宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
デウスーラでも、タランは艦を離脱させようと準備を進めていた。
「ジャンプで、この星系を離脱する。準備急げ!」
デスラーは、タランに命じた。
「惑星ファンタムに向うのだ。サーシャを連れて逃げなければ」
「はい、承知しています」
しかし、そのタランに報告が入った。
「新たな艦影が、異次元から出現しました! ゲール少将の次元潜航艦です!」
タランは、驚いていた。
「どうして、こんな所に……。通信回線を繋げ!」
艦内の中央に、立体映像でゲールの姿が現れた。
「タラン閣下。ゲール少将以下、次元潜航艦隊、イスカンダルの波動砲艦隊を追って、惑星ファンタムから只今参上しました!」
デスラーは、いらいらとしながら、自ら応じた。
「本当に、君という男は、空気が読めないね。間もなく、次元の裂け目から、別の銀河が出現する。直ちにこの場を離れ、出来る限り遠く離れなければならない。その船には、サーシャは乗っているのかね? 何故、連れて来るような真似をしたのかね?」
デスラーの冷酷な視線が、ゲールに突き刺さった。怯えたゲールに代わって、立体映像に、小さなサーシャの姿が映った。
「アベルトパパ。私もいるよ。何が起きているか、私たちもサーダの通信を傍受して知ってるの。あと、ママは、無事なの?」
デスラーは、サーシャの姿に、相好を崩した。そのデスラーの横に、スターシャもやって来て、笑顔を向けた。
「大丈夫。君のママは、無事に助け出した」
「サーシャ。良い子にしてた? ママは、大丈夫だから」
「良かった。心配してたんだよ」
久しぶりの親子の対面で、三人は束の間和んでいた。
しかし、サーシャは、真剣な表情になると、二人に言った。
「直ぐに異次元に潜って逃げれば、皆助かると思う。パパの船も、出来るだけ、沢山の船を異次元に引き込んで。そうすれば、少しでも多くの人を助けられるから」
デスラーとスターシャは顔を見合わせると、娘の意見に驚いていた。
「……分かった。タラン、近くにいるガミラス艦の何隻かだけでもいい。出来るだけ、異次元空間に引き込んで、ここから離脱させよう。他は、もう間に合わん。このままジャンプさせて出来るだけ遠くに行かせるしかない」
「承知しました!」
通信が切れた後、小さなサーシャは、ゲールに言った。
「オジサン! あと、ヤマトも異次元に連れてきて。士郎パパや、オジサマたちも助けなきゃ」
「オジ……。しかし、出来るだけ同胞のガミラス正規軍の方を優先したいのですが……」
「一度に沢山は、時間がなくて無理だよ。お願い、オジサン。タランオジサンと、士郎パパがいれば、この危機をなんとかする方法を考えてくれると思うの」
ゲールは、祈るように両手を胸の前で握って懇願するサーシャの瞳にほだされた。
「し、仕方ない……。おい、ヤマッテにも呼び掛けろ!」
サーシャは、ゲールとの話を終えると、後ろを振り向いた。
「シャルバート。これで少しだけでも助けられるかも」
サーシャの後ろには、暗い表情をしたシャルバートと、新見と雪の姿があった。
新見は、シャルバートに言った。
「あなたのこと、無理にでも連れ出して良かった。あなたが澪ちゃんにやらせた、波動砲艦隊への命令のことだけど、大変なことになってしまったみたい。だから、私たちも、一緒にこれを止める方法を考えましょう」
シャルバートは、怒りに任せて艦隊を派遣したことで、銀河の破滅を引き起こすような重大な事態になっていることに、後悔していた。
「わ……私のせいで」
雪は、彼女の肩に触れて言った。
「仕方ないよ。そうするように、仕向けられていたんだから。でも、だからこそ、私たちも、何か出来ることがないか、考えましょう」
次元潜航艦のスクリーンには、土方や、山南の姿が映っていた。
「ガミラス回遊艦隊のゲール少将だ。女王の子女であらせられるサーシャ・ミオ様の命により、貴艦をこれより異次元へと誘導する」
土方は、驚いていた。
「ゲール少将、何故ここに?」
雪は、その時、急いでゲールの横に駆け付けて並んだ。
「こっ、こら。わしが喋っておる途中だ」
「土方さん、ご無事だったんですね?」
「雪……君も一緒なのか」
古代は、慌てて土方の近くにやって来た。
「雪! どうして君まで」
「古代くん……! 無事なのね? 本当に良かった……」
雪はほっと胸を撫で下ろしていたが、直ぐに真面目な表情に戻して言った。
「時間がありません。ゲール少将の指示に従って下さい。この状況を打開するには、一旦異次元空間に退避して、策を練った方が良いと思います」
土方は、真田の方をちらりと見た。彼は、いまだこの状況の観測に忙しくしている。
「迷っている時間はないと思います! 急ぎましょう!」
土方は、同じスクリーンに映る山南の姿を見た。
「山南、お前もそうした方がいい」
「土方総司令。なら、二手に分けましょう。ヒエイを含む主力戦艦四隻を、連続ワープでこの宙域を離脱させ、地球へ通信可能な宙域に向かわせます。この危機を急いで地球に伝えなければ。こちらの問題を解決するのは、土方さんと俺たちだけいれば良いでしょう」
「分かった。ならば、直ぐに手配してくれ」
「分かってますって。もうひと頑張り、やってみましょ」
その時百合亜は、レーダーチャートを確認して、船を探していた。
「星名くん……星名くんの船はどこ?」
百合亜は、それを見つけると、ぞっとした。
「え……なんで!?」
ゼール中佐のラスコー級巡洋艦と、彼の配下の小規模の艦隊は、逃げるどころか、波動砲艦隊に向かって突進していた。
「ゼール中佐。すまないな、こんなことに付き合わせて」
ゼール中佐指揮下の偵察部隊は、駆逐艦四隻を連れて、まっしぐらにイスカンダルの波動砲艦隊に突き進んでいた。
ゼール中佐は、ミルに向かって笑みを浮かべていた。
「大帝。同胞の尻拭いをしようって言うんでしょう? 最後まで、お供させて下さい。イスカンダルの艦隊の背後から近付けば、波動砲の流れ弾に合うこともないでしょうから」
「可能な限り、あの艦隊を撃沈し、波動砲の攻撃を止めさせる。問題は、あれに攻撃した場合、我々も敵と判断するだろう。その時に、この小規模の艦隊で勝てるかどうか」
「死んでしまっては、どうにもなりません。ぎりぎりまで頑張って、我々も退避しましょう」
「頼む。サーベラー様と二人の地球人は、どういう状況だ?」
ゼール中佐は、艦内の状況を確認した。
「たった今、輸送機が発艦しました。私の部下が、ヤマッテに送り届けてくれますよ」
ミルは、ほっとしていた。
「そうか、良かった。これで、我々にもしものことがあっても、サーベラー様がいる。関係の無い、地球人を巻き込むこともない」
やれることはやった。
ミルは、目を閉じて、これまでの出来事に、思いを馳せた。
死にに行くつもりは無いが、死んでしまうかも知れない。それでも、正しいことをして、最後を迎えられたら……。
「ガトランティスの輸送機から、星名、斉藤両名が乗っているので、受け入れて欲しいと連絡がありました」
相原の報告に、百合亜は、ほっとして力が抜けていた。
「良かった……」
土方は、艦橋の乗組員に指示した。
「掌帆長に連絡し、急ぎその輸送機を受け入れるように指示してくれ。ヤマトは、これより次元潜航艦からの牽引を受け入れる。次元潜航に備え、波動エンジンの出力を低下させ、補助エンジンを主動力に切り替え」
「了解しました」
徳川らが怪我で医務室にいる関係で、機関部の交代要員が機関長の席で働いていた。
その頃、サーダは、コスモフォワードシステムの起動準備が整ったとの報告を受けていた。
既に、次元の綻びは、裂け目として明確に観測されていた。このまま、イスカンダルの波動砲艦隊が波動砲を同じ座標に撃ち続ければ、やがて大きな亀裂が入り、この宙域一帯に巨大な穴となってその入り口が開くことになる。そして、その時、別の並行宇宙への接点が生まれ、そこからそちら側の宇宙が、この宇宙へと流れ込んでくるだろう。その直前に、コスモフォワードシステムを起動して、彼女が望む宇宙を手繰り寄せるのだ。
お膳立ては、既に整っている。ここに集まった人々の心に、これから起こるかも知れない出来事を擦り込んだ。後は、コアとなったシーラの故郷を思う強い気持ちが、未来の出来事の可能性を引き寄せて、因果を確定する。
そして……。
超巨大戦艦のセンサーは、次元の裂け目が大きく開くのを検知していた。ガルマン帝国本星の月軌道付近から、第四惑星の軌道にかけて、大きな亀裂が走って広がって行く。
シーラ……。
私は、やり遂げた。
ありがとう。
私も、すぐにそちらに行くからな。
サーダは、遂に決断した。
「コスモフォワードシステム、起動!」
艦内のコスモフォワードシステムが格納された区画で、システムは青白い光に包まれた。
装置を操作していたオートマタ兵たちは、まるで人間のように、その光の瞬きを眺めていた。
やがて……。
ミルの乗る艦隊は、あと少しで、イスカンダルの波動砲艦隊への射程圏内へと到達しようとしていた。しかし、その時、超巨大戦艦が眩く金色の輝く輪を形成して行くのを目撃した。その光の輪は、次第に大きく広がり、宇宙はその光の色に塗り潰され、何も見えなくなった。
「こ、これはいったい……!?」
真田は、ヤマトでその現象を観測していた。
「こ、これは……。まるで、コスモリバースシステムが起動した時と同じだ。サーダが、コスモフォワードシステムを起動したと判断して間違いがないでしょう」
ヤマトも、眩い黄金の光に包まれていた。
「輸送機の格納はどうした!」
土方は、諦めずに叫んだ。既に、計器類は、その輝きで見えなくなっている。
「格納は、完了したそうです!」
「よし、ゲール少将に連絡! 直ちにヤマトを牽引するように伝えてくれ!」
「はい! こちらヤマト、次元潜航艦、応答願います。直ちに、牽引をお願いします!」
その直後、光が急激に収まると、ヤマトの乗組員の動きが止まっていた。まるで、突然、時が止まったかのように、あらゆる動きが止まっていた。
ガルマン帝国本星は、急速に色を失い、宇宙の星々の瞬きも消えた。灰色に宇宙が覆われ、動くものは皆無となった。
まるで、宇宙が錆び付いたかのように――。
後退して退避していたガルマン帝国艦隊も、ガミラス艦隊も、ガトランティスの艦隊も、全てが凍り付いたように動かなかった。そして、それはガルマン帝国本星の人々も、同様だった。逃げ惑う人々は、彫像のように、その場で動かなくなっていた。
同じ頃、惑星ファンタムに残された反乱軍や、カーゼット大佐率いるガミラス回遊艦隊でも、ガルマン帝国本星方面の異変に気付いていた。センサーが異常な数値を計測しており、ただならぬことが起こっていることが彼らにも分かっていた。しかし、その影響が間もなくそこも襲うなどと、知る由もなかった。
惑星ファンタムの地下施設では、一人残されたダルメシアが、一人端末に向かい、その事象を観測していた。
「これは……。まさか、コスモフォワードシステムを使ったのか?」
しかし、その数分後、彼ら自身も、時が止まったかのように、動かなくなってしまっていた。ダルメシアも、何が起きたのか理解する前に、その場で固まっていた。
既に遠く離れた宙域で、地球への帰路についていた主力戦艦ハルナを含む地球艦隊でも、その現象は観測されていた。艦長葉山は、技術科の士官に調査を命じようとするも、咄嗟に指示を変更した。
「いや……。嫌な予感がする。調査は後でも出来る。連続ワープで、地球への帰還を優先しよう。すぐに準備してくれ」
葉山は、ワープの準備で忙しく動く艦内の様子を眺めながら考えていた。
「何が起こったのだろう。何か、取り返しのつかない、恐ろしいことが起こってしまったのではないだろうか?」
葉山の予想は当たっていた。やがて、彼らの現在の座標にも、その影響は波及することになるだろう。
しかし、傷付いた艦隊を率いる葉山に出来ることは、早く地球へと状況を伝えることと、傷付いた船や乗組員の傷を癒やすことしかなかった。
同じくその艦隊にいた航宙母艦イセでは、比較的軽傷だった西条未来と新米が、異変を聞いて艦橋を訪れていた。
西条は、イセの技術科長の平泉に状況を聞いていた。
「平泉さん、何か分かる?」
「距離が遠くて、亜空間通信リレーで得られた僅かな情報でしか観測出来ません。異常な値だと言うのは分かるんですが」
西条は、自身の知識ではどうにもならない話で、困惑していた。技術科の端末のデータを眺めた新米は、平泉と話して艦のデータベースの情報との照合を始めた。
「平泉さん、西条さん。何だか、コスモリバースシステムを使った時のデータに似ている気がする。確かに現地にコスモリバースシステムを搭載している科学実験艦ムサシがいる筈だけど……。何が起こったんだろう?」
そうしている間にも、艦隊の連続ワープの準備が整った。
ハルナやイセを含む傷付いた地球艦隊は、ワープで更にその宙域を離れて行った。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。