えた。

「私と同じ名前のオバサンからだよ」

「誰がおばさんかしら」

 三人のいるテラスに、その大きい方のサーシャと、ユリーシャが訪れて来ていた。

 驚く新見に、真田が説明した。

「私が呼んだんだ」

 真田は、やって来たイスカンダルの姉妹に会釈した。

「こんな所に呼び出すことになって申し訳ない」

「いいえ。あまり人に見られない方がよろしいですものね」

 大きい方のサーシャは、早速小さなサーシャのそばに膝を落として言った。

「サーシャお姉様、とお呼びなさい?」

「オバサンはオバサンでしょ?」

 大きいサーシャは、腹を立てたのか、小刻みに震えている。その後ろで、ユリーシャは、慌てたようなそぶりをみせていた。

 真田は、そんな二人に説明をした。

「サーシャ、ユリーシャ。新見くんが、引き受けてくれたので、私たちで彼女の面倒を見ることにする。だから、二人は予定通り行動してもらって構わない」

 新見は、そのやり取りで気がついた。

「もしかして、私が断ったら、彼女たちに預けるつもりでしたの?」

 真田は頷いた。

「断られたら、二人に同行させるつもりだった。出来れば、ここにサーシャを居させてやって、スターシャの帰りを待たせてやりたかったのでね」

 大きいサーシャは、ほっとしたように言った。

「助かりますわ。そうしたら、私たちも自由に行動出来ますもの。ねぇ、ユリーシャ」

 ユリーシャは、うーんと考えている。

「そうかなぁ。私が引き取っても良かったのに」

 大きいサーシャは、ユリーシャに顔を近づけて小さな声で言った。

「コブ付きなんて、殿方に振り向いてもらう確率を下げるだけですわ」

 ユリーシャは、その発言に面食らった。

「スターシャお姉様やサーシャのことが心配じゃないの?」

「心配はしてますわ。でも、お姉様に振り回されるのは、もっと嫌です」

 真田と新見は、イスカンダルの姉妹が何やら揉めだす様子を見守っていた。サーシャは、大人のやり取りを不思議そうに見守っていた。

「サーシャは、真田と一緒で大丈夫だよ。真田、面白いし」

「私が? 面白いかね?」

 サーシャは、嬉しそうに頷いた。

 そこで、新見は二人に言った。

「二人とも、気になさらないで。先生と二人で、ちゃんとサーシャちゃんのことは守るから」

 大きいサーシャは、嬉しそうに振り向いて、新見の手を握った。

「ありがとう。じゃあ、お願いしますわね」

 真田は、小さなサーシャの方を向いて少し考え込んだ。

「これからは、サーシャ、では無く、違う名前で呼んだ方がいいな。なんて名前がいい?」

 サーシャは、首を傾げた。

「そうしたら、ミオって呼んでくれればいいよ。私の名前は、本当は、サーシャ・ミオ・イスカンダルっていうの。お父さんがつけてくれた名前だよ」

 真田と新見は、それを聞いてはっとしていた。

 古代守がつけた名前……。

 二人は、感慨深くサーシャを見守った。

「分かった。ミオ……恐らく、さんずいに零という漢字だろう。これからしばらくの間だけ、君の名前は、真田澪だ」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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