宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲141 幻視

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「……間もなく、ヤマトはヘリオポーズを越え、太陽圏を離脱する。乗組員には、赤道祭の開催を伝えて、最後の地球との交信も許可しよう」

 艦長沖田は、そのような指示を、船務長の森雪に伝えた。

 そうして、雪は、艦内で赤道祭のパーティーが行われる中、地球との交信をする者への案内をしていた。

 機関長の徳川が、通信室から泣きながら出て来るのを、彼女は温かく見守っていた。

「そういえば……。あの、徳川さん。古代さん、見かけませんでした? 彼の番なんですけど」

 徳川は、涙を拭いながら、はて、と考えているようだった。

「ううむ? 多分、またあそこにいるんじゃないかな?」

 またあそこ、と言われて雪は何処のことを言っているか悟った。

「ありがとうございます。私、ちょっと探して来ます」

 雪は、艦内をエレベーターで移動し、徳川の言う場所を訪ねた。すると、案の定、そこには古代の姿があった。

「あのう……。古代さん。地球との交信の件、あなたの番なんですけど」

 古代は、制服の前を着崩して、かなりラフな格好をしている。彼は、雪の姿に気が付くと、バツの悪そうな顔をしていた。

「あ、忘れてた。ごめん、ごめん。今行くよ。つい、話し込んじゃって」

 彼と話をしていた新見薫は、にこりと雪に笑いかけた。

「ほら、古代くん。早く行かないと、船務長の森さんに、また叱られちゃうよ」

「本当だ、早くしないと」

 古代は、いたずらっ子のようにおどけると、笑顔を振りまいた。

 その時、コンピュータの端末に向かっていた真田は、振り返りもせずに古代に言った。

「古代。地球で待っている、君の弟に連絡するのかい?」

「そうそう。あいつ、多分心配してるだろうからな。ちょっと行ってくるよ」

 雪は、いつも朗らかな年上の古代に、好感を持っていた。しかし彼は、どうやら新見女史と仲が良いらしい。少し、羨ましいと思いつつ、雪は彼を連れて通信室に向かった。

 通信室の前に戻ると、そこには加藤と山本が何か話しながら待っていた。

「あ、お待たせしてごめんなさい。お二人の番、古代さんの後なので、ちょっと待っていて下さいね」

「二人とも、待たせちゃったみたいで悪いな。すぐ終わるからさ」

 古代は、二人に手を振って、室内に入って行った。

「ったく、戦術長には敵わねえな。俺なんて、親父に説教されるだけだけどな」

 加藤は、山本にぼやいていた。

「そういや、加藤の親父さん、坊さんだったよな。古代さんは、多分弟に連絡するんだろうけど、俺も、妹に連絡するんだ。元気にしてるかなぁ」

 加藤は、地球を発つ前、山本の自宅を訪れた際に、心配そうに見送る彼の妹のことを思い出していた。

「お前のこと、本当に心配してたからな。飯も喉を通ってないとか、そんなことになってなきゃいいけど」

 雪は、にこりと笑って山本に話し掛けた。

「山本さんって、妹さんがいらっしゃるんですか? きっと、凄い美人さんなんでしょうね」

 山本は、少し照れたように笑った。

「うん。俺が言うのも何だけど……。あいつ、本当に可愛いと思うよ」

 雪と加藤は、山本の妹への溺愛ぶりに、思わず笑ってしまっていた。

  

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 宇宙基地イカロスでは、真田はヤマトの整備の指揮をとっていた。今回は、大幅な改装が行われ、ヤマトの装備も強力なものになっていた。波動カートリッジ弾や、波動爆雷などの、波動エネルギーを利用した新装備は、新たな地球を攻めてくる侵略者には、有効なものとなるだろう。

「叔父様」

 にこやかに、その美しい少女は近付いて来る。

 休憩をとって事務所にいた真田の元にやって来たのは、守から一時的に預かったサーシャだった。

「澪。どうしてここに? 今は、勉強をしなければいけない時間じゃないか?」

 サーシャは、頬を膨らませている。

「勉強、勉強って。叔父様、そればっかり。少しぐらい、のんびり過ごす時間があってもいいでしょ?」

 イスカンダル人が、急な成長をすることが判明し、困り果てた守は、真田に相談をした。見た目通りの年相応の知識がないまま成長すれば、なりは大きくとも、知識は幼児のままとなってしまう。残念ながら、スターシャからは、どう対処すべきか教えてもらえていなかった。

 真田は、そこで特別な高速学習装置の開発をして、彼女の成長に相応しい知識を、詰め込む手伝いをすることになった。

「しかし、困るよ。俺は、君のお父さんと約束しているんだ。ちゃんと、人様に恥ずかしくない知識やマナーを身につけさせると約束したからね」

 サーシャは、口を尖らせている。

「お父さんも、お父さんよ。ほとんど会いに来てくれないんだから。たまに会うたびに、私が大きくなってるのにびっくりするし。酷いと思わない? こういうのって、育児放棄って言うんでしょ? お母さんが生きていたら、きっとすっごく怒ってると思う」

 真田は笑った。

「君のお母さんが生きていたら、俺や古代は、こんなに困ったりはしていないさ。恐らく、もっと相応しいやり方を知っていただろうからね」

 サーシャは、急に何かを思い出したように、手を叩いた。

「そうだ……。叔父様に聞きたいことがあったんだけど、これ見て」

 サーシャは、携帯端末を取り出すと、写真を映しだした。サーシャは、何枚かめくると、目当ての写真を表示した。

「これ。お父さんと一緒に映ってるこの人だけど。誰?」

 真田は、端末を覗き込んだ。

「ああ。この人は、君の叔父さんだよ。お父さんの弟の進だ」

「ふう〜ん」

 真田には、その瞳が明らかに恋焦がれているように映った。

「会ってみたいなぁ」

 真田は、頭をかいていた。

「まったく、女っ気の無いこの俺に、こんな年頃の娘を預けるから……」

「うん? どういう意味?」

「専門外だってことだ」

「何それ」

 真田は、真面目な顔をして言った。

「彼には、将来を約束した恋人もいる。ちょっかいを出すような真似をしてはいかんからな。倫理的にも問題があるぞ」

「恋人ってことは、結婚している訳じゃないんでしょう? だったら、法的に問題無いんじゃない? 最近勉強したばかりだから、間違ってないと思うな」

 真田は、その答えに困り、話を打ち切って立ち上がった。

「俺はもう、仕事に戻る時間だ。君は、部屋に戻って勉強。いいな?」

 サーシャは、再び頬を膨らませた。事務所から出ていった真田を見送った後も、彼女は、しばらく写真を眺めていた。

「叔父様……。いつになったら会えるのかな?」

 

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 古代は、ヤマトの艦橋から、去って行く救命艇の姿を眺めた。島や相原などの生存者が、胸に腕をあて、敬礼しているのが、最後に見えた。同じく敬礼していた古代は、救命艇が見えなくなると、そっと腕を下ろした。

 荒れ果てた第一艦橋は、誰もいなくなり、火災が発生し、ちりちりと燃える火の音だけが響いている。ヤマトは、もう終わりだ。あらゆる兵装はすべて被弾して攻撃する手段は残っていない。かろうじて、エンジンが動いているだけだ。そしてそのエンジンも、もう長くは保たないだろう。

 沖田艦長の遺影を眺めたあと、レーダー手の座席で眠っているように見える雪の姿を彼は確認し、瞳を閉じた。

 雪が生きていれば、こんな決断はしなかったかも知れない。彼女のいない地球に、何の意味も無い。だから、今ここにいる。

 古代は、雪のもとへと、ゆっくりと歩いて近寄った。

 

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 土方以下、山南、古代、島ら極東管区の艦隊指揮官クラスの人員が、多数死亡したとの報告は、地球連邦政府そのものを揺るがせるのに充分だった。

 そして、次元の狭間から現れた別の銀河は、十日程度でこの太陽系にも現れる。その時、何が起こるのか。地球の科学者が総動員で検討を行ったが、結果が出るまでに、十日などあっさりと過ぎてしまうだろう。

 山崎は、新たな極東管区の総司令官として、日本艦隊を任されていた。彼の配下には、ガルマン帝国本星での戦いから帰還した大村や北野のような人材もまだ残っている。

 地球連邦防衛軍の総司令官であり、北米艦隊の総司令官であるスコーク宙将とは、つい一週間前に行われた、各国の総司令官が集まった会議で会うことが出来た。

 スコークによれば、地球連邦政府は、ガミラス政府と交渉し、マゼラン銀河への移住を決定したらしい。以前から噂は広まっており、それは事実だった。しかし、もとよりすべての地球人を移住させることなど不可能であり、その対象となるのは、一部の人間だけである。

 当然、地球では、その件で喧々諤々の議論が行われており、これに反対する市民活動団体が、テロ行為を行うなど、ガミラス戦争以来の激しい混乱状態にあった。

 

 そんな中、山崎は、ひっそりとガミラス戦争などの死者を祀る神社を訪れていた。

 英雄として特別に作られた沖田の墓前で手を合わせた山崎は、続いて大きな慰霊碑と、そこに刻まれた多数の死者の名を漠然と眺めた。亡くなったばかりの土方らの名は、まだ何処にも刻まれていない。

「沖田さん……。徳川さん……。随分、多くの仲間が逝ってしまいました。幸いにも、徳川さんの子の太助くんは、無事に戻りました。他にも、まだ仲間は生き残っていますが、俺としては、寂しい限りです。これから、俺たちはどうなるんでしょう? 一説では、この太陽系も、別の太陽系と衝突する可能性があり、その時は、地球はもう、人が住める星ではなくなるとも言われています。その時に、戦闘用の艦隊があっても、あまり役に立たないでしょう」

 山崎は、うわ言のように、ぼそぼそと口に出して話していた。

「せっかく、皆で守った地球だってのに」

 その時、強い風が彼を襲い、被っていた軍帽が飛ばされて行った。

 山崎は、絶望の中にあり、流れ落ちる涙も拭わずに、その場に立ち尽くしていた。

 彼は、それでも最後まで、出来ることをやらねばならなかった。

 

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 止まった時間の中で、人々は幻のような光景を見ていた。様々な並行宇宙の様々な人々。そこでは、それぞれの違った人生があり、様々な可能性があった。

 その可能性に、彼らは喜び、怒り、そして涙した。

 次元が混濁した中で、彼らはこれから起こり得る未来の姿も目撃した。天の川銀河に、もう一つの銀河が重なり合うように現れ、次第にそれは全体に広がって行く。

 様々な星々や星系が重なり合い、あっという間に人が住めない環境となった場所もあった。それは、ガルマン帝国本星を中心として、速い速度で銀河全体へと広がり、被害は拡大して行った。

 もはや、それは人々の間に事実として認識され、絶望の中で、これから間違いなく起こることとして、その因果が確定しようとしていた。

 そしてそれは、サーダが望んだ世界の実現を意味していた。

 

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「ベント開け! 急速潜航!」

 既に異次元に沈降していたゲールの次元潜航艦は、ヤマトを牽引して引きずり込もうとしていた。

 ヤマトの艦底部がゆっくりとほんの少しづつ沈降してくる。

「ゲール少将! 上で何か起こったようです! ヤマッテを牽引していますが、なかなか動いてくれません!」

「ええい! 続けろ。ゆっくりとでも構わん。なんとか引き込め!」

 ゲールの艦だけで無く、フラーケンやデスラーの艦ら次元潜航艦隊が、次々に通常空間にいる船を、引き込もうと懸命に動いていた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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